株主総会の招集通知が届かないまま決議がされていたとき 決議取消しの訴えと決議不存在確認の訴えの使い分け

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株主総会の招集の通知を受け取らないまま、株主総会の決議がされていた場合に、株主がその決議の効力を争う手続(決議取消しの訴え、決議不存在確認の訴え等)に関するメインのページです。株主総会で行使できる権利の全体像は、次のページで解説しています。
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登記を確認したら役員が入れ替わっていた、知らないうちに定款が変更されていた、あるいは新株が発行されていた。株主総会の招集の通知が一度も届いていないのに、議事録の上では株主総会が開かれ、決議がされていたという相談は、非上場会社の株主の方から多く寄せられます。
株主総会の決議は、すべての株主に招集の通知が届いていることを前提としています。招集されなかった株主は、その決議の効力を裁判所で争うことができます。ただし、争う手続ごとに期限と要件が異なります。本ページでは、決議取消しの訴えと決議不存在確認の訴えを中心に、どの手続をいつまでに選ぶべきかを整理します。
招集の通知は、すべての株主に届かなければなりません
通知を発する期限
株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の2週間前までに、株主に対して招集の通知を発しなければなりません。公開会社でない会社では1週間前までで足り、さらに取締役会を設置していない会社では、定款でこれより短い期間を定めることができます(会社法第299条第1項)。
書面による通知が必要な場合
取締役会を設置している会社や、書面又は電磁的方法による議決権の行使を認める場合には、招集の通知は書面でしなければなりません(会社法第299条第2項)。書面の通知には、株主総会の日時、場所、目的である事項(議題)等を記載します(同条第4項、第298条第1項)。
招集の手続を省略できるのは、株主全員が同意した場合に限られます
株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく株主総会を開催することができます(会社法第300条)。また、取締役又は株主が提案した事項について、議決権を行使することができる株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされます(会社法第319条第1項)。
いずれも「全員」の同意が要件です。ご自身が同意していない以上、会社がこれらの方法によったと説明しても、その説明は成り立ちません。
招集されなかった株主が採ることのできる手続
決議取消しの訴え
株主総会の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なときは、株主は、決議の日から3か月以内に、訴えをもって決議の取消しを請求することができます(会社法第831条第1項第1号)。一部の株主に対する招集の通知の漏れは、招集の手続の法令違反に当たります。
なお、自分以外の株主に対する招集の通知が漏れていた場合であっても、株主はそのことを理由として決議の取消しを求めることができるとした最高裁判所の判例があります(最高裁判所昭和42年9月28日判決)。
裁判所が請求を棄却できる場合
招集の手続の違反があっても、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、裁判所は取消しの請求を棄却することができます(会社法第831条第2項)。もっとも、株主が招集の通知を受けられなかったという違反は、株主が株主総会に出席して意見を述べ、議決権を行使する機会そのものを奪うものです。そのため、重大でない違反として扱われることは通常考えにくいと解されています。
決議不存在確認の訴え
株主総会が実際には開かれておらず議事録だけが作成されている場合や、招集の通知を受けた株主がごく一部にとどまり、法律上株主総会と評価できない場合には、決議が存在しないことの確認を求める訴えを提起することができます(会社法第830条第1項)。この訴えには提訴期間の定めがなく、3か月を過ぎた後でも提起することができます。
決議の内容が法令に違反する場合
決議の内容そのものが法令に違反する場合には、決議が無効であることの確認を求める訴えを提起することができます(会社法第830条第2項)。この訴えにも提訴期間の定めはありません。
3か月の期限を意識してください
決議取消しの訴えの3か月は、決議の日から数えます。決議があったことを知った日からではありません。登記事項証明書を取得して役員の変更を知った時点で、既に期限が迫っていることもあります。
また、決議取消しの訴えを提起した後、3か月を過ぎてから新たな取消しの理由を追加して主張することは許されないとした最高裁判所の判例があります(最高裁判所昭和51年12月24日判決)。提訴の段階で、取消しの理由となる事実をできる限り洗い出しておく必要があります。
3か月を過ぎてしまった場合でも、株主総会が開催されていない、又は株主総会と評価できない程度の瑕疵がある場合には、決議不存在確認の訴えによって争うことを検討します。
決議を争うためにそろえる資料
株主総会の議事録
株主総会の議事録は、株主総会の日から10年間本店に備え置かれ、株主は営業時間内であればいつでも閲覧及び謄写を請求することができます(会社法第318条第2項、第4項)。議事録には、開催の日時及び場所、出席した役員、議事の経過の要領及び結果等が記載されます(会社法施行規則第72条第3項)。記載された開催の場所や時刻に、実際に株主総会が開かれていたかどうかを確認します。
登記事項証明書
役員の選任や定款の変更など、決議によって登記事項に変更が生じた場合は、法務局で履歴事項全部証明書を取得して、変更の日と内容を確認します。登記の申請書に添付された議事録は、利害関係を明らかにして法務局で閲覧を請求することができる場合があります。
株主であることを示す資料
決議の効力を争う前提として、ご自身が決議の時点で株主であったことを示す必要があります。株主名簿の記載事項を記載した書面、株券、相続に関する戸籍、贈与契約書等をそろえます。会社が株主であることを否定している場合は、会社から「あなたは株主ではない」と言われたときをご覧ください。
招集の通知を受け取っていないことの記録
通知を受け取っていないという事実は、受け取っていない側からは示しにくいものです。会社に対し、招集の通知を発した日、発送の方法、発送先の住所を書面で照会し、その回答を記録として残します。株主名簿に記載された住所が古いままになっていないかも確認します。
