遺産の中に「会社の株式(非上場株式)」があり、相続する際の手続きの流れがわからない。非上場株式を相続することになって「発生したトラブルの解消方法がわからない」という方へ。

非上場株式は市場価格がなく、評価の方法や、譲渡制限会社における譲渡承認・株主名簿の名義書換といった独特のルールがあります。相続税の申告期限は原則10か月。期限に追われる前に、全体像をつかむことが何より大切です。

なお、非上場株式も預貯金や不動産と同じく相続の対象です。譲渡制限が付いた株式であっても、相続は売買のような「譲渡」ではなく権利を引き継ぐ「承継」なので、相続それ自体に会社の承認が必要とは限りません。

ただし、相続人が株主として配当を受け取ったり議決権を行使したりするには、株主名簿の名義書換が欠かせません。

本記事では、まず非上場株式の相続で押さえておきたい5つの前提を確認したうえで、メリットと注意点、手続きの流れ、評価の考え方、起きやすいトラブル、現金化の選択肢まで、専門用語をかみ砕いて順に解説します。

非上場株式を相続するときに押さえる5つの前提

非上場株式の相続は、上場株式や預貯金の相続とは異なる点がいくつかあります。手続きや判断の前提となる5つのポイントを先に押さえておくと、その後の章の理解が進みやすくなります。

前提1.相続税の申告期限は原則10か月

被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から、原則10か月以内に相続税の申告と納付を行います。非上場株式は評価に時間がかかりやすく、遺産分割協議や名義書換も並行して進める必要があるため、期限から逆算した動き方が求められます。

前提2.相続による株式の取得は「譲渡」ではなく「承継」

非上場会社の多くは譲渡制限を設けていますが、相続による株式の取得は売買による「譲渡」ではなく、権利を引き継ぐ「承継」です。原則として会社の譲渡承認は不要で、相続発生と同時に株式は相続人へ移転します。

前提3.株主名簿の名義書換が権利行使の前提

相続で株式を引き継いだとしても、株主名簿の記載が被相続人のままでは、会社に対して株主としての権利を主張できません。配当の受領議決権の行使、その後の売却交渉のいずれにも影響するため、早めの名義書換が必要になります。

前提4.相続税評価額と売買価額は別物

相続税の計算で用いる「相続税評価額」は、税務上の計算基準です。実際に株式を売却する際の取引価額とは一致しないことが多く、価額の前提が異なる点を理解しておく必要があります。

前提5.定款の規定で相続後の選択肢が変わる

定款に「相続人等に対する売渡請求」(会社法第174条)の定めがある場合、会社が相続人に対して株式の売渡しを請求できることがあります。保有を続けるのか、売却するのか、放棄するのかの判断にも影響するため、相続発生時点で定款の確認が欠かせません。

5つの前提のいずれかに不安がある場合、相続発生直後の段階での対応が、その後の進めやすさを大きく左右します。

当事務所では非上場株式の相続に関するご相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

非上場株式の相続におけるメリットとデメリット(注意点)

非上場株式の相続には、将来に関わるプラス面と、段取り次第で負担が増え得る注意点が存在します。まず得られるメリットを把握しつつ、つまずきやすいポイントを事前に押さえ、期限(相続税は原則10か月)から逆算して進めるための考え方をまとめます。

非上場株式を相続するメリット

まずは非上場株式を相続する際のプラス面のメリットを紹介します。

1.経営に関与できる可能性がある

株式を相続すると、株主として株主総会に出席し、議決権を行使できる場合があります。議決権は、取締役の選任や定款変更など会社の重要事項に影響するため、持株が一定割合以上になると意思決定に関わる余地が広がります。

また、一定の持株割合を満たすと、会計帳簿など会社の情報開示を求められる場面もあります。もっとも、議決権が付かない種類株式などでは、同じ「株式」でも権利内容が異なることがあります。

2.配当を受け取れる場合がある

会社に利益が出ていて配当方針が整っていれば、配当金を得られます。非上場株式は配当方針が会社ごとに大きく異なるため、直近の実績と今後の見通しを確認しておくと安心です。相続後の生活設計納税資金の一部に充当しやすいのもメリットです。

3.株式を売却して現金化できる

非上場株式は会社(自己株式取得)既存株主第三者への売却(譲渡)により現金化できる可能性があります。遺産分割で株式を集中させ、他の相続人へは代償金で調整する設計も可能です。納税資金の確保という観点でも重要な選択肢です。

非上場株式を相続するデメリット(注意点)

次に非上場株式を相続する際のマイナス面の注意点を紹介します。

1.相続税の評価が複雑で納税資金が不足しやすい

最大のリスクは、「換金性が低いにもかかわらず、評価額(税金)だけが高くなる」という点です。相続税は超過累進課税で、税率は10%から55%に及びます。内部留保が厚い会社では、評価額が想定以上に高額となり、高い税率が適用される可能性があります。

また、評価方式(類似業種比準価額方式・純資産価額方式等)により評価額が大きく変動します。評価額は高いが現金がないという資金ミスマッチが生じやすい点に注意が必要です。

2.譲渡制限があり非上場株式の売却ハードルが高い

多くの非上場会社では会社の承認が必要です。譲渡承認や価額調整に時間を要し、相続税の申告期限と衝突することがあります。

3.少数株主になると情報が乏しく影響力も小さい

持株が分散すると情報が得にくく意思決定への関与も限定的になります。

4.株主名簿の名義書換をしないと権利行使や売却が滞る

相続により株式を取得しても、会社に対して株主であることを主張するには、株主名簿への記載が必要です。名義書換が済まないと、配当金の受領や議決権の行使が止まり、売却の手続(譲渡承認の請求など)も進みにくくなります。

