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株式買取業者への非上場株式の売却の効力とみなし承認・株主総会決議の取消し―大阪高等裁判所令和7年9月4日判決

公開 2025年9月4日更新 2025年9月4日

▶ 株式買取業者への売却と弁護士法第73条違反の判例

会社から非常に低い買取価格を示された非上場会社の株主が、株式買取業者に株式を売った場合、その売買は有効なのでしょうか。また、会社が買取業者からの譲渡承認請求に答えず、株主名簿の書換えも拒んだまま株主総会を開いた場合、その決議はどうなるのでしょうか。大阪高等裁判所令和7年9月4日判決は、会社から1株当たり60円の買取価格を示されて合意に至らなかった株主2名が、株式買取業者に1株当たり500円で株式を売り、買取業者が会社に譲渡承認を請求した事件で、売買は弁護士法第73条にも違反せず、公序良俗に違反して無効ともいえないとして、買取業者が株主であることを確認し、買取業者に招集通知を送らずに開かれた定時株主総会の決議をすべて取り消した第一審判決を維持し、会社の控訴を棄却しました。

本件では、控訴審が、第一審とは異なり、株式買取業者の非上場株式の買取事業は金融商品取引業に当たり、登録を受けなければ行うことができないと判断した点も注目されます。もっとも、控訴審は、そのことから直ちに個々の株式の買取りの契約が無効になるわけではないとして、結論を維持しました。本記事では、第一審判決と控訴審判決の判決本文に基づき、裁判所がどのような事実から売買の効力を認め、みなし承認・名義書換えの不当拒絶・決議の取消しをどのように判断したのかを整理し、非上場株式を手放したい株主、特に会社から低い価格を示されている株主が知っておきたい点を解説します。

目次
  1. 裁判例の基本情報
  2. 当事者の表記
  3. 事案の概要―会社の提示は1株60円、買取業者への売却は1株500円
    1. 譲渡制限のある閉鎖会社と2名の株主
    2. RVSへの1株500円での売却と譲渡承認請求
    3. みなし承認の通知、買取価格の提案と名義書換請求
    4. RVSに招集通知を送らずに開かれた定時株主総会
    5. RVSの買取事業の実態(第一審の認定事実)
  4. 事案の経緯の時系列
  5. 判断の前提となる法律の仕組み
    1. 譲渡制限株式の譲渡承認請求と、2週間のみなし承認
    2. 株主名簿の名義書換えと「不当拒絶」
    3. 招集手続の法令違反による決議の取消しと裁量棄却
    4. 弁護士法第73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
    5. 金融商品取引法の登録と、無登録業者との契約の効力
  6. 当事者の請求と主要な主張
    1. RVSの請求
    2. 第一審で整理された争点と当事者の主張
    3. 控訴審での補充主張
  7. 結論を左右した争点
  8. 第一審の判断
    1. 形式的には弁護士法第73条の「他人から譲り受けた権利の実行」に当たる
    2. 判断の枠組み―弊害のおそれがなく、正当な業務の範囲内か
    3. 権利の譲受けと権利実行の方法・態様
    4. 事業の実態―紛議を助長する面はあるが「みだりに」とまではいえない
    5. 少数株主にとっての有用性と価格差の評価
    6. 金融商品取引法については「公衆性」がないとした
    7. みなし承認と名義書換えの不当拒絶
    8. 招集手続の法令違反と裁量棄却の否定
    9. 第一審の結論
  9. 控訴審の判断
    1. 第一審の判断を引用し、金融商品取引法の部分を改めた
    2. 買取事業は金融商品取引業に当たる
    3. 無登録業者の「買付け」でも、契約が当然に無効となるわけではない
    4. 本件の売買の経緯に不当な点はない
    5. 弁護士法第73条に関するGMFの補充主張に対する判断
    6. 裁量棄却についての補足―RVSの書面にあった経営関与の意思
    7. 維持・補正・変更の整理
  10. 主文及び結論
    1. 第一審判決の主文
    2. 控訴審判決の主文
    3. 審級ごとの結論の推移
  11. 判断の射程―参考となる点と一般化できない点
    1. 参考となる点
    2. 一般化できない点
    3. 株主の皆様が確認しておきたいこと
  12. よくあるご質問
    1. 会社に株式の買取りを求めたところ、1株60円という非常に低い価格を示されました。株式買取業者に売ってもよいのでしょうか。
    2. 会社が譲渡承認請求に返事をしない場合、どうなりますか。
    3. みなし承認の後、会社が株主名簿の名義書換えに応じない場合はどうなりますか。
    4. 招集通知が届かないまま株主総会が開かれ、決議がされてしまいました。決議を取り消せますか。
    5. 株式買取業者が金融商品取引業の登録を受けていないと、売買は無効になりますか。
    6. 非上場株式を手放したいのですが、どのような方法がありますか。
  13. 関連する記事と御相談のご案内

裁判例の基本情報

審級 裁判所 裁判日・事件番号・裁判の形式 結論
第一審 大阪地方裁判所第4民事部 令和6年12月11日・令和5年(ワ)第7151号・判決 買取業者の請求を全部認容(買取業者が普通株式7万3,970株を有する株主であることを確認し、令和5年5月25日開催の定時株主総会の各決議を取消し)
控訴審 大阪高等裁判所第4民事部 令和7年9月4日・令和7年(ネ)第125号・判決 控訴棄却(控訴費用は会社の負担)
事件の種類 株主権確認及び株主総会決議取消請求
本記事が主に扱う判決 大阪高等裁判所令和7年9月4日判決(控訴審)及びその原判決である大阪地方裁判所令和6年12月11日判決(第一審)
判決本文が判断に用いた主な法令 弁護士法第73条、金融商品取引法第2条第8項・第29条・第171条の2・第197条の2、会社法第138条・第144条・第145条第1号・第299条第1項・第831条第1項第1号
上訴の状況 控訴審判決に対する上告・上告受理申立ての有無及び確定は、確認できていません

この表は、両判決の判決本文の冒頭及び末尾の記載に基づいて当事務所が作成したものです。

当事者の表記

判決に出てくる会社名・氏名は、本記事独自のイニシャルに置き換えています。判決が用いている符号も、そのままは使わずに次の表記へ置き換えています。

  • 第一審の原告・控訴審の被控訴人:経営コンサルティング等を業とし、非上場株式の買取事業を行っている株式会社を「株式買取業者RVS」(以下「RVS」)とします。
  • 第一審の被告・控訴審の控訴人:一般金属材料の熱処理及び鍛造等を業とする株式会社で、株式の譲渡に取締役会の承認を要する会社を「金属熱処理・鍛造会社GMF」(以下「GMF」)とします。
  • GMFの株式を各3万6,985株保有し、RVSに株式を売った株主2名を「元株主ARK氏」「元株主BNT氏」(以下「ARK氏」「BNT氏」、2名を併せて「元株主2名」)とします。
  • RVSの代表者で、非上場株式の売却に関する書籍を出版している人物を「RVSの代表者CHD氏」(以下「CHD氏」)とします。

