合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付に反対するとき 反対株主の株式買取請求権の行使の手順と期限

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組織再編に反対する場合の買取請求に関するメインのページです。本ページは、少数株主として株式の売却を考える方に向けて、合併や株式交換などに反対する際の手順と期限をご説明します。定款の変更の場面は別のページをご参照ください。

▶ 株式買取請求権とは 少数株主が非上場株式を売る手続きと注意点

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目次
  1. 「合併します」「持株会社をつくります」と知らされた株主の皆様へ
  2.  まず、ご自身がどの立場の株主であるかを確定してください
  3.  株式買取請求をすることができない場合
  4.  誰が「反対株主」にあたるのか
    1. 議決権を行使することができる株主の場合 二段階の反対が必要です
    2. 議決権を行使することができない株主の場合 事前の通知も反対も要しません
  5.  手続の流れと、日を単位とした期限
    1. (1) 吸収型の組織再編(吸収合併、吸収分割、株式交換)及び株式交付の場合
    2. (2) 新設型の組織再編(新設合併、新設分割、株式移転)の場合 起算点が異なります
    3. (3) 株式の数を明らかにして請求すること
    4. (4) 株券発行会社の場合 株券の提出
    5. (5) 株式買取請求の撤回は、原則としてできません
  6.  価格の協議と、裁判所に対する価格の決定の申立て
    1. (1) 協議が調った場合 60日以内の支払
    2. (2) 協議が調わない場合 30日以内の協議と、その満了の日後30日以内の申立て
    3. (3) 法定利率による利息と、公正な価格と認める額の支払
    4. (4) 買取りの効力が生ずる時期
  7.  「公正な価格」はどのように定まるのか
    1. (1) 企業価値が増加する場合と、増加しない場合とを分けて考えます
    2. (2) 価格を算定する基準となる日は、株式買取請求がされた日です
    3. (3) 非上場株式について、市場性がないことを理由とする減価は認められていません
  8.  組織再編そのものを争う手段
  9.  いま、非上場株式の評価は見直しの局面にあります
  10.  実務上、株主が失敗しがちな点
  11. 反対株主の株式買取請求権(組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転)に反対の場合)の行使の方法
  12. 反対株主株式買取請求権(組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転))の行使の実務上のポイント
  13. 反対株主の株式買取請求権(組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転))の行使の流れ(フロー)
    1. 会社法第785条2項
    2. 会社法第785条3項4項
    3. 会社法第785条5項
    4. 会社法第785条6項
    5. 会社法第786条1項2項
    6. 会社法第786条4項5項7項
    7. 会社法第786条6項
  14. よくあるご質問
    1. 私の会社が他社に吸収合併されます。何をすればよいですか
    2. 持株会社をつくる株式移転が行われます。期間は同じですか
    3. 合併する側(存続会社)の株主です。株式買取請求はできますか
    4. 議決権のない種類株式を有しています。事前の反対の通知は必要ですか
    5. 株式買取請求をした後に、やはり取り下げたいと考えるようになりました
    6. 会社が提示した対価が、あまりに低いと感じます
    7. 組織再編そのものを止めることはできますか
  15. おわりに
  16. 関連ページ
  17. 出典

「合併します」「持株会社をつくります」と知らされた株主の皆様へ

株主総会の招集通知が届き、議案に「吸収合併契約承認の件」「株式移転計画承認の件」といった記載がある。対価として交付される株式や金銭の額を確かめると、ご自身が考えていた株式の価値を大きく下回っている。このようなご相談をいただくことがあります。

合併、会社分割、株式交換、株式移転及び株式交付といった組織再編に反対する株主は、会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができます(会社法第785条第1項、第797条第1項、第806条第1項、第816条の6第1項)。

もっとも、組織再編の場合には、ご自身がどの会社の株主であるか、また、その組織再編が吸収型か新設型かによって、根拠となる条文も、期間の起算点も異なります。本記事では、組織再編に伴う反対株主の株式買取請求権に限り、その手順と期限を整理いたします。

この記事の位置付け

反対株主の株式買取請求権は、場面ごとに根拠となる条文が異なり、期間の起算点も異なります。条文を取り違えますと、期間の計算を誤ります。ご自身の置かれている場面に応じて、次の各記事をご覧ください。

本記事は、手続と期限を解説するものです。弁護士に代理を依頼する場合の進め方、取扱いの範囲及び費用につきましては、反対株主の株式買取請求権に関するご相談のご案内をご覧ください。

