非公開会社の株式を売却したい少数株主が弁護士に依頼するとき 譲渡制限の壁をどう越えるか

この記事の位置付け

非公開会社の株式をめぐるご相談は、会社が公開会社に当たるかどうかを定款により確かめる場面と、譲渡の承認を求めて実際に売却を進める場面とに分かれますので、本記事と関連するページとを次のとおり切り分けます。

本記事は、ご自身が株式を持つ会社が非公開会社に当たるかどうかを確かめ、譲渡制限という仕組みが少数株主の立場をどのように変えるかを述べる入口のページです。承認の請求から価格の決定に至る手続の詳細、価格そのものの争い方、及び定款の取得の方法は、次の各ページに集約しています。

▶ 非上場株式の売却を弁護士に依頼するとき 少数株主が任せられる手続と、依頼の前に確認する事項

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お持ちの株式を売ろうとしたところ、会社の承認が必要だと言われた、あるいは定款に譲渡制限の定めがあるので買い手を自由に選ぶことはできないと言われた、というご相談を多く頂戴しています。このような会社を、会社法は非公開会社と呼びます。日常の言葉である「非上場会社」や「同族会社」とは、指し示す範囲が少しずつ異なります。

本ページは、非公開会社の株式を持ちながら、売却したい、あるいは現金に換えたいとお考えの少数株主の方に向けて、非公開会社という言葉の意味、譲渡制限が少数株主の立場をどのように変えるか、そして弁護士に依頼した場合に何が動くのかを整理したものです。

結論から申し上げます。譲渡制限は、株式を売ることを禁じる定めではありません。会社の承認という関門を1つ置く定めにすぎません。そして会社法は、会社が承認をしないと決めた場合には、会社又は会社が指定する買取人が買い取る仕組みを用意しています(会社法第140条)。手順を踏めば、譲渡制限のある株式であっても現金に換える道は開かれています。

この記事の要点

第1に、非公開会社とは、発行する全部の株式について、譲渡による取得に会社の承認を要する旨の定款の定めがある株式会社をいいます(会社法第2条第5号)。

第2に、譲渡制限は売却の禁止ではなく、承認という関門です。会社が承認をしないと決めた場合には、会社又は指定買取人が買い取ります。

第3に、会社の決定の通知は2週間、買取りの通知を受けた後の売買価格の決定の申立ては20日と、期限が短く定められています。

第4に、期限が過ぎますと、承認をしたものとみなされ、又は法定の算式による額で価格が確定します。時間の管理が結論を左右します。

目次
  1. 非公開会社とは何か 会社法第2条第5号にいう公開会社の反対の概念です
    1. 非上場会社との違い
    2. 同族会社との違い
    3. 閉鎖会社という呼び方
  2. ご自身の会社が非公開会社かどうかを確かめる方法
    1. 登記事項証明書で確かめる
    2. 定款で確かめる
  3. 非公開会社と公開会社とで、株主の立場はどう違うのか
  4. 譲渡制限が少数株主にもたらす3つの不利益
    1. 第1 買い手を自由に選ぶことができません
    2. 第2 価格の相場が形成されません
    3. 第3 時間が経つほど立場が弱くなります
  5. 譲渡制限の壁を越える3つの道筋
    1. 道筋1 会社又は支配株主との任意の交渉
    2. 道筋2 株式譲渡承認請求と、これに伴う買取りの請求
    3. 道筋3 相続その他の一般承継を契機とする場面
  6. 株式譲渡承認請求の手順と期限
    1. 買取りの請求を書き落とすと、道筋が閉じます
    2. 会社が黙っている場合 みなし承認
  7. 売買価格はどのように定まるのか
    1. まずは協議です
    2. 20日以内に申し立てなければ、法定の額で確定します
    3. 裁判所は何を考慮するのか
  8. 弁護士に依頼するとき、何を任せることができるのか
    1. 第1 定款、登記及び株主名簿の取得と読み解き
    2. 第2 譲渡等承認請求書の作成と発送
    3. 第3 期限の管理
    4. 第4 会社との協議及び交渉
    5. 第5 売買価格の決定の申立て及び関連する手続
    6. 第6 費用の考え方
  9. 依頼の前に確認していただきたい事項
  10. よくあるご質問
    1. 定款に譲渡制限があると、株式は売れないのですか
    2. 会社が「うちは非公開会社だから買い取る義務はない」と言っています
    3. 会社が示した金額は、税理士が算定したものだから正しいのではありませんか
    4. 親族が経営する会社の株式です。もめたくないのですが、それでも請求すべきですか
    5. 非公開会社の株式を買い取る業者から連絡がありました
    6. 相続で取得した株式です。承認は要りますか
  11. まとめ
  12. 出典