RVSが運営する買取りの相談窓口のウェブサイトや、CHD氏の書籍の名称も、判決本文には記載されていますが、本記事では名称を書いていません。判決本文を引用する部分では、当事者の呼称を上記の表記に置き換え、置き換えた箇所を〔 〕で示しています。数字は判決本文の表記のまま引用しています。

なお、当事務所のサイトには、株式買取業者への株式の売却契約を弁護士法第73条違反により無効とした大阪高等裁判所令和6年7月12日判決(令和6年(ネ)第149号)の解説があります。本件はこれとは裁判日も事件番号も異なる別の事件です。両事件の当事者が同じであるかどうかは、本件の判決本文からは確認できません。

事案の概要―会社の提示は1株60円、買取業者への売却は1株500円

譲渡制限のある閉鎖会社と2名の株主

第一審判決の前提事実によれば、GMFは、一般金属材料の熱処理及び鍛造等を業とする株式会社で、発行済株式総数は164万600株であり、株式を譲渡するには取締役会の承認を要することとされていました。判決は、GMFを「閉鎖会社」と表現しています。

第一審判決の認定事実によれば、GMFの令和4年3月31日現在の純資産は20億8,899万円、第95期(令和3年4月1日から令和4年3月31日まで)の純利益は1億2,332万円、配当額は1株当たり4円で、自己株式を除く発行済株式総数は125万2,988株でした。

ARK氏とBNT氏は、それぞれGMFの株式3万6,985株を保有していました。2名とも、RVSに株式を売る前に、GMFに株式の買取りを求めましたが、GMFが提示した買取価格は1株当たり60円にとどまり、合意には至りませんでした。

RVSへの1株500円での売却と譲渡承認請求

ARK氏とBNT氏は、令和4年9月9日、それぞれRVSに対し、保有するGMFの株式を1株当たり500円で譲渡しました(判決のいう「本件各株式譲渡」。2名分を合わせると7万3,970株です)。単純に計算すると、1名当たりの代金は1,849万2,500円であり、GMFが提示した1株当たり60円で計算した221万9,100円の約8.3倍となります(この金額は判決本文に記載されたものではなく、判決本文の株数と単価から当事務所が計算したものです)。

RVSは、同月22日、ARK氏・BNT氏とそれぞれ共同して、GMFに対し、株式の譲渡の承認を請求するとともに、譲渡を承認しない旨の決定をする場合には、GMF又はGMFの指定する買取人が株式を買い取ることを請求しました(判決のいう「本件各譲渡承認請求」)。

これに対し、GMFは、同年10月6日、RVSに対し、本件各譲渡承認請求について、承認の可否を応答するつもりがない旨を回答しました。RVSの主張によれば、この書面には、本件各株式譲渡は弁護士法第73条及び金融商品取引法第29条に違反する行為で無効であることなども記載されていました。

みなし承認の通知、買取価格の提案と名義書換請求

RVSは、令和5年1月27日、GMFに対し、本件各株式譲渡は会社法の規定により承認されたものとみなされたと認識していること、今後は株主名簿の名義書換請求を行うこととなるが、GMFが株式を買い取るのであれば交渉に応じること、買取価格は簿価純資産法により1株当たり1,667円が適当であると考えているが、早期解決に向けて歩み寄りの意向があるため、その50%である1株当たり834円での買取りを提案することを伝えました。

なお、第一審判決は、前提事実ではRVSが適当とした価格を1株当たり1,667円と記載していますが、判断の部分では「1株当たり1663円」と記載しています。控訴審判決は1,667円と記載しているため、本記事では1,667円と表記しています。ちなみに、上記のGMFの純資産20億8,899万円を自己株式を除く発行済株式総数125万2,988株で割ると、1株当たり約1,667円となります(当事務所の計算です)。

RVSとARK氏、RVSとBNT氏は、同年3月1日、それぞれ共同して、書面で株主名簿の名義書換請求をしました(判決のいう「本件各名義書換請求」)。しかし、GMFは、同月28日、RVSに対し、RVSがGMFの株主であることを否定する旨の通知をしました。

GMFの定款には、定時株主総会において議決権を行使する株主を確定するため、毎決算期(3月31日)の翌日から定時株主総会の終了の日まで株主名簿を閉鎖する旨の定めがありました。

RVSに招集通知を送らずに開かれた定時株主総会

GMFは、同年5月25日、第96期定時株主総会(判決のいう「本件株主総会」)を開催しました。GMFは、RVSには招集通知を送付せず、株主名簿上の株主であるARK氏・BNT氏に招集通知を送付しました。本件株主総会では、次の5つの議案が決議されました(判決のいう「本件各決議」)。

  • 第1号議案 第96期決算報告書承認の件
  • 第2号議案 剰余金処分案決議の件
  • 第3号議案 取締役の任期満了による改選の件
  • 第4号議案 監査役の任期満了による改選の件
  • 第5号議案 取締役及び監査役の報酬等の総額案決議の件

RVSは、同年7月26日、本件訴訟を提起しました。

RVSの買取事業の実態(第一審の認定事実)

本件では、RVSの事業そのものが弁護士法や金融商品取引法に違反するかが争われたため、第一審は、RVSの事業の実態について次の事実を認定しました。

  • RVSは、平成30年頃から、非上場株式の買取りの相談窓口と称するウェブサイトを開設し、非上場株式の現金化や、譲渡制限がついていても売却が可能であることなどを宣伝して、譲渡制限株式の買取りを行う旨の広告をしていた。
  • CHD氏は、少数株主の非上場株式の売却に関する書籍を出版しており、その書籍には、株主との売買契約の成立前に株主に代わって会社側と買取交渉を行うことは弁護士法第72条に違反するおそれがあるので行わないこと、売買契約の締結後にRVSが譲渡承認請求を行うこと、会社が承認を拒否した場合は会社との株式買取交渉や価格決定の申立て等を行うこと、承認された場合は株主権を行使して会社の現状を把握し、株主提案を行って配当増加に対する賛同を得る運動を実施することなどが記載されていた。
  • RVSは、買取事業の資金を、銀行からの借入れのほか個人投資家からの借入れで調達しており、令和4年12月末時点で合計4億2,100万円を15名程度の個人投資家から借り入れ、同年12月期には利息として約6,200万円(利率年約14.7%)を支払っていた。
  • 相談窓口への問合せは、令和2年が110件、令和3年が285件、令和4年が465件であり、令和4年の株式買取りの相談申込みは141件、株式を取得した件数は18件であった。
  • 令和5年5月26日までに、RVSが裁判所に価格決定の申立てを行った事例は15件、株式を譲り受けた後に株主として訴訟を提起した事例は4件(会計帳簿等の閲覧謄写請求訴訟、株主代表訴訟、取締役会議事録閲覧請求訴訟及び株主総会決議取消等請求訴訟)であった。

