定款変更によって株式に譲渡制限が設けられるとき 反対株主の株式買取請求権の行使の手順と期限

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▶ 株式買取請求権とは 少数株主が非上場株式を売る手続きと注意点
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「定款を変更して、株式に譲渡制限を設けます」と知らされた株主の皆様へ
株主総会の招集通知が届き、議案に「定款一部変更の件」と記されている。内容を確かめると、これまで自由に譲り渡すことのできた株式について、譲渡による取得には会社の承認を要するという定めを新たに設けるものであった。近年、このようなご相談が増えています。
この定款の変更が効力を生じますと、皆様の株式は、会社の承認がなければ第三者に譲り渡すことのできない株式になります。売却の相手方を自ら選ぶという自由が、その時点で失われます。会社法は、この不利益を受ける株主に対し、会社に対して株式を公正な価格で買い取ることを請求する権利を与えています。これが、会社法第116条第1項第1号及び第2号の反対株主の株式買取請求権です。
もっとも、この権利を行使することができる期間は20日間しかなく、行使の順序を誤りますと権利そのものが失われます。本記事では、定款の変更によって株式に譲渡制限が設けられる場合に限り、その手順と期限を整理いたします。
この記事の位置付け
反対株主の株式買取請求権は、場面ごとに根拠となる条文が異なり、期間の起算点も異なります。条文を取り違えますと、期間の計算を誤ります。ご自身の置かれている場面に応じて、次の各記事をご覧ください。
- 定款の変更により株式に譲渡制限の定めを設ける場合(会社法第116条、第117条)……本記事
- 株式の併合により1株に満たない端数が生ずる場合(会社法第182条の4、第182条の5)……株式買取請求権(株式の併合)の記事
- 合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付の場合(会社法第785条、第797条、第806条、第816条の6等)……株式買取請求権(組織再編)の記事
本記事は、手続と期限を解説するものです。弁護士に代理を依頼する場合の進め方、取扱いの範囲及び費用につきましては、反対株主の株式買取請求権に関するご相談のご案内をご覧ください。
どのような定款の変更が対象となるのか
会社法第116条第1項は、次に掲げる場合に反対株主が株式買取請求をすることができると定めています。本記事が扱うのは、このうち第1号及び第2号です。
- 第1号 その発行する全部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について会社の承認を要する旨(会社法第107条第1項第1号)の定めを設ける定款の変更をする場合。株式買取請求の対象は全部の株式です。
- 第2号 ある種類の株式の内容として、譲渡による取得について会社の承認を要する旨(会社法第108条第1項第4号)又は取得条項(同項第7号)の定めを設ける定款の変更をする場合。株式買取請求の対象は会社法第111条第2項各号に規定する株式です。
- 第3号 株式の併合又は株式の分割、株式無償割当て、単元株式数についての定款の変更、募集株式の発行、募集新株予約権の発行又は新株予約権無償割当てをする場合において、会社法第322条第2項の規定による定款の定めがある種類の株式を有する種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき。
(出典 会社法第116条第1項)
決議の要件は、通常の定款の変更より重いものとされています
その発行する全部の株式の内容として譲渡による取得について会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければなりません(会社法第309条第3項第1号)。頭数の要件が加わっている点が、通常の特別決議と異なります。
ある種類の株式の内容として譲渡制限の定めを設ける場合には、これに加えて、会社法第111条第2項に定める種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、当該定款の変更は効力を生じません。その決議の要件も同様に加重されています(会社法第324条第3項第1号)。
譲渡制限の導入は、他の定款の定めの変更を伴うことがあります
株式の譲渡制限を設ける定款の変更は、単独で議案とされるとは限りません。役員の任期の延長、取締役及び監査役の資格の限定、相続その他の一般承継により株式を取得した者に対する売渡しの請求の定めの新設、株主総会の招集の手続の簡略化といった他の定款の定めの変更と併せて議案とされることが多くあります。これらは、いずれも株主の権利又は会社の支配の在り方に影響を及ぼすものです。招集通知に添付された定款の変更案の全体を通読し、譲渡制限の定め以外にどの規定が改められようとしているのかを、あわせてご確認ください。
誰が「反対株主」にあたるのか
会社法第116条第2項は、「反対株主」を次のとおり定めています。ここを読み誤ることが、最も多い失敗です。
議決権を行使することができる株主の場合 二段階の反対が必要です
当該株主総会において議決権を行使することができる株主は、次の二つをいずれも満たさなければ、反対株主となりません(会社法第116条第2項第1号イ)。
- 当該株主総会に先立って、当該行為に反対する旨を会社に対して通知すること
- 当該株主総会において、当該行為に反対すること