非公開会社とは何か 会社法第2条第5号にいう公開会社の反対の概念です

会社法は、非公開会社という言葉を直接には定義していません。定義されているのは公開会社の方です。会社法第2条第5号は、公開会社を「その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社」と定めています。読みにくい定めですが、噛み砕きますと、1種類でも自由に譲渡することができる株式がある会社が公開会社ということです。

その反対、すなわち発行する全部の株式について、譲渡による取得に会社の承認を要する旨の定款の定めがある会社が、非公開会社です。実務では、譲渡制限会社、株式譲渡制限会社という呼び方もされます。いずれも同じ会社を指しています。

譲渡制限の定めは、発行する全部の株式の内容として設ける場合(会社法第107条第1項第1号)と、種類株式の内容として設ける場合(会社法第108条第1項第4号)とがあります。全部の株式に定めがあれば非公開会社、一部の種類株式にだけ定めがあり他の種類株式を自由に譲渡することができるのであれば公開会社です。上場していない会社であっても、後者に当たれば会社法上は公開会社です。

非上場会社との違い

非上場会社は、金融商品取引所に株式を上場していない会社をいいます。取引所に上場しているかどうかという事実の問題です。これに対し非公開会社は、定款に譲渡制限の定めがあるかどうかという法律上の問題です。物差しが異なりますので、言葉としては重なり合うものの、同じではありません。

日本の中小企業の大半は、非上場会社であり、かつ非公開会社です。もっとも、両者は常に一致するわけではありません。上場していない会社であっても、定款に譲渡制限の定めを置いていなければ、会社法上は公開会社です。株式の分散が進んだ老舗の会社や、かつて店頭で株式を取り扱っていた会社に、このような例が見られます。この場合、株主は会社の承認を経ることなく株式を譲渡することができますので、売却の進め方は大きく変わります。

同族会社との違い

同族会社は、法人税法第2条第10号に定めのある税法上の概念で、上位3株主のグループが議決権の50%を超えて保有する会社などをいいます。会社法上の非公開会社とは、別の物差しによる分類です。同族会社であって非公開会社である例が最も多いものの、同族会社でありながら定款に譲渡制限の定めがない会社もあります。ご相談の場面では、「同族会社だから売れない」と説明を受けたという方が少なくありませんが、売却の可否を決めるのは同族会社かどうかではなく、定款の譲渡制限の定めの有無です。

閉鎖会社という呼び方

閉鎖会社は、法令上の用語ではなく、株主の数が少なく株式の流通がない会社を指す講学上の呼び方です。会社法上の非公開会社とほぼ重なる範囲を指して用いられます。書籍や記事によって指す範囲が異なりますので、ご相談の際には、定款の定めがどうなっているかという事実に立ち返ってご確認いただくのが確実です。

ご自身の会社が非公開会社かどうかを確かめる方法

非公開会社であるかどうかは、登記事項証明書と定款の2つで確かめることができます。いずれも、株式の売却を考え始めた段階で最初に取得していただきたい資料です。

登記事項証明書で確かめる

株式の譲渡制限に関する規定は、登記事項です(会社法第911条第3項第7号)。したがって、法務局で当該会社の登記事項証明書を取得すれば、「株式の譲渡制限に関する規定」という欄の有無により、譲渡制限の定めがあるかどうかが分かります。登記事項証明書は、株主でなくても、誰でも手数料を納めて取得することができます。

