株式譲渡承認請求書の書き方とフォーマット 記載事項・株式買取請求の記載漏れ・2週間の期限

この記事の位置付け
株式譲渡承認請求書の書き方に関するメインのページです。本ページは、少数株主として株式の売却を考える方に向けて、記載事項と2週間の期限の数え方をご説明します。会計帳簿の閲覧を併せて求める書面は別のページをご参照ください。
▶ 株式譲渡承認とは 譲渡制限株式の譲渡承認手続きの流れと注意点
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株式を現金に換えるための、最初の一通です
非上場の会社の株式には、定款によって譲渡の制限が付されていることがほとんどです。買ってくれる相手をご自身で見つけられたとしても、会社の承認を経なければ、その譲渡を会社に対して主張することができません。そこでまず、会社に対し、承認をするかしないかを決めてくださいと求めることになります。そのための書面が、株式譲渡承認請求書です。
もっとも、この書面の本当の意味は、承認を求めることそのものにはありません。会社が承認をしないという結論を出した場合に、会社又は会社が指定する買取人に、その株式を買い取らせることができる。そこにあります。長年にわたり買い手が見つからないと言われ続けてきた株式を、法律の力によって現金に換えるための入口が、この一通です。
ただし、その入口は、書面に一つの記載があるかないかによって、開きも閉じもいたします。
最も多い失敗は、株式買取請求の記載を落とすことです。会社法第138条第1号ハは、請求に際して「株式会社が第百三十六条の承認をしない旨の決定をする場合において、当該株式会社又は第百四十条第四項に規定する指定買取人がイの譲渡制限株式を買い取ることを請求するときは、その旨」を明らかにしなければならないと定めています。この記載を欠く請求に対しては、会社は「承認いたしません」と回答すれば足り、買い取る義務を負いません(会社法第140条第1項は、第138条第1号ハ又は第2号ハの請求を受けた場合に限って株式買取義務を定めています)。書き直して出し直せばよいとお考えかもしれませんが、その間に会社は必ず対策を進めます。最初の一通で正しく記載してください。
本ページには、当事務所が実際に用いています株式譲渡承認請求書の書式を掲載しています。書式に続けて、いつ誰が誰に対して差し出す書面か、根拠となる条文、記載を誤った場合に何が起きるか、郵送の方法、会社の典型的な対応、そして期限の数え方を、順に整理いたします。
譲渡制限が付されているかどうかの確かめ方
本来、株式は自由に譲り渡すことができるものです。もっとも、定款によって、株式を譲渡により取得することについて会社の承認を要する旨を定めることができます。中小企業の株式は、そのほとんどがこの譲渡制限株式です。令和2年の中小企業庁の調査によりますと、約74%の会社が株式に譲渡制限を付しているとされています。
譲渡制限が付されているかどうかは、会社の登記事項証明書によって確かめることができます。譲渡制限株式を発行している会社の登記事項証明書には、「株式の譲渡制限に関する規定」の欄に、「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を要する」といった記載がされています。手続に着手される前に、まずこの欄をご確認ください。
発行する株式の全部に譲渡制限が付されている会社を非公開会社といい、発行する株式の全部又は一部について譲渡制限が付されていない会社を公開会社といいます。公開会社の株式のうち譲渡制限が付されていないものについては、本ページの手続は必要ありません。公開会社の株式であっても譲渡制限が付されているもの、及び非公開会社の株式については、譲り渡すに当たり会社の承認を要しますので、本ページの手続によることになります。
四つの書式の使い分け
当事務所は、非上場株式・少数株式に関する書式を、場面ごとに分けて掲載しています。それぞれ用いる場面も、差し出す方向も異なりますので、次の対照によって、いま必要な書面をお確かめください。
1 株式譲渡承認請求書(本ページ)
株主又は株式取得者から会社へ差し出す書面です。株式を譲り渡すことの承認を求め、あわせて、承認をしない場合には会社又は指定買取人に買い取ることを請求する旨を明らかにいたします(会社法第136条から第138条まで)。
2 株式譲渡承認請求及び会計帳簿閲覧請求を兼ねた通知書
同じく株主の側から会社へ差し出す書面ですが、譲渡の承認の請求と、会計帳簿の閲覧謄写の請求とを一通で行うものです(会社法第136条以下及び第433条第1項)。価格の検討に必要な会社の財務資料を、同時に求める場合に用います。
3 株式買取通知書・供託証明通知書
向きが逆です。会社の側から株主に対して発せられる書面です(会社法第141条、第142条)。お手元に届いた場合には、その日から1週間という期限が動き出します。
4 会計帳簿閲覧謄写請求書及び仮処分命令申立書
会社が帳簿の開示に応じない場合に、裁判所に対して申し立てる書面です(会社法第433条、民事保全法第23条第2項)。
いま、この書面の持つ意味が変わりつつあります
