非上場株式譲渡契約書の書き方とフォーマット 条項ごとの意味と落とし穴

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非上場株式の譲渡契約書の書き方に関するメインのページです。本ページは、少数株主として株式の売却を考える方に向けて、条項ごとの意味と記載を誤った場合の帰結をご説明します。承認の請求の書面は別のページをご参照ください。
▶ 株式譲渡承認とは 譲渡制限株式の譲渡承認手続きの流れと注意点
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契約書に署名押印をしただけでは、非上場株式は移りません
非上場の会社の株式を譲り受け、又は譲り渡そうとする場面で、多くの方がまずお探しになるのが株式譲渡契約書のひな型です。もっとも、非上場株式の譲渡は、契約書に署名押印をしただけでは完結いたしません。譲渡制限が付されている株式であれば会社の承認を得なければ会社との関係で譲渡の効力が認められず、株券発行会社であれば株券の交付がなければ譲渡の効力そのものが生じません。そして、株主名簿に記載又は記録がされなければ、会社に対して自分が株主であると主張することができません(会社法第130条第1項)。
本ページでは、当事務所が用いています非上場株式譲渡契約書のフォーマットをそのまま掲載したうえで、各条項が何のために置かれているのか、記載を誤るとどのような帰結が生ずるのか、交渉においてどのような意味を持つのかを、条項ごとに整理いたします。
本ページと、名義書換に関する二つのページの役割
- 株式譲渡契約書そのもの 本ページです。契約書の各条項の意味と落とし穴を扱っています。
- 名義書換請求書の各欄の書き方 株主名簿名義書換請求書の書き方 各欄の記載例とフォーマット 宛先、請求者の表示、対象株式の特定、取得の原因といった欄ごとの書き方を扱っています。
- 名義書換の手続の全体像と、会社が応じない場合 株主名簿の名義書換請求とは 手続の全体像と会社が応じない場合の対応 単独で請求することができる場合、会社が拒絶したときに採り得る手段を扱っています。
非上場株式譲渡契約書のフォーマット
弁護士法人M&A総合法律事務所の非上場株式譲渡契約書のフォーマットは、頻繁に使用されています。
ここに弁護士法人M&A総合法律事務所の非上場株式譲渡契約書のフォーマットを掲載しています。
非上場株式・少数株式問題にお悩みの経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ありません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きる可能性もあり、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
ひな型を流用する場合のリスクは、株式譲渡契約書のひな型(テンプレート)を利用する際の注意点にまとめています。
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株式譲渡契約書
第2条(譲渡価格) 第3条(株式譲渡の実行) 第4条(表明・保証) 第5条(譲渡承認等) 第6条(名義書換等) 第7条(解除・損害賠償) 第8条(解除の禁止) 第9条(契約上の地位譲渡の禁止) 第10条(協議条項) 第11条(合意管轄)
甲 ■■■■■■■■■■■■■■■■ ㊞ 乙 ■■■■■■■■■■■■■■■■ ㊞ |
この書面をいつ、誰が、誰に対して差し出す書面か
株式譲渡契約書は、株式を譲り渡す者(譲渡人)と譲り受ける者(譲受人)との間で取り交わす書面です。会社に対して差し出す書面ではありません。会社に対して差し出す書面は、株式譲渡承認請求書(会社法第136条又は第137条第1項)と、株主名簿の名義書換請求書(会社法第133条第1項)であり、株式譲渡契約書とは別の書面です。
作成の時期は、価格及び条件について合意に達した段階です。譲渡制限株式の場合には、契約を締結したうえで、会社の承認を譲渡の実行の前提条件とするという構成を採るのが通例です。承認が得られてから初めて契約を締結するという順序も採り得ますが、その場合には、承認が得られた後に相手方が翻意する危険を負うことになります。
条項ごとの意味と、記載を誤った場合の帰結
目的物の特定(前文及び第1条)
株式譲渡契約において最初に確認すべきは、何株を譲り渡すのかが一義的に定まっているかです。特定に必要な要素は、次の四つです。
- 発行会社 商号のほか、本店の所在地及び会社法人等番号まで記載しておくと、同一商号の会社との取違えを防ぐことができます。