 まず、ご自身がどの立場の株主であるかを確定してください

組織再編における株式買取請求権は、株主が誰の株主であるかによって根拠条文が分かれます。次の表により、ご自身の立場を確定してください。

株主の立場 根拠条文 会社からの通知の時期 株式買取請求をすることができる期間
吸収合併により消滅する会社、吸収分割をする会社、株式交換をする完全子会社の株主 会社法第785条、第786条 効力発生日の20日前まで 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで
吸収合併存続会社、吸収分割承継会社、株式交換完全親会社の株主 会社法第797条、第798条 効力発生日の20日前まで 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで
新設合併により消滅する会社、新設分割をする会社、株式移転をする完全子会社の株主 会社法第806条、第807条 株主総会の決議の日から2週間以内 通知又は公告をした日から20日以内
株式交付親会社の株主 会社法第816条の6、第816条の7 効力発生日の20日前まで 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで

新設型の組織再編(新設合併、新設分割、株式移転)だけが、期間の起算点を異にいたします。効力発生日ではなく、会社からの通知又は公告の日を起算点として20日以内に請求しなければなりません(会社法第806条第5項)。ここを取り違える例が少なくありません。

 株式買取請求をすることができない場合

次の場合には、株式買取請求をすることができません。ご自身が該当しないかどうかを、まずご確認ください。

  • 簡易組織再編にあたる場合 吸収分割により承継させる資産の帳簿価額の合計額が総資産額の5分の1を超えない吸収分割(会社法第784条第2項)、新設分割により承継させる資産の帳簿価額の合計額が総資産額の5分の1を超えない新設分割(会社法第805条)については、分割をする会社の株主に株式買取請求権はありません。存続会社等の側についても、会社法第796条第2項本文に規定する簡易組織再編の場合には、原則として株式買取請求権はありません(会社法第797条第1項ただし書)。
  • 略式組織再編における特別支配会社 特別支配会社である株主自身は、反対株主から除かれます(会社法第785条第2項第2号、第797条第2項第2号)。
  • 総株主の同意を要する場合 会社法第783条第2項に規定する場合等、株主全員の同意が要件とされる場面では、株式買取請求の制度は用いられません(会社法第785条第1項第1号)。

 誰が「反対株主」にあたるのか

会社法第785条第2項、第797条第2項、第806条第2項及び第816条の6第2項は、いずれも「反対株主」を同じ枠組みで定めています。ここを読み誤ることが、最も多い失敗です。

議決権を行使することができる株主の場合 二段階の反対が必要です

当該株主総会において議決権を行使することができる株主は、次の二つをいずれも満たさなければ、反対株主となりません。

  1. 当該株主総会に先立って、当該組織再編に反対する旨を会社に対して通知すること
  2. 当該株主総会において、当該組織再編に反対すること

すなわち、株主総会の当日に反対の議決権を行使しただけでは足りません。逆に、事前に反対を通知していても、株主総会を欠席し、又は賛成した場合には、反対株主となりません。

議決権を行使することができない株主の場合 事前の通知も反対も要しません

当該株主総会において議決権を行使することができない株主は、事前の反対の通知をすることなく、また、株主総会において反対することなく、反対株主となります(会社法第785条第2項第1号ロ、第797条第2項第1号ロ、第806条第2項第2号、第816条の6第2項第1号ロ)。

また、組織再編をするために株主総会の決議を要しない場合(略式組織再編等)には、すべての株主が反対株主となります(会社法第785条第2項第2号、第797条第2項第2号、第816条の6第2項第2号)。

事前の反対の通知は、必ず書面により、到達の証拠を残して行ってください。議決権行使書面に「反対」と記載して返送しただけでは、「株主総会に先立って反対する旨を通知した」ことにあたらないと判断される危険があります。配達証明付内容証明郵便により、株主総会の日より前に到達させることをお勧めいたします。

 手続の流れと、日を単位とした期限

(1) 吸収型の組織再編(吸収合併、吸収分割、株式交換)及び株式交付の場合

会社からの通知 会社は、効力発生日の20日前までに、その株主に対し、当該組織再編をする旨並びに相手方の会社の商号及び住所を通知しなければなりません(会社法第785条第3項、第797条第3項、第816条の6第3項)。

この通知は、会社が公開会社である場合又は株主総会の決議によって契約等の承認を受けた場合に限り、公告をもって代えることができます(会社法第785条第4項、第797条第4項、第816条の6第4項)。