国税庁は令和8年(2026年)4月20日から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催し、昭和39年(1964年)に公表された財産評価基本通達の抜本的な見直しを検討しています。
第1回会議(令和8年4月20日)に提出された資料によれば、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の26%から27%程度にとどまり、類似業種比準価額が純資産価額の0.5倍未満である会社が77.6%に及びます。評価対象会社の82.4%は、直前2期に配当をまったく支払っていません(出典 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)」資料・令和8年4月20日)。
さらに第5回会議(令和8年8月20日)の資料では、類似業種比準方式を存置することは困難ではないかとされ、会社規模による区分を廃止してインカムアプローチによる評価を主軸とすべきとの方向性が示されました(出典 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)」資料・令和8年8月20日)。なお、内容も時期も確定したものではありません。
会社の側も、この動きを見ています。株式が高く評価される可能性があるのであれば、その前に少数株主を整理しておきたいと考えるのは、経営者として自然なことです。手続に着手するかどうかを迷っておられる時間は、必ずしも中立ではありません。
株式譲渡承認請求書のフォーマット
⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数非上場株式を売却できずにお困りの方はこちら!
弁護士法人M&A総合法律事務所の株式譲渡承認請求書のフォーマットはメガバンクや大手M&A会社においても、頻繁に使用されています。
ここに弁護士法人M&A総合法律事務所の株式譲渡承認請求書のフォーマットを掲載しています。
M&Aや非上場株式・少数株式の譲渡を検討中の経営者の皆様でしたらご自由にご利用いただいて問題ありません。
ただし、M&A案件は個別具体的であり、このまま使用すると事故が起きる可能性もあり、実際のM&A案件の際には、弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談頂くことを強くお勧めします。
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株式譲渡承認請求書 株式会社〇〇〇〇 御中 年 月 日 譲受人は、貴社に対し、譲渡人と共同して、会社法137条、138条2号に基づき、下記の貴社株式の譲渡を受けたことについて承認を請求するとともに、貴社が当該承認をしない場合において、貴社又は会社法140条4項に規定する指定買取人が当該株式を買い取ることを請求します。 記 株式の種類 普通株式 総株式数 〇〇〇〇株 (譲渡人)住所東京都〇〇区〇〇1ー23ー456 氏名〇 〇 〇 〇 印 (譲受人)住所東京都〇〇区〇〇7ー8ー910 氏名〇 〇 〇 〇 印 以上 |
この書面は、いつ、誰が、誰に対して差し出すものか
差し出す人
二つの場合があります。第一に、譲渡制限株式を有する株主が、これから他人に譲り渡そうとする場合です(会社法第136条)。第二に、既に譲渡制限株式を取得した者が、取得したことについて承認を求める場合です(会社法第137条第1項)。上に掲げました書式は、後者、すなわち譲受人の側から、譲渡人と共同して差し出す形式のものです。
株式取得者からの請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければなりません(会社法第137条第2項)。譲渡人の協力が得られるうちに、記名押印をいただいておくことが肝要です。譲渡が済んだ後になって譲渡人と連絡が取れなくなり、請求そのものができなくなる例が、少なくありません。
差し出す相手
株式を発行した会社です。代表取締役宛てとし、登記事項証明書に記載された本店の所在地に宛てて発送いたします。本店に実体がなく、代表者が別の場所におられる場合には、本店宛てのほかに代表者の住所宛てにも発送し、いずれかが到達したことを残しておく取扱いをすることがあります。
差し出す時期
譲り受ける相手が決まっている場合には、その時点です。もっとも、実務上は、買ってくれる相手が見つからないからこそ会社に買い取らせたいという場面が大半です。その場合であっても、譲受人の氏名又は名称を明らかにしなければなりませんので(会社法第138条第1号ロ)、まず譲受人を確保したうえで、株式買取請求の記載を付して請求することになります。
押印
株式譲渡承認請求書には、通常、押印欄を設けます。法律上は認印によっても差し支えありませんが、会社から実印による押印と印鑑登録証明書の添付とを求められることがあります。
認印と実印とで、押印そのものの法律上の効力に差はありません。もっとも、認印による場合には、後に会社から「その印影は本人のものではない」「本人が押したものではない」と争われたときに、本人が押したことを立証することが困難となります。印鑑登録証明書とともに実印を押しておきますと、本人が押したものと事実上取り扱われますので、無用の争いを避けることができます。実印による押印を求められた場合にこれを拒むことはできますが、請求をする側にとって拒むことの利益はありませんので、実印によって押印されることをお勧めいたします。