すなわち、株主総会の当日に反対の議決権を行使しただけでは足りず、株主総会より前に、反対の意思を会社に伝えておく必要があります。逆に、事前に反対を通知していても、株主総会を欠席し、又は賛成した場合には、反対株主となりません。
議決権を行使することができない株主の場合 事前の通知も反対も要しません
当該株主総会において議決権を行使することができない株主は、事前の反対の通知をすることなく、また、株主総会において反対することなく、反対株主となります(会社法第116条第2項第1号ロ)。議決権のない種類株式を有する株主等がこれにあたります。
また、当該行為をするために株主総会の決議を要しない場合には、すべての株主が反対株主となります(会社法第116条第2項第2号)。
事前の反対の通知は、必ず書面により、到達の証拠を残して行ってください。議決権行使書面に「反対」と記載して返送しただけでは、会社法第116条第2項第1号イにいう「株主総会に先立って反対する旨を通知した」ことにあたらないと判断される危険があります。配達証明付内容証明郵便により、株主総会の日より前に到達させることをお勧めいたします。
内容証明郵便が受け取られない場合に備えて、他の方法を併用してください
内容証明郵便は、受取人が受領を拒むことができます。会社が受領を拒みますと、株主総会の日より前に反対の通知が到達しなかったこととなり、反対株主としての要件を欠く危険が生じます。配達証明付内容証明郵便を主としつつ、受取りを拒むことのできない普通郵便、速達郵便又はレターパック等による発送を併せて行い、発送の事実を記録に残しておくことをお勧めいたします。
株主総会における反対についても、証拠を残してください
事前の反対の通知に加え、株主総会において反対したこと自体が後に争われることがあります。議事録の写しの交付を求め、又は反対の議決権を行使した旨の証明書を会社から受領しておくのが実務上の取扱いです。会社がこれに応じない場合には、株主総会の当日に反対の意思を述べたことを記載した書面を、その日のうちに会社へ送付しておく方法が考えられます。
議決権の行使を代理人に委任する場合の注意点
定款により、議決権を行使する代理人の資格が当該会社の株主に限られている例が少なくありません。この定めがある場合には、弁護士その他の株主でない者を代理人として株主総会に出席させることができないことがあります。株主総会にご自身で出席して反対の議決権を行使するか、又は当該定款の定める資格を満たす代理人に委任する必要がありますので、招集通知及び定款の記載を事前にご確認ください。
手続の流れと、日を単位とした期限
(1) 会社からの通知又は公告 効力発生日の20日前まで
会社法第116条第1項各号の行為をしようとする会社は、当該行為が効力を生ずる日(効力発生日)の20日前までに、同項各号に定める株式の株主に対し、当該行為をする旨を通知しなければなりません(会社法第116条第3項)。この通知は、公告をもって代えることができます(同条第4項)。
(2) 株式買取請求をすることができる期間 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで
株式買取請求は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間にしなければなりません(会社法第116条第5項)。与えられている期間は20日間です。
例えば、効力発生日が令和8年11月1日と定められた場合には、次のとおりとなります。
- 会社からの通知又は公告 令和8年10月12日まで
- 株式買取請求をすることができる期間 令和8年10月12日から同月31日までの20日間
- 令和8年11月1日以後にされた株式買取請求は、期間の経過後のものとして効力を有しません
(3) 株式の数を明らかにして請求すること
株式買取請求は、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければなりません(会社法第116条第5項)。「自己の有する株式の全部」といった記載では、株式の数が明らかにされたとはいえないと争われる危険があります。必ず具体的な株式数を数字で記載してください。
(4) 株券発行会社の場合 株券の提出
株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければなりません(会社法第116条第6項本文)。ただし、当該株券について会社法第223条の規定による株券喪失登録の請求をした者については、この限りではありません(同項ただし書)。
会社が株券発行会社であるかどうかは、会社の登記事項証明書の「株券を発行する旨の定め」の欄により確認することができます。株券がお手元にない場合には、20日間の期間内に手続を終えることができるよう、直ちに株券喪失登録の手続を検討する必要があります。
(5) 株式買取請求の撤回は、原則としてできません
株式買取請求をした株主は、会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができます(会社法第116条第7項)。
いったん株式買取請求をいたしますと、提示された価格に不満があっても、株主の側から一方的に取り下げることはできません。会社が承諾しない限り、価格の決定の手続を最後まで追行するほかありません。したがって、株式買取請求は、価格が争いとなったときに手続を追行する用意をもって行うべきものであり、安易に行うべきものではありません。なお、効力発生日から60日以内に価格の決定の申立てがない場合には、その期間の満了後は、株主はいつでも株式買取請求を撤回することができます(会社法第117条第3項)。また、会社が当該行為を中止したときは、株式買取請求はその効力を失います(会社法第116条第8項)。
