株式会社に出資したお金は返してもらえるか?出資金の返還を求めたい株主が、株式を買い取ってもらう方法

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株式会社に出資したお金を返してほしい場面に関するメインのページです。本ページは、出資金の返還を求めたい株主の方に向けて、出資金そのものの返還が原則として認められない理由と、株式を手放して回収する方法をご説明します。会社の株式買取義務の詳細や、無償での返還を求められた場合は別のページをご参照ください。
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「知人の会社の設立のときに出資したが、配当は一度もなく、そろそろお金を返してほしい」「親族の会社に出資した分を、退職を機に回収したい」「離婚や相続をきっかけに、出資した株式を整理したい」。株式会社への出資金の返還をめぐるご相談は、このような形で寄せられます。
結論から申し上げます。株式会社に出資したお金そのものの返還を、会社に求めることは原則としてできません。出資したお金は会社の財産となり、出資した方はその代わりに株式を持っているからです。もっとも、株式を会社、社長、他の株主などに買い取ってもらうことで、出資した分の回収を目指すことはできます。本記事では、その方法と、返ってくる金額の考え方を順にご説明します。
なお、ここでいう株式会社は、上場していない会社(未上場会社・未公開会社とも呼ばれます)を念頭に置いています。上場会社の株式は市場で売ることができますので、本記事の対象ではありません。
1 株式会社の出資金は、原則として返還を求めることができません
出資金は資本金・資本準備金となり、会社の財産になります
株式会社に出資したお金は、原則としてその全額が会社の資本金となり、その2分の1までは資本準備金とすることができます(会社法第445条第1項から第3項まで)。出資したお金は会社の財産となり、出資した方は、その対価として株式を取得し、株主となります。
株主の責任は、出資した額を限度とする有限責任です(会社法第104条)。その裏返しとして、会社の財産は会社の債権者への支払に充てられるべきものとされ、株主が出資した分を自由に引き出すことは認められていません。株主に会社の財産が渡るのは、分配可能額の範囲内で行う剰余金の配当や自己株式の取得(会社法第461条第1項)、資本金の額を減らす手続(株主総会の特別決議と債権者を保護する手続が必要です。会社法第447条、第449条)、会社の解散・清算による残余財産の分配(会社法第504条)といった、会社法が定める場面に限られます。
したがって、「出資したのだから返してほしい」と会社に求めても、会社には応じる義務がありません。出資金の回収は、株式を手放す(売却する)ことにより目指すのが基本となります。
「いつでも返す」と約束されていた場合は、約束の内容と書面を確認します
出資の際に、「いつでも出資した額で返す」「〇年後に買い戻す」といった約束がされていることがあります。この約束が誰との間でされたものかによって、扱いが異なります。
- 社長個人や大株主個人が約束した場合 その人が個人として株式を買い取る約束と見ることができれば、その人に対して約束どおりの買取りを求めることを検討できます。
- 会社が約束した場合 会社が株主に出資額を返す約束は、会社法が定める財源規制や手続との関係で、そのままの効力が認められないことがあります。自己株式の取得として実行できるか、別の構成をとれるかを検討します。
- そもそも出資ではなく貸付けであった場合 株式が発行されておらず、借用書がある、返済期限が決まっているなどの事情があれば、出資ではなく会社への貸付けとして、返済を求められることがあります。
出資の際の契約書、合意書、メールやメッセージのやり取り、振込の記録、株主名簿や法人税申告書の別表二(同族会社等の判定に関する明細書)の記載を集めて、まずどの類型に当たるかを確かめることが出発点です。
2 出資金を回収する現実的な方法は、株式を買い取ってもらうことです
非上場株式には市場がありませんので、買い手は、会社、社長・大株主、他の株主、第三者に限られます。多くの場合、会社か社長・大株主が現実的な買い手となります。
| 買い手 | 手続のポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 会社(自己株式の取得) | 株主総会の決議が必要です。特定の株主から買い取る場合は特別決議となります(会社法第156条第1項、第160条第1項、第309条第2項第2号) | 分配可能額の範囲内でしか買い取れません(会社法第461条第1項)。他の株主が自分も売主に加えるよう求めることができる場合があります(会社法第160条第2項、第3項) |
| 社長・大株主・他の株主 | 当事者同士の売買契約で行います。譲渡制限株式であれば会社の承認が必要です | 買い手個人の資金が問題になります。会社の財源規制はかかりません |