- 株式の種類 種類株式発行会社では、株式の種類ごとに数を記載しなければなりません(会社法第121条第2号参照)。普通株式のみを発行している会社であっても、「普通株式」と明記いたします。
- 株式の数 「甲が保有する株式の全部」という定め方は簡便ですが、譲渡人が他にも株式を保有していた場合や、契約締結後に株式の分割等があった場合に争いを生じます。実数を併記するのが安全です。
- 株券発行会社か否か 定款に株券を発行する旨の定めがあるか(会社法第214条)によって、譲渡の効力要件がまったく異なります。登記事項証明書を取得し、「株券を発行する旨の定め」の記載の有無を必ず確認いたします。
記載を誤った場合の帰結 目的物の特定を欠いた契約は、履行の内容が定まらず、名義書換の請求をしても会社から「どの株式について請求しているのか分からない」として応じてもらえない事態を招きます。株式の数が実際の保有数と食い違っていた場合には、差額について履行不能となり、代金の減額又は損害賠償の問題に転じます。
売買代金及び支払方法、支払の時期(第2条)
代金額のほか、支払の方法(振込先の口座)と、支払の時期を明記いたします。フォーマットの第3条は、代金の支払と株式の譲渡とを引換えとする、いわゆる同時履行の構成を採っています。
記載を誤った場合の帰結 支払の時期を定めずに「速やかに支払う」とのみ記載いたしますと、履行遅滞の起算点が定まらず、遅延損害金を請求する際の起算日が争いになります。分割払とする場合には、期限の利益の喪失に関する定めを併せて置かなければ、一回の不払で残額全部を直ちに請求することができません。
交渉上の意味 譲受人の側は、表明及び保証に反する事実が後に判明した場合に備え、代金の一部を一定期間留保することを求めるのが通例です。譲渡人の側は、これに対して留保の期間及び金額の上限を限定するよう求めることになります。
譲渡の実行(クロージング)の条件 譲渡制限株式では会社の承認が前提となります
譲渡制限株式とは、譲渡による取得について株式会社の承認を要する旨の定めが設けられている株式です。譲渡制限株式を他人に譲り渡そうとする株主は、会社に対し、承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(会社法第136条)。株式を取得した者の側から請求することもできます(会社法第137条第1項。ただし、同条第2項により、原則として株主名簿上の株主と共同してしなければなりません)。
承認をするか否かの決定は、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議によります(会社法第139条第1項本文)。定款に別段の定めがある場合はこの限りではありません(同項ただし書)。会社は、決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者に対し、その内容を通知しなければなりません(同条第2項)。
承認がないまま譲渡した場合はどうなるか 承認を欠く譲渡は、会社に対する関係では効力を主張することができませんが、譲渡の当事者の間では有効であると解されています。したがいまして、譲受人は代金を支払ったにもかかわらず会社から株主として扱われないという状態に置かれます。契約書においては、会社の承認が得られたことを譲渡の実行の前提条件とし、承認が得られない場合の取扱い(契約の解除、代金の返還、会社又は指定買取人による買取りへの移行)をあらかじめ定めておくことが肝要です。
会社が承認をしない場合 譲渡等承認請求に際して、承認をしない場合には会社又は指定買取人が買い取ることを併せて請求しておきますと(会社法第138条第1号ハ又は第2号ハ)、会社は対象株式を買い取らなければなりません(会社法第140条第1項)。この請求を付し忘れますと、承認が得られなかった場合に会社に株式の買取りを求めることができず、非上場株式を売却する手段を失います。この一行の有無が結論を分けます。
株主名簿の名義書換に協力する義務(第6条)
株式の譲渡は、株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができません(会社法第130条第1項)。株券発行会社においては、この対抗要件は会社に対する関係のみについて働きます(同条第2項)。
そして、株主名簿の名義書換の請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、株式取得者と、株主名簿上の株主又はその相続人その他の一般承継人とが共同してしなければなりません(会社法第133条第2項)。すなわち、譲受人が単独で名義書換を請求することは、原則としてできません。
