会社から株式買取通知書・供託証明通知書が届いたとき 株主が1週間以内にすべきこととフォーマット

目次
  1. この書面が届いた日から、1週間の時計が動き出します
  2. 四つの書式の使い分け
  3. いま、この書面の持つ意味が変わりつつあります
  4. 株式買取通知書・供託証明通知書のフォーマット
  5.  この書面は、いつ、誰が、誰に対して差し出すものか
    1. 差し出す人と、受け取る人
    2. 差し出す段階
    3. 指定買取人が指定された場合
  6.  根拠となる条文
  7.  株主の立場からの読み方 届いたら何日以内に何をするか
    1. 確認その一 封筒の到達日を確定してください
    2. 確認その二 供託を証する書面が同封されているかを確認してください
    3. 確認その三 株券発行会社かどうかを確認してください
    4. 確認その四 売買価格の決定の申立ての期限を計算してください
  8.  記載を誤るとどうなるか
    1. 会社の側が誤った場合
    2. 株主の側が対応を誤った場合
  9.  配達証明付内容証明郵便によるべきか
  10.  相手方の典型的な対応と、それへの備え
    1. 株主の側から見た、会社の典型的な対応
    2. 会社の側から見た、株主の典型的な対応
  11.  期限 起算点と満了日
  12. よくあるご質問
    1. 会社から株式の買取通知書が届きました。まず何をすればよろしいですか
    2. 供託された金額が、そのまま売買価格になるのですか
    3. 株券が見当たりません。どうすればよろしいですか
    4. 指定買取人から通知が来ました。会社からの通知と何が違いますか
    5. 会社から承認をしない旨の通知だけが来て、その後何も来ません
    6. 会社の側です。供託はどの供託所にすればよろしいですか
  13. おわりに
  14. 関連ページ
  15. 出典

この書面が届いた日から、1週間の時計が動き出します

本ページに掲げています書式は、これまでの三つとは向きが逆です。株主が会社に対して差し出す書面ではなく、会社の側から株主に対して発せられる書面です。株式買取通知書と、供託を証する書面を送付する旨の通知書の二通です。

会社の担当者の方にとっては、これは手続を進めるための事務です。しかし、これを受け取られた株主の側から見ますと、事情はまったく異なります。この書面が届いた瞬間から、短い期間が次々に走り出し、対応を誤れば売買契約を解除され、あるいは価格を争う機会そのものを失います。

株主の皆様へ。会社から「供託を証する書面」が届きましたら、対象株式が株券発行会社の株式である場合には、その交付を受けた日から1週間以内に株券を会社の本店の所在地の供託所に供託しなければなりません(会社法第141条第3項)。この期間内に供託をしなかったときは、株券発行会社は対象株式の売買契約を解除することができます(会社法第141条第4項)。
さらに、買取りの通知があった日から20日以内に裁判所に売買価格の決定の申立てをしなければ、原則として1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額が売買価格として確定してしまいます(会社法第144条第2項、第5項)。

本ページは、会社の側が書面を作成される際の書式としても、株主の側がお手元に届いた書面を読み解かれる際の手引としても、お使いいただけるように構成しています。書式のあとに、この書面の位置付け、根拠となる条文、株主の立場から見て何日以内に何をしなければならないか、記載を誤った場合の効果、郵送の方法、そして期限の起算点と満了日を順に整理いたします。

四つの書式の使い分け

当事務所は、非上場株式・少数株式に関する書式を、場面ごとに分けて掲載しています。それぞれ用いる場面も、差し出す方向も異なりますので、次の対照によって、いま必要な書面をお確かめください。

1 株式譲渡承認請求書
株主又は株式取得者から会社へ差し出す書面です。株式を譲り渡すことの承認を求め、あわせて、承認をしない場合には会社又は指定買取人に買い取ることを請求する旨を明らかにいたします(会社法第136条から第138条まで)。

2 株式譲渡承認請求及び会計帳簿閲覧請求を兼ねた通知書
同じく株主の側から会社へ差し出す書面ですが、譲渡の承認の請求と、会計帳簿の閲覧謄写の請求とを一通で行うものです(会社法第136条以下及び第433条第1項)。価格の検討に必要な会社の財務資料を、同時に求める場合に用います。

3 株式買取通知書・供託証明通知書(本ページ)
向きが逆です。会社の側から株主に対して発せられる書面です(会社法第141条、第142条)。お手元に届いた場合には、その日から1週間という期限が動き出します。