この欄には、例えば「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない。」といった文言が記載されています。承認をする機関が取締役会なのか、株主総会なのか、代表取締役なのかも、この欄から読み取ることができます。承認をする機関は、後に述べる手続の進み方を左右しますので、最初に確認していただきたい事項です。

定款で確かめる

定款には、登記事項証明書には現れない定めが置かれていることがあります。例えば、会社が決定の内容を通知するまでの期間を2週間より短く定めている場合(会社法第145条第1号)、相続人等に対する売渡しの請求の定めを置いている場合(会社法第174条)、承認をする機関について別段の定めを置いている場合(会社法第139条第1項ただし書)などです。

株主は、会社の営業時間内であればいつでも、定款の閲覧又は謄本若しくは抄本の交付を請求することができます(会社法第31条第2項)。会社が応じない場合の進め方は、定款の閲覧及び謄写を扱うページに整理しています。

非公開会社と公開会社とで、株主の立場はどう違うのか

譲渡制限の定めがあることにより、会社法上の取扱いが幾つも変わります。主なものを整理します。

項目 非公開会社 公開会社
株式の譲渡 会社の承認を要します(会社法第107条第1項第1号) 承認を要しない株式があります
取締役会の設置 任意です 必要です(会社法第327条第1項第1号)
取締役の任期 定款により10年まで伸ばすことができます(会社法第332条第2項) 原則として2年です(会社法第332条第1項)
株主総会の招集の通知 原則として1週間前までです(会社法第299条第1項) 2週間前までです(会社法第299条第1項)
募集株式の発行 株主総会の特別決議によります(会社法第199条第2項、第309条第2項第5号) 原則として取締役会の決議によります(会社法第201条第1項)

取締役の任期を10年まで伸ばすことができる点は、少数株主にとって見過ごせない相違です。役員の改選の機会が10年に1度しか巡ってこない会社では、株主総会が形骸化し、株主が経営に関与する機会が実際上なくなります。定款を確認していただきたい理由の1つです。

譲渡制限が少数株主にもたらす3つの不利益

譲渡制限そのものは、会社にとって好ましくない者が株主となることを防ぐための正当な仕組みです。もっとも、少数株主の側から見ますと、次の3つの不利益をもたらします。

第1 買い手を自由に選ぶことができません

市場がありませんので、買い手を探すこと自体が容易ではありません。加えて、買い手が見つかったとしても、会社が承認をしなければ、その買い手に売ることはできません。結局、現実の交渉の相手方は、会社又は支配株主に絞られます。相手方が1つに絞られるという構造そのものが、価格の交渉における立場を弱くします。

第2 価格の相場が形成されません

取引所の相場がありませんので、いくらが適正なのかを示す客観的な指標が存在しません。会社の側は、しばしば税務上の評価額、とりわけ配当還元方式による低い額を「これが時価です」と説明してきます。しかし、税務上の評価は課税のための算定であって、当事者間の売買価格を法的に拘束するものではありません。この点をご存じないまま合意してしまい、後に大きな差額に気付かれる例が後を絶ちません。

第3 時間が経つほど立場が弱くなります

相続が重なれば株主の数が増え、意思の統一が難しくなります。会社の側で持株比率が高まれば、株主総会の決議による組織再編やスクイーズアウトにより、株主の地位そのものを失うこともあります。資料も散逸します。「いつか会社が買ってくれるだろう」とお待ちになる間に、選択肢が減っていくのが実際です。

譲渡制限の壁を越える3つの道筋

非公開会社の株式を現金に換える道筋は、大きく3つに分かれます。どの道筋を選ぶかにより、要する期間も、費用も、得られる金額も変わります。

道筋1 会社又は支配株主との任意の交渉

会社に自己株式として取得してもらう方法(会社法第155条第3号、第156条以下)、又は支配株主に個人として買い取ってもらう方法です。合意さえ整えば最も早く終わります。特定の株主から会社が買い取る場合には、株主総会の特別決議を要し、他の株主に自らも売主に加えるよう請求する権利が生じますので(会社法第160条第2項、第3項)、会社の側にも手続の負担があります。この負担が、交渉が動かない理由になっていることも少なくありません。

