会社が少数株主を無視している場合に法的に確認すべき事項

この記事の位置付け

本ページは、少数株主の権利に関する解説のうちの一つです。全体像は、次の中核となるページをご覧ください。

本ページは、株主として扱われていないという状態を、株主総会の招集手続の欠缺、株主名簿への記載の欠缺及び情報提供の拒絶という類型に切り分け、確認すべき事項と、情報取得の手段に関する会社法6箇条の一覧及び用いる順序を集約したページです。各手続に付された期限と、弁護士に依頼した場合の進め方は、少数株主が弁護士に依頼するときをご覧ください。

▶ 少数株主権(非上場株式・少数株式の権利)一覧

同じ主題を扱う関連ページ

非上場会社の少数株主の方から、「会社にいないものとして扱われている気がする」というご相談をいただくことがあります。株主総会の招集通知が届かない、配当や決算についての説明が一切ない、問い合わせをしても返事がない、といった状態です。

もっとも、「無視されている」と一口にいっても、その実質は事案によって異なります。株主総会の招集手続がそもそも行われていない場合、株主名簿への記載に問題があり株主として扱われていない場合、情報の提供自体を拒まれている場合など、いくつかの異なる状態が考えられます。

本記事では、これらの状態を整理したうえで、それぞれに関係する法律上の制度及び確認すべき事項について解説します。

これらは、いずれも異なる制度に関係いたします。まず自らの置かれている状態がどれに当たるかを特定することが出発点です。

株主総会の招集通知

株主総会を招集するには、原則として株主総会の日の2週間前までに株主に対して通知を発しなければなりません。ただし、書面による議決権の行使等について定めた場合を除き、公開会社でない株式会社にあっては1週間前まで、取締役会を設置していない会社においてこれを下回る期間を定款で定めた場合にはその期間前までとされています(会社法第299条第1項)。

招集の手続が法令又は定款に違反する場合、その決議は取消しの訴えの対象となり得ます(会社法第831条第1項第1号)。もっとも、この訴えは決議の日から3か月以内に提起しなければなりません。期間が経過いたしますと、この訴えによって決議を争うことはできなくなります。

表2 決議を争う手続

手続 根拠条文 期間 対象
決議の取消しの訴え 会社法第831条第1項 決議の日から3か月以内 招集手続又は決議の方法の瑕疵等
決議の無効の確認の訴え 会社法第830条第2項 期間の制限はありません 決議の内容が法令に違反する場合
決議の不存在の確認の訴え 会社法第830条第1項 期間の制限はありません 決議が物理的に存在しない場合等

実際には、株主総会が現実には開催されておらず、議事録のみが作成されているという事案が少なくありません。この場合には、決議の不存在の確認が問題となり得ます。まず、登記事項証明書により役員の変更等の登記の履歴を確認し、議事録の閲覧謄写を請求することとなります(会社法第318条第4項)。

招集通知が届かない場合に採る手順

招集通知が届かないという状態には、複数の原因があります。原因によって対応が異なりますので、順に確認いたします。

第一に、通知の宛先の問題です。会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載された住所に宛てて発すれば足り、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます(会社法第126条第1項、第2項)。転居の後に住所の変更を届け出ていない場合には、会社の手続に瑕疵はないことになります。まず株主名簿に記載された住所を確認し、現住所への変更を書面により届け出てください。

第二に、招集手続の省略です。株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく株主総会を開催することができます(会社法第300条本文。書面又は電磁的方法による議決権の行使を定めた場合を除きます)。会社が全員の同意があったと説明する場合であっても、皆様が同意していない以上、その説明は成り立ちません。この点は、決議の取消し又は不存在を主張する際の中心的な事実となります。

第三に、会社が意図的に通知を発していない場合です。総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主は、会議の目的である事項及び招集の理由を示して、取締役に対し株主総会の招集を請求することができます(会社法第297条第1項)。請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合、又は請求の日から8週間以内の日を会日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合には、裁判所の許可を得て、株主自らが株主総会を招集することができます(同条第4項)。

また、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、株主総会に先立ち、裁判所に対して検査役の選任の申立てをすることができます(会社法第306条第1項)。公開会社でない会社においては、6か月前から引き続き有することという要件は適用されません(同条第2項)。形だけの総会が繰り返されている事案では、この申立てが有効です。

いずれの手続を採る場合も、請求は配達証明付内容証明郵便により行い、根拠条文を明示してください。会社が回答しなかったという事実自体が、後の手続における事情となります。株主総会に招集されないまま決議が重ねられている状態については、株主なのに株主総会に招集されず勝手に決議されてお困りの方へのご案内もあわせてご覧ください。

株主名簿への記載がされているかの確認

そもそも株主名簿に株主として記載されていない場合には、会社は通知を発しません。相続により株式を取得したものの名義書換をしていない事案、株式を譲り受けたものの名義書換がされていない事案が典型です。

株式を取得した者は、会社に対し、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができます(会社法第133条第1項)。この請求は、原則として株主名簿に記載された者又はその一般承継人と共同してしなければなりませんが、法務省令で定める場合には単独ですることができます(同条第2項)。また、譲渡制限株式については、会社が譲渡を承認した場合等でなければ、この請求をすることができません(会社法第134条)。

株式の譲渡は、株主名簿に記載又は記録をしなければ、会社その他の第三者に対抗することができません(会社法第130条第1項)。名義の状態の確認は、他のいかなる手段よりも先に行うべき事項です。株主名簿の閲覧謄写の請求については、記事「少数株主が株主名簿を確認したい場合」に整理しています。