根拠となる条文
- 会社法第136条 株主からの承認の請求
- 会社法第137条第1項、第2項 株式取得者からの承認の請求及び共同請求の原則
- 会社法第138条第1号イからハまで、第2号イからハまで 譲渡等承認請求の方法(明らかにすべき事項)
- 会社法第139条第1項、第2項 承認をするか否かの決定の機関及び請求者への通知
- 会社法第140条第1項から第5項まで 会社の株式買取義務、株主総会の特別決議、指定買取人の指定
- 会社法第141条第1項から第4項まで 会社による買取りの通知、供託、株券の供託、売買契約の解除
- 会社法第142条第1項から第4項まで 指定買取人による買取りの通知
- 会社法第143条第1項、第2項 譲渡等承認請求の撤回の制限
- 会社法第144条第1項から第7項まで 売買価格の決定及び裁判所への申立て
- 会社法第145条第1号から第3号まで 承認をしたものとみなされる場合
必ず明らかにしなければならない三つの事項
会社法第138条は、譲渡等承認請求は各号に定める事項を明らかにしてしなければならないと定めています。株主からの請求(同条第1号)の場合は、次の三つです。
- 当該請求をする株主が譲り渡そうとする譲渡制限株式の数(種類株式発行会社にあっては、譲渡制限株式の種類及び種類ごとの数) 会社法第138条第1号イ
- その譲渡制限株式を譲り受ける者の氏名又は名称 会社法第138条第1号ロ
- 会社が承認をしない旨の決定をする場合において、会社又は会社法第140条第4項に規定する指定買取人がその譲渡制限株式を買い取ることを請求するときは、その旨 会社法第138条第1号ハ
株式取得者からの請求(同条第2号)についても、取得した譲渡制限株式の数、株式取得者の氏名又は名称、株式の買取りを請求する旨という同じ構造です(会社法第138条第2号イからハまで)。
第三の事項が、この書面の要です
第一と第二は、どなたが書いても書き落とすことはありません。落ちるのは第三です。
会社法第140条第1項は「株式会社は、第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求を受けた場合において、第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をしない旨の決定をしたときは、当該譲渡等承認請求に係る譲渡制限株式を買い取らなければならない」と定めています。すなわち、会社の株式買取義務は、第138条第1号ハ又は第2号ハの記載があったことを要件としています。
この記載がない請求に対して会社が承認をしないという決定をしても、会社には何の義務も生じません。株主の手元には、譲渡することができないという結論だけが残ります。逆に、この記載がある請求に対して承認をしないという決定をした場合には、会社は買い取るか、指定買取人を指定するかのいずれかを選ばざるを得ません。株式を現金に換えることができるかどうかは、この一文の有無で決まります。
掲載しています書式が「貴社が当該承認をしない場合において、貴社又は会社法140条4項に規定する指定買取人が当該株式を買い取ることを請求します」という一文を必ず含んでいますのは、このためです。この一文を削って用いてはなりません。
記載を誤るとどうなるか
株式買取請求の記載を落とした場合
会社の株式買取義務が発生いたしません(会社法第140条第1項)。会社が承認をしないと回答すれば、そこで手続は終わります。改めて記載を補って請求し直すことは可能ですが、その間に会社は株主総会を開いて防御を固め、あるいは資産の状況を変えることができます。時間を失うことの損失は、想像以上に大きいものです。
株式の数を誤った場合
買取りの対象となるのは、請求に係る株式です。保有株式の一部しか記載しなければ、残りの株式は手元に残ります。種類株式発行会社では、種類及び種類ごとの数まで記載しなければなりません(会社法第138条第1号イ)。登記事項証明書と株主名簿を確認したうえで、数を確定してください。
譲受人を特定していない場合
譲り受ける者の氏名又は名称は、必ず明らかにしなければなりません(会社法第138条第1号ロ)。「適当な第三者」といった記載では要件を満たしません。
共同請求の要件を欠いた場合
株式取得者からの請求は、原則として株主名簿上の株主等と共同してしなければなりません(会社法第137条第2項)。単独で差し出した請求は、会社から不適法であるとして扱われるおそれがあります。
いったん差し出した請求は、自由には撤回できません
株式買取請求の記載を付した譲渡等承認請求をした者は、会社から買取りの通知(会社法第141条第1項)を受けた後は、会社の承諾を得た場合に限って請求を撤回することができます(会社法第143条第1項)。指定買取人からの通知(会社法第142条第1項)を受けた後は、指定買取人の承諾が必要です(会社法第143条第2項)。「思ったより安いので、やはり売るのをやめます」ということは、原則としてできません。請求の前に、価格の見通しを立てておく必要があります。