価格の協議と、裁判所に対する価格の決定の申立て
(1) 協議が調った場合 効力発生日から60日以内の支払
非上場株式の価格の決定について株主と会社との間に協議が調ったときは、会社は、効力発生日から60日以内にその支払をしなければなりません(会社法第117条第1項)。
(2) 協議が調わない場合 効力発生日から30日以内の協議と、その満了の日後30日以内の申立て
効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、株主又は会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができます(会社法第117条第2項)。
すなわち、申立てをすることができるのは、効力発生日から起算しておおむね30日目から60日目までの間です。この期間を徒過いたしますと、価格を裁判所に決定してもらう手段が失われます。期間の計算は民法の定めるところによりますので、実際の満了日は暦に当てはめて必ずご確認ください。
申立ての管轄は、会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所です(会社法第868条第1項)。
(3) 法定利率による利息と、公正な価格と認める額の支払
会社は、裁判所の決定した価格に対する会社法第117条第1項の期間(効力発生日から60日)の満了の日後の法定利率による利息をも支払わなければなりません(会社法第117条第4項)。会社が支払を遅らせれば、その分の利息が加算されるということです。
また、会社は、非上場株式の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該会社が公正な価格と認める額を支払うことができます(会社法第117条第5項)。これはいわゆる仮払の制度であり、会社がこれを行うのは、利息の発生を止めることを目的とする場合が少なくありません。仮払を受けたことは、その額を公正な価格として承認したことを意味するものではありません。
なお、会社法第117条第4項は、令和2年4月1日に施行された民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号)による改正の前は、利率を年6分と定めていました。同日以降は法定利率によることとされており、法定利率は、民法第404条により年3%を出発点として3年ごとに見直される変動制です。古い書籍及び記事には年6分と記載されているものがありますので、ご注意ください。
(4) 買取りの効力が生ずる時期
株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日に、その効力を生じます(会社法第117条第6項)。すなわち、代金が支払われた時ではなく、定款の変更が効力を生じた日に、株式は会社に移転いたします。
株券発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければなりません(会社法第117条第7項)。
「公正な価格」はどのように定まるのか
会社法は、買取りの価格を「公正な価格」と定めるのみで、その算定の方法を定めていません。裁判所は、事案に応じて、純資産価額法、収益還元法、配当還元法、類似会社比準法等を用い、又はこれらを併用して価格を決定しています。
定款の変更によって譲渡制限の定めが設けられる場合には、これによって企業価値が増加することは通常想定されません。したがって、当該定款の変更がされなかったとしたならば株式が有していたであろう価格(いわゆるナカリセバ価格)が基準になるものと解されています。
価格の決定の手続では、裁判所が鑑定人を選任することが一般的です
非上場株式には市場価格がありませんので、価格の決定の申立ての手続においては、裁判所が株価の鑑定人(多くの場合、株式の評価を専門とする公認会計士)を選任し、その鑑定人が作成した株式価値評価書に示された金額を基礎として、裁判所が価格を決定するという進み方が一般的です。
鑑定人は、単一の方法によるのではなく、時価純資産法と収益還元法とを併用し、事案に応じて重みを置いて評価する例が多くあります。鑑定の費用は申立人が予納するのが通例であり、事案の規模によっては相当の額に上ります。申立てをするかどうかを判断される際には、この費用の負担も含めてご検討ください。
非上場株式について、市場性がないことを理由とする減価は認められていません
最高裁判所平成27年3月26日決定は、非上場会社の株式について、収益還元法を用いて株式買取請求に係る非上場株式の価格を決定する場合に、非流動性ディスカウント(市場性がないことを理由とする減価)を行うことはできないと判断いたしました(出典 最高裁判所平成27年3月26日決定・金融・商事判例1466号8頁)。
会社の側から「非上場株式であって流動性がないのであるから、その分を割り引くべきである」との主張がされることがありますが、株式買取請求の場面においては、この主張は認められません。
いま、非上場株式の評価は見直しの局面にあります
国税庁は令和8年(2026年)4月20日から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催し、昭和39年(1964年)公表の財産評価基本通達の抜本的な見直しを検討しています。