5.会社や定款のルールで相続後の選択肢が左右される

会社法第174条(売渡し請求)の有無により、保有・売却の選択肢が制限される可能性があります。

相続した非上場株式を売却したい場合はご相談ください

相続した非上場株式の売却や、会社との買取交渉、価格の合意形成についてのご相談は、当事務所までお寄せください。

非上場株式の相続手続きの流れ

非上場株式の相続は、相続人と相続財産の確定相続する株式の評価遺産分割方法の合意株主名簿の名義書換相続税の申告・納付という順番で進みます。

途中で「売却や買取の検討」「延納・物納などの納税手段の選択」が並走する点が、現金や上場株の相続とは違うところです。申告期限は原則10か月のため、株式評価株主名簿の名義書換遺産分割協議同時並行で動かす段取りが重要です。

非上場株式の相続では、ステップを一つずつ順番にこなしていくのではなく、複数のタスクを並行で動かす必要があります。10か月という期限を意識し、おおよその目安として、次のような時間配分で動くと進めやすくなります。

経過時間の目安 主に取り組む内容
相続発生〜3か月 相続人・相続財産の確認/戸籍収集/定款・株主名簿の照会/相続放棄の判断(3か月以内)
3か月〜6か月 株式評価の依頼/会社や株主名簿管理人への問合せ/遺産分割協議の開始
6か月〜9か月 遺産分割協議書の作成/株主名簿の名義書換/納税資金の手当て(売却・借入・延納検討)
9か月〜10か月 相続税申告書の作成・提出/納付(延納や物納が必要な場合は申請)

会社側の対応や評価の確定に想定以上の時間がかかることもあるため、相続発生から早い段階で全体の見通しを持ち、専門家への相談を並行して進めることが望まれます。

「会社からの回答が遅い」「評価額の前提で揉めそう」「分割協議が進まない」といった状況では、想定以上に時間を取られることがあります。スケジュール面で不安がある段階から、当事務所までお声がけいただければ、進め方のご提案から対応いたします。

項目 概要 ポイント・注意点
1.相続人と財産の確認 戸籍で相続人を確定。
被相続人の会社名・持株数・株券の有無を確認し、
株主名簿定款の条項をチェック。
配当通知・総会招集通知も手掛かり
・定款に「譲渡制限」「売渡請求」条項があるかは要確認
2.非上場株式の評価算定 会社規模(大・中・小)や株主の立場に応じ、
類似業種比準価額方式純資産価額方式併用方式配当還元方式で評価。
・株式を評価するための情報が必要
・評価額は遺産分割や納税計画の出発点
3.遺産分割協議 相続人間で株式の帰属を決定。
株式集中+代償金売却による換価分割などを検討。
・株式は細かく分けにくい財産
・合意の根拠として評価額と将来計画を共有
4.株主名簿の名義書換 株主名簿に相続人を記載して初めて権利を主張可能
会社や株主名簿管理人に必要書類を提出。
対抗要件になるため早めに着手
・会社所定の書式に加え、戸籍/遺産分割協議書/印鑑証明書/株券の有無等も確認
5.相続税の申告・納付 相続開始を知った日の翌日から10か月以内
申告・納付を行う。
・申告要否は基礎控除で確認
・納税資金が不足すれば延納・物納を検討
・株式の評価と並行して資金手当てを進める

1.相続人と相続財産の確認

はじめに、相続人の確定株式の有無・内容の確認を行います。戸籍一式で法定相続人を確定し、被相続人が保有していた会社名持株数株券の有無株主名簿の記載、定款の該当条項(譲渡制限相続人等に対する売渡請求など)を確認します。会社から届いている配当金計算書(配当金支払通知書)株主総会招集通知議決権行使書面なども手がかりになります。

相続財産の把握は、この後の評価方式の選択に直結します。会社規模(大会社・中会社・小会社)と、取得者が同族株主か少数株主かで評価方法が変わるためです。評価に必要な資料として、直近3期程度の決算書、勘定科目明細、固定資産台帳、借入金の明細、配当の履歴などを揃えておくと、専門家への相談や会社への照会が進めやすくなります。

戸籍収集と株式の存在確認

戸籍で相続人を確定しつつ、会社名や持株数を推定します。株券や過去の配当金計算書、通知類が残っていれば、会社や株主名簿管理人に照会し、名義や持株数をあらためて確認します。

上場株式と調べ方が違う点に注意

上場株式であれば、証券会社の残高報告書を確認したり、証券保管振替機構(株式を電子的に管理する機関)へ照会したりして、保有状況を把握できることがあります。一方で、非上場株式は証券会社や証券保管振替機構で一括管理されていないため、同じ手順では辿り着けません。

手がかりは、株券、株主総会招集通知、配当金計算書、議決権行使書面のほか、確定申告書の控え(配当所得の記載など)です。株券が見当たらない場合でも、株券を発行しない会社もあるので、「株券がない=株がない」とは限りません。会社名が分かったら、株主名簿の管理先(会社または株主名簿管理人)に連絡し、名義と持株数、株券発行の有無を確認します。

株券・定款・株主名簿などの初期収集

定款は譲渡制限相続人等に対する売渡請求(会社法第174条)の有無を確認する重要書類です。後者の条項がある会社では、会社が相続を知った日から1年以内に株主総会の特別決議等を経て、相続人に対して売渡しを請求できる局面があります。定款次第で相続後の選択肢が変わるため、早期の精査が必要です。