事案の経緯の時系列

日付 出来事(判決本文の前提事実及び認定事実)
平成30年頃 RVSが非上場株式の買取りの相談窓口のウェブサイトを開設
令和4年9月9日以前 ARK氏・BNT氏がGMFに株式の買取りを求めたが、GMFの提示は1株当たり60円にとどまり、合意に至らず
令和4年9月9日 ARK氏・BNT氏がそれぞれ3万6,985株をRVSに1株当たり500円で譲渡
令和4年9月22日 RVSが元株主2名とそれぞれ共同して、GMFに譲渡承認と、承認しない場合の買取りを請求
令和4年10月6日 GMFが、承認の可否を応答するつもりがない旨を回答
令和5年1月27日 RVSが、みなし承認を前提に、1株当たり834円での買取りを提案
令和5年3月1日 RVSと元株主2名がそれぞれ共同して、書面で株主名簿の名義書換請求
令和5年3月28日 GMFが、RVSが株主であることを否定する旨を通知
令和5年3月31日 GMFの決算期。定款上、翌日から定時株主総会の終了の日まで株主名簿を閉鎖
令和5年5月25日 GMFが、RVSに招集通知を送らずに第96期定時株主総会を開催し、5議案を決議
令和5年7月26日 RVSが本件訴訟を提起
令和6年12月11日 大阪地方裁判所がRVSの請求を全部認容する判決
令和7年9月4日 大阪高等裁判所がGMFの控訴を棄却する判決

判断の前提となる法律の仕組み

この節は、判決の理解のために当事務所が一般的な仕組みを説明するものです。判決本文が、以下の説明のすべてを述べているわけではありません。

譲渡制限株式の譲渡承認請求と、2週間のみなし承認

株式の譲渡に会社の承認を要する旨を定款で定めている会社(譲渡制限株式の発行会社)の株式を取得した人は、株式を譲った元の株主と共同して、会社に対し、取得を承認するかどうかの決定をするよう請求することができます。この請求の際には、会社が承認しない旨の決定をする場合に、会社又は会社が指定する買取人が株式を買い取ることもあわせて請求することができます(会社法第138条)。

会社が、請求の日から2週間以内に承認するかどうかの決定の内容を通知しなかったときは、会社は承認をしたものとみなされます(会社法第145条第1号。定款で2週間を下回る期間を定めた場合はその期間)。本件の判決も、GMFが2週間以内に承認するかどうかを決定しなかったことから、承認をしたものとみなされると判断しています。

会社が承認しない旨の決定をした場合には、会社又は指定買取人が株式を買い取ることになり、売買価格について協議が調わないときは、裁判所に売買価格の決定を申し立てることができます(会社法第144条)。

株主名簿の名義書換えと「不当拒絶」

株式の譲渡は、株主名簿の名義を書き換えなければ、会社に対抗することができません。名義書換えは、原則として、株式を取得した人と株主名簿上の株主とが共同して請求します。会社は、株主名簿上の株主に株主総会の招集通知を送れば足りるのが原則です。

もっとも、会社が正当な理由なく名義書換えを拒んだ場合には、会社は、名義書換えがされていないことを理由に、取得した人を株主として扱わないことは許されないとするのが最高裁判所の判例であり、本件の第一審判決も、最高裁判所昭和42年9月28日判決を参照してこの考え方を用いています。

招集手続の法令違反による決議の取消しと裁量棄却

株主総会を招集するには、株主に招集通知を発しなければなりません(会社法第299条第1項)。招集の手続が法令に違反する場合、株主は、決議の日から3か月以内に、訴えによって決議の取消しを請求することができます(会社法第831条第1項第1号)。ただし、招集手続の違反が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、裁判所は請求を棄却することができます(同条第2項。いわゆる裁量棄却)。本件でも、GMFは裁量棄却を求めました。

弁護士法第73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)

弁護士法第73条は、何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によって、その権利の実行をすることを業とすることができないと定めています。第一審判決は、この規定の趣旨を、弁護士でない者が権利の譲渡を受けることによって、みだりに訴訟を誘発したり、紛議を助長したりするほか、弁護士法第72条本文(弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことの禁止)を潜脱する行為をして、国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずることを防止することにあると述べています。そのうえで、形式的には同条に当たる行為でも、弊害が生ずるおそれがなく、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には、同条に違反しないとして、最高裁判所平成14年1月22日判決を参照しています。

金融商品取引法の登録と、無登録業者との契約の効力

金融商品取引法は、有価証券の売買などを「業として」行うことを「金融商品取引業」とし(同法第2条第8項)、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ金融商品取引業を行うことができないと定めています(同法第29条)。控訴審判決は、「業として」に当たるかどうかを、「対公衆性」のある行為を「反復継続性」をもって行う場合に当たるか否かで判断すべきであるとしています。

控訴審判決によれば、無登録で金融商品取引業を行った者には罰則があり(同法第197条の2第10号の4)、無登録業者が未公開有価証券の「売付け」を行った場合には、原則として契約は無効になると定められています(同法第171条の2第1項本文)。他方で、無登録業者が未公開有価証券を「買い付けた」場合の契約の効力についての同様の定めはありません。この違いが、本件の控訴審の判断の鍵になりました。

当事者の請求と主要な主張

RVSの請求

  • 請求1:RVSがGMFの株式7万3,970株を有する株主であることの確認。
  • 請求2:GMFがRVSへの招集通知を怠ったことは招集手続の法令違反に当たるとして、令和5年5月25日開催の定時株主総会における5つの決議の取消し。

控訴審では、GMFは、原判決を取り消したうえで、決議の取消しを求める部分の訴えを却下し、その余の請求(株主であることの確認)を棄却するよう求めました。決議の取消しの部分について「却下」を求めたのは、RVSは株主ではないから決議の取消しを求める資格(原告適格)がないという主張によるものです。