情報取得の手段

会社が任意に情報を提供しない場合であっても、会社法上、株主には情報取得の手段が認められています。

表3 主な手段

手段 根拠条文 持株要件
定款の閲覧及び謄本の交付の請求 会社法第31条第2項 ありません
株主名簿の閲覧謄写の請求 会社法第125条第2項 ありません
計算書類等の閲覧及び謄本の交付の請求 会社法第442条第3項 ありません
株主総会議事録の閲覧謄写の請求 会社法第318条第4項 ありません
取締役会議事録の閲覧謄写の請求 会社法第371条第2項・第3項 ありません(監査役設置会社等では裁判所の許可を要します)
会計帳簿の閲覧謄写の請求 会社法第433条第1項 100分の3以上

これらの詳細は、記事「少数株主が決算書を入手できないときに確認すべき権利」に整理しています。また、これらの手続に付されている3か月、60日、8週間及び20日という期限と、その起算点の考え方は、少数株主が弁護士に依頼するときに整理しています。

さらに、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主は、会議の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができます(会社法第297条第1項)。公開会社でない会社においては、6か月前から引き続き有することという要件は適用されません(同条第2項)。

表4 情報取得の手段を用いる順序の考え方

順序 手段 目的
1 登記事項証明書の取得 会社の機関、役員、資本の状況を確認いたします
2 定款の閲覧及び謄本の交付の請求 譲渡制限、承認機関、売渡請求の定めを確認いたします
3 株主名簿の閲覧謄写の請求 自らの記載及び他の株主の構成を確認いたします
4 計算書類等の閲覧及び謄本の交付の請求 会社の財務の概況を確認いたします
5 株主総会議事録の閲覧謄写の請求 決議の有無及び内容を確認いたします
6 会計帳簿の閲覧謄写の請求 不足する事項を個別に確認いたします

いずれも同時に行わなければならないものではありません。持株数の要件がない手段から順に用い、必要に応じて範囲を広げるという進め方が現実的です。

確認すべき事項の一覧

表5 確認事項

確認事項 確認の方法
株主名簿上の記載 株主名簿の閲覧謄写の請求によります
登記されている役員及び機関 登記事項証明書によります
定款の内容 定款の閲覧及び謄本の交付の請求によります
株主総会の開催の有無 株主総会議事録の閲覧謄写の請求によります
計算書類の内容 計算書類等の閲覧及び謄本の交付の請求によります
会社への問い合わせの経過 送付した書面及び回答の記録によります
決議の日からの経過期間 取消しの訴えの3か月の期間に関係いたします

期間の制限がある手続がありますので、まず日付を確定させることが重要です。会社から届いた書面は、封筒を含めて保管されることをお勧めいたします。

弁護士に相談する意味

会社が対応しない状態が続きますと、株主の側で事実関係を確認する手段が限られてまいります。もっとも、会社法は株主に対して複数の情報取得の手段を認めており、これらは会社の対応にかかわらず行使することができます。

弁護士は、株主本人の代理人として、まず名義及び登記の状態を確認し、必要な請求を書面により行い、会社の対応を記録いたします。そのうえで、権利行使を継続するか、株式の換価を目指すかを検討することとなります。当事務所は株式を買い取る立場ではなく、株主の方が株式を保有したまま手続を進めるものです。

よくあるご質問

質問1 招集通知が届かないまま開催された株主総会の決議は無効ですか。

招集の手続に法令又は定款の違反がある場合、決議は取消しの訴えの対象となり得ます(会社法第831条第1項第1号)。当然に無効となるものではなく、決議の日から3か月以内に訴えを提起する必要があります。

質問2 何年も前の株主総会について争えますか。

取消しの訴えについては3か月の期間の制限があります。他方、決議が現実には存在しない場合には、不存在の確認の訴えに期間の制限はありません(会社法第830条第1項)。いずれに当たるかは事実関係によります。

質問3 会社に手紙を送っても返事がありません。

回答がないこと自体も記録として意味を持ちます。配達の記録が残る方法により、根拠条文を明示した請求を行うことが考えられます。

質問4 結局、株式を売るしかないのでしょうか。

権利行使を継続する道と、換価を目指す道の双方があります。いずれを選ぶかは、会社の財務状況、株主構成、ご本人の意向によって異なります。換価については記事「会社に非上場株式の買取りを断られた場合に少数株主が検討すべきこと」に整理しています。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、非上場会社の少数株主の方から、株主総会、情報開示及び株式の売却に関するご相談をお受けしています。期間の制限がある手続がありますので、お早めにご連絡ください。

ご相談の際には、株主であることを示す資料、登記事項証明書、定款の写し、株主総会の招集通知、会社に送付した書面及び回答をご用意ください。お手元にない場合でもご相談いただけます。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
  • 所在地 〒105-6017 東京都港区虎ノ門四丁目三番一号 森トラスト城山トラストタワー17階

本記事は一般的な法律上の枠組みをご説明するものであり、結論は事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。結果を保証するものではありません。課税関係については税理士にご確認ください。

本記事の根拠条文

会社法 第31条第2項(定款の閲覧等)、第125条第2項(株主名簿の閲覧謄写請求)、第130条第1項(対抗要件)、第133条第1項・第2項(株主名簿記載事項の記載の請求)、第134条(譲渡制限株式に係る例外)、第297条第1項・第2項(株主総会の招集の請求)、第299条第1項(招集の通知)、第318条第4項(株主総会議事録の閲覧等)、第371条第2項・第3項(取締役会議事録の閲覧等)、第433条第1項(会計帳簿の閲覧謄写請求)、第442条第3項(計算書類等の閲覧及び謄本の交付の請求)、第830条第1項・第2項(決議の不存在及び無効の確認の訴え)、第831条第1項(決議の取消しの訴え)

株主として扱われていないと感じられる状態にも、法的な整理の仕方があります。まずは手元の書類をお持ちください。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

具体的なご相談をお考えの株主の皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。