記載を誤った場合の帰結 名義書換への協力義務を定めていない契約書は、譲渡人が翻意して押印を拒んだ場合に、譲受人が名義書換を実現する手段を失います。この場合、譲受人は、譲渡人に対して名義書換請求への協力を求める訴えを提起し、確定判決を得たうえで単独請求(会社法施行規則第22条第1項第1号)に進むほかなく、多大な時間と費用を要します。協力義務の条項は、必ず置いてください。
実務上の工夫 契約締結と同時に、譲渡人の署名押印済みの名義書換請求書及び株式譲渡承認請求書を預かっておくのが確実です。押印は実印により、印鑑登録証明書を併せて受領いたします。
株券発行会社における株券の交付 これは効力要件です
株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じません(会社法第128条第1項本文)。自己株式の処分による譲渡はこの限りではありません(同項ただし書)。また、株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対しては効力を生じません(同条第2項)。
株券の占有者は、その株券に係る株式についての権利を適法に有するものと推定され(会社法第131条第1項)、株券の交付を受けた者は、悪意又は重大な過失がない限り、その株式についての権利を取得いたします(同条第2項)。
記載を誤った場合の帰結 株券発行会社であるにもかかわらず株券の交付を受けずに代金を支払ってしまいますと、譲渡の効力そのものが生じません。この場合、譲受人は株主となることができず、代金の返還を求めるほかなくなります。契約書には、株券の交付を実行の要件として明記し、株券の番号を記録した受領書を取り交わしてください。
表明及び保証(第4条)
表明及び保証とは、一定の時点における事実が真実かつ正確であることを相手方に対して述べ、保証する条項です。非上場株式の譲渡においては、少なくとも次の事項を定めるのが通例です。
- 対象株式を適法に保有していること 譲渡人が株主名簿上の株主であり、かつ真実の株主であること。名義株(他人の名義を借りて出資がされた株式)の存否は、非上場の会社において最も争いを生じやすい点です。
- 担保権等の負担がないこと 質権、譲渡担保権その他の負担が設定されていないこと。
- 発行会社の計算書類の正確性 直近の計算書類が会社の財産及び損益の状況を正しく示していること。
- 簿外債務及び偶発債務が存在しないこと 保証債務、未払残業代、係属中又はそのおそれのある紛争等。
- 開示した資料及び情報が真実かつ正確であること
交渉上の意味 譲渡人の側は、「譲渡人の知る限り」という限定や、一定額を超える事項に限るという限定を付すことを求めます。譲受人の側は、これらの限定を外し、又は限定の範囲を狭めるよう求めます。「知る限り」の一語が入るか否かで、後日の責任の所在が大きく変わります。
記載を誤った場合の帰結 表明及び保証を置かない契約書では、後に簿外債務が判明しても、原則として民法の契約不適合責任又は錯誤の主張によるほかなく、立証は容易ではありません。
補償
補償条項は、表明及び保証に違反した場合に、損害をどのように填補するかを定める条項です。フォーマットの第7条第2項は解除と代金全額の返還という構成を採っていますが、事案によっては、解除ではなく金銭による補償のみを認める構成のほうが適切な場合があります。
補償条項において定めるべき事項は、次のとおりです。
- 補償の期間 実行の日から何箇月又は何年以内に請求されたものに限るか。税務に関する事項については、更正の期間を考慮して長めに定めるのが通例です。
- 補償の上限額 株式譲渡代金の全額とするか、その一定割合とするか。
- 補償の下限額 一件あたり、又は累計で一定額を超えた場合に限り請求することができるとする定め。
- 第三者から請求を受けた場合の通知及び防御の手続
記載を誤った場合の帰結 上限額を定めなければ譲渡人は限度のない責任を負い、期間を定めなければ長期にわたり不安定な地位に置かれます。逆に、譲受人の側から見れば、上限額を代金額の一割などと低く抑えられますと、重大な簿外債務が判明しても回収することができません。
競業避止義務
譲渡人が会社の経営者であった場合、譲渡後に同種の事業を始められますと、取引先及び従業員が流出し、譲受人が取得した株式の価値が失われます。これを防ぐのが競業避止義務の条項です。
定めるべきは、期間、地域、禁止する行為の範囲の三つです。従業員及び取引先に対する勧誘の禁止も併せて定めるのが通例です。
