株主名簿の閲覧及び謄写の請求を弁護士に依頼するとき 非上場会社の株主を確かめる

配当は届かず、株主総会の招集通知も来ない。会社に電話をしても、担当者が代わったので分からないと言われる。手元にあるのは、30年前に父が受け取った株券が1枚と、古い決算書の写しだけである。こうした状態のまま、自分のほかに誰が何株を持っているのかを一度も確かめたことがない、という株主の方は少なくありません。

非上場会社の株式には、証券会社の口座も、取引所の板もありません。誰が株主であるかを記録した唯一の公的な帳簿が、会社が備え置く株主名簿です。ところが、その名簿を握っているのは会社側であり、株主が自分の目で見る機会は、意識して請求しない限り訪れません。相続によって株式を承継された方、会社を退職された方、他県に居住しておられる方ほど、この状態が長く続きます。

結論から申し上げます。株主名簿の閲覧及び謄写の請求は、1株の株主でも行うことができる権利であり、会社が拒める場合は法律に列挙された4つに限られています。請求の入口を誤らなければ、多くの事案は書面の往復だけで名簿の写しが得られます。以下、順に御説明します。

本記事が扱う場面と、扱わない場面

会社に対する資料の請求は、対象となる書類ごとに条文も要件も異なりますので、書類を1つに絞って御説明します。

自分以外に誰が株主なのかが分からないという状態

株主の方が最初に困るのは、交渉の相手方を特定できないことです。会社に株式を買い取ってもらうにせよ、他の株主に譲るにせよ、誰がどれだけの議決権を握っているかが分からなければ、どこへ話を持ち込めばよいかが決まりません。社長が単独で6割を握っている会社と、親族4名がそれぞれ2割前後を分け合っている会社とでは、取るべき順序がまったく違います。

登記事項証明書には、代表者と役員の氏名は載りますが、株主の氏名は載りません。株主の構成が公示される仕組みは、非上場会社には存在しないのです。法人税の申告書に添付される同族会社等の判定に関する明細書には上位の株主が記載されますが、これは税務署へ提出される書類であり、株主が当然に見られるものではありません。

そこで、株主の構成を知る正面からの方法が、会社が備え置く帳簿を直接に見るという手段になります。株式会社は、株主の氏名又は名称及び住所、その株主が有する株式の数、取得した日、株券発行会社であれば株券の番号を記載した株主名簿を作成しなければならないものとされています(会社法第121条第1号から第4号まで)。ここに書かれている事項が、そのまま交渉の前提となる情報です。

株主名簿の閲覧及び謄写を請求することができるのは誰か

会社は、株主名簿を本店に備え置かなければなりません。株主名簿管理人を置いている会社では、その営業所が備置きの場所となります(会社法第125条第1項)。備え置く義務がある以上、備置きの場所へ出向いて見せるよう求めることが、権利行使の原型です。

請求することができるのは、株主及び債権者です(会社法第125条第2項)。持株の数や割合による絞りは条文に置かれていません。額面5万円の株式を1株だけ相続した方でも、100分の1に満たない持分の方でも、同じ条文で請求できます。この点は、総株主の議決権の100分の3以上という保有要件が課される会計帳簿の請求(会社法第433条第1項)と決定的に異なります。

営業時間内であればいつでも請求できますので、決算期や株主総会の時期を待つ必要もありません。実務では、来訪の日時を指定した書面を先に送るか、謄写した写しの郵送を求めます。遠方の株主の方については、後者を選ぶことが通常です。

請求書に何を書くのか 理由の記載が要件です

会社法第125条第2項は、請求の際に「当該請求の理由を明らかにして」しなければならないと定めています。理由の記載は、書けば足りるという形式的なものではなく、記載を欠いた請求は要件を満たさない請求として扱われます。ここを詰めないまま送った書面が、会社の顧問弁護士から「理由が明らかにされていない」と一行で突き返される例が実際にあります。