4 会計帳簿閲覧謄写請求書及び仮処分命令申立書
会社が帳簿の開示に応じない場合に、裁判所に対して申し立てる書面です(会社法第433条、民事保全法第23条第2項)。

いま、この書面の持つ意味が変わりつつあります

国税庁は令和8年(2026年)4月20日から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催し、昭和39年(1964年)に公表された財産評価基本通達の抜本的な見直しを検討しています。

第1回会議(令和8年4月20日)に提出された資料によれば、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の26%から27%程度にとどまり、類似業種比準価額が純資産価額の0.5倍未満である会社が77.6%に及びます。評価対象会社の82.4%は、直前2期に配当をまったく支払っていません(出典 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)」資料・令和8年4月20日)。

さらに第5回会議(令和8年8月20日)の資料では、類似業種比準方式を存置することは困難ではないかとされ、会社規模による区分を廃止してインカムアプローチによる評価を主軸とすべきとの方向性が示されました(出典 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)」資料・令和8年8月20日)。なお、内容も時期も確定したものではありません。

会社の側も、この動きを見ています。株式が高く評価される可能性があるのであれば、その前に少数株主を整理しておきたいと考えるのは、経営者として自然なことです。手続に着手するかどうかを迷っておられる時間は、必ずしも中立ではありません。

株式買取通知書・供託証明通知書のフォーマット

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弁護士法人M&A総合法律事務所のM&A関連書面はメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここに弁護士法人M&A総合法律事務所の株式買取通知書・供託証明通知書のフォーマットを掲載しています。
M&Aや非上場株式・少数株式の譲渡を検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ありません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きる可能性もあり、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。

株式買取通知書

平成●年●月●日

株式会社 〇〇〇〇代表取締役 〇〇〇〇 殿

〇〇〇〇株式会社 〇〇〇〇代表取締役 〇〇〇〇

当社は、平成●年●月●日に開催されました株主総会におきまして、貴社が〇〇〇〇氏から譲り受けました当社株式●株を買い取ることを決定いたしましたので、当該株式の買取りを請求いたします。なお、供託を証する書面は別郵便でご送付いたします。

以上

供託証明通知書

平成●年●月●日

株式会社 〇〇〇〇代表取締役 〇〇〇〇 殿

〇〇〇〇株式会社 〇〇〇〇代表取締役 〇〇〇〇

「供託金の受領を証する書面」送付のお知らせ

平成●年●月●日付け貴社並びに〇〇〇〇氏の連名で出されました「株式譲渡承認請求書」と題する書面による、〇〇〇〇氏の貴社に対する当社株式●株の譲渡に係る承認請求につきましては、同年●月●日開催の取締役会で「不承認」と決定し、その旨を同年●月●日付け「株式譲渡不承認通知書」にてご通知しました。当社として、同株式については、当社が買受けることとし、会社法140条1・2項にもとづき同年●月●日に臨時株主総会を開催、特別決議にて承認されました。つきましては、同株式の当社株式の買取通知を発送するに先立ち、会社法141条2項にもとづき、〇〇〇〇法務局に同年●月●日付けで供託金を供託し、その証として「供託金の受領を証する書面」を受領しましたので、下記の通りお送りします。

       記

供託金の受領を証する書面(原本)

以上

 この書面は、いつ、誰が、誰に対して差し出すものか

差し出す人と、受け取る人

差し出すのは、譲渡等承認請求を受けた会社です。指定買取人が定められた場合には、指定買取人が差し出します(会社法第142条第1項)。受け取るのは、株式譲渡承認請求書に株式買取請求の記載(会社法第138条第1号ハ又は第2号ハ)を付して請求をした株主又は株式取得者、すなわち譲渡等承認請求者です。