記載を誤った場合の帰結 期間及び地域を定めずに包括的に競業を禁ずる定めは、職業選択の自由との関係で、公序良俗に反するとして効力を否定される可能性があります。他方、条項を置かなければ、譲渡人が翌日から同種の事業を始めても、これを止める根拠がありません。合理的な範囲に限定したうえで、必ず置くというのが実務の解です。
秘密保持
交渉の過程で開示された情報、契約の内容及び契約の存在それ自体を、第三者に開示しない旨を定めます。例外(法令に基づく開示、弁護士及び税理士等への開示、既に公知である情報)を明記しておかなければ、必要な専門家への相談すら契約違反となりかねません。また、契約が終了した後も一定期間存続する旨を定めておく必要があります。
契約の解除(第7条及び第8条)
フォーマットは、催告のうえでの解除(第7条第1項)と、表明保証違反の場合の無催告解除(第7条第2項)とを定め、さらに代金支払後は譲渡人の側から解除することができない旨(第8条)を定めています。
この第8条は、譲受人にとって極めて重要な条項です。代金を支払った後に譲渡人から解除をされますと、譲受人は既に取得した株主の地位を失うことになりかねません。他方、譲渡人の側から見れば、代金の不払があった場合に解除することができないのでは困りますので、「株式譲渡代金を支払った後は」という限定が付されていることが要点です。
記載を誤った場合の帰結 解除の効果として原状回復をどのように行うか(株式の返還、名義書換の戻し、受領済み配当の処理)を定めていない契約書は、解除の場面で必ず紛争になります。
合意管轄(第11条)
紛争が生じた場合の第一審の専属的合意管轄裁判所を定める条項です。「専属的」の語を落としますと、付加的合意と解される余地が生じ、他の裁判所に提訴されることを排除することができません。
どの裁判所を指定するかは、実質的な交渉事項です。遠隔地の裁判所を指定されますと、出頭の負担が争いを継続するかどうかの判断に影響いたします。
株券発行会社であるにもかかわらず、株券が発行されていない場合
非上場の会社では、定款に株券を発行する旨の定めがあるにもかかわらず、実際には株券が一枚も発行されていないという例が、まことに多くあります。これは違法な状態というわけではありません。公開会社でない株券発行会社は、株主から請求がある時までは、株券を発行しないことができるとされているからです(会社法第215条第4項)。
この場合、株券の交付をしないまま譲渡をいたしましても、譲渡の効力は生じません(会社法第128条第1項本文)。採り得る途は、次の二つです。
第一の途 株券の発行を請求し、交付を受けたうえで譲渡する
譲渡人が発行会社に対して株券の発行を請求いたします。会社は、株式を発行した日以後遅滞なく株券を発行しなければならず(会社法第215条第1項)、公開会社でない株券発行会社について認められている発行の猶予は、株主から請求がある時までのものです(同条第4項)。したがいまして、株主から請求があった以上、会社は株券を発行しなければなりません。
もっとも、実際には会社が発行に応じないことが少なくありません。会社と株主とが対立している場面では、この途は現実的でないことがあります。また、株券を作成する費用と手間を会社が嫌うことも多くあります。
第二の途 株券を発行しない旨の定款の変更を求める
株主総会の特別決議により定款を変更し、株券を発行する旨の定めを廃止いたします。定款の変更をいたしますと、株券発行会社ではなくなりますので、以後は意思表示のみによって譲渡の効力が生じ、株主名簿の名義書換によって会社その他の第三者に対抗することができることになります。非上場の会社にとっては、そもそも株券を発行する必要性が乏しいことがほとんどですので、実務上はこの途を採ることが多くあります。
いずれの途も採れない場合 譲渡人と譲受人がいずれも会社の支配権を有していない少数株主である場合には、株券の発行も定款の変更も実現することができないことがあります。この場合には、株式を第三者に譲渡することを断念し、会社又は指定買取人に買い取らせる方法(会社法第138条第1号ハ、第140条第1項)に切り替えることを検討いたします。売買価格について協議が調わないときは、会社法第141条第1項の通知があった日から20日以内に、裁判所に対し売買価格の決定の申立てをすることができます(会社法第144条第2項)。この20日は極めて短いため、通知を受け取った日を必ず記録してください。
期限 起算点と満了日を確かめてください
株式譲渡契約それ自体には法定の期限はありませんが、譲渡制限株式の承認手続には、次の期間の定めがあります。いずれも起算点を誤ると取り返しがつきません。