第一審で整理された争点と当事者の主張

以下は当事者の主張であり、裁判所が認定した事実ではありません。

争点1:本件各株式譲渡は、弁護士法第73条又は金融商品取引法第29条に違反して無効か

  • GMFの主張(弁護士法第73条):RVSは、不特定多数の者から非上場株式を買い集め、発行会社又はその関係者に売り渡すことを反復継続して行っており、他人の権利を譲り受けてその権利の実行をすることを業とするものである。RVSは、自らが適正と考える価格の3分の1程度で株式を買い取り、みなし承認を強調し、承認された場合には帳簿閲覧請求などで配当の増加等を提言する意向を示して、会社に害悪が生じるかのような書面を送って対応を迫っている。RVSの事業は、株主に帰属すべき企業価値を自らの事業利益とし、無関係の投資家に利息として分配するもので、売買価格決定の手続の公正かつ円滑な営みを妨げ、紛議を助長する。少数株主の投下資本回収のニーズは、保護すべき必要性が高いものではない。
  • GMFの主張(金融商品取引法第29条):非上場株式は有価証券であり、その売買を事業として行っている。ホームページや書籍といった不特定多数の者に訴求できる方法で勧誘しており、「業として」行うものであるから登録が必要であるのに、RVSは登録を受けていないので、本件各株式譲渡は無効である。
  • RVSの主張(弁護士法第73条):譲渡承認請求や買取請求、売買価格決定の申立ては、株式を取得した者自身の権利であり、他人から譲り受けた権利ではない。仮に形式的に当たるとしても、元株主2名は、GMFが適正な価格と全く乖離した1株60円に固執したため合意に至らなかったのであり、RVSは資料の提示を受けて1株500円で買い取り、代金を支払った。譲渡承認請求書の送付など手続に従っており、換価困難な譲渡制限株式を適正妥当な金額で買い取って株主の経済的保護の選択肢を作るという理念に基づく事業であるから、正当な業務の範囲内である。
  • RVSの主張(金融商品取引法第29条):譲渡制限株式の取引の場は極めて限定的であり、手当たり次第の電話やダイレクトメールによる勧誘もしておらず、広告は関心を抱いた者にのみ届く性質のものであるから、「対公衆性」がなく「業として」に当たらない。

争点2:本件各決議の取消事由の有無及び裁量棄却の相当性

  • RVSの主張:法定の手続を踏んで譲渡承認請求をし、みなし承認の後に名義書換請求をしたのに、GMFが応じなかったのは不当な拒絶であり、株主であるRVSに招集通知をしなかったことは招集手続の法令違反に当たる。GMFが株主からの請求を一貫して無視するという対応を弁護士の関与の下で選択したことの違法性は甚大であり、裁量棄却がされる事案ではない。
  • GMFの主張:株式譲渡契約書の提示がされないなど、RVSが株主であるかに疑義があったため名義書換えを行わなかったのであって、不当な拒絶ではない。株主名簿上の元株主2名に招集通知を送っているから、招集手続に違法はない。仮に違法があっても、名義書換請求から基準日まで1か月弱しかなく、RVSの株式は発行済株式総数の約4.5%にとどまり、議決の結果に影響はないから、裁量棄却されるべきである。

控訴審での補充主張

GMFは、控訴審で、次の主張を補充しました。

  • RVSが譲り受けた株式は、買取価格の交渉が成立しなかったという経緯がある、紛争性のある株式である。
  • RVSが元株主に支払う代金は、将来得られる売却益を見込んだものであり、売却益を譲渡人に還元していると評価すべきである。株主から買い取った後に会社と交渉するのは、弁護士法第72条違反の指摘を回避するためである。
  • RVSは、事業開始から令和4年12月頃までに50件の非上場株式を現金化したとしており、うち15件は売買価格決定の手続に至っているから、法的紛議の発生は不可避であり、みだりに訴訟を誘発している。
  • RVSは、外部者が株主として介入するという圧力を背景に、閉鎖的な非上場会社から金銭を収受しようとするもので、法秩序の予定しない不当な行為である。
  • RVSの事業は、株主から株式を安く買い取り、会社に高く買い取らせることなしには成立せず、買取時に価格の算定根拠を株主に告げていないという情報の非対称性や交渉力の格差を利用するものであるから、投資者保護のための業規制を適用する必要がある。ホームページや書籍で不特定多数の者を勧誘しているから、対公衆性がある。
  • RVSは本件各株式譲渡の直後から株式を売却したい意向を示しており、経営に真摯に参加する意思はなかった。RVSの株式は約4.5%にすぎず、出席しても決議に影響した可能性はないから、裁量棄却されるべきである。

RVSも、控訴審で、自己の計算で株式を取得しているのであって対公衆性はない、仮に形式的に金融商品取引業に当たるとしても、弊害が生じるおそれがなく正当な業務の範囲内であるから無効な取引ではない、と主張を補充しました。

お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。

結論を左右した争点

結論を左右したのは、次の3点です。

  1. 株式買取業者であるRVSが元株主2名から株式を買い取ったことが、弁護士法第73条に違反して無効となるか。特に、形式的には同条に当たるとしても、弊害が生ずるおそれがなく、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあるといえるか(争点1)。
  2. RVSの買取事業が金融商品取引業に当たるか、当たるとして、無登録の業者が株式を買い取った契約が無効になるか(争点1)。この点は、第一審と控訴審とで理由が分かれました。
  3. 売買が有効であるとして、会社がみなし承認後の名義書換請求を拒み、RVSに招集通知を送らずに開いた株主総会の決議を取り消すべきか、それとも違法が軽微で決議に影響しないとして裁量棄却すべきか(争点2)。

なお、本件では、GMFが期限内に承認するかどうかの決定をしなかったこと自体は前提事実となっており、みなし承認の成否は、もっぱら売買の有効性に懸かっていました。

第一審の判断

形式的には弁護士法第73条の「他人から譲り受けた権利の実行」に当たる

第一審は、まず、RVSの事業は、株式を買い取った後に発行会社に譲渡承認を請求し、承認されない場合には会社又は指定買取人に買取りを請求し、価格の協議が不調になると裁判所に売買価格決定を申し立て、その決定等によって売買代金を得て利益をあげること等を目的としており、形式的には、他人から権利を譲り受けて、訴訟等その他の手段によって権利の実行をするものであって、本件各株式譲渡もその一環であるとしました。

RVSは、譲渡承認請求等は、法律が株式の取得者に与えた権利の行使であって、譲り受けた権利の実行ではないと主張しましたが、第一審は、弁護士法第73条の趣旨からすると、次のように解されるとして、この主張を採用しませんでした。

「他人から譲り受けた権利から派生する請求を行うことも「他人から譲り受けた権利の実行」に当たると解される」

判断の枠組み―弊害のおそれがなく、正当な業務の範囲内か

第一審は、形式的に弁護士法第73条に当たる行為であっても、同条の趣旨に照らすと、次のように解するのが相当であるとしました。

「上記の弊害が生ずるおそれがなく、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には、同法73条に違反するものではないと解するのが相当である」

そのうえで、権利の譲受けの方法・態様、権利実行の方法・態様、業務の内容と実態の3つの観点から検討しました。

権利の譲受けと権利実行の方法・態様

第一審は、RVSが、ウェブサイトや書籍で非上場株式の売却需要を喚起し、発行会社との買取りの協議が整わなかった者から株式を譲り受け、その代金を年約14.7%の利息の借入れなどで賄っていることを認めました。本件では、GMFが提示した1株60円での協議が整わなかったため、RVSが1株500円で譲り受けたものであり、元株主2名が株主の地位を有していたことにはGMFとの間で争いがなかったことも指摘しています。