| 第三者(事業会社・投資会社等) | 譲受人を定めて会社の承認を求めます | 少数の非上場株式を買う第三者は限られます |
会社に自己株式として買い取ってもらう
会社が自社の株式を買い取ることを、自己株式の取得といいます。会社が特定の株主から買い取るには、株主総会の特別決議が必要であり、買取りの総額は分配可能額の範囲内でなければなりません。会社に十分な利益の蓄積がない場合は、会社としては買い取りたくても買い取れないことがあります。詳しくは、自己株式取得で会社が少数株式を買い取る場合の会社法上の留意点をご覧ください。
社長・大株主・他の株主に買い取ってもらう
会社の財源に余裕がない場合や、会社の手続を避けたい場合には、社長や大株主が個人として買い取る形がよく用いられます。当事務所の解決事例でも、社長個人が一括で買い取る形で合意に至った例があります。進め方は、非上場株式を会社ではなく大株主に買い取ってもらう方法で説明しています。
会社には株式を買い取る義務がないことと、その中で交渉を進める方法
会社や社長には、原則として株式を買い取る義務はありません。それでも、会社の側には、経営に関与しない株主の株式を集約したい、将来の相続やM&Aに備えて株主を整理したい、株式買取業者などの第三者に株式が渡るのを避けたいといった事情があることが多く、根拠を示した交渉により合意に至ることが少なくありません。会社の買取義務がどのような場面で生じ、どのような場面で生じないかは、非上場株式の売却と会社の株式買取義務!で整理しています。
3 会社法が株主に買取りを求める権利を認めている場面
原則として会社に買取義務はありませんが、会社が一定の重要な行為をする場合には、その行為に反対する株主に、会社に対して株式を「公正な価格」で買い取るよう請求する権利(反対株主の株式買取請求権)が認められています。
| 会社の行為 | 根拠条文 | 請求の期限 |
|---|---|---|
| 合併、会社分割、株式交換、株式移転 | 会社法第785条、第797条、第806条 | 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで(株式移転等は通知等の日から20日以内) |
| 事業譲渡等 | 会社法第469条 | 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで |
| 全部の株式に譲渡制限を設ける定款の変更等 | 会社法第116条第1項 | 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで |
| 株式の併合(端数が生ずる場合) | 会社法第182条の4 | 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで |
この権利を使うには、株主総会に先立って反対の意思を会社に通知し、株主総会で反対することなどの要件を満たす必要があります。期限も短いため、会社から株主総会の招集通知が届いたら、議案の内容を確認してください。価格について会社と協議が調わないときは、裁判所に価格の決定を申し立てることができます。手続の詳細は、反対株主の株式買取請求権のご案内をご覧ください。
4 会社を解散・清算する場合の残余財産の分配
会社が解散して清算されると、債務を支払った後に残った財産(残余財産)が、株主に持株数に応じて分配されます(会社法第504条)。出資した分が戻ってくるもう一つの場面です。
もっとも、株主の側から会社の解散を求める訴え(会社法第833条第1項)は、総株主の議決権又は発行済株式の10分の1以上を有する株主が、会社の業務の執行が著しく困難な状況に至り回復できない損害が生ずるおそれがある場合などの「やむを得ない事由」があるときに限って認められるもので、要件は厳しいものです。解散の可能性を交渉の中でどう位置付けるかを含め、会社の解散請求と残余財産の分配にお困りの方へのご案内で説明しています。
5 返ってくる金額は、出資した額とは限りません
株式を売却して受け取る金額は、出資した額(いわゆる額面)ではなく、売却する時点の株式の価値を基準に交渉します。会社が成長して利益や財産を蓄えていれば、出資した額を大きく上回ることがあります。反対に、赤字が続き財産が減っていれば、出資した額を下回ることもあります。
| 価格の目安 | 考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 出資した額(額面) | 出資の時点の金額です | 会社の現在の価値を反映しません。会社が成長している場合、額面での買取りは株主に不利です |
| 時価純資産額 | 会社の資産と負債を時価で評価した差額を株式数で割ります | 不動産や内部留保が多い会社では高くなります |
| 収益力に基づく価値(収益還元法・DCF法) | 会社が将来生み出す利益やキャッシュフローから求めます | 事業計画や割引率の置き方で大きく変わります |
| 相続税評価額 | 相続税・贈与税の計算のための評価額です | 売買の価格とは目的が異なり、一致しないことが通常です |