道筋2 株式譲渡承認請求と、これに伴う買取りの請求

会社法が用意した法定の道筋です。買い手を定めて会社に承認を求め、あわせて、承認をしない場合には会社又は指定買取人が買い取ることを請求します(会社法第136条、第138条第1号ハ)。会社が承認をしないと決めた場合、会社又は指定買取人は買い取らなければなりません(会社法第140条第1項、第4項)。価格が折り合わないときは、裁判所に売買価格の決定を申し立てます(会社法第144条第2項)。任意の交渉が動かないときに、会社を交渉の席に着かせる力を持つのがこの道筋です。

道筋3 相続その他の一般承継を契機とする場面

相続により株式を取得した場合、譲渡制限の定めがあっても、相続そのものは承認を要しません。他方、定款に相続人等に対する売渡しの請求の定めがあるときは、会社が相続人に対し株式を売り渡すよう請求することができます(会社法第174条)。この請求がされた場合の価格も、協議が調わなければ裁判所が定めます(会社法第177条第2項)。相続を契機とする場面は、会社の側から動いてくることがある点で、他の2つと性質が異なります。

株式譲渡承認請求の手順と期限

道筋2の手順を、期限とともに整理します。期限はいずれも短く、過ぎますと取り返しがつきません。

段階 根拠となる条文 期限
譲渡等承認請求を会社に対してする 会社法第136条、第138条 株主の側でいつでもすることができます
会社が承認をするかどうかを決定し、通知する 会社法第139条第1項、第2項 請求の日から2週間(定款でこれを下回る期間を定めることができます)
会社が買い取る旨及び買い取る株式の数を通知する 会社法第140条第1項、第141条第1項 承認をしない旨の通知の日から40日(定款でこれを下回る期間を定めることができます)
指定買取人が買い取る旨及び買い取る株式の数を通知する 会社法第140条第4項、第142条第1項 会社法第145条第2号及び第3号並びに会社法施行規則第26条の定めるところによります
売買価格の決定を裁判所に申し立てる 会社法第144条第2項、第7項 買取りの通知があった日から20日

買取りの請求を書き落とすと、道筋が閉じます

譲渡等承認請求には、承認をしない場合に会社又は指定買取人が買い取ることを請求する旨を記載しなければなりません(会社法第138条第1号ハ)。この記載を欠いた請求に対して会社が承認をしないと決めますと、会社に買取りの義務は生じません。株主の手元には、売ることのできない株式が残るだけです。書式の1行の有無が結論を分けますので、ご自身で作成される場合には、この点を必ずご確認ください。

会社が黙っている場合 みなし承認

会社が請求の日から2週間以内に決定の内容を通知しないときは、会社は承認をしたものとみなされます(会社法第145条第1号)。承認をしない旨の通知をしたのに、その後の買取りの通知を所定の期間内にしないときも同様です(会社法第145条第2号、第3号、会社法施行規則第26条)。会社が対応を先送りにしている場面では、この規定が株主の側に有利に働きます。請求をした日、通知が届いた日を、封筒とともに残しておいてください。

売買価格はどのように定まるのか

会社又は指定買取人から買取りの通知が届きますと、次は価格の話になります。

まずは協議です

売買価格は、当事者の協議により定めます(会社法第144条第1項)。協議が調えば、その額が売買価格です。会社の側は、買取りの通知の際に、1株当たり純資産額に買い取る株式の数を乗じて得た額を供託し、供託を証する書面を交付します(会社法第141条第2項)。この供託の額を「これが価格です」と説明されることがありますが、供託の額は手続を進めるための担保であって、売買価格そのものではありません。

20日以内に申し立てなければ、法定の額で確定します

協議が調わない場合、買取りの通知があった日から20日以内に、裁判所に対し売買価格の決定の申立てをすることができます(会社法第144条第2項)。この20日を過ぎ、かつ協議も調わないときは、1株当たり純資産額に株式の数を乗じて得た額が売買価格となります(会社法第144条第5項)。純資産の額を基礎とする算式ですので、収益力の高い会社では、本来の価値より大きく低い額で確定してしまうことがあります。20日は、株主にとって最も重い期限です。