2.相続する非上場株式の評価算定と方針決定

株式の評価額は、その会社が「大会社」「中会社」「小会社」のいずれに該当するか、また取得者が同族株主か否かによって適用される計算式が異なります。計算式が異なれば、算出される評価額、ひいては相続税額も変動します。

一般的に、類似業種比準価額方式が適用される「大会社」の方が評価額は抑えられやすく、会社の純資産をベースにする純資産価額方式が適用される「小会社」の方が評価額が高くなる傾向にあります。

会社規模(大・中・小)の判定基準

会社規模は、単なる資本金の額ではなく、以下の3つの要素を組み合わせて判定されます。

  1. 従業員数
  2. 総資産価額(帳簿価額)
  3. 直前期末以前1年間の取引金額(売上高)

まず、「従業員数」を確認します。従業員数が70名以上の会社は、資産や売上高に関わらず原則として「大会社」に分類されます。

従業員数が70名未満の場合は、「総資産価額」と「取引金額(売上高)」の規模に応じて、大会社・中会社・小会社の区分を行います。

大会社

取引金額や総資産価額が著しく大きい場合は大会社として扱われ、原則として「類似業種比準価額方式」で評価します。

中会社

中会社は「併用方式(類似業種比準価額方式と純資産価額方式の折衷)」を用います。会社規模が大きいほど類似業種比準価額方式の割合を高く設定でき、評価額を抑えやすくなります。

小会社

原則として「純資産価額方式」で評価します。納税者の選択により併用方式を使用できる場合もあります。

取得者の立場による区分

株式を取得する相続人が「同族株主」か「同族株主以外の株主(少数株主)」かを確認します。

同族株主(経営支配層)

原則的評価方式(類似業種比準価額方式・純資産価額方式等)で評価します。

同族株主以外の株主(少数株主)

経営権を持たない少数株主の場合、配当に着目した配当還元方式が認められる局面があります。

必要資料と準備手順

直近3期の決算書、勘定科目明細、固定資産台帳、借入契約、配当実績、事業概要、主要契約などを時系列でまとめます。非営業資産含み益・含み損の洗い替え、一時的な損益の補正、配当履歴の反映は株式評価額を左右しやすい論点です。評価額の見立てを早めに得られれば、遺産分割や納税資金計画の方向付けが容易になります。

株式評価結果を踏まえた遺産分割の考え方

株式評価額が高い場合は、株式を一人がまとめて取得し他の相続人に代償金を支払う方法や、株式の売却で現金化して配分する換価分割などを検討します。複数人で共有すると意思決定や将来の株式の売却が難しくなりやすいため、誰が保有し続けるかを先に決め、その前提でほかの資産とバランスを取ると遺産分割協議がまとまりやすくなります。

3.遺産分割協議の進め方

遺産分割協議では、株式評価額の前提と根拠を相続人間で共有することがトラブル回避の第一歩です。客観性を高めたい場合は、税理士の評価や第三者評価を用いて「相続税評価」と「売買の目線金額」を切り分けて検討します。相続税評価は税務上の基準であり、株式の譲渡価額(取引価額)と一致しないことがあるため、価格と条件(支払時期・分割払い等)を組み合わせることが有効です。

等価分割の難しさと代償金・換価分割

株式は細かい等分が適しにくい財産です。後継者に集中させて代償金で均衡をとるか、一定割合を売却して換価分割にするか、家計の資金ニーズと会社の安定経営を両立できる線を探ります。

争いを避けるための合意形成

株式評価の根拠、想定する出口(保有・売却・買取請求の可否)、納税方法(現金・延納・物納)を一枚の資料にまとめ、期限(10か月)から逆算したスケジュール表を共有すると合意が前に進みます。

4.株主名簿の名義書換

相続で株式を取得したら、株主名簿の名義書換(名義変更)を行います。相続は一般承継のため、譲渡承認は不要ですが、名義書換が済まないと配当の受領議決権の行使に支障が出ます。会社(または株主名簿管理人)が定める様式に従い、戸籍関係書類・遺産分割協議書・相続関係説明図などをそろえて申請します。

名義書換で求められやすい添付書類(一般例)

名義書換の書式・添付書類は会社ごとに異なりますが、一般的には次のような資料を求められます。

株券を発行している会社かどうか、遺言で承継するのか遺産分割協議によるのかでも必要書類が変わるため、提出前に会社または株主名簿管理人へ確認してください。

・会社所定の名義書換請求書(株式名義書換請求書など)
・被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)
・相続人全員の戸籍謄本(相続関係が確認できる範囲)
・遺言書(ある場合)または遺産分割協議書(相続人全員の署名押印)
・相続人全員の印鑑証明書(協議書や請求書に実印押印がある場合)
・相続関係説明図
・株券(株券発行会社で、株券を保管している場合)
・名義書換を受ける相続人の本人確認書類(運転免許証など)

会社の承認手続と注意点

第三者へ譲渡する場合は、譲渡制限会社では会社の承認が必要になるのが通常です(承認機関や手順は定款で規定)。一方、定款に相続人等に対する売渡請求(会社法第174条)の条項がある会社では、相続発生後、所定の手続・決議を経て売渡請求が行われることがあります。定款の有無承認フロー相続人等に対する売渡請求条項の有無を名義書換の前後で確認してください。

株主名簿の名義書換が遅れた場合のリスク

名義が旧株主のままだと、配当や議決権の帰属が不明確になり、株式の譲渡手続にも支障が出ます。会社側が株主名簿を基準に権利者を判断する以上、株主名簿の名義書換は早めに着手するのが安全です。