まずは手元の決算書をもとに、大まかな目安をつかむことをお勧めします。無料の自動計算(株式の価値の目安の試算(年倍法)、相続税評価額の試算)もご利用いただけます。決算書が手元にない場合は、株主として計算書類の閲覧謄写を請求できます(会社法第442条第3項)。
6 出資金の返還をめぐる典型的な場面と進め方
知人の会社の設立や増資のときに出資した場合
創業の際に知人から頼まれて出資したものの、配当も報告もないまま年月が経ったという場面です。創業者である社長が大株主であることが多く、社長個人に買い取ってもらう形が現実的です。出資を頼まれた際のやり取りに「返す」「買い戻す」といった言葉があれば、交渉の大きな材料になります。会社が成長していれば、出資した額ではなく現在の価値での買取りを求めます。
親族の会社や勤務先に出資し、退職や関係の悪化をきっかけに回収したい場合
退職を機に、会社から「出資した額で返してほしい」「無償で返してほしい」と言われることがあります。後述の「8」のとおり、そのような合意がなければ、額面や無償で返す義務は当然には生じません。従業員持株会を通じて取得した株式では、規約の定めを確認します。会社と自分の双方にとって株式を整理する利点があるため、価格の根拠を示して協議します。
離婚や相続をきっかけに、出資した株式を整理したい場合
夫婦の一方が配偶者の親族の会社に出資していた場合や、親が出資していた株式を相続した場合です。離婚の際には財産分与の対象となるか、相続の際には遺産分割でどう分けるかを併せて検討します。いずれも、株式の価値をどう評価するかが分け方と売却の価格の両方に影響しますので、早めに評価の目安をつかんでおくことが大切です。
お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。
7 出資金の回収を進める手順
出資金の回収は、おおむね次の順序で進めます。順序を飛ばして価格の話から入ると、株主であることや合意の内容を争われ、話が進まなくなることがあります。
| 段階 | 内容 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 1 出資の経緯の確認 | 出資か貸付けか、誰とどのような約束をしたかを確かめます | 契約書、合意書、メール、振込の記録 |
| 2 株主であることの確認 | 株主名簿の記載や持株数を確かめます | 株主名簿、法人税申告書の別表二、株主総会の招集通知 |
| 3 株式の価値の目安 | 決算書をもとに、株式の価値の幅を見積もります | 直近3期分の決算書 |
| 4 買い手と方法の選択 | 会社、社長・大株主、他の株主のいずれに、どの手続で売るかを決めます | 定款(譲渡制限、売渡しの請求の定め) |
| 5 交渉 | 価格の根拠を示して、買取りを求めます | 評価の資料、これまでのやり取り |
| 6 契約と名義書換え | 株式譲渡契約書を作り、代金の支払と株主名簿の書換えを行います | 株式譲渡契約書、会社の承認の書面 |
売却したときの税金
個人が株式を売却して利益(売却代金から出資した額などの取得費を差し引いた額)が出た場合は、譲渡所得として所得税・住民税がかかります(合計で約20%)。もっとも、会社に自己株式として買い取ってもらう場合は、売却代金のうち会社の資本金等の額を超える部分が配当とみなされ(いわゆるみなし配当)、他の所得と合算して課税されるため、税負担が重くなることがあります。社長個人に売るか会社に売るかで手取りが変わることがありますので、方法を決める前に税理士にもご確認ください。
8 会社から「出資した額で返す」「無償で返せ」と言われた場合
反対に、会社や社長の側から、「出資した額で株式を返してほしい」「退職するなら株式は無償で返すのが当然だ」と求められることもあります。
株式を額面や無償で返す義務は、当然には生じません。返す義務があると言えるのは、そのような合意が実際に成立している場合です。従業員持株会のように、取得の際に一定の額で買い戻す旨の合意がされていた事案では、その合意が有効とされた最高裁判所の判決もありますが(最高裁判所平成21年2月17日判決)、合意の内容や経緯によって判断は異なります。応じる前に、合意の有無と内容を確認してください。詳しくは、会社から株式を無償で返すよう求められた場合の対応及び従業員持株会が額面で株式を買い戻す合意はどのような事情の下で有効とされたか(最高裁判所平成21年2月17日判決)をご覧ください。
9 合同会社・医療法人・組合では扱いが異なります
出資先が株式会社ではない場合は、出資を回収する仕組みが異なります。
| 出資先 | 出資の回収の仕組み | 根拠 |
|---|---|---|
| 合同会社などの持分会社 | 社員が退社したときに、持分の払戻しを受けることができます | 会社法第606条、第611条 |
| 持分の定めのある医療法人 | 定款の定めに従い、社員が退社したときなどに出資持分の払戻しを請求できる場合があります | 医療法人の定款 |