配達証明付内容証明郵便によるべきか
結論として、配達証明付内容証明郵便によるべきです。理由は二つあります。
第一に、期間の起算点を証明するためです。会社が請求の日から2週間以内に諾否の通知をしなかったときは、承認をしたものとみなされます(会社法第145条第1号)。この「請求の日」を後から争われないためには、いつ、どの内容の書面が到達したのかを、日本郵便株式会社の記録によって示すことができる方法を選ぶほかありません。普通郵便では、会社から「そのような書面は受け取っていない」と言われた時点で立証ができなくなります。
第二に、書面の内容を証明するためです。争いになったとき、会社は「株式買取請求の記載などなかった」と主張することがあります。内容証明郵便であれば、差出しの謄本が郵便局に保管されますので、記載の内容そのものを証明することができます。
内容証明郵便には、他の書類を同封することができません。譲渡契約書の写しなどを添付したい場合には、請求書の本体を配達証明付内容証明郵便で発送し、添付資料は同日付で書留郵便又は特定記録郵便によって別送するという方法を採ります。請求書の本文に「添付資料は同日付で別送いたします」と記載しておきますと、後の混乱を防ぐことができます。
なお、電子内容証明郵便を用いる場合には、書式の字数及び行数の制限が異なりますので、あらかじめ様式を確認してください。相手方が受取りを拒絶した場合であっても、到達の効力が認められることがありますので、不在返戻となった封筒は開封せずに保管してください。
会社の典型的な対応と、それへの備え
対応その一 無視する
最も多い対応です。回答をしないまま2週間が経過したときは、会社は承認をする旨の決定をしたものとみなされます(会社法第145条第1号)。会社と譲渡等承認請求者との合意により別段の定めをしたときを除きます(同条ただし書)。無視は株主にとって不利ではなく、むしろ譲渡の承認を得たのと同じ結果をもたらします。放置された場合には、期間の経過を待って、株主名簿の名義書換を請求することになります。
対応その二 不承認の通知だけを送り、その後を止める
不承認の決定を通知しながら(会社法第139条第2項)、買取りの通知(同法第141条第1項)を送ってこない場合です。この場合、会社が第139条第2項の通知の日から40日以内に第141条第1項の通知をしなかったときは、やはり承認をしたものとみなされます(会社法第145条第2号)。ただし、指定買取人が第139条第2項の通知の日から10日以内に第142条第1項の通知をした場合は除かれます。会社が沈黙している間も、期間は株主の側に有利に進んでいます。日付を必ず記録してください。
対応その三 あなたは株主ではないと主張する
株主名簿に記載がない、株券がない、名義を借りていただけだ、といった主張です。この場合には、まず株主であることを確定させる必要があります。株主名簿の閲覧謄写請求(会社法第125条)、株主名簿記載事項の記載の請求(会社法第133条)から始め、必要に応じて株主たる地位の確認の訴えを提起いたします。
対応その四 1株当たり純資産額で決着させようとする
会社は、買取りの通知に先立ち、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額を本店の所在地の供託所に供託しなければなりません(会社法第141条第2項)。この金額はあくまで手続上の担保であり、売買価格そのものではありません。会社又は譲渡等承認請求者は、買取りの通知があった日から20日以内に、裁判所に対して売買価格の決定の申立てをすることができます(会社法第144条第2項)。この20日を徒過し、かつ協議も調わなかった場合には、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額が売買価格となってしまいます(会社法第144条第5項)。裁判所は、価格の決定に当たり、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならないとされています(会社法第144条第3項)。
裁判所が売買価格を定めるに当たっては、収益還元法、ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法、純資産方式、類似会社比準方式、取引先例方式といった算定の方式又はこれらの組合せが用いられます。もっとも、裁判所が自ら価格を計算するわけではありません。通常の裁判と同様に、会社の側と株主の側とが公認会計士による株価算定書などの証拠を提出して主張立証を行い、必要に応じて裁判所が株価の鑑定を実施したうえで、価格が定められます。申立てをするに当たっては、あらかじめ算定の資料を整えておく必要があるということです。
対応その五 株券の供託を求める
対象株式が株券発行会社の株式である場合には、供託を証する書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、その交付を受けた日から1週間以内に、株券を会社の本店の所在地の供託所に供託しなければなりません(会社法第141条第3項)。この期間内に供託をしなかったときは、株券発行会社は売買契約を解除することができます(会社法第141条第4項)。株券が手元にない場合には、あらかじめ株券の発行を求めるか、喪失の手続を検討しておく必要があります。