権利実行については、RVSは、承認を得られなかった場合には協議又は売買価格決定の申立てによって譲受価格と売却価格との差額を利益とし、承認を得られた場合には株主として会計帳簿の閲覧請求などの少数株主権を行使し、株主代表訴訟等を提起することもあると認めました。本件では、GMFが承認するともしないとも回答しなかったため、みなし承認を前提に買取りの提案をし、元株主2名と共同して名義書換えを請求し、拒絶されたため本件訴訟を提起したと整理しています。

事業の実態―紛議を助長する面はあるが「みだりに」とまではいえない

第一審は、会社が株式の譲渡を制限するのは好ましくない者が株主になることを排除したいという要請によるのが一般的であり、RVSのような第三者への譲渡を承認する会社は相当少ないと考えられることから、承認を得られなかった株式を協議や売買価格決定の申立てを通じて売却し、売却価格と譲受価格との差額を利益とすることがRVSの事業の基本的な収益構造であると認めました。また、RVSの議決権割合は低く、株主提案の実現可能性も低いこと、比較的高利の借入れで資金を賄っていることから、RVSは基本的に株式の長期保有を好ましいとは考えておらず、発行会社等による早期の買取りを目指していると考えざるを得ないとしました。

そのため、第一審は、RVSの事業に、売買価格決定の申立てや発行会社・役員に対する訴訟を誘発し、紛議を助長する面が一定程度あることは否定できないとしました。しかし、次の事情を挙げて、「みだりに」訴訟を誘発したり紛議を助長したりするとまでは評価できないとしました。

  • 元株主2名が株式を保有していたことには争いがなく、RVSが株式の帰属自体に争いがあるような株式を譲り受けたとは認められず、他の事例でも紛争性の高い株式を譲り受けたことをうかがわせる証拠はない。
  • RVSは、譲渡人の意向に従って権利を行使しているとは認められず、売却による利益を譲渡人に還元しているとも認められない。
  • 株主として訴訟を提起した事例は少数にとどまり、売買価格決定の申立ても1年当たり数件にとどまる。不当な要求や暴力的・反社会的な方法を用いたことをうかがわせる証拠もない。

このうち2点目について、第一審は次のように述べています。

「譲渡人から独立した立場で、自らの利益のために権利行使をしているのであって、弁護士代位の原則を潜脱する意図や実態は認められない。」

少数株主にとっての有用性と価格差の評価

第一審は、小規模で閉鎖的な会社の少数株主は、配当がないか少額で、株式の譲渡に制限がある場合には、株式保有による経済的利益を十分に享受できず、投下資本の回収も制限されていることから、RVSの事業は株主による一定の需要を有し、社会的有用性が認められることは否定できないとしました。そして、買取価格と売却価格の差について、次のように述べました。

「〔RVS〕が上記のような少数株主から買い取る価格と〔RVS〕が〔GMF〕に売却する価格に相応な差があることにつき否定的な評価はあり得るところではあるが、暴利を得ているとまではいえず」

さらに、株式をRVSに譲渡するかどうかは少数株主の自由であり、少数株主はRVSへの売却によって時間的なコストや買い取ってくれる第三者を探すコストを削減できることから、RVSが相応の利益を得ることは業務の正当性を失わせる事情とはいえないとしました。GMFが主張した、少数株主のニーズは保護すべき必要性が高いものではないという点は、採用されませんでした。

以上から、第一審は、本件各株式譲渡、本件各譲渡承認請求及び名義書換請求は、濫訴のおそれや弁護士法第72条本文の潜脱として国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずるおそれがなく、社会的経済的に正当な業務の範囲内と認められるから、弁護士法第73条に違反しないと判断しました。

金融商品取引法については「公衆性」がないとした

第一審は、RVSの事業の広告の方法・態様等に照らして、次のように判断しました。

「その事業に「公衆性」があるとは認められず、同条にいう「業として」金融商品を取引したということはできない。」

そして、本件各株式譲渡は弁護士法第73条にも金融商品取引法第29条にも違反せず、公序良俗に違反する取引ともいえないから、有効であるとしました。この金融商品取引法についての判断は、後に控訴審で改められています。

みなし承認と名義書換えの不当拒絶

第一審は、本件各株式譲渡が有効である以上、本件各譲渡承認請求から2週間が経過したことにより、GMFは本件各株式譲渡を承認したものとみなされるとしました。

そのうえで、GMFは、RVSと元株主2名が令和5年3月1日に共同で行った名義書換請求に応じておらず、株主名簿の閉鎖(3月31日まで)までに名義書換えに応じることが困難であったことをうかがわせる事情は認められないとして、次のように判断しました。

「〔GMF〕は、株主名簿閉鎖までに〔RVS〕の請求を不当に拒絶したものと認められ」

このため、名義変更がされていないことを理由に、GMFがRVSを株主として扱わない旨を主張することは許されないとしました。GMFが主張した、株式譲渡契約書の提示がないなど株主であるかに疑義があったという点は、この判断を左右しませんでした。

招集手続の法令違反と裁量棄却の否定

第一審は、GMFがRVSに招集通知をしなかったことは会社法第299条第1項に違反し、招集手続に法令違反があるから、本件各決議には取消事由があるとしました。裁量棄却については、次のように述べて否定しました。

「上記認定事実によれば、〔RVS〕に対する招集通知の不実施は、意図的に〔RVS〕を本件株主総会から排除したものといえ、その違法性の程度は重大であって、これを裁量により棄却することが相当であるとは認められない。」

RVSの株式が発行済株式総数の約4.5%にすぎない点についても、他の株主の議決権行使の状況は明らかでなく、RVSが議決権を行使しても決議に影響を及ぼさないと認めるに足りる証拠もないとしました。

第一審の結論

第一審は、RVSはGMFの株式7万3,970株を有する株主であり、本件株主総会の決議は招集手続の法令違反を理由に取り消されるべきであるとして、RVSの請求をいずれも認容しました。

控訴審の判断

第一審の判断を引用し、金融商品取引法の部分を改めた

控訴審は、第一審と同じく、RVSの請求はいずれも理由があると判断しました。理由は、第一審判決の「判断」を引用したうえで、2か所を補正し、GMFとRVSのそれぞれの補充主張に対する判断を加えるというものです。

  • 1つ目の補正は、原判決の特定の箇所を、金融商品取引法の「業として」の判断基準、RVSの事業の金融商品取引業該当性、無登録業者による買付けの契約の効力、本件の売買の経緯を内容とする新たな文章に改めるものです。補正後の文章の内容からみて、第一審の金融商品取引法第29条についての判断を置き換えるものと考えられます(判決本文は原判決の頁と行で箇所を特定しており、どの文章を置き換えたかは補正後の内容から当事務所が判断しました)。
  • 2つ目の補正は、第一審の結論部分を、「公序良俗に違反する取引とまでは認めることはできず、有効である」とする文章に改めるものです。

弁護士法第73条についての第一審の判断(形式的該当性、判断の枠組み、弊害のおそれがなく正当な業務の範囲内であるとした判断)と、みなし承認・不当拒絶・決議取消し・裁量棄却についての判断は、そのまま引用されて維持されています。