記載すべきは、何を確認するために名簿を見るのか、その確認が株主としてのどの権利の行使につながるのかという2点です。たとえば、保有株式数と持株比率を確認し、会社又は他の株主に対する株式の買取りの申入れの相手方と条件を検討するため、といった程度の具体性が求められます。「株主の権利を行使するため」とのみ記載した書面は、この水準に達していません。

書面に必ず入れる4つの項目

請求書には、(一)根拠となる条文の番号、(二)請求の対象を株主名簿と特定する記載、(三)閲覧と謄写のいずれを求めるのか、又は双方か、(四)回答の期限と回答先を入れます。期限は、到達から2週間程度が実務上の目安です。期限を切らない書面は、放置される確率が上がります。

送り方と、記録の残し方

送付は配達証明付きの内容証明郵便で行い、いつ、どのような内容の書面が、誰に到達したかを外形的に立証できる状態にします。会社が電話で口頭の回答をしてきた場合には、その日時と応対者の氏名を記録し、書面での回答を改めて求めてください。後に裁判所へ持ち込む場合、拒絶の事実そのものが疎明の資料になります。

会社が拒むことができる場合と、できない場合

会社は、請求があったときは、会社法第125条第3項第1号から第4号までのいずれかに該当する場合を除き、これを拒むことができません。第1号は権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求が行われた場合、第2号は会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的による場合、第3号は名簿から知り得た事実を利益を得て第三者に通報するために請求した場合、第4号は過去2年以内に同様の通報をしたことがある場合です。

注意していただきたいのは、この4つの中に、請求者が会社と競争関係にある事業を営んでいることが含まれていない点です。会計帳簿の請求については競争関係が拒絶事由として掲げられていますが(会社法第433条第2項第3号)、株主名簿については掲げられていません。会社側が競業を理由に拒んできた場合、その主張は条文に根拠を持ちません。

また、拒絶事由に当たることの立証責任は会社の側にあります。株主の方が「自分は目的外ではない」と証明する構造ではありません。会社から、目的が不明である、買取業者の依頼を受けているのではないか、といった問いかけが来た場合でも、請求書に記載した理由を維持し、憶測に基づく質問へ回答を積み重ねる必要はありません。

拒まれたときに採る手段 仮処分と本案の訴え

書面での請求に会社が応じない場合、採り得る道は2つに分かれます。1つは、閲覧及び謄写を求める訴えを提起して判決を得る方法です。もう1つは、判決を待たずに閲覧及び謄写をさせる旨の仮処分命令を得る方法です。どちらを選ぶかは、いつまでに名簿が必要かによって決まります。

仮の地位を定める仮処分という枠組み

この場面で用いるのは、係争物に関する仮処分ではなく、仮の地位を定める仮処分です。争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため必要があるときに発することができるものとされています(民事保全法第23条第2項)。株主総会の招集の請求や議案の提案の期限が迫っている、といった事情が、必要性を基礎付ける具体的な事実になります。

疎明と担保、そして審尋

保全すべき権利関係と保全の必要性は、証明ではなく疎明で足ります(民事保全法第13条第2項)。他方、仮の地位を定める仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ発することができないのが原則です(同法第23条第4項)。したがって、会社側にも言い分を述べる機会が与えられ、その場で和解的に名簿の写しが交付されることもあります。担保の額は裁判所が定めます(同法第14条第1項)。

なお、正当な理由がないのに閲覧又は謄写を拒んだ取締役等は、100万円以下の過料に処せられるものとされています(会社法第976条第4号)。この点を請求書に付記しておくと、会社の対応が変わる例があります。

株主名簿が作られていない会社への対応

中小の同族会社では、設立以来一度も名簿を整えていない、あるいは何十年も更新していないという例が実際にあります。この場合、会社は「名簿がないので見せられない」と回答してきます。しかし、作成しなかったこと自体が会社側の義務違反です。株主名簿に記載すべき事項を記載しなかった取締役等は過料の対象とされており(会社法第976条第7号)、備置きを怠った場合も同様です(同条第8号)。