第1回会議(令和8年4月20日)に提出された資料によりますと、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の26%から27%程度にとどまり、類似業種比準価額が純資産価額の0.5倍未満である会社が77.6%に及びます。評価対象会社の82.4%は直前2期に配当をまったく支払っていません(出典 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)」資料・令和8年4月20日)。
【令和8年8月20日】第5回有識者会議で示された方向性
国税庁は第5回会合において「類似業種比準方式を存置することは困難ではないか」とし、会社規模による区分を廃止して「インカムアプローチによる評価を主軸とすべき」との方向性を示しました(出典 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)」資料・令和8年8月20日)。なお、内容も時期も確定したものではありません。
株式に価値が認められる局面であるからこそ、会社の側には、株式の譲渡を制限し、株主の数をこれ以上増やさないようにする動機が働きます。譲渡制限の導入が議案とされたということ自体が、その株式に相応の価値があることの現れである場合が少なくありません。
実務上、株主が失敗しがちな点
- 事前の反対の通知を失念する 株主総会の当日に反対しただけでは、反対株主となりません(会社法第116条第2項第1号イ)。
- 議決権行使書面への「反対」の記載のみで済ませる これが「株主総会に先立つ反対の通知」にあたらないと判断される危険があります。別途、書面により通知してください。
- 通知の到達を証明することができない 普通郵便や電子メールでは、会社が受領を否認したときに反論することが困難です。配達証明付内容証明郵便によってください。
- 株式買取請求の期間を徒過する 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの20日間に限られます(会社法第116条第5項)。期間の経過後にされた請求は効力を有しません。
- 請求書面に株式の数を記載しない 株式の数を明らかにしていない請求は、要件を欠くものとして争われます(会社法第116条第5項)。
- 公告を見落とす 会社は、通知に代えて公告をすることができます(会社法第116条第4項)。公告のみがされた場合には、個別の通知は届きません。
- 株券の提出を怠る 株券発行会社では株券の提出が求められます(会社法第116条第6項)。株券が見当たらない場合には、株券喪失登録の手続に相応の時間を要します。
- 価格の決定の申立ての期間を徒過する 効力発生日から30日の協議期間が満了した日の後30日以内です(会社法第117条第2項)。会社との協議を続けているうちに期間が満了してしまう例が、最も多く見受けられます。
- 安易に株式買取請求をしてしまう 会社の承諾がなければ撤回することができません(会社法第116条第7項)。
反対株主の株式買取請求権(定款変更(株式譲渡制限導入))の行使の方法
非上場株式・少数株式の反対株主は、株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができます。
この非上場株式・少数株式の反対株主の株式買取請求権を行使できる場合は、以下のような場合です。
- 株式譲渡制限導入定款変更(会社法116条)
- 株式無償割り当て(会社法116条)
- 株式を引き受ける者の募集(会社法116条)
- スクイーズアウト株式併合(会社法182条の4)
- 事業譲渡・重要子会社売却(会社法469条)
- 合併・会社分割・株式交換・株式移転(会社法785条・797条・806条)
反対株主株式買取請求権(定款変更(株式譲渡制限導入))の行使の実務上のポイント
なお、非上場株式・少数株式の株式譲渡承認請求・株式買取請求(株式譲渡制限導入定款変更)の流れ(フロー)において、特に注意すべき実務上のポイントは、以下のとおりです。
- 反対株主は2回の反対(株主総会に先立つ反対通知と株主総会における反対票の投票)が必要である点
- 委任状に反対と表示して提出しただけでは反対通知にならない可能性がある点
- 株主総会における反対の投票のみでは足りず、別途、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、株式の数を明らかにして株式買取請求をしなければならない点
- 株価決定申立はたいてい和解になるため必ずしも満額は取られないという点
反対株主の株式買取請求権(定款変更(株式譲渡制限導入))の行使の流れ(フロー)
非上場株式・少数株式の株式譲渡承認請求・株式買取請求(株式譲渡制限導入定款変更)の流れ(フロー)は、以下のとおりです。

会社法第116条2項
「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主(株主総会に先立って当該行為に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、②当該株主総会において当該行為に反対した株主)をいう。
会社法第116条3項4項
株式会社は、効力発生日の20日前までに、株主に対し、当該行為をする旨を通知(又は公告)しなければならない。


会社法第116条5項
株式買取請求は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数を明らかにしてしなければならない。4【会社法第116条6項】
株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、株式会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。