差し出す段階

手続の順序は、次のとおりです。

  1. 株主又は株式取得者が、株式買取請求の記載を付して譲渡等承認請求をいたします(会社法第136条、第137条第1項、第138条)。
  2. 会社が、株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)の決議によって承認をするか否かを決定し、その内容を請求者に通知いたします(会社法第139条第1項本文、第2項)。
  3. 承認をしないという決定をした場合、会社は対象株式を買い取らなければならず、買い取る旨及び買い取る株式の数を定めなければなりません(会社法第140条第1項各号)。
  4. この決定は株主総会の決議によらなければならず(会社法第140条第2項)、しかも特別決議です(会社法第309条第2項第1号)。譲渡等承認請求者は、この株主総会において議決権を行使することができません(会社法第140条第3項本文)。ただし、その者以外の株主の全部が議決権を行使することができない場合は、この限りではありません(同項ただし書)。
  5. 会社は、この決定をしたときは、その事項を譲渡等承認請求者に通知いたします(会社法第141条第1項)。これが株式買取通知書です。
  6. 会社は、この通知をしようとするときは、あらかじめ、1株当たり純資産額に買い取る対象株式の数を乗じて得た額をその本店の所在地の供託所に供託し、かつ、当該供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければなりません(会社法第141条第2項)。この交付に添える書面が、供託証明通知書です。

すなわち、供託と、その供託を証する書面の交付は、買取りの通知をするための前提条件です。供託をしないまま買取りの通知だけを送っても、手続としては欠けたものになります。

指定買取人が指定された場合

会社は、自ら買い取る代わりに、対象株式の全部又は一部を買い取る者として指定買取人を指定することができます(会社法第140条第4項)。指定は株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)の決議によります(同条第5項本文。定款に別段の定めがある場合を除きます。)。

指定買取人は、指定を受けたときは、譲渡等承認請求者に対し、指定買取人として指定を受けた旨及び買い取る対象株式の数を通知しなければなりません(会社法第142条第1項各号)。通知をしようとするときは、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額を会社の本店の所在地の供託所に供託し、供託を証する書面を交付しなければなりません(会社法第142条第2項)。株券発行会社の場合に譲渡等承認請求者が1週間以内に株券を供託すべきこと(同条第3項)、供託をしなかったときに指定買取人が売買契約を解除することができること(同条第4項)は、会社が買い取る場合と同じです。

 根拠となる条文

  • 会社法第140条第1項、第2項 会社の株式買取義務、買い取る旨及び株式数の決定と株主総会の決議
  • 会社法第309条第2項第1号 第140条第2項及び第5項の株主総会は特別決議によること
  • 会社法第140条第3項 譲渡等承認請求者の議決権の行使の制限
  • 会社法第140条第4項、第5項 指定買取人の指定
  • 会社法第141条第1項 会社による買取りの通知
  • 会社法第141条第2項 1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額の供託及び供託を証する書面の交付
  • 会社法第141条第3項 株券発行会社の場合の株券の供託(交付を受けた日から1週間以内)
  • 会社法第141条第4項 株券の供託がされなかった場合の売買契約の解除
  • 会社法第142条第1項から第4項まで 指定買取人による買取りの通知及び供託
  • 会社法第143条第1項、第2項 通知を受けた後の譲渡等承認請求の撤回の制限
  • 会社法第144条第1項から第7項まで 売買価格の決定、20日以内の裁判所への申立て、供託金の充当
  • 会社法第145条第2号 買取りの通知を怠った場合に承認をしたものとみなされること

 株主の立場からの読み方 届いたら何日以内に何をするか

この書面は会社が作成するものですが、実際に対応を迫られるのは、受け取った株主の側です。届いた封筒を開けた時点で、次の四つを直ちに確認してください。

確認その一 封筒の到達日を確定してください

後述するすべての期間は、通知があった日又は書面の交付を受けた日から進行いたします。封筒、消印、配達の記録は捨てずに保管し、開封した日ではなく受け取った日を記録してください。書留や配達証明で届いた場合には、その記録が起算点の証拠になります。

確認その二 供託を証する書面が同封されているかを確認してください

会社は、買取りの通知をしようとするときは、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額を供託し、その供託を証する書面を交付しなければなりません(会社法第141条第2項)。掲載しています供託証明通知書は、この書面を送付する旨の添え状です。

供託を証する書面が同封されていない場合には、会社に対して書面でその交付を求めてください。交付がなければ、株券を供託すべき1週間の期間も進行いたしません(会社法第141条第3項は「前項の書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、当該交付を受けた日から一週間以内に」と定めています)。

確認その三 株券発行会社かどうかを確認してください

対象株式が株券発行会社の株式である場合には、供託を証する書面の交付を受けた日から1週間以内に、対象株式に係る株券を会社の本店の所在地の供託所に供託しなければなりません(会社法第141条第3項前段)。この場合、供託をした旨を遅滞なく会社に通知する必要もあります(同項後段)。