名簿が存在しない場合には、株主であることを他の資料から積み上げます。設立時の発起人であれば定款の末尾の記名と払込みの記録、増資に応じた方であれば申込証拠金の領収書や振込みの記録、相続で承継された方であれば被相続人名義の株券、遺産分割協議書、相続税の申告書に添付された明細が資料になります。過去の株主総会の招集通知や配当金の支払通知書も、会社が株主として扱っていた事実を示します。

これらを添えて、名簿の作成と、自らを株主として記載することを求める書面を送ります。会社が株主であること自体を争う姿勢を見せた場合には、名簿の請求を続けるより、株主たる地位の確認を求める訴えに切り替えるほうが早い場面があります。切替えの見極めは、会社の回答が「名簿がない」なのか「株主ではない」なのかで判断します。

取得した名簿から何が読み取れるのか

写しを手にしたら、まず氏名と株式数を一覧に並べ替え、持株比率を計算します。ここで見るべきは、上位株主の合計が3分の2に達しているかどうかです。3分の2を握られていれば、定款の変更を含む特別決議が単独で通ります。過半数にとどまるのであれば、役員の選任と解任は通っても、定款に関わる事項では他の株主の賛同が必要になります。

次に、株式を取得した日の欄を見ます。同じ日付が複数名に並んでいれば、増資や相続に伴う一括の異動があったことが分かります。特定の時期に社長の親族へ株式が集中している場合、その前後に何が行われたのかを確かめる価値があります。名簿は、株主構成の現在の写真であると同時に、資本政策の履歴でもあるということです。

住所の欄も見過ごせません。他の少数株主が近隣に居住しているかどうかで、共同歩調を採れる相手がいるかが変わります。総株主の議決権の100分の3以上という要件は、単独で満たせなくても、複数の株主が合算すれば満たせる場合があります。

なぜ会社は名簿の開示を渋るのか

会社が渋る理由の大半は、法律上の拒絶事由ではなく、事実上の懸念です。第一に、少数株主同士が連絡を取り合うことを避けたいという動機があります。個々の株主が単独では動けなくても、合算すれば少数株主権の要件を満たす場合があるためです。第二に、名簿を出すと、名義が被相続人のままである、実質的な所有者と名簿上の記載が食い違うといった、社内の不備が表に出ます。

第三に、会社が過去に一部の株主からのみ株式を買い集めていた場合、その取得価格と時期が名簿の記載から推測されます。同じ会社の株式について、ある株主には額面で、別の株主には時価に近い金額で買い取っていた事実が明らかになると、価格の交渉に直接の影響が出ます。名簿の開示を渋る会社ほど、こうした経緯を抱えていることがあります。

もっとも、これらはいずれも拒絶を正当化する事由ではありません。会社側の代理人が就いた場合、争点は速やかに条文上の4つの事由の有無へ絞り込まれ、事実上の懸念は主張から落ちていくのが通常です。株主の側としては、感情的なやり取りに付き合わず、条文の枠組みを維持し続けることが有効です。

弁護士に任せられる範囲と、依頼の時期

弁護士に委任した場合、まず代理人名義の請求書を作成して発送します。委任状を添えた代理人からの書面は、会社の窓口から顧問弁護士へ回ることが多く、条文に沿った回答が返ってくる確率が上がります。会社が期限内に応じない場合には、そのまま仮処分の申立書と疎明資料の準備へ移ります。請求書の段階から代理人が関与していれば、拒絶の経緯がそのまま資料になります。

依頼の時期として望ましいのは、最初の請求書を出す前です。既に御自身で請求を行い、目的の記載が抽象的であったために拒まれている場合、同じ内容の請求を繰り返しても状況は変わりません。理由の記載を書き直したうえで改めて請求するという手順が必要になり、その分だけ時間を要します。

逆に、弁護士に任せる必要が乏しい場面もあります。会社との関係が良好で、担当者に電話をすれば写しを送ってもらえるという場合には、まず御自身で求めていただいて差し支えありません。名簿が手元にあれば、その後の相談は、株主構成を前提とした売却の進め方という次の段階から始められます。