5.非上場株式の相続税の申告・納付

相続税の申告・納付期限は原則10か月。評価や遺産分割が長引きそうでも、期限から逆算して必要書類の整備と納税手段の検討を進めます。現金納付が困難な場合は、延納(許可制・利子税・担保の提供が原則)や、要件を満たすときの物納を検討します。制度の利用には申請期限があるため、評価の見立てが出た段階で税理士と並行検討してください。

相続税の申告が必要かどうかの判断(基礎控除)

相続税は、相続した財産の評価額の合計が一定額を超える場合に申告・納付が必要になります。目安となるのが基礎控除で、金額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。

課税価格が基礎控除以下なら、原則として相続税申告は不要です。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、申告を前提とする制度もあるため、非上場株式の評価見込みが出た段階で申告要否を確認してください。

10か月以内に遺産分割がまとまらない場合の対応

遺産分割協議が申告期限までに整わない場合でも、相続税の申告自体は期限内に行う必要があります。

分割未了のまま申告する際は、いったん法定相続分で取得したものとして計算する形が一般的です。未分割だと、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、遺産分割を条件とする制度が使えず、税額が高く出ることがあります。この場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告し、後日、分割が成立した時点で更正の請求を行い、特例を反映させて税額の調整(還付)を受ける流れがあります。

後継者が株式を承継する場合の納税猶予(法人版事業承継税制)

制度の概要

非上場会社の株式を、会社の経営を引き継ぐ後継者が相続する場合は、一定の要件を満たすことで、その株式に係る相続税の納税を猶予し、後継者の死亡など所定の事由で猶予税額が免除される制度があります(法人版事業承継税制)。株式の評価額が大きく、納税資金が不足しやすい場面では、検討する価値のある制度です。

「一般措置」と「特例措置」の違い

法人版事業承継税制には2種類の制度があり、特例措置のほうが優遇の幅が広くなっています。

比較項目 一般措置 特例措置
対象株式数 総株式数の3分の2まで 制限なし(全株式が対象)
納税猶予割合 相続税の80% 100%
雇用確保要件 5年平均8割を維持 8割未達でも理由報告で猶予継続可能
後継者の人数 1人 最大3人
適用期限 なし 令和9年(2027年)12月31日までの相続・贈与
事前計画の提出 不要 都道府県知事への「特例承継計画」の提出が必要(提出期限:令和9年〔2027年〕9月30日)

特例承継計画の提出期限は、令和8年度税制改正により、令和8年(2026年)3月31日から令和9年(2027年)9月30日まで延長されました。一方、納税猶予の対象となる相続・贈与の適用期限は令和9年(2027年)12月31日のままで、現時点では延長されない見込みです(中小企業庁の案内による)。提出期限と承継の期限がずれているため、適用を検討する場合は早めの準備が望まれます。

令和7年(2025年)1月以後の改正で役員就任要件が緩和されました

令和7年(2025年)1月1日以後の贈与については、後継者の役員就任要件が緩和されました。

  • 改正前:贈与の日まで引き続き3年以上にわたり会社の役員であること
  • 改正後:贈与の直前において会社の役員であること

承継直前のタイミングで体制を整えやすくなった点が、近年の制度改正の特徴です。なお、相続の場合の後継者要件は、相続開始の直前において役員であることが求められるもので、贈与のような3年要件はもともと設けられていません。

適用にあたっての注意点

制度を利用するには、複数の要件と手続を満たし続ける必要があります。

  • 対象となる会社や株式、後継者の立場に制限がある
  • 経営承継円滑化法に基づく認定の取得が必要
  • 相続税の申告期限内に所定の手続を済ませる
  • 承継後の株式の保有や経営の継続が求められる
  • 定期的な報告書の提出が必要

要件から外れると猶予が取り消され、利子税まで含めて納付を求められることがあるため、相続が発生した段階で、株式評価や遺産分割と並行して適用可能性を確認してください。

後継者ではない相続人は対象外です

後継者ではない相続人が単に株式を保有するだけのケースでは、通常は対象になりません。後継者に株式を集中させるか、売却して換価するかも含めて方針を決めます。

法人版事業承継税制は要件が細かく、適用後の継続要件もあるため、相続発生時の判断が重要になります。後継者として承継するケースで、適用可否や手続きの流れに不安がある場合は、税理士と連携対応が可能な当事務所までご相談ください。

※本制度の適用には専門的な判断と継続的な要件管理が必要です。適用可否や具体的な手続きについては、必ず税理士などの専門家にご相談ください。

期限・必要書類・延納や物納の検討

相続税の延納は、相続税額が10万円超で金銭納付が困難、担保の提供、期限内の申請などの要件を満たす必要があります。物納は管理処分可能な財産に限定され、順位付けや不適格財産の概念があります。いずれも許可制で不備があると却下されうるため、早めの準備が必要です。

納税資金の確保(配当・売却・借入)

納税資金は、配当の活用会社・既存株主・第三者への株式の売却金融機関からの借入などを組み合わせて確保します。非上場株式は流動性が低く譲渡承認手続も絡むため、名義書換と並行して会社の意向や売却ルートの可能性を早期に確認しておくと、期限内納付の見通しが立ちやすくなります。

※本サイトの情報は一般的な内容です。税金に関する詳細なご相談や正確な判断が必要な場合は、税理士などの専門家にご相談ください。

相続税の申告における非上場株式の評価方法

非上場株式には市場価格がないため、相続税の「評価額」は会社の姿と取得する人の立場で決まります。評価額は相続した非上場株式の納税の出発点になるので、まずは「自分のケースはどの方式になりそうか」を掴むことが大切です。