会社法第117条1項2項
株式買取請求があった場合において、非上場株式の価格の決定について、株主と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない。
非上場株式の価格の決定について、効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、株価決定申立をすることができる。

会社法第117条4項5項7項
株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
株式会社は、非上場株式の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該株式会社が公正な価格と認める額を支払うことができる。
株券発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。

会社法第117条6項
株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日に、その効力を生ずる。
よくあるご質問
株主総会の招集通知が届いてから、定款の変更の議案に気付きました。まだ間に合いますか
間に合います。株主総会の日より前に、書面によって反対する旨を会社に通知してください。そのうえで、株主総会に出席して反対の議決権を行使し、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、株式の数を明らかにして株式買取請求をいたします(会社法第116条第2項第1号イ、同条第5項)。
議決権のない種類株式を有しています。事前の反対の通知は必要ですか
必要ありません。当該株主総会において議決権を行使することができない株主は、事前の通知も株主総会における反対も要せず、反対株主となります(会社法第116条第2項第1号ロ)。ただし、株式買取請求の期間の制限は同じですので、20日間の期間内に請求する必要があります。
株主総会を欠席してしまいました。反対株主となりますか
議決権を行使することができる株主については、事前の反対の通知に加えて、当該株主総会において反対することが必要とされています(会社法第116条第2項第1号イ)。欠席された場合には、反対株主にあたらないと判断される危険が高いといえます。やむを得ず出席することができない場合には、議決権の代理行使又は書面による議決権行使の可否を、招集通知の記載によりご確認ください。
株式買取請求をした後に、やはり取り下げたいと考えるようになりました
会社の承諾を得た場合に限り、撤回することができます(会社法第116条第7項)。会社が承諾しない限り、撤回はできません。例外として、効力発生日から60日以内に価格の決定の申立てがない場合には、その期間の満了後はいつでも撤回することができます(会社法第117条第3項)。
会社が提示した価格が、あまりに低いと感じます
協議が調わない場合には、裁判所に対して価格の決定の申立てをすることになります(会社法第117条第2項)。申立てをすることができるのは、効力発生日から30日の協議期間が満了した日の後30日以内です。非上場株式であることを理由とする減価が認められないことは、最高裁判所平成27年3月26日決定の示すところです。
定款の変更そのものを止めることはできますか
手続に法令又は定款の違反がある場合には、株主総会の決議の取消しの訴え(会社法第831条第1項)を検討することになります。提訴の期間は決議の日から3か月以内です。もっとも、決議を争うことと株式買取請求をすることとは期間が並行して進行いたしますので、いずれの手段を採るかを早期に判断する必要があります。
おわりに
定款の変更によって株式に譲渡制限の定めが設けられますと、その株式は、会社の承認がなければ譲り渡すことのできない株式になります。会社に対して公正な価格での株式の買取りを求めることができるのは、この一度きりの機会です。
期間は20日間しかなく、事前の反対の通知を欠けば権利は生じません。株式の数を書き落とせば、請求の効力が争われます。そして、いったん請求をすれば、会社の承諾なくして撤回することはできません。だからこそ、招集通知をご覧になった段階で、直ちに手順を組み立てる必要があります。
弁護士法人M&A総合法律事務所は、非上場株式の少数株主の皆様の側に立って、反対の通知、株式買取請求、価格の協議及び裁判所に対する価格の決定の申立てを取り扱ってまいりました。お手元の招集通知と会社の登記事項証明書をご用意のうえ、お早めにご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
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出典
- 会社法(第107条第1項第1号、第108条第1項第4号及び第7号、第111条第2項、第116条、第117条、第223条、第309条第3項第1号、第322条第2項、第324条第3項第1号、第831条第1項、第868条第1項)
- 最高裁判所平成27年3月26日決定(金融・商事判例1466号8頁。非上場会社の株式買取請求における非流動性ディスカウントの可否)
- 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)」資料(令和8年4月20日)
- 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)」資料(令和8年8月20日)
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