譲渡所得の所得税

譲渡所得とは

最もメジャーな資産運用に「株式投資」が挙げられ、購入した株式を保有して配当金を得る「インカムゲイン」、売却することによって譲渡金を得る「キャピタルゲイン」があります。配当所得と譲渡所得はどちらも「所得」に当たり、所得税や住民税の課税対象となりますが課税方法が異なります。

今回はキャピタルゲインである譲渡所得について説明していきましょう。要は「いくらで買って、いくらで売ったか」ですので、10万で購入し20万で売却すれば10万円の差益(所得)を得たことになります。根拠となる所得税法 第33条についてはページ末部に記載しておきます。

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数非上場株式を売却できずにお困りの方はこちら!

譲渡所得にかかる税率

確定申告の方法によって所得税と住民税が異なります。なお、所得税の「15.315%」とは復興特別所得税(2037年まで)を含んでいます。

総合課税

所得税率は累進課税によって5.105~45.945%と所得が多くなるにつれて税率も高く、住民税率は所得に関係なく一律10%です。

申告分離課税

所得税は15.315%、住民税は5%、配当所得に関係なく一律の税率が適用されます。

申告不要制度を利用した場合も、申告分離課税と同一の税率が適用されます。

確定申告が必要な場合

次に該当する場合は、年間取引報告書をもとに確定申告が必要です。

給与を1ヶ所からもらっている方

給与所得及び退職所得以外に「20万円を超える所得」がある場合

給与を2ヶ所以上からもらっている方

主たる給与所得及び退職所得以外に「主たる給与以外の給与+20万円を超える所得」がある場合

ただし、次の3.にて説明する「特定口座の利用」の場合は確定申告が不要となります。これを利用するには「上場株式」に限定されます。

特定口座の利用で確定申告が不要

株取引で得た利益は所得に当たりますので、一定の金額以上の所得であれば確定申告が必要となりますが、上場株式の利用に限り「源泉徴収あり」の「特定口座」でのみ取引を行うことで「申告分離課税」が適用され、所得税と住民税が利益から引かれて入金されるため確定申告が不要になります。

面倒な確定申告をしなくて済む、その上に譲渡益と譲渡損を損益通算してくれるというメリットがあります。一方、確定申告の必要がない「譲渡益が20万円以下の場合」にも自動で所得税と住民税が引かれるデメリットがあります

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数非上場株式を売却できずにお困りの方はこちら!

確定申告の必要がなくても、した方が得をする場合

確定申告の必要がなくても、確定申告を「してはいけない」ということではありません。取引で損失がある場合は損益通算によって損失を繰り越し、翌年以後3年に渡り利益と損失を控除する特例を受けることができます。これを「損失の繰越控除」といいます。

繰越控除は確定申告をしなければ特例を受けることができません。

確定申告の方法

まずは次のものを準備しましょう。

  1. 給与所得、公的年金などの源泉徴収票
  2. 特定口座年間取引報告書(証券会社発行)
    ※一般口座の場合は1年間の取引金額を自分で集計
  3. 還付先の金融機関・口座番号(本人名義のもの)
  4. 認め印

準備ができたら作成へと進みます。e-Taxを利用しなくても国税庁の「確定申告作成コーナー」を利用して簡単に作成できます。作成できましたらプリントアウト、必要書類を添付して郵送します。

非上場株式を譲渡した場合の取扱い

本記事のここまでの説明は、主として上場株式を念頭に置いたものです。当サイトが主題といたします非上場株式については、次の点が大きく異なりますので、あらためて整理いたします。

1 申告分離課税であり、税率は20.315%です

非上場株式(一般株式等)の譲渡による所得は、上場株式等の譲渡による所得とは区分され、いずれも申告分離課税の対象となります。税率は、所得税15%、復興特別所得税0.315%及び住民税5%の合計20.315%です。

2 特定口座を利用することはできません

特定口座の制度は上場株式等を対象とするものですので、非上場株式の譲渡について源泉徴収のみで課税関係を終えることはできません。譲渡をした年の翌年に確定申告を行う必要があります。

3 上場株式等の譲渡損失との損益通算はできません

一般株式等に係る譲渡所得等と上場株式等に係る譲渡所得等とは、それぞれ別の区分とされておりますので、相互に損益を通算することはできません。また、非上場株式の譲渡損失について、翌年以後三年間の繰越控除の適用もありません。

4 取得費が不明である場合

取得費が不明である場合には、譲渡収入金額の5%を取得費とすることができます。もっとも、創業者が保有する株式については、設立時の払込金額、その後の増資における払込金額、他の株主から買い取った際の価額等を確認することにより、5%を上回る取得費を立証できる場合が少なくありません。設立当時の定款、登記事項証明書、株主名簿、払込みを証する書面、過去の売買契約書等を早期に収集してください。

5 発行会社へ譲渡する場合にはみなし配当が生じます

株式を発行会社に譲渡する場合、すなわち会社が自己株式を取得する場合には、交付を受ける金銭等のうち、その株式に対応する資本金等の額を超える部分は配当とみなされます。みなし配当は配当所得として総合課税の対象となり、累進税率が適用されますので、第三者に譲渡する場合の20.315%と比較して税負担が大きく異なることがあります。

ただし、相続又は遺贈により取得した非上場株式を、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後三年を経過する日までの間に発行会社に譲渡した場合には、みなし配当課税は行われず、全額が株式等に係る譲渡所得等として課税される特例があります(租税特別措置法第9条の7)。

6 譲渡価額が時価と乖離する場合

非上場株式には市場価格がありませんので、当事者間で定めた価額が税務上の時価と乖離する場合には、その差額について課税関係が生じることがあります。個人間の低額譲渡ではみなし贈与(相続税法第7条)が、個人から法人への著しく低い価額による譲渡ではみなし譲渡(所得税法第59条第1項第2号)が問題となります。

非上場株式の譲渡においては、価額の決定そのものが税務上の論点です。譲渡の前に、税理士と協議のうえで価額の根拠を整えておくことをお勧めいたします。

7 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置

譲渡益が多額となる場合には、租税特別措置法第41条の19の適用にも留意する必要があります。令和7年分以後の所得税について、基準所得金額から3億3,000万円を控除した金額に22.5%を乗じた金額が基準所得税額を超えるときは、その差額を申告納付することとされております。令和8年度税制改正により、令和9年分以後は控除額が1億6,500万円、税率が30%となります。

※本記事の税務に関する記載は一般的な説明です。具体的な事案における課税関係につきましては、必ず税理士にご確認ください。

まとめ

はじめは源泉徴収ありの特定口座を利用する方が良いでしょう。

取引の頻度が多く、取引額が大きい場合、「総合課税」と「申告分離課税」で比較し、確定申告にて繰越控除を受けるべきかどうか判断していく必要があります。少しでも不安がある場合は専門家に相談して解消することをオススメします。

⇒非上場株式・譲渡制限株式・少数非上場株式を売却できずにお困りの方はこちら!

所得税法 第33条

今回関連する法律的な根拠は所得税法 第33条に記されています。

所得税法 第33条【譲渡所得】

一項 譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。

二項 次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。

一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得

二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得

三項 譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。

一 資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)

二 資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの

四項 前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。

五項 第三項の規定により譲渡益から同項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除する場合には、まず、当該譲渡益のうち同項第一号に掲げる所得に係る部分の金額から控除するものとする。

具体的なご相談をお考えの皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。