【ポイント】会社規模と株主の立場で評価方式が変わる

非上場株式の評価は、おおまかに次のルールで考えます。

  • 大会社事業の収益力」を重視(類似業種比準価額方式)
  • 小会社持っている資産の中身」を重視(純資産価額方式)
  • 中会社は両方のバランス(併用方式[類似業種比準価額方式+純資産価額方式])

同族株主ではない少数株主が相続で取得した場合は、配当実績をもとにした配当還元方式が使われることがあります。
まずは「会社規模」と「同族か少数か」を確認すると、どの方式になりそうか見通せます。

非上場株式の主な評価方式の概要

非上場株式の主な評価方法について紹介します。

類似業種比準価額方式

同じ業界の上場企業データなどを参照し、配当・利益・純資産から相対的に評価する考え方です。会社の業績や配当方針の影響を受けやすく、規模の大きい会社で採用されやすいのが特徴です。

純資産価額方式

会社が保有する資産と負債を洗い出し、資産の中身で評価します。遊休地や多額の現預金など、資産の厚みが評価額に直結します。規模の小さい会社で使われることが多い方式です。

併用方式(類似業種比準価額方式+純資産価額方式)

事業の収益力(類似業種比準価額方式)と資産の厚み(純資産価額方式)の両面を織り込みます。中くらいの会社が対象で、会社の実態をバランスよく反映するイメージです。

配当還元方式(少数株主向け)

同族以外の少数株主が取得した株式に使われる特例的な方式です。過去の配当を基準に計算するため、事業の将来性よりも配当の実績が重視されます。無配でも一定の最低値が出るため、評価額がゼロになるわけではない点には注意が必要です。

どの評価方式になるかを見極める3つのステップ

自分のケースでどの評価方式が使われるかは、次の3つのステップで見当をつけられます。順番に確認すると、想定される評価額の方向性がつかみやすくなります。

  1. 株主の立場を確認する(同族株主か、それ以外の少数株主か)
  2. 特定の評価会社に当たるかを確認する(資産構成などが特殊な会社か)
  3. 会社規模を判定する(大会社・中会社・小会社のどれか)

ステップ1では、議決権の保有割合が目安になります。同族関係者のグループで議決権のおおむね30%以上(過半数を持つグループがある場合はそのグループ)を保有すると同族株主とされ、原則的評価方式(類似業種比準価額方式・純資産価額方式)で評価するのが基本です。経営にほとんど関与しない少数株主であれば、配当還元方式が使える場合があります。

ステップ2では、資産構成などが特殊な「特定の評価会社」に当たるかを確認します。該当しない場合は、ステップ3の会社規模(大・中・小)の判定に進み、規模に応じた方式で評価額を算定します。

資産が多い会社などの「特定の評価会社」

会社の資産や状況が特殊な場合、通常の会社とは別の扱いになる「特定の評価会社」に当たることがあります。該当すると、原則として純資産価額方式を中心に評価され、一般的な方式より評価額が高くなりやすい点に注意が必要です。

  • 株式等保有特定会社:総資産に占める株式などの割合が高い会社
  • 土地保有特定会社:総資産に占める土地などの割合が高い会社
  • 比準要素数1・0の会社:配当・利益・純資産の比準要素が少ない会社
  • 開業後3年未満の会社・開業前や休業中の会社
  • 清算中の会社:清算で株主に分配される見込み額で評価

特定の評価会社に当たるかどうかは、決算書をもとにした判定が必要です。資産の中身によって評価額が大きく変わるため、早めに税理士へ確認しておくと見通しを立てやすくなります。

評価方式の違いによる評価額のイメージ

非上場株式の評価額は、選ばれる評価方式によって大きく変わります。同じ会社の株式でも、誰が相続するか、会社の規模がどうかによって、相続税額に数百万円から数千万円の差が生まれることもあります。具体的なイメージをつかむために、簡略化した3つのケースを見てみましょう。

ケースA:小会社の同族株主が相続する場合

従業員10名、純資産2億円の中小企業の株式を、創業者の長男(同族株主・後継者)が100%相続するケースです。小会社・同族株主に該当するため、原則として純資産価額方式での評価となります。純資産価額方式では、会社の資産・負債を相続税評価額に置き直し、含み益に対する法人税等相当額を控除して株式評価額が算定されます。純資産が大きいほど評価額が高くなりやすく、相続税の課税対象も大きくなる傾向があります。

ケースB:中会社の同族株主が相続する場合

従業員30名、純資産3億円、年商10億円の会社の株式を、二代目社長の娘が相続するケースです。中会社の判定により、類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式が適用されます。類似業種比準価額方式の組入れ割合が高くなるほど、純資産価額方式単独よりも評価額が抑えられる傾向があります。

ケースC:少数株主が相続する場合

従業員5名、純資産5億円の同族会社の株式5%を、経営に関与していない遠縁の親族が相続するケースです。同族株主以外の少数株主に該当するため、配当還元方式が適用されます。過去の配当実績が低ければ、純資産価額方式での評価と比べて、評価額が大幅に下がる場合があります。

このように、会社規模株主の立場の組合せによって評価額は大きく変動します。自分のケースでどの方式が適用されるかは、税理士に依頼して評価額の見立てを早めに得ることが、その後の遺産分割協議や納税資金の手当てにも影響します。

※上記はあくまでイメージです。具体的な評価額については、必ず税理士などの専門家にご相談ください。

相続税評価額と売買の価額(取引価額)は別物

ここまでの評価方式は、相続税を計算するための価額です。実際に株式を売買するときの価額(取引価額)は、これとは別の考え方で決まります。会社の将来性や支配権の有無なども踏まえ、買い手と売り手の合意で決まるのが基本です。