期限 起算点と満了日
この手続は、短い期間の連なりでできています。期間を定めるのに日又は週をもってしたときは、期間の初日は算入しません(民法第140条本文)。以下、令和8年9月1日に株式譲渡承認請求書が会社に到達した場合を例として、満了日を具体的に示します。
- 会社による諾否の通知 請求の日から2週間(会社法第145条第1号。これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間) 起算日は令和8年9月2日、満了日は令和8年9月15日です。同日までに通知がなければ、会社は承認をする旨の決定をしたものとみなされます。
- 会社による買取りの通知 不承認の通知の日から40日(会社法第145条第2号) 不承認の通知が令和8年9月10日にあった場合、起算日は9月11日、満了日は令和8年10月20日です。
- 指定買取人による通知 不承認の通知の日から10日(会社法第145条第2号括弧書き) 同じ例で、満了日は令和8年9月20日です。
- 株券の供託 供託を証する書面の交付を受けた日から1週間(会社法第141条第3項、第142条第3項) 交付を受けた日が令和8年10月1日であれば、起算日は10月2日、満了日は令和8年10月8日です。徒過すると売買契約を解除されるおそれがあります(会社法第141条第4項、第142条第4項)。
- 売買価格の決定の申立て 買取りの通知があった日から20日(会社法第144条第2項、第7項) 通知が令和8年10月1日にあった場合、満了日は令和8年10月21日です。徒過し、かつ協議も調わないときは、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額が売買価格となります(会社法第144条第5項)。
この手続で最も多い失敗は、売買価格の決定の申立ての20日を徒過することです。買取りの通知が届いてから20日という期間は、鑑定人を探し、資料を集め、申立書を作成するには極めて短いものです。承認の請求を差し出した時点で、この日が来ることを見込んで準備を始めてください。会社は、株主が準備に手間取ることを見越して通知を発することがあります。
なお、期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間はその翌日に満了いたします(民法第142条)。裁判所への申立てについては、民事訴訟法及び民事訴訟規則の定めにも留意する必要があります。日付の計算に迷われた場合には、必ず余裕をもって行動してください。
承認された場合と、承認されなかった場合
承認された場合
会社が承認をする旨の決定をした場合、又は期間の経過によって承認をしたものとみなされた場合には、譲渡は会社に対しても効力を主張することができます。次は株主名簿の名義書換(会社法第133条)です。会社が名義書換に応じない場合には、名義書換請求の訴え等を検討いたします。
名義書換の請求は、原則として、譲受人と譲渡人とが共同してしなければなりません(会社法第133条第2項)。譲渡人の協力が得られないまま単独で請求することができるのは、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令に定められた場合に限られます。名義書換が済みましたら、譲受人は、会社に対し、株主名簿に記載された事項を記載した書面の交付を請求することができます(会社法第122条第1項)。この書面によって、株主名簿の書換えが実際に行われたことを確かめることができますので、必ず交付を受けておいてください。
承認されなかった場合
株式買取請求の記載を付しておれば、会社は対象株式を買い取らなければならず、買い取る旨及び買い取る株式の数を定めなければなりません(会社法第140条第1項各号)。この決定は株主総会の決議によらなければならず(同条第2項)、株主総会の特別決議が必要です(会社法第309条第2項第1号)。譲渡等承認請求者は、この株主総会において議決権を行使することができません(会社法第140条第3項本文)。ただし、その者以外の株主の全部が議決権を行使することができない場合は、この限りではありません(同項ただし書)。
会社に代えて指定買取人を指定することもでき(会社法第140条第4項)、その指定は株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)の決議によります(同条第5項本文)。定款に別段の定めがある場合は、この限りではありません(同項ただし書)。
会社が自ら買い取る場合には、買取りの対価として交付する金銭等の帳簿価額の総額は、その効力を生ずる日における分配可能額を超えることができません(会社法第461条第1項第1号)。これに違反して買取りがされたときは、金銭等の交付を受けた者及び業務執行者は、会社に対し、交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負います(会社法第462条第1項)。また、買取りをした事業年度の末日に欠損が生じたときは、業務執行者は会社に対し欠損の額を支払う義務を負うことがあります(会社法第465条第1項第1号)。会社の財産の状況によっては、会社が買い取ることのできる株式の数に限りが生ずるということです。