株式買取請求をすることができる期間 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間です(会社法第785条第5項、第797条第5項、第816条の6第5項)。与えられている期間は20日間です。

例えば、効力発生日が令和8年11月1日と定められた場合には、次のとおりとなります。

  • 会社からの通知又は公告 令和8年10月12日まで
  • 株式買取請求をすることができる期間 令和8年10月12日から同月31日までの20日間
  • 令和8年11月1日以後にされた株式買取請求は、期間の経過後のものとして効力を有しません

(2) 新設型の組織再編(新設合併、新設分割、株式移転)の場合 起算点が異なります

会社からの通知 消滅株式会社等は、会社法第804条第1項の株主総会の決議の日から2週間以内に、その株主に対し、当該新設合併等をする旨並びに他の消滅会社等及び設立会社の商号及び住所を通知しなければなりません(会社法第806条第3項)。この通知は、公告をもって代えることができます(同条第4項)。

株式買取請求をすることができる期間 上記の通知又は公告をした日から20日以内です(会社法第806条第5項)。

例えば、株主総会の決議の日が令和8年9月1日であり、同月10日に通知がされた場合には、令和8年9月10日から20日以内に株式買取請求をしなければなりません。効力発生日を基準に計算いたしますと、期間を誤ります。

新設型の組織再編では、支払、協議及び買取りの効力の基準日も「設立会社の成立の日」となります。すなわち、協議が調ったときの支払は設立会社の成立の日から60日以内、協議が調わないときの協議期間は設立会社の成立の日から30日以内であり、買取りの効力も設立会社の成立の日に生じます(会社法第807条第1項、第2項、第6項)。設立会社の成立の日とは、設立の登記がされた日です。

(3) 株式の数を明らかにして請求すること

株式買取請求は、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければなりません(会社法第785条第5項、第797条第5項、第806条第5項、第816条の6第5項)。「自己の有する株式の全部」といった記載では、株式の数が明らかにされたとはいえないと争われる危険があります。必ず具体的な株式数を数字で記載してください。

(4) 株券発行会社の場合 株券の提出

株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければなりません(会社法第785条第6項本文、第797条第6項本文、第806条第6項本文、第816条の6第6項本文)。ただし、当該株券について会社法第223条の規定による株券喪失登録の請求をした者については、この限りではありません。

(5) 株式買取請求の撤回は、原則としてできません

株式買取請求をした株主は、会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができます(会社法第785条第7項、第797条第7項、第806条第7項、第816条の6第7項)。

いったん株式買取請求をいたしますと、提示された価格に不満があっても、株主の側から一方的に取り下げることはできません。会社が承諾しない限り、価格の決定の手続を最後まで追行するほかありません。したがって、株式買取請求は、価格が争いとなったときに手続を追行する用意をもって行うべきものであり、安易に行うべきものではありません。なお、効力発生日(新設型にあっては設立会社の成立の日)から60日以内に価格の決定の申立てがない場合には、その期間の満了後は、株主はいつでも株式買取請求を撤回することができます(会社法第786条第3項、第798条第3項、第807条第3項、第816条の7第3項)。また、組織再編を中止したときは、株式買取請求はその効力を失います(会社法第785条第8項、第806条第8項、第816条の6第8項)。

 価格の協議と、裁判所に対する価格の決定の申立て

(1) 協議が調った場合 60日以内の支払

非上場株式の価格の決定について株主と会社との間に協議が調ったときは、会社は、効力発生日(新設型にあっては設立会社の成立の日)から60日以内にその支払をしなければなりません(会社法第786条第1項、第798条第1項、第807条第1項、第816条の7第1項)。

(2) 協議が調わない場合 30日以内の協議と、その満了の日後30日以内の申立て

効力発生日(新設型にあっては設立会社の成立の日)から30日以内に協議が調わないときは、株主又は会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができます(会社法第786条第2項、第798条第2項、第807条第2項、第816条の7第2項)。

すなわち、申立てをすることができるのは、基準となる日から起算しておおむね30日目から60日目までの間です。この期間を徒過いたしますと、価格を裁判所に決定してもらう手段が失われます。期間の計算は民法の定めるところによりますので、実際の満了日は暦に当てはめて必ずご確認ください。

