配当がない同族会社の少数株主が弁護士に依頼するとき 配当を受けられない株式をどう現金に換えるか

この記事の位置付け
本ページは、配当と株式価値に関する解説のうちの一つです。全体像は、次の中核となるページをご覧ください。
本ページは、同族会社において配当がない場合に少数株主が採り得る手段とその限界、及び権利行使を続けるか換価を目指すかの選択を述べるページです。配当がされない理由の類型と評価の考え方ごとの配当実績の位置付けは、配当がない会社の少数株式は価値が低いのかに集約しています。
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支配株主が経営者でもある同族会社では、経営に関与しない少数株主は、配当がされない限り会社から受け取るものがありません。この構造的な非対称が生ずる理由の類型と、配当の有無が株式の評価に与える影響は、配当がない会社の少数株式は価値が低いのかに集約しています。
役員報酬の水準が不相当に高いことによって配当原資が失われているような場合には、株主としてその当否を問題とする余地があります。もっとも、役員報酬額の当否をめぐる争いは、比較の対象、会社の規模、職務の内容等の立証を要し、負担が重いのが実情です。結論も事案によって異なります。
少数株主に認められた手段とその限界
表2 主な手段
| 手段 | 根拠条文 | 要件の概要 | 限界 |
|---|---|---|---|
| 議決権の行使 | 会社法第105条第1項第3号 | 株主であること | 多数決で決まりますので単独では結論を左右できません |
| 議題の提案 | 会社法第303条 | 取締役会設置会社では議決権の100分の1以上又は300個以上等 | 提案が可決されるとは限りません |
| 議案の要領の通知の請求 | 会社法第305条 | 同上 | 同上 |
| 株主総会の招集の請求 | 会社法第297条 | 総株主の議決権の100分の3以上 | 招集されても議決の結果は多数決によります |
| 計算書類等の閲覧等 | 会社法第442条第3項 | 株主であること | 情報の取得にとどまります |
| 会計帳簿の閲覧謄写 | 会社法第433条第1項 | 100分の3以上 | 拒絶事由があります |
| 株主総会決議取消しの訴え | 会社法第831条第1項 | 決議の日から3か月以内 | 手続又は内容の瑕疵が要件です |
| 責任追及等の訴え | 会社法第847条 | 株主であること | 会社の損害の回復を求めるものです |
公開会社でない会社においては、株主総会の招集の請求、議題の提案、責任追及等の訴えの提起の請求について、6か月前から引き続き株式を有することという要件は適用されません(会社法第297条第2項、第303条第3項、第847条第2項)。非上場の同族会社の場合、この点は株主に有利に働きます。
もっとも、いずれの手段も、配当を強制的に実現させるものではありません。配当は株主総会の決議事項であり、決議は多数決によるためです。少数株主権の行使と会社による買取りとの関係については、記事「少数株主権を行使すれば会社は株式を買い取るのか」に整理しています。
配当がないことと株式の価値
配当がないことは、株式に価値がないことを意味いたしません。会社に純資産があり、又は収益を上げているのであれば、株式にはそれに対応する価値があります。評価の考え方ごとに配当実績が結果に与える影響がどのように異なるかは、配当がない会社の少数株式は価値が低いのかに一覧として集約しています。
出口としての売却の検討
配当が期待できず、経営への関与も現実的でないのであれば、株式を換価することが選択肢となります。
表4 主な選択肢
| 相手方 | 法的性質 | 主な留意点 |
|---|---|---|
| 会社 | 任意の株式買取交渉 | 分配可能額の範囲内に限られます(会社法第461条第1項第3号) |
| 支配株主・親族株主 | 任意の株式買取交渉 | 財源規制は及びません |
| 会社又は指定買取人 | 株式譲渡承認請求(会社法第136条以下) | 譲受人を明らかにする必要があります |
いずれの道を採る場合であっても、会社の財務状況を把握することが前提となります。株主に認められた情報取得の手段を用いて資料を確保することが、最初の作業です。
表5 権利行使を続ける場合と換価を目指す場合の比較
| 観点 | 権利行使を続ける場合 | 換価を目指す場合 |
|---|---|---|
| 目的 | 会社の運営の適正化及び将来の配当 | 保有する株式の現金化 |
| 必要となる資料 | 計算書類、議事録、会計帳簿等 | 計算書類、定款、株主名簿、評価の資料等 |