この期間内に供託をしなかったときは、株券発行会社は対象株式の売買契約を解除することができます(会社法第141条第4項)。せっかく買取りまでこぎ着けた手続が、株券を出さなかったというだけで失われることになります。会社が株券発行会社であるかどうかは、登記事項証明書の「株券を発行する旨の定め」の欄で確認することができます。

株券が手元にない場合には、1週間では間に合いません。株式の買取通知が届いてから探し始めるのでは遅いです。譲渡等承認請求を差し出す前の段階で、株券の有無を確かめ、見当たらない場合には会社に対する株券の発行の請求又は株券喪失登録の手続を検討しておいてください。なお、指定買取人が買い取る場合にも、同じ1週間の定めがあります(会社法第142条第3項)。

確認その四 売買価格の決定の申立ての期限を計算してください

株式の買取通知に記載された金額は、多くの場合、1株当たり純資産額を基準として供託された金額にとどまります。これは売買価格そのものではありません。

売買価格は、まず会社(指定買取人が買い取る場合は指定買取人)と譲渡等承認請求者との協議によって定めます(会社法第144条第1項、第7項)。協議が調わない場合には、買取りの通知があった日から20日以内に、裁判所に対して売買価格の決定の申立てをすることができます(会社法第144条第2項、第7項)。

この期間内に申立てがないとき(かつ協議が調わなかったとき)は、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額をもって売買価格とすると定められています(会社法第144条第5項)。すなわち、何もしなければ、会社が供託した金額で確定してしまうという仕組みです。

裁判所は、売買価格の決定に当たり、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならないとされています(会社法第144条第3項)。この「一切の事情」を主張するためには、会社の財務資料が必要です。会計帳簿の閲覧謄写請求(会社法第433条第1項)を並行して進めることが有効です。

 記載を誤るとどうなるか

会社の側が誤った場合

  • 株主総会の特別決議を経ていない場合 買い取る旨及び買い取る対象株式の数の決定は、株主総会の決議によらなければならず(会社法第140条第2項)、その決議は特別決議です(会社法第309条第2項第1号)。取締役会の決議で足りると誤解して手続を進めますと、決定そのものの効力が争われます。
  • 譲渡等承認請求者に議決権を行使させた場合 譲渡等承認請求者は当該株主総会において議決権を行使することができません(会社法第140条第3項本文)。これを行使させた決議は、決議の方法の法令違反として争われるおそれがあります。
  • 供託をしないまま通知した場合 供託及び供託を証する書面の交付は、通知をしようとするときの要件です(会社法第141条第2項)。供託を欠いたまま通知をしても、株券の供託を求める1週間の期間は進行いたしません。
  • 供託の金額を誤った場合 供託すべき額は、1株当たり純資産額に買い取る対象株式の数を乗じて得た額です。1株当たり純資産額とは、1株当たりの純資産額として法務省令で定める方法により算定される額をいいます(会社法第141条第2項括弧書き)。算定を誤りますと、供託の効力が争われます。
  • 供託所を誤った場合 会社が買い取る場合はその本店の所在地の供託所(会社法第141条第2項)、指定買取人が買い取る場合も会社の本店の所在地の供託所です(会社法第142条第2項)。指定買取人自身の本店の所在地ではありません。
  • 期間内に買取りの通知をしなかった場合 会社が承認をしない旨の決定の通知の日から40日以内に買取りの通知をしなかったときは、会社は承認をしたものとみなされます(会社法第145条第2号)。指定買取人が同じ通知の日から10日以内に通知をした場合を除きます。すなわち、会社が黙っていれば譲渡が通ってしまいます。

株主の側が対応を誤った場合

  • 株券を1週間以内に供託しなかった場合 売買契約を解除されるおそれがあります(会社法第141条第4項、第142条第4項)。
  • 20日以内に売買価格の決定の申立てをしなかった場合 1株当たり純資産額を基準とする額で価格が確定いたします(会社法第144条第5項)。
  • 撤回できると誤解した場合 買取りの通知を受けた後は、会社の承諾を得た場合に限って請求を撤回することができます(会社法第143条第1項)。指定買取人からの通知を受けた後は、指定買取人の承諾が必要です(同条第2項)。