買取事業は金融商品取引業に当たる

控訴審は、「業として」に当たるかは、「対公衆性」のある行為を「反復継続性」をもって行う場合に当たるか否かで判断すべきであるとしました。そして、RVSが、ウェブサイトや書籍を用いて非上場株式の買取りを広く募っていること、そのための資金を、銀行のほか、控訴審が「基本的には短期間での見返りを得ることを目的とすると考えられる」とした個人投資家からの借入れで賄っていること、本件でも自ら試算した1株1,667円を大きく下回る500円で買い取ったうえで1株834円での買取りをGMFに求めていることを挙げ、不特定多数の者を相手にすることが予定され、その求めに応じながら自身の利益をあげることを目的としたものであるとして、次のように判断しました。

「「対公衆性」のある行為と評価するのが相当である。」

さらに、平成30年頃から多数の問合せや相談を受けた中から多くの株式を取得しているとして「反復継続性」も認め、次のように結論づけました。

「〔RVS〕による非上場株式の買取事業は「金融商品取引業」に該当し、内閣総理大臣による登録を受けなければ行うことができないと評価するのが相当である。」

この点は、第一審が「公衆性」を否定して金融商品取引業に当たらないとした判断を、正面から改めたものです。RVSが控訴審で補充した、自己の計算で取得しているから対公衆性はないという主張も、採用されませんでした。

無登録業者の「買付け」でも、契約が当然に無効となるわけではない

もっとも、控訴審は、無登録業者が未公開有価証券を売り付けた場合には原則として契約が無効になる旨の規定があるのに対し、買い付けた場合にはそのような規定がないことを指摘し、次のように述べました。

「買付行為については売付行為のような定めはなく、上記のように罰則の定めはあるものの、未公開有価証券を買い付けた契約が当然に公序良俗に違反するなどとして無効になるものとまではいえず、別途検討する必要がある。」

本件の売買の経緯に不当な点はない

そこで控訴審は、本件の売買が公序良俗に違反して無効となるかを、次の事情から検討しました。

  • GMFの株式の譲渡には取締役会の承認が必要であり、株式を保有する者が投下資本を回収するために換価するには一定の制限があった。元株主2名がGMFに買取りを求めたのに対し、GMFは1株60円での買取りを提示し、合意に至らなかった。
  • こうした状況で元株主2名がRVSに1株500円で譲渡することになったのであり、次のとおり、譲渡に至った経緯自体に不当な点は認められない。

「換価のために〔元株主2名〕が〔RVS〕の広告に応じて譲渡するに至った経緯自体には不当な点は認められない。」

  • 譲渡金額の1株500円は、RVSが後に試算した1株1,667円や、実際に買取りを求めた1株834円よりは低額であるが、GMFが元株主2名に提示した金額と比較すればはるかに高額であり、RVSの業態からすると利益をあげる必要があり、それも踏まえて500円としたことに不当な点があるとまではいえない。
  • RVSが株式の取得後に譲渡承認請求と買取請求をし、2週間以内に決定がされなかったためにみなし承認を前提として買取りの提案や名義書換請求をしたことは、法律の規定に従って取るべき手段として行ったものであり、それ自体が非難されるものとはいえない。
  • 譲渡制限株式を保有する株主が投下資本を回収しようとする場面では、株主の立場からすれば一定の有用性が認められることは否定できない。

そして、控訴審は、元株主2名の側の事情について、次のように述べました。

「本件で〔元株主2名〕が不当な安価での譲渡を求められるなどし、その意に反して株式を譲渡するに至ったとは認められない。」

これらを考慮して、控訴審は、本件各株式譲渡が公序良俗に違反するなどして無効と評価すべきものとまでは認められないとし、結論部分を次のとおり改めました。

「以上によれば、本件各株式譲渡は公序良俗に違反する取引とまでは認めることはできず、有効である。」

弁護士法第73条に関するGMFの補充主張に対する判断

控訴審は、弁護士法第73条についてGMFが補充した4つの主張を、いずれも退けました。

第1に、譲り受けた株式には紛争性があるという主張に対しては、次のように述べました。

「控訴人が主張する紛争等は買取価格に関するものであり、〔元株主2名〕の保有自体には争いがなく、紛争性が高い株式を被控訴人が敢えて取得したと評価することはできず」

(ここでの「控訴人」はGMF、「被控訴人」はRVSを指します。)

第2に、売却益を譲渡人に還元している、買取後に交渉するのは弁護士法違反を回避するためであるという主張に対しては、元株主2名からRVSへの譲渡と、RVSがGMFに買取りを求めることとは別個の法律行為であり、取得の原資はRVSが別途調達した資金で、取得した株式が確実に会社に買い取られるものでもないとして、次のように判断しました。

「本件事業を通じて、譲渡人に対して利益が還元されていると評価することはできない。」

また、RVSは株式の取得後に自ら有する権利として交渉を行っており、譲渡人の意向や利益に従って権利を行使していることをうかがわせる事情もないから、不当に弁護士法違反を回避したと評価することはできないとしました。

第3に、法的紛議の発生が不可避であり、みだりに訴訟を誘発しているという主張に対しては、譲渡制限株式の譲渡承認を求めれば、会社が承認せず、評価額をめぐる紛争が生じる事態が多いと考えられることを認めつつ、それは法律の規定に基づく行為であり、価格決定の申立ては1年当たり数件、株主としての訴訟は4件にとどまるとしました。そして、本件では元株主2名とGMFとの間で1株60円の提示により合意に至らなかったことから売買がされたのであるとして、次のように述べました。

「法的紛議の原因が一方的に被控訴人にあるとするのは相当ではなく」

第4に、外部者が株主として介入する圧力を背景に金銭を収受しようとする不当な行為であるという主張に対しては、GMFが、CHD氏が別件の訴訟の本人尋問で、取得した株式の譲渡がすべて承認されたとすれば投下資本の回収が厳しくなることを認めている点を指摘したことにも触れたうえで、次のように述べて退けました。

「譲渡制限株式を取得する際に承認を求め、これを拒否された場合には買取りを求めて、最終的には売買価格決定の申立てに至るというのは法律が予定している手続であり」

裁量棄却についての補足―RVSの書面にあった経営関与の意思

GMFは、控訴審で、RVSは売却の意向を示しており経営に参加する意思はなく、約4.5%の議決権では決議に影響しないと主張しました。控訴審は、RVSが令和5年1月27日付けの提案の書面で、GMFが株式を買い取る場合の提案のほかに、株主として迎え入れられた場合について、次のように記載していたことを指摘しました。

「経営戦略サポートや株主提案などで、〔GMF〕様の発展に寄与し、株式配当を向上することに貢献する所存です。」

控訴審は、この記載から、RVSは譲渡が承認された場合には株主としてGMFの経営に関与していく意思を表明していたとして、第一審の判断のとおり、次のように判断しました。

