定款の閲覧及び謄写を弁護士に依頼するとき 譲渡制限、取得条項及び役員の任期の確認

父が創業に加わった会社の株式を相続した。会社に売却を申し入れたところ、「うちの株は勝手に売れない決まりになっている」と言われた。どこにそう書いてあるのかを尋ねると、「定款にある」との答えだけが返ってきて、その定款は見せてもらえない。こうした押し問答で止まっている御相談が、少なくありません。

非上場会社の株式の扱いは、会社法の条文だけでは決まりません。譲渡に承認が要るのか、承認をする機関はどこか、相続人から株式を取り上げる仕組みが仕込まれているか、役員の任期は何年か。これらはいずれも、その会社の定款に何が書かれているかで変わります。定款は会社の設立の際に作成され(会社法第26条第1項)、その後の変更が積み重なった、いわば会社の憲法に当たる書面です。

結論から申し上げます。定款の閲覧及び謄写の請求には、持株数の要件も、請求の理由を明らかにする要件もありません。株主であれば、営業時間内にいつでも請求できます。まずこの1通を取り寄せることが、その後の選択肢を絞り込む最短の道です。以下、順に御説明します。

本記事が扱う場面と、扱わない場面

会社に対する資料の請求は、対象となる書類ごとに条文も要件も異なりますので、書類を1つに絞って御説明します。

定款を見なければ、採り得る手段が決まりません

少数株主の方から御相談を受けたとき、当事務所が最初にお願いするのは、定款の写しの御用意です。理由は単純で、定款の内容によって、同じ相談内容でも助言が正反対になるからです。

たとえば、株式に譲渡の制限が付されていない会社であれば、第三者との売買契約を締結すれば足ります。制限が付されているのであれば、まず会社へ承認を求める手続を踏まなければなりません。承認をする機関が株主総会か取締役会かによって、話を持ち込む相手も変わります。

さらに、相続によって株式を取得した方の場合、定款に売渡しの請求に関する定めがあるかどうかで、置かれている立場が根本から異なります。定めがあれば、こちらから売却を申し入れる前に、会社側から株式の売渡しを請求される可能性を織り込んで動く必要があります。定款を見ないまま会社へ相続の事実を伝えることが、かえって不利に働く場面すらあるということです。

定款の閲覧及び謄写を請求することができる者と、その方法

会社は、定款をその本店及び支店に備え置かなければなりません(会社法第31条第1項)。株主及び債権者は、営業時間内であればいつでも、書面で作成された定款についてはその閲覧を、電磁的記録で作成されている場合には法務省令で定める方法により表示したものの閲覧を請求することができます(同条第2項第1号及び第3号)。

写しが欲しい場合には、謄本又は抄本の交付を請求します(同項第2号)。電磁的記録の場合には、記録された事項を記載した書面の交付等を請求できます(同項第4号)。この2つについては、会社の定めた費用を支払わなければならないとされています(同項ただし書)。

株主名簿の請求との条文上の違い

ここで押さえておきたいのは、条文が「請求の理由を明らかにして」という文言を置いていない点です。株主名簿や会計帳簿の請求には理由の記載が要件とされていますが、定款についてはその要件がありません。したがって、目的を説明する必要はなく、目的の当否を理由に拒むこともできません。書面には、条文の番号と、謄本の交付を求める旨、送付先を記載すれば足ります。

親会社の株主が請求する場合

子会社の定款を確認したい親会社の株主については、別の枠組みが用意されています。親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときに、裁判所の許可を得て、子会社の定款について同様の請求をすることができます(会社法第31条第3項)。裁判所の許可が要る点で、株主が自社の定款を求める場合とは手順が異なります。

登記事項証明書では分からない事項

会社の基本的な事項は登記されていますので、登記事項証明書を取れば足りるのではないか、と思われる方がおられます。しかし、登記に現れる事項は限られています。譲渡の制限については、承認を要する旨と、承認をする機関が登記されますが、承認をしたものとみなす場合を定めているかどうかは、定款を見なければ分かりません。

相続人等に対する売渡しの請求に関する定めは、登記事項ではありません。この定めの有無は、登記事項証明書をいくら眺めても判明せず、定款の現物に当たるほかありません。相続で株式を取得された方にとって最も重大な条項が、公示されていないということです。

役員の任期についても同様です。登記からは、現に選任されている役員の氏名と就任の年月日が分かるにとどまり、任期を何年と定めているかは定款を見なければ分かりません。株主総会の招集通知の発送期限を短縮する定めも同様です。