売買の価額を見るときの3つの考え方

売買を前提に株式の価額を見るときは、大きく次の3つの考え方があります。実際にはこれらを単独または組み合わせて用います。

  • 収益方式:会社が将来生み出す利益や資金の流れに着目する(DCF法など)
  • 比準方式:似た会社や取引事例と比べて価額を求める
  • 純資産方式:会社の資産から負債を差し引いた正味の財産に着目する

相続税評価額をそのまま売買価額と考えると、判断を誤ることがあります。会社から相続税評価額をもとにした買取価格を提示された場合でも、それが売買として適正な価額とは限りません。売却を視野に入れるなら、税務上の評価額と取引価額を分けて捉えておくと役立ちます。

よくある勘違いと押さえどころ

  • 相続税評価額=譲渡価額(取引価額)ではありません。 相続税評価額は“税務上のものさし”で、実際の売買では将来性や支配権の有無なども加味されます。
  • 評価方式は選べません。 会社の大きさや株主の立場など、ルールに沿って決まります。
  • 無配でも評価はゼロになりません。 配当還元方式には最低の考え方があり、一定の評価は出ます。
  • 資料の精度が結果を左右します。 決算書や配当履歴などの基本資料が揃っているかが、評価額の誤差を小さくします。

評価方法の見直しに関する最新動向

令和6年(2024年)11月の会計検査院の報告書において、非上場株式の評価方法に関する論点が取り上げられました。直ちに制度が変更されるものではありませんが、今後の税制改正の議論で評価方法が見直される可能性があります。

評価方法が変更されれば相続税評価額や納税額にも影響するため、非上場株式の保有者や事業承継を控えた経営者は、最新の動向に注意しておく必要があります。

※税制改正の動向は、必ず最新の国税庁・中小企業庁の公表資料および税理士などの専門家にご確認ください。

※本サイトの情報は一般的な内容です。税金に関する詳細なご相談や正確な判断が必要な場合は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。

非上場株式を現金化したい場合や相続したくない場合の対応方法

納税資金が足りない
相続した非上場株式が塩漬けになりそう
という不安を減らすために、現実的に取り得る3つの方法を紹介します。
相続税の申告・納付期限(原則10か月)を前提に、どの手段が現実的かを先に決めることが重要です。

方法 概要 メリット 注意点
1.遺産分割で他の相続人に引き継ぐ 自分は株式を持たず
後継者や特定の相続人に集中させる方法です。
株式を「持つ人」を先に決め、他財産で調整します。
経営の安定を優先できる
株式を一人に集約しやすい
代償金の資金手当が必要
共有にすると意思決定が滞りやすい
2.譲渡(売却)して現金化 会社・既存株主・第三者の順で買い手を検討し、
価格と支払条件の合意を目指す方法です。
譲渡承認手続が前提になることが多いため、先に手続確認を行います。
納税資金・生活資金を確保できる
塩漬け株式を回避できる
承認手続で時間がかかる可能性
相続税評価額と売却価額は一致しない
3.相続放棄 株式を含む相続財産全体承継しない選択肢です。
株式だけを選んで放棄することはできません
負債やリスクを回避したい場合に有効
承継メリットが薄いときに選択肢となる
一度放棄するとやり直し困難
他の財産も承継できなくなる

1.遺産分割協議により他の相続人に相続してもらう方法

非上場株式を自分が持たないという選択肢です。
後継者が決まっている家庭や、現金・他財産で調整しやすい場合に向いています。
「株式を誰に集中させるか」だけ先に固めると、協議が進みやすくなります。

はじめに評価の考え方(類似業種比準価額方式・純資産価額方式・配当還元方式のどれに近いか)と
おおよその金額感を家族で共有し、
誰が株式を引き継ぐのが会社や家計に無理がないかを話し合います。

株式は等分しづらい財産のため、
代償金(現金等での調整)換価分割(売却して現金で分ける)が、相続人間で取りうる調整手段となります。
代償金の原資(預金・保険・借入等)まで含めて設計します。

遺産分割協議がまとまったら遺産分割協議書に落とし込み、
株主名簿の名義書換まで一気通貫で進めましょう。

名義が変わらない限り
配当の受領議決権行使売却検討はいずれも進みにくくなります。

株式の引き継ぎ先の決定、代償金の手当て、名義書換の時期調整は、相続人間の関係性や会社との折衝も影響します。話し合いが進まないと感じた段階で、弁護士などへ相談する選択肢もあります。

2.非上場株式を譲渡(売却)して現金化する方法

持ち続けるつもりはない」「納税や生活資金を確保したい」場合は、売却による現金化を検討します。
売却は「価格」だけでなく「支払条件」までセットで詰めることが、合意形成を進めるうえで重要になります。

買い手は
会社(自己株式の取得)既存株主第三者
3ルートです。

どのルートでも「現金の出どころ」を先に確認します。

多くの場合、第三者への譲渡には会社の承認手続が必要です。まずは定款で譲渡制限の有無を確認し、承認機関(取締役会・株主総会など)、必要書類、所要期間を把握します。期限が決まっている手続もあるため、相続税の申告期限(原則10か月)から逆算して、いつまでに何を揃えるかを先に決めておくと安心です。

譲渡制限株式の場合、第三者への譲渡が承認されないことがあります。会社が譲渡を不承認とするなら、会社が自社で買い取るか、会社が指定する者(指定買取人)が買い取るのが原則です。もっとも、会社の資金事情(分配可能額の範囲など)や社内の決議手続により、買い取りがすぐに進まないこともあります。

また、相続により株主になった人を会社が受け入れたくない場合、定款に「相続人等に対する売渡し請求」の定めが置かれていれば、会社が株式の売渡しを求めることがあります(会社法第174条)。請求には株主総会の特別決議が必要で、会社が相続を知った日から1年以内という期限もあります。価格が折り合わない場合は、裁判所の手続により価格が決まることもあります。