裁判所は何を考慮するのか

裁判所は、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮して、売買価格を決定します(会社法第144条第3項)。実務では、次の評価の手法が、会社の規模、業種、株主の属性に応じて組み合わされます。

  • 純資産価額法 貸借対照表の資産及び負債を時価に引き直して算定する方法です。不動産を多く持つ会社で重く見られます。
  • 収益還元法 将来の利益を一定の割合で割り戻して算定する方法です。安定した利益を上げている会社で用いられます。
  • DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法) 将来の資金の流れを現在の価値に割り引いて算定する方法です。事業計画の合理性が争点となります。
  • 配当還元法 配当の額を基礎に算定する方法です。支配権を持たない少数株主の株式について用いられることがあります。
  • 類似業種比準方式 同業種の上場会社の指標と比較する方法です。税務上の評価で用いられる考え方です。

どの手法をどの割合で用いるかにより、算定される額は数倍の幅で動きます。会社の側が示す1つの算定書をそのまま受け入れるのではなく、前提となる数値と手法の選択を検証することが、価格の争いの中心です。

弁護士に依頼するとき、何を任せることができるのか

非公開会社の株式の売却について、当事務所が実際にお引き受けしている業務は、次のとおりです。

第1 定款、登記及び株主名簿の取得と読み解き

登記事項証明書を取得し、譲渡制限の定めの内容と承認をする機関を確定します。あわせて、会社に対し定款の閲覧又は謄本の交付を請求し(会社法第31条第2項)、株主名簿の閲覧及び謄写を請求します(会社法第125条第2項)。株主名簿により、他に同じ立場の株主がおられるか、持株比率がどうなっているかが分かります。

第2 譲渡等承認請求書の作成と発送

買取りの請求の記載(会社法第138条第1号ハ)を含む請求書を作成し、配達証明付きの内容証明郵便により発送します。到達の日を証拠として残すことが、その後の期限の管理の出発点となります。

第3 期限の管理

2週間、40日、20日という期限を、こちらで管理します。会社の側が期限を徒過すれば、みなし承認の主張ができます。株主の側が20日を徒過すれば、法定の算式による額で確定します。期限の管理そのものが、依頼していただく実益の中心です。

第4 会社との協議及び交渉

価格の根拠を示し、会社の算定の前提を検証したうえで協議に臨みます。会社の側にも弁護士が就くことが通常ですので、交渉は法律の議論として進みます。感情的な対立を避け、資料と条文に基づいて話を進めることができる点も、代理人を立てる利点です。

第5 売買価格の決定の申立て及び関連する手続

協議が調わない場合には、裁判所に売買価格の決定を申し立てます。あわせて、会社の財務の実態を確かめるため、会計帳簿の閲覧及び謄写の請求をすることがあります(会社法第433条第1項)。総株主の議決権の100分の3以上又は発行済株式の100分の3以上を有する株主に認められた権利です。

第6 費用の考え方

着手金及び報酬の考え方は、弁護士費用のページに掲げています。少数株式の売却における費用の考え方については、別のページに整理しています。

依頼の前に確認していただきたい事項

ご相談の前に、次の5点をご確認いただけますと、初回から具体的な見通しをお示しすることができます。

第1に、会社の登記事項証明書を取得し、「株式の譲渡制限に関する規定」の欄の有無と、承認をする機関をご確認ください。

第2に、お持ちの株式の数と、発行済株式総数をご確認ください。持株比率が100分の3以上であるかどうかにより、会計帳簿の閲覧及び謄写の請求をすることができるかどうかが分かれます。

第3に、株主であることを示す資料をご確認ください。株券、株主名簿記載事項証明書、配当の通知、相続の場合には遺産分割協議書などです。会社が株主としての地位を争ってくる場面もありますので、最初に押さえておくべき資料です。

第4に、会社から届いた書面を、封筒とともに時系列に並べてください。日付が期限の起算点となります。

第5に、これまでに会社との間で交わした合意や覚書があれば、ご確認ください。取得の際に額面額で会社に譲渡する旨の合意をしている例があります。この合意の効力は場面により評価が分かれますので、内容をそのまま拝見できると助かります。