 配達証明付内容証明郵便によるべきか

会社の側から発する場合には、配達証明付内容証明郵便によるべきです。買取りの通知の日は、売買価格の決定の申立ての20日の起算点となり(会社法第144条第2項)、また承認をしたものとみなされるか否かの分かれ目にもなります(会社法第145条第2号)。到達の日と内容を証明できなければ、会社の側が不利益を受けます。

ただし、内容証明郵便には他の書類を同封することができません。供託を証する書面は原本を交付する必要がありますので、内容証明郵便に入れることができません。そこで実務では、株式の買取通知書及び供託証明通知書を配達証明付内容証明郵便で発送し、供託を証する書面の原本を同日付の書留郵便で別送するという方法を採ります。掲載しています書式が「供託を証する書面は別郵便でご送付いたします」との一文を含んでいますのは、このためです。

株主の側から見ますと、供託を証する書面の原本が別送になる場合、1週間の起算点は、通知書が届いた日ではなく、供託を証する書面の交付を受けた日です(会社法第141条第3項)。二通の到達日が異なる場合には、いずれの日を起算点とするかを必ず確認してください。株主の側からの回答、株券を供託した旨の通知(会社法第141条第3項後段)及び売買価格に関する申入れも、同じく記録の残る方法によることが望ましいです。

 相手方の典型的な対応と、それへの備え

株主の側から見た、会社の典型的な対応

  • 通知を遅らせる 承認をしない旨の通知だけを先に送り、買取りの通知をぎりぎりまで発しないという対応です。株主の側の準備期間を削る効果がありますが、40日を過ぎれば承認をしたものとみなされます(会社法第145条第2号)。日付を必ず記録してください。
  • 供託額をもって「これが価格である」と説明する 供託額は手続上の担保であって、売買価格ではありません。会社法第144条第1項は、売買価格は協議によって定めると明記しています。
  • 指定買取人を立てる 経営者ご自身、その親族、又は取引先が指定買取人となることがあります。この場合も、通知、供託、株券の供託、20日の申立期間はすべて同じ枠組みです(会社法第142条、第144条第7項)。
  • 株券の提出を口頭で求める 法が求めていますのは、会社への提出ではなく供託所への供託です(会社法第141条第3項)。会社に株券を渡してしまいますと、供託をしていないことになりかねません。取扱いに疑義がある場合には、書面で確認してください。
  • 協議に応じないまま20日を経過させる 最も静かな、そして最も有効な対応です。協議の申入れをしたという記録を残しつつ、期限を見据えて申立ての準備を並行して進めてください。

会社の側から見た、株主の典型的な対応

  • 売買価格の決定の申立てをされることを前提として、1株当たり純資産額の算定根拠、直近の計算書類、資産の評価に関する資料を、あらかじめ整理しておく必要があります。裁判所は譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮いたします(会社法第144条第3項)。
  • 会計帳簿の閲覧謄写請求(会社法第433条第1項)が並行して行われることがあります。拒むことができるのは同条第2項各号に該当する場合に限られます。

 期限 起算点と満了日

期間を定めるのに日又は週をもってしたときは、期間の初日は算入しません(民法第140条本文)。以下、会社が令和8年9月10日に承認をしない旨の決定を通知し、令和8年10月1日に株式の買取通知書及び供託を証する書面が到達した場合を例として、満了日を具体的に示します。

  • 会社による買取りの通知 承認をしない旨の通知の日から40日(会社法第145条第2号) 起算日は令和8年9月11日、満了日は令和8年10月20日です。会社がこの日までに通知をしなければ、承認をしたものとみなされます。
  • 指定買取人による通知 承認をしない旨の通知の日から10日(会社法第145条第2号括弧書き) 満了日は令和8年9月20日です。
  • 株券の供託 供託を証する書面の交付を受けた日から1週間(会社法第141条第3項、第142条第3項) 起算日は令和8年10月2日、満了日は令和8年10月8日です。徒過すれば売買契約を解除されるおそれがあります(会社法第141条第4項、第142条第4項)。
  • 売買価格の決定の申立て 買取りの通知があった日から20日(会社法第144条第2項、第7項) 起算日は令和8年10月2日、満了日は令和8年10月21日です。徒過すれば1株当たり純資産額を基準とする額で確定いたします(会社法第144条第5項)。

期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間はその翌日に満了いたします(民法第142条)。もっとも、供託所及び裁判所の受付の取扱いがありますので、末日を当てにせず、数日の余裕をもって行動してください。