このため、売却を前提に動く場合でも、まずは定款と会社の意向を確認し、承認・買取の見込みとスケジュールを立ててから交渉に入ります。

相続税評価額=売却価額ではありません。
将来収益支配権配当方針を加味し、価格と支払条件をセットで調整することが合意への近道です。

売却を前提に動く場合、会社との承認手続きや価格交渉が長期化することは少なくありません。

売却・買取の手続きの流れは、非上場株式・少数株式の売却方法とその流れでもまとめています。会社が買取に応じない場合の株式買取請求権の使い方とあわせて、進め方に迷う段階で当事務所までお声がけください。

相続後3年10か月以内に発行会社へ譲渡すると税制の特例があります

通常の発行会社への譲渡には「みなし配当課税」がかかります

非上場株式を発行会社(自社)に譲渡した場合、通常は受け取る対価のうち資本金等の額を超える部分が「みなし配当」として総合課税の対象になります。総合課税では所得税の税率が最大45%となるため、住民税と合わせると税負担が重くなります。

相続から3年10か月以内であれば「みなし配当課税の特例」が使えます

相続または遺贈で取得した非上場株式を、相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始の日の翌日から3年10か月以内)に発行会社へ譲渡した場合、「みなし配当課税の特例」が適用されます。譲渡対価の全額が株式の譲渡所得として扱われ、分離課税で計算できる点が通常との大きな違いです。

区分 通常の譲渡 特例適用時(3年10か月以内)
課税方式 みなし配当部分は総合課税 全額が譲渡所得(分離課税)
税率の目安 所得税は最大45%の累進課税 約20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税の合計)
所得の区分 配当所得として扱われる 譲渡所得として扱われる

※実際の税率は、他の所得との合算や配当控除の適用などにより変動します。

「相続税の取得費加算の特例」も併用できます

相続税の取得費加算の特例」もあわせて適用できる場合があります。相続税のうち譲渡した株式に対応する部分の金額を、譲渡所得を計算する際の取得費に加算できる制度で、譲渡所得が圧縮されるため所得税の負担をさらに軽減できる場合があります。

特例を適用するための手続と注意点

特例の適用にあたっては、次の点に注意が必要です。

  • 譲渡日までに「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」を発行会社へ提出する
  • 発行会社は、譲り受けた日の属する年の翌年1月31日までに、所轄税務署長へ届出書を提出する必要がある
  • 期限を過ぎると特例は使えなくなる
  • 相続税の申告期限から逆算したスケジュールで動く

納税資金の確保のために自社株を売却する場合、この特例を使うか使わないかで手取りが大きく変わります。

発行会社との譲渡交渉や届出書の段取りも絡むため、税理士との連携を含めて対応経験のある専門家に早めにご相談されることをおすすめします。

3.相続放棄をする方法

相続全体を受け継がない選択肢です。株式だけを放棄することはできません。

預金・不動産等も含めて一体で判断する必要があります。

相続放棄は、相続開始を知った日から原則3か月以内に、家庭裁判所へ申述します。期限を過ぎると、原則として単純承認(相続を受け入れた扱い)となり、放棄できなくなる点に注意が必要です。

また、相続放棄を検討している段階で遺産を処分したり、預金を日常費用以外に使い込んだりすると、放棄が認められないことがあります。まずは財産と負債の全体像を確認し、期限内に判断できるよう準備します。

判断が難しい場合は限定承認も検討対象です。限定承認も原則3か月以内に申述が必要で、基本的に相続人全員で手続きを進めます。財産より負債が多い可能性があるものの、全てを放棄するのは避けたい場合に選択肢になります。

相続放棄や限定承認は期限内の判断が求められる手続きですが、財産・負債の調査や非上場株式の評価とあわせて検討すべき点が多くあります。判断材料が揃わないまま期限を迎えそうな場合は、弁護士などへ早めに相談しておくと安心です。

現金化や相続放棄の判断は弁護士相談で進めやすくなります

現金化、相続放棄、遺産分割といった出口の判断は、会社や他の相続人との関係、相続税の期限、納税資金の手当てなどが複雑に絡み合います。相続人だけで結論を出すのが難しい場面では、会社との譲渡承認・買取交渉や、相続人間で意見が分かれるケースを含めて、弁護士へ早めに相談することで進め方と注意点が見えやすくなります。

非上場株式の相続でよくある質問

非上場株式の相続について、相談者から特に多く寄せられる質問をまとめました。実際のケースに当てはめる際は、定款や株主名簿、会社の状況によって対応が異なるため、専門家への確認をおすすめします。

Q1.非上場株式はいつの時点の価額で評価しますか?

相続税の計算では、相続開始日(被相続人が亡くなった日)時点での株式の価額で評価します。直近の決算書を基礎としつつ、会社規模の判定や評価方式の選択を踏まえて算定するため、税理士による評価依頼が一般的です。

Q2.株券が見当たりません。それでも相続できますか?

株券が手元になくても相続自体は可能です。会社によっては、会社法の改正前から株券を発行していないケースや、株券不発行会社に移行しているケースがあります。会社名がわかれば、株主名簿の管理元(会社または株主名簿管理人)に照会して、被相続人の持株数や名義の状況を確認できます。

Q3.株主名簿の名義書換をしないとどうなりますか?

配当の受領議決権の行使、会社に対する各種請求、その後の売却交渉など、株主としての権利行使の場面で支障が出ます。会社は株主名簿に記載された人物を株主として扱うため、名義書換が済まない間は、被相続人名義のままでは権利者として認められないのが原則です。

Q4.会社が買い取りを拒否したらどうすればよいですか?