譲渡制限の定めの読み方 承認をする機関はどこか

株式会社は、その発行する全部の株式の内容として、譲渡による取得について会社の承認を要する旨を定めることができます(会社法第107条第1項第1号)。非上場の同族会社では、この定めが置かれているのが通常です。定款を入手したら、まずこの条項の文言を確認してください。

次に見るのが、承認をする機関です。承認をするか否かの決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)の決議によることとされていますが、定款に別段の定めがあればその定めによります(会社法第139条第1項)。代表取締役の決定によると定めている会社もあります。誰の判断で承認が下りるのかによって、交渉の相手方が変わります。

みなし承認の条項があるかどうか

一定の場合に会社が承認をしたものとみなす旨を定款で定めることが認められています(会社法第107条第2項第1号ロ)。たとえば、株主間の譲渡については承認を要しない、といった条項です。この条項があれば、他の株主へ譲渡する限り、承認の手続を経ずに売却できます。売却先の候補を絞り込むうえで、決定的な意味を持つ条項です。

承認が得られなかった場合の受け皿

会社が承認をしない旨の決定をした場合、株主が買取りの請求を併せて行っていれば、会社は当該株式を買い取らなければならず(会社法第140条第1項)、又は指定買取人を指定することができます(同条第4項)。指定の決定について定款に別段の定めが置かれている例がありますので、この点も併せて確認してください。

相続人等に対する売渡しの請求の定めの有無

会社は、相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対し、その株式を会社に売り渡すことを請求することができる旨を、定款で定めることができます(会社法第174条)。この定めがある会社では、相続を会社が知った時点から、会社側の主導で株式を回収する手続が始まり得ます。

もっとも、会社が実際に請求するには、その都度、株主総会の決議によって、請求をする株式の数と、その株式を有する者の氏名を定めなければなりません(会社法第175条第1項)。この決議は特別決議によります(会社法第309条第2項第3号)。そして、売渡しを求められる相続人は、この株主総会において議決権を行使することができないものとされています(会社法第175条第2項)。相続した株式が多数であっても、自らを守る票としては使えないということです。

他方、会社側にも制約があります。売渡しの請求は、会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から1年を経過したときは、することができません(会社法第176条第1項ただし書)。定款にこの定めがある会社について、相続の発生を会社がいつ知ったのかは、その後の展開を左右する事実になります。相続の事実を会社へ伝える時期と方法は、定款を確認したうえで判断すべき事柄です。

種類株式、取得条項及び拒否権の定め

会社は、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会において議決権を行使することができる事項など、会社法第108条第1項各号に掲げる事項について異なる定めをした、内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができます。同族会社では、事業承継の過程で種類株式が導入されている例があります。御自身の保有する株式がどの種類に属するのかは、定款と株主名簿を突き合わせて確認します。

特に確認すべきは、議決権を制限する種類の株式です(会社法第108条第1項第3号)。配当は受けられるが議決権はない、という設計になっている場合、株主総会での賛否によって会社に働きかける手段は使えません。この場合、資料の請求や価格の交渉に重点を移すことになります。

取得条項も重要です。会社が一定の事由が生じたことを条件として株式を取得することができる旨の定め(会社法第107条第1項第3号、第108条第1項第6号)が置かれていると、定款に書かれた事由が生じた時点で、株主の意思にかかわらず株式が会社に移ります。事由として、株主の死亡、従業員たる地位の喪失、役員の退任などが定められている例があります。加えて、特定の事項について種類株主総会の決議を要する旨の定め、いわゆる拒否権付株式(会社法第108条第1項第8号)が誰の手にあるかも、会社の実質的な支配関係を示します。

役員の任期と、株主総会の招集に関する定め

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとするのが原則です(会社法第332条第1項本文)。もっとも、公開会社でない会社は、定款によって、この任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます(同条第2項)。

この差は、株主にとって実務上の意味を持ちます。任期を10年としている会社では、役員の選任の議案が株主総会に上程される機会が10年に一度しか巡ってきません。任期の満了時期を把握しておかなければ、働きかけの時機を逃します。定款に短縮の定めが置かれている例もありますので、条文の原則で判断せず、定款の記載に当たってください。

株主総会の招集についても定款を確認します。公開会社でない会社では、招集の通知は総会の日の1週間前までに発すればよく、取締役会を設置していない会社では、定款でこれを下回る期間を定めることができます(会社法第299条第1項)。また、株主が総会の招集を請求するための議決権の割合は総株主の議決権の100分の3ですが、これを下回る割合を定款で定めることが認められています(会社法第297条第1項)。公開会社でない会社では、6か月の保有期間の要件が適用されません(同条第2項)。