いま確認していただきたいこと

第一に、会社の商号と本店の所在地を、登記事項証明書で正確に確認してください。請求書の宛先を誤ると、到達の立証ができません。

第二に、御自身が株主であることを示す資料を、種類ごとに分けて並べてください。株券、配当金の支払通知書、株主総会の招集通知、被相続人名義の資料、払込みの記録が中心になります。

第三に、名簿を見て何を判断したいのかを1文で書き出してください。売却の相手方を決めたいのか、少数株主権の要件を満たす相手を探したいのかで、請求書の理由が変わります。

第四に、株主総会の招集通知が届いているかどうかを確認してください。会社が株主に対してする通知は、名簿に記載された住所に宛てて発すれば足りるものとされています(会社法第126条第1項)。通知が届かないのは、名簿上の住所が古いことが原因である場合があります。

よくあるご質問

1株しか持っていませんが、請求できますか。

できます。会社法第125条第2項は、株主であることのみを要件としており、持株の数や割合を要件としていません。会計帳簿の請求とは要件が異なりますので、混同しないでください。

会社から、他の株主の個人情報だから見せられないと言われました。

その回答は条文上の拒絶事由に当たりません。株主の氏名及び住所は、株主名簿の記載事項として法律が定めるものです(会社法第121条第1号)。もっとも、知り得た情報を利益を得て第三者に通報することは拒絶事由に関わりますので、取得した写しの取扱いには注意してください。

閲覧だけでなく、写しをもらうことはできますか。

できます。会社法第125条第2項は、閲覧又は謄写の請求と定めており、謄写、すなわち写しを作ることを含みます。請求書には、閲覧と謄写の双方を求める旨を明記してください。

仮処分を申し立てると、どのくらいの期間がかかりますか。

事案によりますが、仮の地位を定める仮処分は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経るのが原則ですので(民事保全法第23条第4項)、申立てから期日まで、さらに命令の発令までに一定の期間を要します。急ぐ事情がある場合は、その事情を疎明資料とともに明示してください。

名簿を得た後、名義が被相続人のままでした。どうすればよいですか。

相続によって株式を取得した事実を示す資料を添えて、名簿の記載の書換えを会社に請求することになります。名簿の閲覧の請求とは別の手続ですので、書面も分けて作成してください。

おわりに

株主名簿の請求は、少数株主の方が会社に対して行う手続の中で、最も要件が軽く、最も早く結果が出るものです。1株でも請求できること、拒絶事由が4つに限られていること、この2点を押さえた書面を出すだけで、事態が動くことがあります。

逆に、理由の記載を曖昧にしたまま送った書面は、拒絶の口実を与えます。最初の1通の書き方が、その後の数か月を左右します。名簿が手元にないままでは、売却の相手方も、価格の交渉の順序も決められません。まずは、誰が株主なのかを確かめるところから始めてください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

株主名簿の閲覧及び謄写の請求に関する御相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

出典

  • 会社法第121条第1号から第4号まで(株主名簿の記載事項)
  • 会社法第125条第1項(株主名簿の備置き)
  • 会社法第125条第2項(株主及び債権者による閲覧又は謄写の請求、請求の理由を明らかにすること)
  • 会社法第125条第3項第1号から第4号まで(会社が請求を拒むことができる場合)
  • 会社法第126条第1項(株主に対する通知は名簿上の住所に宛てて発すれば足りること)
  • 会社法第433条第1項(会計帳簿の閲覧等の請求に係る100分の3の保有要件)
  • 会社法第433条第2項第3号(会計帳簿についての競争関係を理由とする拒絶事由)
  • 会社法第976条第4号(正当な理由がないのに閲覧又は謄写を拒んだ場合の過料)
  • 会社法第976条第7号(株主名簿に記載すべき事項を記載しなかった場合の過料)
  • 会社法第976条第8号(第125条第1項の備置きを怠った場合の過料)
  • 民事保全法第13条第2項(保全すべき権利関係及び保全の必要性の疎明)
  • 民事保全法第14条第1項(保全命令の担保)
  • 民事保全法第23条第2項(仮の地位を定める仮処分命令の必要性)
  • 民事保全法第23条第4項(口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日)

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