- 2週間 会社が、承認をするか否かの請求の日から2週間(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)以内に会社法第139条第2項の通知をしなかったときは、承認をする旨の決定をしたものとみなされます(会社法第145条第1号)。起算点は請求の日、満了日はその2週間後です。会社と譲渡等承認請求者との合意により別段の定めをしたときは、この限りではありません(同条柱書ただし書)。
- 40日 会社が、第139条第2項の通知の日から40日(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)以内に第141条第1項の買取りの通知をしなかったときも、承認をしたものとみなされます(会社法第145条第2号)。
- 10日 指定買取人が買い取る場合には、第139条第2項の通知の日から10日(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)以内に第142条第1項の通知をしなければなりません(会社法第145条第2号括弧書)。
- 20日 売買価格の決定の申立ては、第141条第1項の通知があった日から20日以内です(会社法第144条第2項)。この期間内に申立てをしないときは、一株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額が売買価格となります(同条第5項)。
- 1週間 対象株式が株券発行会社の株式である場合、供託を証する書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、交付を受けた日から1週間以内に株券を供託しなければなりません(会社法第141条第3項)。これを怠りますと、株券発行会社は売買契約を解除することができます(同条第4項)。
配達証明付内容証明郵便によるべきでしょうか
株式譲渡契約書それ自体は、当事者の間で取り交わす書面ですので、内容証明郵便によるべきものではありません。持参のうえ、双方が同席して署名押印を行い、各自が原本1通を保持するのが原則です。
これに対し、会社に対して差し出す株式譲渡承認請求書及び名義書換請求書は、配達証明付内容証明郵便によるべきです。理由は次の二つです。
- 会社法第145条第1号の2週間の起算点が請求の日であるため いつ請求が到達したかを立証することができなければ、承認をしたものとみなされる旨を主張することができません。
- 会社が「そのような書面は受け取っていない」と述べることを封ずるため 非上場の会社との紛争において、実際にしばしば見られる対応です。
なお、株券の交付を受けた場合には、株券の番号を記載した受領書を作成し、双方が保持してください。後日、株券の交付の有無が争われることを防ぐためです。
会社の典型的な対応と、それへの備え
対応1 承認するか否かを通知しないまま放置する
請求の日から2週間以内に通知がなければ、承認をしたものとみなされます(会社法第145条第1号)。備え 請求書の到達日を配達証明により確定させ、2週間の満了日を記録しておきます。満了後は、承認があったものとして名義書換を請求いたします。
対応2 「株主名簿にその方の記載がない」として取り合わない
備え 株主名簿の閲覧謄写を請求いたします(会社法第125条第2項)。会社は、同条第3項各号に該当する場合を除き、これを拒むことができません。あわせて、法人税確定申告書別表二、株主総会議事録、配当の支払の記録、払込みの記録等を収集いたします。
対応3 譲渡人に働きかけて、名義書換への協力を撤回させる
備え 契約締結と同時に署名押印済みの名義書換請求書を預かっておきます。既に協力を拒まれている場合には、譲渡人に対する訴えを提起し、確定判決を得て単独請求(会社法施行規則第22条第1項第1号)に進みます。
対応4 承認をしない旨を通知し、著しく低い価格を提示する
備え 第141条第1項の通知の日を確認し、20日以内に売買価格の決定の申立てを行います(会社法第144条第2項)。裁判所は、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮して価格を決定いたします(同条第3項)。
【背景】非上場株式の評価の枠組みが見直されつつあります