「被控訴人に対する招集通知の不実施の違法性は重大であり、決議に影響を及ぼした可能性がないとは認められない。」

(ここでの「被控訴人」はRVSを指します。)

維持・補正・変更の整理

控訴審は、第一審の結論(株主であることの確認と5つの決議の取消し)を維持しました。弁護士法第73条についての判断、みなし承認と名義書換えの不当拒絶、招集手続の法令違反と裁量棄却の否定についての判断は、第一審の判断を引用し、GMFの補充主張に対する判断を加えて維持しています。

変更されたのは、金融商品取引法についての理由です。第一審は、RVSの事業には「公衆性」がなく金融商品取引業に当たらないとしましたが、控訴審は、対公衆性と反復継続性を認めて、RVSの買取事業は金融商品取引業に当たり、登録を受けなければ行うことができないとしました。そのうえで、無登録業者による未公開有価証券の買付けの契約が当然に無効となるわけではないとし、本件の売買の経緯を個別に検討して、公序良俗に違反して無効とまではいえないとしました。結論は同じですが、売買が有効とされた理由の組立ては、この点で大きく異なっています。

主文及び結論

第一審判決の主文

第一審判決の主文は、次のとおりです(ここでの「原告」はRVS、「被告」はGMFを指します)。

「1 原告が被告の発行する普通株式7万3970株を有する株主であることを確認する。
2 被告の令和5年5月25日開催の定時株主総会における別紙決議目録記載の決議を取り消す。
3 訴訟費用は、被告の負担とする。」

別紙決議目録には、第1号議案から第5号議案までの5つの決議(決算報告書の承認、剰余金処分、取締役の改選、監査役の改選、取締役及び監査役の報酬等の総額)が記載されています。

控訴審判決の主文

控訴審判決の主文は、次のとおりです(ここでの「控訴人」はGMFを指します)。

「1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。」

これにより、RVSがGMFの株式7万3,970株を有する株主であることを確認し、令和5年5月25日開催の定時株主総会における5つの決議を取り消した第一審判決が維持されました。

審級ごとの結論の推移

審級 結論 下級審の判断との関係・主な理由
第一審(大阪地方裁判所令和6年12月11日判決) 請求を全部認容(株主であることの確認、5つの決議の取消し) 弁護士法第73条には形式的に当たるが、弊害のおそれがなく正当な業務の範囲内であるから違反しない。金融商品取引法については「公衆性」がなく金融商品取引業に当たらない。売買は有効で、2週間の経過によりみなし承認。名義書換請求を不当に拒絶したから株主として扱わないことは許されない。招集通知の不実施は意図的な排除で違法性が重大であり、裁量棄却しない
控訴審(大阪高等裁判所令和7年9月4日判決) 控訴棄却 第一審の結論を維持。弁護士法第73条、みなし承認、不当拒絶、決議取消し、裁量棄却の判断は引用して維持し、補充主張に対する判断を追加。金融商品取引法については理由を変更し、買取事業は金融商品取引業に当たり登録が必要であるとしたうえで、無登録業者の買付けの契約は当然には無効とならず、本件の売買は公序良俗に違反して無効とまではいえないとした
上告審 確認できていません 上告・上告受理申立ての有無及び確定は、判決本文からは確認できていません

判断の射程―参考となる点と一般化できない点

以下は、判決の内容を踏まえた当事務所の評価です。裁判所が示した判断そのものとは区別してお読みください。射程は、最終的な判断である控訴審の判断を基準としています。

参考となる点

第1に、会社から低い買取価格しか示されなかった株主が株式買取業者に株式を売った場合に、その売買が有効とされた事例であることです。控訴審は、会社の提示が1株60円であったのに対し、買取業者への売却価格が1株500円であったことを、売買の経緯に不当な点がない事情として評価しました。会社が低い価格に固執し、株主が他に換価の手段を持たない状況が、売買を無効としない方向で考慮されています。

第2に、会社が譲渡承認請求に「応答するつもりがない」と答えるだけで、2週間以内に承認するかどうかの決定をしなかった場合、売買が有効である限り、承認したものとみなされることです。会社が売買は無効であると考えていても、承認しない旨の決定をしないまま期間を経過させれば、みなし承認の効果を争うには売買の無効を立証しなければならず、本件ではその立証が認められませんでした。

第3に、みなし承認の後の名義書換請求を会社が拒んだ場合に、不当な拒絶として、会社は取得者を株主として扱わないことは許されず、取得者に招集通知を送らずに開いた株主総会の決議が取り消されたことです。裁判所は、招集通知を送らなかったことを意図的な排除と評価し、議決権の割合が約4.5%にすぎないという会社の主張を退けて裁量棄却を否定しました。控訴審は、取得者が株主として経営に関与する意思を書面で表明していたことも、決議に影響を及ぼした可能性を否定できない事情として挙げています。

第4に、控訴審が、非上場株式の買取事業について、ウェブサイトや書籍で広く売却を募り、個人投資家からの借入れで資金を賄い、多くの株式を取得している実態から、金融商品取引業に当たり登録が必要であると判断したことです。ただし、その結論として個々の買取りの契約が無効になるわけではないとされた点に注意が必要です。

一般化できない点

本判決は、株式買取業者への売却がどのような場合でも有効であると判断したものではありません。控訴審は、無登録業者による買付けの契約は「当然に」無効となるものではなく「別途検討する必要がある」としたうえで、本件の個別の事情(会社の提示が1株60円であったこと、売主が広告に応じて自ら売却したこと、売主が意に反して不当な安価での譲渡を求められたとは認められないこと等)を検討して、公序良俗違反を否定しています。事情が異なれば、結論が異なる可能性があります。

弁護士法第73条についても、第一審が、株式の帰属自体に争いがないこと、譲渡人に利益を還元していないこと、価格決定の申立てや訴訟の件数が多くないこと、不当な要求や反社会的な方法を用いた証拠がないことなどを認定したうえで、正当な業務の範囲内と判断したものです。同じ株式買取業者の事業であっても、当てはめの事情が異なれば判断が異なり得ます。実際に、当事務所のサイトで解説している別の事件の大阪高等裁判所令和6年7月12日判決は、株式買取業者への売却契約を弁護士法第73条違反により無効としています。両判決はそれぞれの事件の事実関係に基づく判断であり、本件の判決本文は、その判決に言及していません。

また、本件で争われたのは、売買の効力、みなし承認後の株主の地位及び株主総会決議の取消しです。会社が承認しない旨の決定をした場合の売買価格(裁判所による価格決定)は、本件では判断されていません。本件の1株500円、1株834円、1株1,667円という数字は、いずれも当事者が示した価格であり、裁判所がGMFの株式の価値を認定したものではありません。

