非上場株式を会社ではなく大株主に買い取ってもらう方法

会社に株式の買取りを申し入れたところ、「会社としては買えない」と言われました。しかし、実際に会社を支配しているのは代表者であり、株式が集約されて困る人がいるとすれば、それは代表者やその一族ではないか。そのようにお考えになる方がいらっしゃいます。

結論から申し上げますと、非上場株式の買主は会社に限られません。大株主や代表者個人が買主となる方法があり、会社が自己株式として取得する場合とは、手続、資金の出どころ、支配関係への影響が異なります。会社が買えないという回答が、大株主も買えないという結論を意味するわけではありません。本ページでは、会社による取得と大株主による取得の違いを整理いたします。

買主は会社に限られません

株式の売買は当事者間の契約ですので(民法第555条)、買主が誰であるかは当事者の合意により定まります。会社が自己株式として取得する場合には会社法上の各種の規制が及びますが、大株主や代表者が個人として買い取る場合には、それらの規制のうち会社の財産を保護するための規制は適用されません。

もっとも、譲渡制限株式については、譲渡の相手方が誰であるかにかかわらず、会社の承認が必要となる場合があります。株主は、譲渡制限株式を譲渡しようとするときは、会社に対して承認をするか否かの決定を求めることができ(会社法第136条)、その請求においては、譲り渡そうとする株式の数、譲受人の氏名又は名称、会社が承認しない場合に会社又は指定買取人が買い取ることを請求するときはその旨を明らかにする必要があります(会社法第138条)。大株主に譲渡する場合であっても、この手続を経る必要があるかどうかは、定款の定めを確認して判断いたします。

会社が自己株式として取得する場合の制約

会社が株主から自己株式を有償で取得する場合には、いくつかの制約が課されています。

第一に、手続の制約です。原則として株主総会の決議により、取得する株式の数、対価の内容及び総額、取得することができる期間を定める必要があります(会社法第156条第1項)。特定の株主から取得する場合には、株主総会の特別決議によることとされています(会社法第160条、第309条第2項)。

第二に、他の株主の関与です。特定の株主から取得する場合、他の株主は、自己をその特定の株主に加えることを請求することができます(会社法第160条第3項)。この売主追加請求により、会社が想定していなかった規模の買取りが必要となる可能性があります。

第三に、財源の制約です。自己株式の取得は株主に対する会社財産の払戻しに当たりますので、分配可能額による規制を受けます(会社法第461条)。分配可能額を超える取得はできません。

これらは、会社の財産を維持し、株主間の公平を図るための規律です。会社が「買いたくても買えない」と述べる場合、その理由がこれらの制約にあることは少なくありません。

大株主・代表者が買主となる場合の特徴

大株主や代表者が個人として株式を取得する場合、会社法第156条以下の自己株式取得の手続や、会社法第461条の分配可能額による規制は適用されません。買主が個人であれば、会社の財産の払戻しには当たらないためです。売主追加請求(会社法第160条第3項)の問題も生じません。

その結果、手続としては単純になります。他方で、買主となる個人が自ら資金を用意する必要があります。会社に資金があっても、個人に資金がなければ取得はできません。この点は、会社が買主となる場合と逆の制約です。

また、支配関係への影響が異なります。会社が自己株式を取得した場合、当該株式については議決権が行使されませんので(会社法第308条第2項)、結果として既存の株主の議決権割合が相対的に上昇します。これに対して、大株主が個人として取得した場合には、当該大株主の持株比率が直接に上昇します。同族会社において誰が株式を取得するかは、将来の事業承継にも関係する問題ですので、会社側が慎重になることがあります。

大株主による取得が検討される場面

大株主や代表者による取得が現実的な選択肢となるのは、次のような場合です。

会社の分配可能額が十分でない一方、代表者個人には資金の手当てが可能である場合。会社が自己株式を取得すると他の株主から売主追加請求がなされることが懸念される場合。事業承継の準備として、後継者となる者に株式を集約する必要がある場合。株式が分散した状態を解消したいが、会社の意思決定機関を通す手続を避けたい場合などです。

もっとも、これらはいずれも会社側及び大株主側の事情であり、少数株主の側で選択できる事柄ではありません。株主側としては、会社による取得と大株主による取得のいずれもあり得るという前提で、双方に対応できる資料と検討を準備しておくことになります。

価格と税務上の留意点

買主が会社であるか個人であるかによって、価格の考え方が自動的に変わるわけではありません。いずれの場合も、会社の資産内容、収益状況、配当の実績等を踏まえ、時価純資産法、収益還元法、ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法、類似会社比較法、配当還元法といった手法を検討して価格を協議することになります。