| 民法上の組合 | 組合から脱退した組合員は、持分の払戻しを受けることができます | 民法第681条 |
このように、株式会社の株主には「退社して出資を返してもらう」仕組みがない点が、他の形態と大きく異なります。医療法人の出資持分については、医療法人の出資持分の払戻請求のご案内をご覧ください。
10 弁護士に依頼する意味
出資金の回収は、当事者同士の話合いでは「出資した額で返す」「会社にお金がない」といった話で止まりがちです。弁護士は、株主の代理人として、出資の経緯と合意の内容を整理し、株式の価値の根拠を示して、交渉や裁判により回収を目指します。会社に買取りを強制する一般的な手段はありませんが、使える権利と交渉の材料を組み合わせることで、解決に至る道筋を作ります。
当事務所は、非上場株式の売却について300件以上のご相談をお受けしてきました。令和6年10月には、株式買取請求権に関する事件で最高裁判所の逆転判決を得ています。全国からのご相談に対応しており、お電話は土日祝も受け付けています。
よくあるご質問
出資した会社が赤字でも、回収できますか。
赤字であっても、会社が不動産などの財産を持っている場合や、将来の収益が見込める場合には、株式に一定の価値が認められることがあります。他方、会社の財産が乏しい場合は、出資した額を下回る金額での解決となることもあります。決算書をもとに見通しをお伝えします。
株券を受け取っていませんが、株主として買取りを求められますか。
現在の株式会社の多くは株券を発行しない会社ですので、株券がないこと自体は問題になりません。株主名簿の記載、出資の振込の記録、法人税申告書の別表二などにより、株主であることを確認します。会社から株主であることを否定された場合の対応は、会社から「あなたは株主ではない」と言われたときをご覧ください。
出資したときの契約書がありません。それでも回収を求められますか。
求められます。契約書がなくても、振込の記録、株主名簿や法人税申告書の別表二の記載、株主総会の招集通知、配当の記録、出資を依頼された際のメールやメッセージなどから、出資の事実と株主であることを示すことができます。手元にある資料をそのままお持ちください。
会社に知られずに相談できますか。
できます。ご相談の内容が会社に伝わることはありません。ご依頼を受けて会社と交渉を始めるまでは、会社に連絡をすることはありません。
亡くなった親が出資していた株式は、どうなりますか。
出資により取得した株式は相続財産となり、相続人が承継します。相続した株式を会社や経営者に買い取ってもらう方法は、親の株の売却にお困りの方へのご案内で説明しています。定款に相続人等に対する売渡しの請求の定めがある場合は、会社から売渡しを求められることもあります(会社法第174条)。
投資の勧誘を受けて未公開株を購入したお金を返してほしいのですが。
未公開株の購入を勧誘されたことによる被害(いわゆる投資詐欺)のご相談は、当事務所では取り扱っていません。本記事は、知人や親族の会社などに株主として出資した方が、その株式を整理する場面を対象としています。
まとめ
株式会社に出資したお金そのものを返してもらうことは、原則としてできません。もっとも、株式を会社、社長、他の株主に買い取ってもらうことで、出資した分の回収を目指すことはできます。そのときの金額は出資した額ではなく株式の現在の価値が基準となり、会社が成長していれば出資した額を上回ることもあります。
出資の際の約束、会社の財務の状況、使える権利と期限を整理することが、回収への第一歩です。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
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本記事の根拠条文
会社法 第104条(株主の責任)、第116条(反対株主の株式買取請求)、第156条第1項・第160条(自己株式の取得)、第174条(相続人等に対する売渡しの請求)、第182条の4(反対株主の株式買取請求)、第309条第2項(株主総会の特別決議)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)、第445条(資本金の額及び準備金の額)、第447条・第449条(資本金の額の減少、債権者の異議)、第461条第1項(配当等の制限)、第469条(反対株主の株式買取請求)、第504条(残余財産の分配)、第606条・第611条(持分会社の社員の退社と持分の払戻し)、第785条・第797条・第806条(反対株主の株式買取請求)、第833条第1項(会社の解散の訴え)
民法 第681条(脱退した組合員の持分の払戻し)
具体的なご相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。
執筆・監修:代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会、登録番号26775)/弁護士法人M&A総合法律事務所