国税庁は令和8年(2026年)4月20日から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催し、昭和39年(1964年)公表の財産評価基本通達の抜本的な見直しを検討しています。第1回会議の資料によりますと、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の26%から27%程度にとどまり、類似業種比準価額が純資産価額の0.5倍未満である会社が77.6%に及びます。第5回会議(令和8年8月20日)の資料では、類似業種比準方式を存置することは困難ではないかとされ、会社規模による区分を廃止してインカムアプローチによる評価を主軸とすべきとの方向性が示されました。内容も時期も確定したものではありません。また、これは税法上の評価の見直しであって、会社法上の売買価格を定めるものではありません。もっとも、価格の交渉において税務上の評価額が持ち出されることは少なくありませんので、その前提が揺らいでいることは知っておいて損はありません。
よくあるご質問
収入印紙は必要でしょうか
株式譲渡契約書は、印紙税法上の課税文書には当たらないと解されていますので、収入印紙の貼付は不要です。ただし、契約書の中に金銭の受領を証する文言を含めた場合には、金銭の受取書として課税されることがありますので、代金の授受については別途領収書を作成するのが安全です。
契約書は2通作らなければなりませんか
当事者の数だけ作成し、各自が原本を保持するのが原則です。1通のみを作成して一方が保持し、他方が写しを持つという方法も可能ですが、後日、条項の改変が疑われる余地を残しますので、お勧めいたしません。
株式譲渡承認請求は、譲渡人と譲受人のどちらが行うのですか
いずれからも行うことができます。譲渡しようとする株主から行う場合が会社法第136条、既に取得した者から行う場合が会社法第137条第1項です。後者の場合には、原則として株主名簿上の株主と共同して行わなければなりません(会社法第137条第2項)。
会社が承認をしてくれた場合、名義書換は自動的にされますか
いいえ、されません。承認と名義書換とは別の手続です。承認を得た後、改めて名義書換の請求(会社法第133条第1項)をしなければなりません。各欄の書き方は株主名簿名義書換請求書の書き方 各欄の記載例とフォーマットを、会社が応じない場合の対応は株主名簿の名義書換請求とは 手続の全体像と会社が応じない場合の対応をご覧ください。
ひな型をそのまま使ってもよいでしょうか
本ページのフォーマットは、当事者の一方に特に有利な内容とはしていません。もっとも、実際の案件では、株券の有無、譲渡制限の有無、名義株の存否、簿外債務の有無によって、必要な条項がまったく異なってまいります。ひな型は出発点であって、到達点ではありません。
おわりに
非上場株式の譲渡は、契約書の作成、会社の承認、株券の交付、株主名簿の名義書換という四つの段階を経て、初めて完結いたします。どれか一つが欠けますと、代金を支払ったのに株主になれない、あるいは株式を渡したのに代金を回収できないという事態が生じます。契約書の一行一行は、そのいずれかの段階で誰かが困らないようにするために置かれています。
弁護士法人M&A総合法律事務所は、非上場株式の譲渡について、契約書の作成及び検討、会社に対する株式譲渡承認請求、名義書換の請求、価格の交渉並びに裁判所への申立てを取り扱ってまいりました。お手元に契約書の案がおありでしたら、そのままお持ちください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
非上場株式譲渡契約書に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)
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出典
- 会社法(第121条、第125条、第128条、第130条、第131条、第133条、第136条、第137条、第138条、第139条、第140条、第141条、第142条、第144条、第145条、第214条、第215条)
- 会社法施行規則(第22条第1項)
- 最高裁判所昭和41年7月28日第一小法廷判決(会社の過失により名義書換がされなかった場合における株主の取扱い)
- 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)」資料(令和8年4月20日)
- 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)」資料(令和8年8月20日)
具体的なご相談をお考えの株主の皆様へ
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