申立ての管轄は、会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所です(会社法第868条第1項)。

(3) 法定利率による利息と、公正な価格と認める額の支払

会社は、裁判所の決定した価格に対する上記(1)の60日の期間の満了の日後の法定利率による利息をも支払わなければなりません(会社法第786条第4項、第798条第4項、第807条第4項、第816条の7第4項)。

また、会社は、非上場株式の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該会社が公正な価格と認める額を支払うことができます(会社法第786条第5項、第798条第5項、第807条第5項、第816条の7第5項)。これはいわゆる仮払の制度であり、会社がこれを行うのは、利息の発生を止めることを目的とする場合が少なくありません。仮払を受けたことは、その額を公正な価格として承認したことを意味するものではありません。

(4) 買取りの効力が生ずる時期

株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日に、その効力を生じます(会社法第786条第6項、第798条第6項、第816条の7第6項)。新設型の組織再編にあっては、設立会社の成立の日に、その効力を生じます(会社法第807条第6項)。株券発行会社は、株券と引換えに代金を支払わなければなりません(会社法第786条第7項等)。

 「公正な価格」はどのように定まるのか

組織再編の場合の「公正な価格」については、最高裁判所が繰り返し判断を示しています。

(1) 企業価値が増加する場合と、増加しない場合とを分けて考えます

最高裁判所平成23年4月19日決定は、組織再編によってシナジーその他の企業価値の増加が生じない場合には、組織再編がされなかったとしたならば株式が有していたであろう価格(いわゆるナカリセバ価格)をもって公正な価格とすべきであるとし、企業価値の増加が生ずる場合には、増加した企業価値が適切に分配されたとすれば株式が有すべき価格(いわゆるシナジー分配価格)をもって公正な価格とすべきであるとの枠組みを示しました(出典 最高裁判所平成23年4月19日決定・民集65巻3号1311頁)。

同様の枠組みは、株式移転の事案についても示されています(出典 最高裁判所平成23年4月26日決定・判例時報2120号126頁)。

(2) 価格を算定する基準となる日は、株式買取請求がされた日です

最高裁判所平成24年2月29日決定は、公正な価格は、原則として、株式買取請求がされた日における非上場株式の価格をいうものと解するのが相当であると判断いたしました(出典 最高裁判所平成24年2月29日決定・民集66巻3号1784頁)。すなわち、いつ株式買取請求をするかによって、算定の基準となる日が動きます。

(3) 非上場株式について、市場性がないことを理由とする減価は認められていません

最高裁判所平成27年3月26日決定は、非上場会社の株式について、収益還元法を用いて株式買取請求に係る非上場株式の価格を決定する場合に、非流動性ディスカウント(市場性がないことを理由とする減価)を行うことはできないと判断いたしました(出典 最高裁判所平成27年3月26日決定・金融・商事判例1466号8頁)。会社の側からされる「非上場株式であって流動性がないのであるから割り引くべきである」との主張は、この場面では認められません。

 組織再編そのものを争う手段

  • 事前開示書面の閲覧謄写 組織再編をする会社は、契約又は計画の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面等を本店に備え置かなければなりません(会社法第782条、第794条、第803条、第816条の2)。対価の相当性に関する事項が記載されますので、価格を争ううえで最も重要な資料となります。
  • 組織再編をやめることの請求 当該組織再編が法令又は定款に違反する場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、会社に対し、これをやめることを請求することができます(会社法第784条の2、第796条の2、第805条の2、第816条の5)。
  • 株主総会の決議の取消しの訴え 提訴の期間は決議の日から3か月以内です(会社法第831条第1項)。
  • 組織再編の無効の訴え 吸収合併、新設合併、吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転及び株式交付の無効は、それぞれの効力が生じた日から6か月以内に、訴えをもってのみ主張することができます(会社法第828条第1項第7号から第13号まで)。

これらの手段と、株式買取請求とは、期間が並行して進行いたします。いずれを採るかを早期に判断する必要があります。

 いま、非上場株式の評価は見直しの局面にあります

国税庁は令和8年(2026年)4月20日から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催し、昭和39年(1964年)公表の財産評価基本通達の抜本的な見直しを検討しています。

第1回会議(令和8年4月20日)に提出された資料によりますと、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の26%から27%程度にとどまり、類似業種比準価額が純資産価額の0.5倍未満である会社が77.6%に及びます。評価対象会社の82.4%は直前2期に配当をまったく支払っていません(出典 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)」資料・令和8年4月20日)。