譲渡制限会社では、第三者への譲渡には会社の承認が必要です。会社が譲渡を承認しない場合は、会社自身か会社が指定する「指定買取人」が買い取ることになります。価格の折り合いがつかなければ、裁判所に売買価格決定の申立てを行う手続もあります。

Q5.相続税評価額で買い取られるのが普通ですか?

相続税評価額は税務上の計算基準であり、売買の価格そのものではありません。買い手と売り手の合意で価格が決まる場面では、会社の将来収益や支配権の有無なども踏まえた金額になります。会社側から相続税評価額をベースにした価格を提示されても、それが必ずしも適正な売却価額とは限らない点に注意が必要です。

Q6.相続放棄をすれば株式だけ手放せますか?

相続放棄は相続財産全体を承継しない選択肢であり、株式だけを切り離して放棄することはできません。預貯金や不動産も含めて承継しないこととなるため、財産と負債の全体を踏まえて判断する必要があります。期限は原則として相続開始を知った日から3か月以内です。

Q7.弁護士と税理士、どちらに先に相談すべきですか?

相続税の評価や申告が中心の場面では税理士、会社との交渉や買取の手続、相続人間の話し合いがからむ場面では弁護士に相談するのが目安です。両者が連携して対応することで、税務面と権利関係の両方をカバーできます。

Q8.会社の顧問税理士が出した株価評価に従う必要がありますか?

会社の顧問税理士が出す評価額は、あくまで会社側の立場での算定です。相続人や少数株主の立場では、別の評価方法によって異なる金額が算出されることもあります。提示された金額に納得がいかない場合は、独立した専門家にセカンドオピニオンを求めるか、弁護士を通じた交渉を検討してください。

Q9.事業承継税制(納税猶予)の特例措置はいつまで使えますか?

法人版事業承継税制の特例措置を使うには、特例承継計画の提出が必要です。提出期限は令和8年度税制改正で延長され、令和9年(2027年)9月30日までとなっています。納税猶予の対象となる相続・贈与の適用期限は令和9年(2027年)12月31日で、こちらは延長されない見込みです。後継者として株式を承継する可能性がある場合は、期限から逆算した準備をおすすめします。

上記以外にも、個別のケースで判断に迷う場面は多くあります。「定款にこういう規定があるがどう対処すべきか」「会社からこんな提案が来ているが応じてよいか」など、具体的な状況に応じたご相談は、当事務所まで遠慮なくお問い合わせください。

非上場株式の相続トラブルはご相談ください

非上場株式の相続では、遺産分割、評価、名義書換、会社側の対応が重なり、相続人だけで話が進まないことがあります。株式の評価額で折り合えない、株券や株主名簿の情報が出てこない、会社が譲渡承認や買取に応じないといった場面です。

状況に応じて、名義書換の進め方、会社への照会方法、買取交渉の流れ、裁判所手続の要否を確認しながら進めると、期限超過や紛争の長期化を避けやすくなります。

相続時に起こりやすいトラブル例

  • 遺産分割でもめる/株式評価額で折り合えない:誰がどれだけ引き継ぐか、株式の評価をどう見るかで対立しやすい。
  • 株式の所在・引渡しで対立:元社長や会社側が株式を開示・引渡ししない、所在が不明などで手続が進まない。
  • 遺言や生前の移転をめぐる争い:特定の相続人(社長・後妻の子など)への集中承継、番頭・役員への譲渡主張などで紛糾。

相続後に起きがちな「権利が薄まる」トラブル

非上場会社では、一般の株式とは権利内容が違う株式(種類株式)を発行していることがあります。たとえば、議決権が付かない株式や、株主の属性により権利が変わる株式などです。この場合、相続した後に「株主になったのに議決権がない」「思ったより情報が得られない」と感じることがあります。

また、会社が増資や株式交換などを行うと、持株比率が下がり、議決権割合や売却の進め方に影響することがあります。相続後は、定款の条項、株主名簿の記載、株主総会の招集通知や議案書を確認し、相続した株式の権利内容と最近の変更点を把握しておきましょう。

相続手続きで関わる専門家の役割分担

非上場株式の相続では、複数の専門家が関わるケースが一般的です。窓口を分けるのではなく、それぞれの守備範囲を理解して使い分けることで、対応が前に進みやすくなります。

専門家 主な対応領域
弁護士 遺産分割協議の代理/会社との交渉・買取請求/会社法第174条への対応/裁判所手続/相続人間の紛争解決
税理士 株式の評価額算定/相続税申告書の作成・提出/納税猶予・特例の適用判断
司法書士 不動産の相続登記/戸籍収集の代行/一部の名義書換書類の作成補助
公認会計士 株式評価額のセカンドオピニオン/会社側との価格交渉の根拠資料作成

弁護士の中でも、会社法や非上場株式の売買に詳しい弁護士と、相続全般を扱う弁護士では、得意とする領域に違いがあります。会社との交渉や買取が絡む場面では、非上場株式の取扱経験が豊富な弁護士を選ぶことをおすすめします。

弁護士へのご相談について

当事務所では、非上場株式・少数株式の売却に関するご相談を数多くお受けしており、相談実績は300件以上です。これまでに蓄積した知見をもとに、状況に応じた進め方をご提案いたします。

ご相談は、お問い合わせフォーム、お電話のいずれかからご連絡ください。全国対応・オンライン相談・来所対応のすべてに対応しております。初回のご相談で、お客様のケースに合わせた進め方をご提案いたします。

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