少数株主が株主名簿を確認したい場合
自分が何株持っているのかが、そもそも分からない
非上場の会社の株式を保有しておられる方から、「自分が何株持っているのか、正確には分からない」という御相談を受けることがございます。相続によって株式を承継された方、退職された元従業員の方、長らく株主総会の招集通知を受け取っておられない方に、とりわけ多く見られます。
会社に尋ねても、「今は忙しい」「後で調べておく」と言われたまま、回答が得られない。そのようなお話も珍しくございません。しかし、株主には、株主名簿の閲覧又は謄写を請求する権利が法律上認められております。会社の裁量によって左右されるものではございません。
本記事では、株主名簿に何が記載されているのか、どのように請求するのか、会社が拒むことができるのはどのような場合か、そして名義が被相続人のままである場合にどうするのかを、順に整理いたします。
第1節 株主名簿には何が記載されているか
株式会社は、株主名簿を作成し、次の事項(株主名簿記載事項)を記載し、又は記録しなければなりません(会社法第121条)。
表1 株主名簿の記載事項(会社法第121条)
| 号 | 記載事項 |
|---|---|
| 第1号 | 株主の氏名又は名称及び住所 |
| 第2号 | その株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数) |
| 第3号 | その株主が株式を取得した日 |
| 第4号 | 株券発行会社である場合には、その株式に係る株券の番号 |
会社は、株主名簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあっては、その営業所)に備え置かなければなりません(会社法第125条第1項)。作成及び備置きを怠った場合には、過料の制裁が定められております(会社法第976条)。
中小の同族会社では、株主名簿が作成されていない、又は長年更新されていない例が珍しくございません。もっとも、それは会社側の落ち度でございまして、株主の不利益に帰せられるべきものではございません。
第2節 閲覧又は謄写の請求の方法
株主及び債権者は、会社の営業時間内は、いつでも、請求の理由を明らかにして、株主名簿の閲覧又は謄写の請求をすることができます(会社法第125条第2項)。
持株数の要件はございません。1株のみを保有する株主であっても、請求することができます。この点は、総株主の議決権の100分の3以上又は発行済株式(自己株式を除きます。)の100分の3以上の数の株式を有することを要する会計帳簿の閲覧謄写の請求(会社法第433条第1項)と大きく異なるところでございます。
請求の理由を明らかにすることが必要でございます。「株主としての権利の確保及び行使のため」といった抽象的な記載では足りないと考えられますので、たとえば「保有株式数及び持株比率を確認し、株式の売却その他の権利の行使を検討するため」といった程度に、何を確認するために請求するのかを具体的に記載いたします。
請求は、配達証明付内容証明郵便によって行い、到達の事実と到達の日を記録に残してください。会社が応じない場合に、いつ何を請求したのかを立証する必要が生じるためでございます。回答の期限を明示しておくことも有用でございます。
会社が理由を示さずに拒む場合には、その事実自体を記録に残してください。後の手続における重要な事情となります。
確認することによって分かること
これらを確認することにより、自らの保有株式数、他の株主の構成、それぞれの持株比率を把握することができます。持株比率は、会計帳簿の閲覧謄写の請求(100分の3以上)や株主総会の招集の請求(100分の3以上)といった少数株主権の要件の判断に直結いたします。
また、株式の買主の候補を検討する場面でも、株主構成の把握は前提となります。会社が買主とならない場合に支配株主が買主となり得るかは、持株の状況によって左右されます。
第3節 会社が拒むことができる場合
会社は、請求があったときは、次のいずれかに該当する場合を除き、これを拒むことができません(会社法第125条第3項)。
表2 拒絶事由
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 第1号 | 請求者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき |
| 第2号 | 請求者が会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき |
| 第3号 | 請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき |
| 第4号 | 請求者が過去2年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき |
会計帳簿の閲覧謄写の請求とは異なり、請求者が会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営んでいることは、拒絶事由とされておりません。
請求の理由については、抽象的な記載では足りないと考えられますので、何を確認するために請求するのかを具体的に記載することとなります。他方、会計帳簿の閲覧謄写の請求と比べますと、対象が株主名簿に限られており、会社の営業上の秘密に触れるものではありませんので、拒絶が認められる場面は相対的に限られると考えられます。
なお、親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、子会社の株主名簿について同様の請求をすることができるものとされております(会社法第125条第4項)。
第4節 自己の記載のみを確認したい場合
他の株主の情報までは必要なく、自らの保有株式数のみを確認したい場合もあります。この場合には、株主名簿記載事項を記載した書面の交付を請求する方法があります。
株主は、会社に対し、当該株主についての株主名簿に記載され、又は記録された株主名簿記載事項を記載した書面の交付又は当該事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができます(会社法第122条第1項)。この書面には、会社の代表者が署名し、又は記名押印しなければならないものとされております(同条第2項)。
自らが株主であることを示す資料が手元にない場合、この請求は有用です。
第5節 名義が被相続人のままである場合
相続により株式を取得した場合、名義書換をしなければ、会社に対して自らが株主であることを主張することができません(会社法第130条第1項)。
株式を取得した者は、会社に対し、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができます(会社法第133条第1項)。相続その他の一般承継による取得の場合には、戸籍関係書類、遺産分割協議書等を添えて請求することとなります。
株主名簿を確認した結果、名義が被相続人のままであることが判明する例は少なくありません。その場合には、閲覧の後、名義書換の請求へ進むこととなります。
よくあるご質問
質問1 会社が請求に応じない場合はどうすればよいですか。
拒絶事由に該当しないにもかかわらず応じない場合には、閲覧又は謄写を求める訴えを提起することが考えられます。まずは根拠条文を明示した書面により請求し、その記録を残すことが実務上の出発点です。
質問2 他の株主の住所まで見てよいのですか。
株主名簿の記載事項には株主の氏名又は名称及び住所が含まれます(会社法第121条第1号)。もっとも、知り得た事実を利益を得て第三者に通報することは拒絶事由に関係いたしますので、取扱いには注意を要します。
質問3 株主名簿がそもそも作成されていない場合はどうなりますか。
会社法は株主名簿の作成及び備置きを義務付けております(会社法第121条、第125条第1項)。作成されていない場合であっても、株主であることは他の資料により立証し得ます。まず登記事項証明書、過去の通知、払込みの記録等を確認いたします。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、非上場会社の少数株主の方から、情報開示及び株式の売却に関するご相談をお受けしております。当事務所は株式を買い取る立場ではなく、株主の方が株式を保有したまま手続を進めるものです。
ご相談の際には、株主であることを示す資料、定款の写し、株主総会の招集通知、会社に送付した書面及び回答をご用意ください。お手元にない場合でもご相談いただけます。
- 電話番号 03-6435-8418
- 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
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本記事は一般的な法律上の枠組みをご説明するものであり、結論は事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。結果を保証するものではありません。課税関係については税理士にご確認ください。
本記事の根拠条文
会社法 第121条(株主名簿の記載事項)、第122条第1項・第2項(株主名簿記載事項を記載した書面の交付)、第125条第1項から第4項まで(株主名簿の備置き及び閲覧等、拒絶事由並びに親会社社員の請求)、第130条第1項(対抗要件)、第133条第1項(株主名簿記載事項の記載の請求)、第433条第1項(会計帳簿の閲覧謄写請求)
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