【令和8年8月20日】第5回有識者会議で示された方向性

国税庁は第5回会合において「類似業種比準方式を存置することは困難ではないか」とし、会社規模による区分を廃止して「インカムアプローチによる評価を主軸とすべき」との方向性を示しました(出典 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)」資料・令和8年8月20日)。なお、内容も時期も確定したものではありません。

グループ内の組織再編においては、対価が親会社の側の都合によって定められ、少数株主の利益が十分に考慮されない例が見受けられます。提示された対価が低いと感じられた場合には、その感覚を軽んじるべきではありません。

 実務上、株主が失敗しがちな点

  1. 新設型の組織再編で、期間の起算点を取り違える 新設合併、新設分割及び株式移転では、通知又は公告の日から20日以内です(会社法第806条第5項)。効力発生日を基準に計算しますと、確実に期間を徒過いたします。
  2. 事前の反対の通知を失念する 株主総会の当日に反対しただけでは、反対株主となりません。
  3. 議決権行使書面への「反対」の記載のみで済ませる これが「株主総会に先立つ反対の通知」にあたらないと判断される危険があります。
  4. 通知の到達を証明することができない 配達証明付内容証明郵便によってください。
  5. 請求書面に株式の数を記載しない 株式の数を明らかにしていない請求は、要件を欠くものとして争われます。
  6. 自分がどちらの会社の株主かを取り違える 消滅会社等の株主か、存続会社等の株主かによって、根拠条文が異なります(会社法第785条と第797条)。
  7. 簡易組織再編にあたることを見落とす この場合には株式買取請求権がありませんので、決議の取消しや差止め等、別の手段を検討する必要があります。
  8. 公告を見落とす 一定の場合には、通知に代えて公告をすることが認められています。
  9. 価格の決定の申立ての期間を徒過する 効力発生日(新設型にあっては設立会社の成立の日)から30日の協議期間が満了した日の後30日以内です。会社との協議を続けているうちに期間が満了してしまう例が、最も多く見受けられます。
  10. 安易に株式買取請求をしてしまう 会社の承諾がなければ撤回することができません。

反対株主の株式買取請求権(組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転)に反対の場合)の行使の方法

非上場株式・少数株式の反対株主は、株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができます。

この非上場株式・少数株式の反対株主の株式買取請求権を行使できる場合は、以下のような場合です。

  • 株式譲渡制限導入定款変更(会社法116条)
  • 株式無償割り当て(会社法116条)
  • 株式を引き受ける者の募集(会社法116条)
  • スクイーズアウト株式併合(会社法182条の4)
  • 事業譲渡・重要子会社売却(会社法469条)
  • 組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転(会社法785条・797条・806条))
  • 株式交付(会社法816条の6)

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反対株主株式買取請求権(組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転))の行使の実務上のポイント

なお、非上場株式・少数株式の反対株主株式買取請求権の行使及び株式買取価格決定申立(組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転)など)の流れ(フロー)において、特に注意すべき実務上のポイントは、以下のとおりです。

① 反対株主は2回の反対(株主総会に先立つ反対通知と株主総会における反対票の投票)が必要である点
② 委任状に反対と表示して提出しただけでは反対通知にならない可能性がある点
③ 株主総会における反対の投票のみでは足りず、別途、定められた期間内に、株式の数を明らかにして株式買取請求をしなければならない点
④ 株価決定申立はたいてい和解になるため必ずしも満額は取られないという点

反対株主の株式買取請求権(組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転))の行使の流れ(フロー)

非上場株式・少数株式の反対株主株式買取請求権の行使及び株式買取価格決定申立(組織再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転)など)の流れ(フロー)は、以下のとおりです。

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会社法第785条2項

「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主(株主総会に先立って当該行為に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、②当該株主総会において当該行為に反対した株主)をいう。

会社法第785条3項4項

株式会社は、効力発生日の20日前までに、株主に対し、当該行為をする旨を通知(又は公告)しなければならない。

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会社法第785条5項

株式買取請求は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数を明らかにしてしなければならない。

会社法第785条6項

株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、株式会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。

キャプチャ

会社法第786条1項2項

株式買取請求があった場合において、非上場株式の価格の決定について、株主と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない。
非上場株式の価格の決定について、効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、株価決定申立をすることができる。

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会社法第786条4項5項7項

株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
株式会社は、非上場株式の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該株式会社が公正な価格と認める額を支払うことができる。
株券発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。