なお、売買価格が確定したときは、会社が供託した金銭に相当する額を限度として、売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなされます(会社法第144条第6項)。裁判所が定めた価格が供託額を上回る場合には、その差額の支払を求めることになります。

よくあるご質問

会社から株式の買取通知書が届きました。まず何をすればよろしいですか

第一に、到達した日を記録し、封筒と配達の記録を保管してください。第二に、供託を証する書面が同封されているかを確認してください。第三に、会社が株券発行会社であるかどうかを登記事項証明書で確認してください。株券発行会社であれば、供託を証する書面の交付を受けた日から1週間以内に株券を供託しなければなりません(会社法第141条第3項)。第四に、買取りの通知があった日から20日以内という売買価格の決定の申立ての期限を計算してください(会社法第144条第2項)。

供託された金額が、そのまま売買価格になるのですか

なりません。供託された額は、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額であり(会社法第141条第2項)、手続を進めるための担保です。売買価格は協議によって定め(会社法第144条第1項)、調わない場合は裁判所が定めます(同条第2項、第4項)。ただし、20日以内に申立てをせず、協議も調わなかった場合には、この額が売買価格となってしまいます(同条第5項)。

株券が見当たりません。どうすればよろしいですか

まず、会社が株券発行会社であるかどうかを確認してください。株券を発行することが原則とされていたのは、平成18年5月1日の会社法の施行前に設立された会社です。現行の会社法では株券を発行しないことが原則であり、定款に定めた場合にのみ株券発行会社となります。株券発行会社であって株券が見当たらない場合には、株券の発行の請求又は株券喪失登録の手続を検討する必要があります。1週間という期間は極めて短いため、株式の買取通知を受け取る前の段階で確認しておくことが肝要です。

指定買取人から通知が来ました。会社からの通知と何が違いますか

枠組みは同じです。指定買取人は、指定を受けた旨及び買い取る対象株式の数を通知し(会社法第142条第1項各号)、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額を会社の本店の所在地の供託所に供託して、供託を証する書面を交付いたします(同条第2項)。株券発行会社であれば1週間以内の株券の供託が必要であり(同条第3項)、怠れば指定買取人が売買契約を解除することができます(同条第4項)。売買価格の決定についても第144条が準用されます(同条第7項)。

会社から承認をしない旨の通知だけが来て、その後何も来ません

承認をしない旨の通知の日から40日以内に会社が買取りの通知をせず、かつ、その通知の日から10日以内に指定買取人が通知をしなかったときは、会社は承認をする旨の決定をしたものとみなされます(会社法第145条第2号)。この場合、譲渡は承認されたことになりますので、株主名簿の名義書換へ進むことになります。日付を正確に記録してください。

会社の側です。供託はどの供託所にすればよろしいですか

会社が買い取る場合は会社の本店の所在地の供託所(会社法第141条第2項)、指定買取人が買い取る場合も会社の本店の所在地の供託所です(会社法第142条第2項)。株主が株券を供託する場合も、株券発行会社の本店の所在地の供託所です(会社法第141条第3項、第142条第3項)。

おわりに

株式買取通知書と供託証明通知書は、会社の側から見れば、手続を前に進めるための事務的な書面です。しかし、これを受け取られた株主にとっては、期限の始まりを告げる書面です。1週間、そして20日。この二つの数字を見落としたために、正当な価格を争う機会を失われた方を、私どもは幾人も存じ上げています。

会社は、株主が慌てることを知ったうえで、これらの書面を発することがあります。届いた書面を前にして、まずは日付を確かめてください。そして、供託額が価格ではないということを、どうか忘れないでください。

弁護士法人M&A総合法律事務所は、非上場株式の少数株主の皆様の側に立って、買取りの通知への対応、株券の供託、売買価格の決定の申立て及び価格の交渉を取り扱ってまいりました。お手元に届いた書面をお持ちのうえ、まずはお聞かせください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

株式買取通知書・供託証明通知書が届いた方のご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

関連ページ

出典

  • 会社法(第136条、第137条、第138条、第139条、第140条、第141条、第142条、第143条、第144条、第145条、第309条第2項第1号、第433条)
  • 民法(第140条、第142条)
  • 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)」資料(令和8年4月20日)
  • 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)」資料(令和8年8月20日)

具体的なご相談をお考えの皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。