上告・上告受理申立ての有無及び確定は確認できていないため、その点にも留意が必要です。

株主の皆様が確認しておきたいこと

本件の元株主2名は、会社に買取りを求めたものの、1株60円という価格しか示されず、株式買取業者に1株500円で売却しました。判決は、この売却を有効とし、売主が意に反して不当な安価での譲渡を求められたとは認められないとしています。一方で、判決本文によれば、買取業者は、後に会社に対して簿価純資産法による1株1,667円が適当であるとし、1株834円での買取りを提案しています。GMFの側も、控訴審で、買取業者は買取時に価格の算定根拠を売主に告げていないと主張していました(この点は控訴審が事実として認定したものではありません)。

非上場株式を手放したい株主にとっては、会社が示す価格だけでなく、株式買取業者が示す価格も、その株式の価値を示すものとは限らないことが分かります。会社の決算書の純資産の額、配当の状況、発行済株式総数などから、自分の株式がおおよそどの程度の価値を持ち得るのかを確認したうえで、売却先と売却の方法を選ぶことが大切です。譲渡制限株式の場合、会社に譲渡承認を請求し、会社が承認しないときは会社又は指定買取人に買い取らせ、価格の協議が調わなければ裁判所に価格の決定を求めるという、法律が予定している手続があります。これらは本判決を踏まえた当事務所の着眼点であり、本判決がこうした確認の有無を判断の基準としたものではありません。

よくあるご質問

会社に株式の買取りを求めたところ、1株60円という非常に低い価格を示されました。株式買取業者に売ってもよいのでしょうか。

本判決では、会社から1株60円を示されて合意に至らなかった株主2名が、株式買取業者に1株500円で売却した売買について、弁護士法第73条に違反せず、公序良俗に違反して無効ともいえないとして、有効と判断されました。ただし、本判決は個別の事情を検討した結果であり、株式買取業者への売却契約を弁護士法第73条違反により無効とした別の事件の判決もあります。また、買取業者の価格が、株式の価値に見合ったものかどうかは別の問題です。本件でも、買取業者は買取価格の500円を大きく上回る1株1,667円が適当であると後に会社に伝えています。売却の前に、株式の価値と、他の換価の方法を確認されることをお勧めします。

会社が譲渡承認請求に返事をしない場合、どうなりますか。

会社法では、会社が請求の日から2週間以内に承認するかどうかの決定の内容を通知しなかったときは、会社は承認をしたものとみなされます。本件では、会社が「承認の可否を応答するつもりがない」と回答しただけで決定をしなかったため、売買が有効である以上、承認したものとみなされると判断されました。

みなし承認の後、会社が株主名簿の名義書換えに応じない場合はどうなりますか。

本判決は、取得者と元の株主が共同して名義書換えを請求したのに、会社が株主名簿の閉鎖までに応じることが困難であった事情もないまま拒んだことを不当な拒絶とし、会社が名義書換えのないことを理由に取得者を株主として扱わないことは許されないとしました。そのうえで、取得者が株主であることを確認しています。

招集通知が届かないまま株主総会が開かれ、決議がされてしまいました。決議を取り消せますか。

本判決では、名義書換えを不当に拒絶された株主に招集通知を送らずに開かれた定時株主総会について、招集手続の法令違反があるとして、決算報告書の承認や役員の選任など5つの決議がすべて取り消されました。会社は、株主の議決権の割合が約4.5%にすぎず決議に影響しないとして裁量棄却を求めましたが、裁判所は、意図的な排除であり違法性が重大であること、決議に影響しないと認める証拠もないことから、これを認めませんでした。決議の取消しの訴えは決議の日から3か月以内に提起する必要がある点に注意が必要です。招集通知が届かない場合の決議取消しと決議不存在確認の使い分けは招集通知が届かないまま決議された場合の決議取消しと決議不存在確認の使い分けで解説しています。

株式買取業者が金融商品取引業の登録を受けていないと、売買は無効になりますか。

本件の控訴審は、株式買取業者の非上場株式の買取事業は金融商品取引業に当たり、登録を受けなければ行うことができないと判断しました。しかし、無登録業者が未公開有価証券を売り付けた場合とは異なり、買い付けた場合には契約を原則として無効とする規定がないため、契約が当然に無効になるわけではないとし、本件の売買は公序良俗に違反して無効とまではいえないとしました。登録の有無だけで売買の効力が決まるわけではありません。

非上場株式を手放したいのですが、どのような方法がありますか。

譲渡制限株式の場合、買主を見つけて会社に譲渡承認を請求し、会社が承認しないときは会社又は指定買取人に買い取らせ、価格の協議が調わなければ裁判所に価格の決定を求める方法があります。本件の判決も、この流れを「法律が予定している手続」と述べています。譲渡制限株式の承認の手続は譲渡制限株式の譲渡承認手続の流れと注意点で、非上場株式の売却全般は非上場株式の売却の総合案内で解説しています。

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非上場株式を手放したいのに会社から低い価格しか示されない場合や、株式買取業者から買取りの提案を受けている場合には、会社の決算書、定款(譲渡制限の定め、株主名簿の閉鎖や基準日の定め)、会社とのやり取りの記録、買取業者から示された価格と条件などを整理し、株式の価値の目安、譲渡承認請求と売買価格決定の手続を利用できるか、売却先の選び方を確認したうえで、対応を検討します。株券を発行していない会社の株式の譲渡の効力要件・対抗要件と譲渡承認請求は株券不発行会社の株式の譲渡の効力要件・対抗要件・譲渡承認請求で、譲渡制限株式の承認の手続は譲渡制限株式の譲渡承認手続の流れと注意点で解説しています。株式買取業者への売却契約が無効とされた別の事件は株式買取業者への売却と弁護士法第73条違反の判例で、非上場株式の売却全般は非上場株式の売却の総合案内で、ほかの裁判例は非上場株式・少数株主問題の裁判例の解説記事一覧でご覧いただけます。

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非上場株式を手放したい株主に向けて、会社から1株60円を示された株主2名が株式買取業者に1株500円で売った事案で、売買の有効性、譲渡承認のみなし承認、招集通知を欠いた株主総会決議の取消しが争われた判例を解説します。

株式買取業者への売却契約を弁護士法第73条違反で無効とした別の事件(大阪高等裁判所令和6年7月12日判決)は株式買取業者への売却と弁護士法第73条違反の判例で解説しています。本件は、弁護士法第73条違反と金融商品取引法違反の主張をいずれも退けて売買を有効とした事件です。

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株券不発行会社の株式の譲渡の効力要件・対抗要件・譲渡承認請求

執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

2024年(令和6年)10月に最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得た弁護士です。長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件にも関与しています。

主として取り扱う分野 M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務

所在地 〒105-6017 東京都港区虎ノ門4丁目3番1号 森トラスト城山トラストタワー17階/電話番号 03-6435-8418/受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)

本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。

著書

非上場会社における少数株主対策の手法と実務
『非上場会社における少数株主対策の手法と実務』(日本法令)
中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策
『中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策』(清文社)
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