よくあるご質問

定款に譲渡制限があると、株式は売れないのですか

売ることはできます。譲渡制限は、譲渡そのものを禁じる定めではなく、会社の承認を要するという定めです。会社が承認をしない場合には、会社又は会社が指定する買取人が買い取ることになりますので(会社法第140条)、買い手が会社側に移るだけです。売却の道が閉じるわけではありません。

会社が「うちは非公開会社だから買い取る義務はない」と言っています

正確ではありません。買取りの義務が生じるのは、株主が譲渡等承認請求の際に買取りの請求を併せてしており(会社法第138条第1号ハ)、かつ会社が承認をしないと決めた場合です。この2つがそろえば、会社又は指定買取人は買い取らなければなりません(会社法第140条第1項、第4項)。請求の書き方が結論を左右しますので、ご相談ください。

会社が示した金額は、税理士が算定したものだから正しいのではありませんか

税務上の評価と、当事者間の売買価格とは、目的が異なります。税務上の評価は課税のための算定であり、裁判所が会社法第144条第3項により定める売買価格を拘束するものではありません。会社の側の算定書は、前提となる数値と手法の選択を1つずつ検証すべき資料です。

親族が経営する会社の株式です。もめたくないのですが、それでも請求すべきですか

まず任意の協議から入るのが通常です。譲渡等承認請求は、協議が動かない場合の次の一手です。もっとも、協議を続けている間にも、相続により株主が増え、資料が失われ、会社の側の持株比率が高まってまいります。協議を試みる期間をあらかじめ区切っておくことを、ご一緒に決めていただくようにしています。

非公開会社の株式を買い取る業者から連絡がありました

譲渡制限のある株式であっても、買取業者が株主に接触してくる例があります。業者に譲渡する場合も、会社の承認の手続は同じように必要です。業者に売る場合と、弁護士に依頼して会社との間で進める場合との違いは、別のページに整理しています。手取りの額と、その後に生じ得る負担とを見比べてご判断ください。

相続で取得した株式です。承認は要りますか

相続による取得は、譲渡ではありませんので、会社の承認を要しません。もっとも、定款に相続人等に対する売渡しの請求の定めがあるときは、会社の側から売渡しを請求されることがあります(会社法第174条)。相続の開始を会社が知った時から1年以内という期間の制限があります(会社法第176条第1項ただし書)。定款の確認が急がれる場面です。

まとめ

非公開会社とは、発行する全部の株式について、譲渡による取得に会社の承認を要する旨の定款の定めがある株式会社をいいます(会社法第2条第5号)。非上場会社が事実の問題であるのに対し、非公開会社は定款の定めの有無という法律上の問題です。まずは登記事項証明書と定款により、ご自身の会社がどちらに当たるかを確かめてください。

譲渡制限は、売却を禁じる定めではありません。会社の承認という関門を置く定めにすぎず、会社が承認をしないと決めた場合には、会社又は指定買取人が買い取ります(会社法第140条)。譲渡等承認請求に買取りの請求を併せて記載することが(会社法第138条第1号ハ)、この道筋を開く鍵です。

そして、2週間、40日、20日という期限が定められています。とりわけ、買取りの通知があった日から20日以内に売買価格の決定を申し立てなければ、1株当たり純資産額を基礎とする法定の算式で価格が確定します(会社法第144条第2項、第5項)。迷っておられる時間そのものが、選択肢を減らしてまいります。お手元の書面の日付をご確認のうえ、早い段階でご相談ください。

出典

会社法(平成17年法律第86号)第2条第5号、第31条第2項、第107条第1項第1号、第108条第1項第4号、第125条第2項、第136条、第138条、第139条、第140条、第141条、第142条、第144条、第145条、第155条第3号、第160条、第174条、第176条第1項、第177条第2項、第199条第2項、第201条第1項、第299条第1項、第309条第2項第5号、第327条第1項第1号、第332条第1項及び第2項、第433条第1項、第911条第3項第7号

会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第26条

法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第10号

具体的なご相談をお考えの皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。