他方で、課税関係は買主が誰であるかによって異なる場合があります。個人間の売買において、著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合には、その差額に相当する金額を贈与により取得したものとみなされることがあります(相続税法第7条)。価格の設定は、当事者双方の課税関係に影響し得ますので、具体的な税務上の取扱いについては税理士にご確認いただく必要があります。

なお、譲渡制限株式について株式譲渡承認請求を行い、会社が承認しない旨を決定した場合には、会社が自ら買い取るか、指定買取人を指定することになります(会社法第140条)。指定買取人として大株主や代表者が指定されることもあります。この手続において売買価格の協議が調わないときは、一定の期間内に裁判所に対して売買価格の決定の申立てをすることができます(会社法第144条)。この期間は短く定められていますので、日程の管理が必要です。

弁護士に依頼する意味

会社と大株主のいずれを買主とするかは、会社側の財務状況、株主構成、事業承継の状況を踏まえて検討すべき事柄です。株主本人がこれらを把握することは容易ではありません。

弁護士は、株主本人の代理人として、定款及び株主名簿の確認、株主としての情報取得(会社法第442条第3項の計算書類等の閲覧等の請求、会社法第433条第1項の会計帳簿等の閲覧謄写請求など)、株価の検討、会社及び大株主との交渉、必要に応じた裁判手続を行います。買主の候補が複数ある場合に、どの相手方とどの順序で協議するかという判断も業務に含まれます。

なお、株式買取業者は株式の買手であり、株主本人の代理人ではありません。買手は取得価額が低いほど利益が大きくなる立場にあります。株式買取業者の行為については、具体的な業務態様によって法的問題が生じ、裁判例において違法性が認定された事例があります。業者一般が違法であるという趣旨ではありませんが、利益の方向が株主本人と一致しない点はご理解ください。

よくあるご質問

質問1 会社が買えないと言った場合、代表者に直接申し入れてよいのでしょうか。

株式の売買は当事者間の契約ですので、大株主や代表者を相手方として協議すること自体は可能です。もっとも、譲渡制限株式については会社の承認に関する手続の検討が必要です。

質問2 大株主が個人で買う場合、価格は会社が買う場合より低くなりますか。

買主が個人であることを理由に価格が当然に低くなるわけではありません。価格は会社の資産内容と収益状況等を踏まえて検討されるものです。

質問3 代表者に資金がない場合はどうなりますか。

その場合は、会社による取得、対価の支払方法の工夫、取得する株式数の調整等を含めて検討することになります。実現可能性は事案によって異なります。

質問4 複数の大株主がいる場合、誰に申し入れるべきですか。

持株比率、事業承継の状況、資金の状況によって適否が異なります。具体的な判断は、資料を確認したうえでご説明いたします。

交渉手法の詳細について

なお、具体的な交渉手法の詳細は、株主構成、財務状況、株価、従前の経緯等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本ページでは詳細を開示しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、非上場株式・少数株式について、株主側の代理人としてご相談をお受けしております。当事務所は株式を買い取る立場ではなく、株主の方が株式を保有したまま、会社又は大株主・代表者との任意の買取交渉、株価の検討、必要に応じた裁判手続を行います。

ご相談の際には、定款の写し、株主名簿の写し、直近数期の決算書、会社及び大株主とのやり取りの記録をご用意いただけますと検討が早く進みます。これらの資料がお手元にない場合でもご相談いただけます。

電話番号 03-6435-8418

受付時間 8時00分から24時00分まで(土曜・日曜・祝日も受付)

過去の取扱い実績は将来の結果を保証するものではありません。見通しは事案によって異なります。

内部リンク

本文中で言及する既存記事

  • /archives/share_kaitoridaikinzaigenkisei/(株式買取代金の財源規制)-「会社が自己株式として取得する場合の制約」の節から
  • /archives/share_urinushitsuikaseikyu/(売主追加請求)-「他の株主の関与」の記述から
  • /archives/minority-share-transfer-approval/(株式譲渡承認とは)-譲渡制限株式の手続の説明から
  • /archives/share_jyoutosyouninkyohi/(株式譲渡承認の拒否)-指定買取人に関する記述から
  • /archives/share_baikyakukaitorigimu/(非上場株式の売却と会社の株式買取義務)-買主の選択に関する記述から
  • /archives/unlisted-share-fair-price/(非上場株式の譲渡適正価格)-「価格と税務上の留意点」の節から
  • /archives/share_hyoukahouhoukaisetsu/(非上場株式の株価評価の算定方法)-価格の検討に関する記述から

送客先ランディングページ

  • ランディングページ11 大株主・代表者に少数株式を買い取ってもらいたい方へ(主)
  • ランディングページ02 会社が非上場株式を買い取ってくれない方へ(補助)

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。