| 要する期間 | 継続的な関与を要します | 協議が調えば区切りが付きます |
| 会社との関係 | 継続いたします | 原則として終了いたします |
| 相続への影響 | 次の世代に引き継がれます | 現金となり分割が容易になります |
この二つは排他的な関係にあるわけではありません。まず資料を確保し、会社の状況を把握したうえで、いずれの方針を採るかを決するという順序が現実的です。なお、具体的な進め方は、株主構成、財務状況、株価、従前の経緯等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本ページでは詳細を開示していません。
弁護士に相談する意味
配当がない状態が長く続いている事案では、株主の側に情報がなく、何から始めればよいか分からないという状況が生じています。弁護士は、株主本人の代理人として、まず資料を確保し、そのうえで、権利行使を継続するか換価を目指すかの方針を検討いたします。
株式買取業者は買手であり、株主本人の代理人ではありません。当事務所は株式を買い取る立場ではなく、株主の方が株式を保有したまま手続を進めるものです。
よくあるご質問
質問1 配当をするよう会社に請求できますか。
配当は株主総会の決議によって具体化するものですので(会社法第454条第1項)、株主が単独で会社に配当を請求することは原則としてできません。株主総会において議案を提案することは考えられますが、可決されるとは限りません。
質問2 役員報酬が高すぎることを争えますか。
取締役の報酬等は、定款に定めがないときは株主総会の決議によって定めるものとされています(会社法第361条第1項)。決議の手続又は内容に瑕疵がある場合には争う余地がありますが、金額の当否そのものを争うことは立証の負担が重く、結論も事案によって異なります。
質問3 株主総会に出席しても意味がないのでしょうか。
議決権の行使のみでは結論を左右できない場合であっても、質問を通じて会社の説明を求めることには意味があります。取締役等は、株主総会において株主から特定の事項について説明を求められた場合には、原則として必要な説明をしなければならないものとされています(会社法第314条)。
質問4 配当がないまま保有し続けるとどうなりますか。
相続が生じますと、株式は相続財産として承継され、課税の対象となります。次の相続で株主がさらに増えることもあります。この点は記事「相続した少数株式に配当がない場合でも持ち続けるべきか」に整理しています。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、非上場会社の少数株主の方から、配当、情報開示及び株式の売却に関するご相談をお受けしています。
ご相談の際には、定款の写し、株主名簿の写し、株主総会の招集通知及び議事録、直近3期分の決算書、会社とのやり取りの記録をご用意ください。お手元にない場合でもご相談いただけます。
- 電話番号 03-6435-8418
- 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
- 所在地 〒105-6017 東京都港区虎ノ門四丁目三番一号 森トラスト城山トラストタワー17階
本記事は一般的な法律上の枠組みをご説明するものであり、結論は事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。結果を保証するものではありません。課税関係については税理士にご確認ください。
本記事の根拠条文
会社法 第105条第1項第1号・第3号(剰余金の配当を受ける権利及び議決権)、第136条(譲渡等承認請求)、第297条第1項・第2項(株主総会の招集の請求)、第303条(議題提案権)、第305条(議案の要領の通知の請求)、第314条(取締役等の説明義務)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第433条第1項(会計帳簿の閲覧謄写請求)、第442条第3項(計算書類等の閲覧及び謄本の交付の請求)、第454条第1項(剰余金の配当に関する事項の決定)、第461条第1項第3号・第8号(分配可能額)、第831条第1項(株主総会決議の取消しの訴え)、第847条(責任追及等の訴え)
配当がない状態が続いていても、確認できることと採り得る手段はあります。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
具体的なご相談をお考えの株主の皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。