なお、この買取りに際して、他の株主が自己をも売主に加えるよう会社に請求すること(売主追加請求)はできません。譲渡等承認請求に係る買取りは、特定の株主からの自己株式の取得の手続によらないものとされているためです。
よくあるご質問
掲載されている書式をそのまま使ってもよろしいですか
ご自由にお使いいただいて差し支えありません。ただし、株式の数、種類、譲受人の表示、会社の商号及び本店の所在地は、登記事項証明書及び株主名簿に基づいて正確に記載してください。また、株式買取請求の記載(会社法第138条第1号ハ又は第2号ハ)に当たる一文は、絶対に削らないでください。
譲受人が見つからないのですが、会社に買い取らせることはできますか
譲り受ける者の氏名又は名称を明らかにしなければなりませんので(会社法第138条第1号ロ)、譲受人を定めないまま請求することはできません。実務では、まず譲受人となる方を確保したうえで請求し、会社が承認をしない場合に買取りへ進むという組立てをいたします。
会社から何の返事もありません。どうなりますか
請求の日から2週間以内に会社が承認をするか否かの決定の内容を通知しなかったときは、会社は承認をする旨の決定をしたものとみなされます(会社法第145条第1号、第139条第2項)。到達の日を証明できるようにしておくことが前提ですので、配達証明付内容証明郵便によることが重要です。
会社が提示してきた価格が低すぎます
売買価格は、まず会社と譲渡等承認請求者との協議によって定めます(会社法第144条第1項)。協議が調わない場合には、買取りの通知があった日から20日以内に、裁判所に対して売買価格の決定の申立てをすることができます(会社法第144条第2項)。裁判所は、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければなりません(同条第3項)。この20日を過ぎますと、原則として1株当たり純資産額を基準とする額に固定されてしまいます(同条第5項)。
会社の財務内容が分からないまま請求してよいものでしょうか
価格の見通しを立てるためには、会社の財務資料が必要です。計算書類等の閲覧等の請求には持株数の要件がありません(会社法第442条第3項)。議決権又は発行済株式(自己株式を除きます。)の100分の3以上をお持ちであれば、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧謄写を請求することもできます(会社法第433条第1項)。承認の請求と帳簿の閲覧請求とを一通の書面で行う方法もありますので、そちらのページも併せてご覧ください。
請求を出した後で、やはり売却をやめることはできますか
会社から買取りの通知を受けた後は、会社の承諾を得た場合に限り撤回することができます(会社法第143条第1項)。指定買取人からの通知を受けた後は、指定買取人の承諾が必要です(同条第2項)。事実上、撤回は困難であるとお考えください。
おわりに
株式譲渡承認請求書は、たった一枚の書面です。しかし、その一枚に株式買取請求の記載があるかないかで、株式が現金に換わるか、それとも「譲渡できません」という回答だけが残るかが分かれます。そして、いったん手続が動き出しますと、2週間、40日、10日、1週間、20日という短い期間が次々に到来いたします。
非上場株式の評価は、いま国の側から見直しの検討が進められています。会社が少数株主の整理を急いでいるとすれば、それ自体が、その株式に相応の価値があることの現れです。書面の一文を落としたために、その価値を手放してしまうことのないようにしてください。
弁護士法人M&A総合法律事務所は、非上場株式の少数株主の皆様の側に立って、譲渡の承認の請求、会社に対する買取りの請求、価格の交渉及び裁判所への申立てを取り扱ってまいりました。お手元にどのような資料が残っているのか、会社との間でどのようなやり取りがあったのか、まずはお聞かせください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
株式譲渡承認請求書の作成に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)
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出典
- 会社法(第125条、第133条、第136条、第137条、第138条、第139条、第140条、第141条、第142条、第143条、第144条、第145条、第309条第2項第1号、第433条、第442条)
- 民法(第140条、第142条)
- 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)」資料(令和8年4月20日)
- 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)」資料(令和8年8月20日)
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