キャプチャ

会社法第786条6項

株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日に、その効力を生ずる。

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よくあるご質問

私の会社が他社に吸収合併されます。何をすればよいですか

ご自身は吸収合併により消滅する会社の株主ですので、会社法第785条及び第786条が適用されます。株主総会に先立って反対する旨を書面で通知し、株主総会において反対したうえで、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、株式の数を明らかにして株式買取請求をしてください。

持株会社をつくる株式移転が行われます。期間は同じですか

異なります。株式移転は新設型の組織再編ですので、会社法第806条及び第807条が適用されます。株式買取請求は、会社からの通知又は公告の日から20日以内にしなければなりません(会社法第806条第5項)。効力発生日を基準として計算いたしますと、期間を誤ります。

合併する側(存続会社)の株主です。株式買取請求はできますか

できます。存続株式会社等の株主については、会社法第797条及び第798条が適用されます。ただし、会社法第796条第2項本文に規定する簡易組織再編にあたる場合には、原則として株式買取請求権がありません(会社法第797条第1項ただし書)。

議決権のない種類株式を有しています。事前の反対の通知は必要ですか

必要ありません。当該株主総会において議決権を行使することができない株主は、事前の通知も株主総会における反対も要せず、反対株主となります。ただし、株式買取請求の期間の制限は同じです。

株式買取請求をした後に、やはり取り下げたいと考えるようになりました

会社の承諾を得た場合に限り、撤回することができます(会社法第785条第7項、第797条第7項、第806条第7項、第816条の6第7項)。会社が承諾しない限り、撤回はできません。例外として、効力発生日(新設型にあっては設立会社の成立の日)から60日以内に価格の決定の申立てがない場合には、その期間の満了後はいつでも撤回することができます。

会社が提示した対価が、あまりに低いと感じます

まず、事前開示書面(会社法第782条、第794条、第803条、第816条の2)により、対価の相当性に関する事項を確認してください。そのうえで株式買取請求を行い、協議が調わない場合には、30日の協議期間が満了した日の後30日以内に、裁判所に対して価格の決定の申立てをいたします。公正な価格の算定の基準となる日は、原則として株式買取請求がされた日です(最高裁判所平成24年2月29日決定)。

組織再編そのものを止めることはできますか

当該組織再編が法令又は定款に違反する場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、これをやめることを請求することができます(会社法第784条の2、第796条の2、第805条の2、第816条の5)。また、効力が生じた後は、効力が生じた日から6か月以内に無効の訴えを提起することが考えられます(会社法第828条第1項第7号から第13号まで)。

おわりに

組織再編は、株主総会の特別決議さえ得られれば進んでしまう手続です。対価に納得できない株主に残されているのは、公正な価格で買い取らせるという一度きりの機会です。

期間は20日間しかなく、新設型の組織再編では起算点そのものが異なります。事前の反対の通知を欠けば権利は生じません。株式の数を書き落とせば、請求の効力が争われます。そして、いったん請求をすれば、会社の承諾なくして撤回することはできません。だからこそ、招集通知をご覧になった段階で、直ちに手順を組み立てる必要があります。

弁護士法人M&A総合法律事務所は、非上場株式の少数株主の皆様の側に立って、反対の通知、株式買取請求、価格の協議及び裁判所に対する価格の決定の申立てを取り扱ってまいりました。お手元の招集通知、事前開示書面及び会社の登記事項証明書をご用意のうえ、お早めにご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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出典

  • 会社法(第223条、第782条、第783条第2項、第784条第2項、第784条の2、第785条、第786条、第794条、第796条第2項、第796条の2、第797条、第798条、第803条、第804条第1項、第805条、第805条の2、第806条、第807条、第816条の2、第816条の5、第816条の6、第816条の7、第828条第1項第7号から第13号まで、第831条第1項、第868条第1項)
  • 最高裁判所平成23年4月19日決定(民集65巻3号1311頁。組織再編における公正な価格の意義)
  • 最高裁判所平成23年4月26日決定(判例時報2120号126頁。株式移転における公正な価格)
  • 最高裁判所平成24年2月29日決定(民集66巻3号1784頁。公正な価格の算定の基準となる日)
  • 最高裁判所平成27年3月26日決定(金融・商事判例1466号8頁。非上場会社の株式買取請求における非流動性ディスカウントの可否)
  • 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)」資料(令和8年4月20日)
  • 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第5回)」資料(令和8年8月20日)

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