決議の効力が否定されると、何が変わるのか
判決の効力は、すべての人に及びます
決議を取り消す判決、決議が存在しないこと又は無効であることを確認する判決が確定すると、その判決は訴訟の当事者以外の者に対しても効力を有します(会社法第838条)。決議によって登記がされていた場合には、裁判所書記官の嘱託によって登記が改められます(会社法第937条第1項第1号ト)。
判決を待つ間は、仮処分を検討します
違法な決議によって選任された取締役がそのまま職務を続けると、判決が出るまでの間に、会社の財産の処分や新株の発行など、取り返しのつかない行為がされるおそれがあります。このような場合には、取締役の職務の執行を停止し、職務を代行する者を選任する仮処分を申し立てることを検討します(民事保全法第23条第2項、会社法第352条)。
後の株主総会で改めて決議がされた場合
争っている間に、会社が適法な手続で株主総会を招集し、同じ内容の決議を改めて行うことがあります。また、取り消しを求めている決議で選任された役員が任期の満了により退任した場合には、訴えの利益が失われると判断されることがあります。訴訟の途中で会社がどのような手続を採ったかを随時確認し、請求の内容を見直す必要があります。
招集の瑕疵を、会社との協議の契機とする
招集の通知が届かないという事態は、経営者の側が株主の存在を軽視していることの表れであることが少なくありません。相続によって株式を取得した株主が株主名簿に反映されていない場合や、経営者と対立している株主を意図的に外している場合もあります。
決議の瑕疵を指摘することは、決議の効力を争うためだけのものではありません。会社の側に手続の不備を認識させ、株主としての立場を前提とした協議の場を設ける契機にもなり得ます。株式を持ち続けるのか、会社に買取りを求めるのかという最終的な方針を見据えて、どの手続をどの順序で用いるかを決めることが重要です。
いま確認していただきたいこと
本日のうちに、次のことを確認してください。
- 決議がされた日を特定してください。履歴事項全部証明書の変更の日付が手掛かりになります。決議の日から3か月以内であれば、決議取消しの訴えを提起することができます。
- どのような決議がされたのかを確認してください。役員の選任、定款の変更、新株の発行、組織再編など、決議の内容によって取り得る手段と緊急性が変わります。
- 株主名簿に記載されているご自身の住所を確認してください。転居や相続の後に、名簿が更新されていないことがあります。
- 過去に会社から届いた書面を集めてください。これまでの株主総会の招集の通知の有無、配当の通知、会社とのやりとりの記録は、招集の漏れが継続していることを示す資料になります。
- 3か月の期限まで1か月を切っている場合には、資料がそろっていなくてもお電話ください。訴えの提起を先行させ、資料は後から補うという進め方があります。
よくあるご質問
議事録には、私も出席したと書かれています。
実際には出席していないのに出席したと記載されている場合、議事録の記載が事実に反することになります。株主総会が開催された日時に別の場所にいたことを示す資料(勤務の記録、交通機関の利用履歴等)を確保してください。株主総会自体が開かれていない場合には、決議不存在確認の訴えを検討します。
私の持株はわずかです。私が欠席しても結論は変わらなかったと言われました。
会社法第831条第2項は、違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさない場合に限って請求の棄却を認めています。招集の通知の漏れは、出席して意見を述べる機会そのものを奪うものであり、議決権の数が少ないことのみを理由として棄却されるとは限りません。
3か月を過ぎてから、決議があったことを知りました。
決議取消しの訴えの期間は、決議の日から計算するため、知った時期にかかわらず、3か月を過ぎると提起することはできません。ただし、株主総会が実際には開かれていない場合や、招集の通知を受けた株主がごく一部にとどまる場合には、決議不存在確認の訴えによって争う余地があります。
会社からは、書面決議をしたと説明されました。
書面による決議の省略は、議決権を行使することができる株主の全員が提案に同意した場合に限って認められます(会社法第319条第1項)。ご自身が同意の書面を提出していなければ、決議があったものとはみなされません。会社に対し、同意の書面又は電磁的記録の閲覧を請求することができます(同条第3項)。
おわりに
招集の通知が届かないまま決議がされていた場合、最初に確認すべきは決議の日です。3か月の期限の内側にいるのか外側にいるのかによって、選ぶべき手続が変わります。そのうえで、議事録、登記事項証明書、株主であることを示す資料をそろえ、決議の効力を争うのか、その事実を協議の材料とするのかを判断します。
当事務所は、非上場会社の株主の皆様から、株主総会の手続や株式の買取りを巡るご相談を数多くお受けしています。手続の瑕疵を指摘し、交渉や裁判により解決を図る方法をご提案します。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
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出典
- 会社法第298条第1項、第299条第1項、第2項、第4項(株主総会の招集の決定及び通知)
- 会社法第300条(招集手続の省略)
- 会社法第318条第2項、第4項(議事録の備置き及び閲覧等)
- 会社法第319条第1項、第3項(株主総会の決議の省略)
- 会社法第352条(取締役の職務を代行する者の権限)
- 会社法第830条第1項、第2項(株主総会の決議の不存在又は無効の確認の訴え)
- 会社法第831条第1項第1号、第2項(株主総会の決議の取消しの訴え)
- 会社法第838条(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)
- 会社法第937条第1項第1号ト(裁判による登記の嘱託)
- 会社法施行規則第72条第3項(株主総会の議事録の内容)
- 民事保全法第23条第2項(仮の地位を定める仮処分)
- 最高裁判所昭和42年9月28日判決(他の株主に対する招集手続の瑕疵を理由とする決議取消しの訴え)
- 最高裁判所昭和51年12月24日判決(提訴期間経過後の取消事由の追加)
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