なぜ会社は定款の写しを渡そうとしないのか

定款の請求は要件が最も軽い部類ですが、それでも渡さない会社があります。理由の第一は、定款を見られると、会社が説明してきた内容と条項の文言とが食い違うことが露見するからです。「うちの株は売れない」という説明が、実は承認の手続を踏めば売れるという条項の言い換えにすぎない、という例は珍しくありません。

第二に、変更の履歴の不備があります。株主総会の特別決議を経ずに条項を書き換えていた、決議はしたが定款の本文に反映されていない、といった管理の欠落です。定款の変更は株主総会の特別決議を要する事項ですので(会社法第309条第2項第11号)、決議の不存在は後々の争点になり得ます。

第三に、相続人等に対する売渡しの請求の定めや取得条項の存在を、株主が知らないうちに使いたいという動機です。もっとも、正当な理由がないのに閲覧又は謄写を拒んだ場合、取締役等は100万円以下の過料に処せられます(会社法第976条第4号)。備置きを怠った場合も同様です(同条第8号)。この点を請求書に記載しておくことは有効です。

弁護士に任せられる範囲と、依頼の時期

定款の請求そのものは、書面の作成も送付も難しくありません。弁護士に委任する意味が大きいのは、むしろ入手した後の読み解きの部分です。条項の文言が、御自身の置かれた状況にどう当てはまるのか、どの条項が動かせない前提で、どの条項が交渉の余地を残すのかを整理する作業です。

当事務所が受任した場合、代理人名義で謄本の交付を請求し、受領した定款を条項ごとに分解して、譲渡の可否、承認機関、売渡しの請求の定め、取得条項、任期の各点を一覧に落とし、会社へ何をどの順序で申し入れるかの方針を立てます。定款の写しを既にお持ちであれば、この読み解きだけを御依頼いただくことも可能です。

依頼の時期として最も避けたいのは、会社へ相続の発生や売却の意向を伝えた後です。特に、相続人等に対する売渡しの請求の定めがある会社では、会社が相続を知った日が起算点となりますので(会社法第176条第1項ただし書)、通知の時期そのものが後の攻防に影響します。定款の確認を先に済ませてから会社へ接触する、という順序を守ってください。

いま確認していただきたいこと

第一に、御自宅に定款の写しがないかを探してください。相続の際に税理士が作成した資料の一式や、公証人の認証を受けた原始定款の写しが残っていることがあります。

第二に、登記事項証明書を取得し、株式の譲渡の制限に関する規定の欄を確認してください。承認機関がどこと登記されているかは、その場で分かります。

第三に、御自身が保有する株式の種類を確認してください。株券や配当の通知に普通株式以外の記載があれば、種類株式が発行されている可能性があります。

第四に、直近の株主総会の招集通知が総会の何日前に発せられていたかを確認してください。定款に短縮の定めが置かれているかどうかの手がかりになります。

よくあるご質問

定款の請求に、理由を書く必要はありますか。

ありません。会社法第31条第2項は、請求の理由を明らかにすることを要件としていません。株主名簿や会計帳簿の請求とは、この点で条文の構造が異なります。

謄本の交付を求めたところ、費用を請求されました。応じなければなりませんか。

謄本又は抄本の交付を請求するには、会社の定めた費用を支払わなければならないものとされています(会社法第31条第2項ただし書)。実費相当の範囲であれば、支払ったうえで交付を受けるのが早道です。

会社が「定款は紛失した」と回答してきました。

備置きの義務を果たしていないということですので、過料の対象となり得ます(会社法第976条第8号)。設立時の原始定款は公証人の認証を受けていますので(会社法第26条第1項、第30条第1項)、認証をした公証役場に謄本が保存されている場合があります。その後の変更については、株主総会の議事録によって追うことになります。

定款に相続人への売渡しの請求の定めがありました。もう手遅れでしょうか。

そうとは限りません。会社が請求をするには、その都度、特定の株式と特定の者を定める株主総会の特別決議が必要です(会社法第175条第1項、第309条第2項第3号)。また、会社が相続を知った日から1年を経過すれば請求はできません(会社法第176条第1項ただし書)。事実関係を整理したうえで御相談ください。

定款を見たら、役員の任期が10年でした。何か問題がありますか。

それ自体は適法です。公開会社でない会社では、定款で任期を10年まで伸長することが認められています(会社法第332条第2項)。ただし、株主が役員の選任について意見を述べる機会が10年に一度になりますので、その前提で手続の時機を考える必要があります。

おわりに

定款は、会社が株主に対して見せなければならない書類の中で、最も入手しやすく、かつ最も情報量の多いものです。理由の記載も持株数の要件も不要である以上、請求をためらう理由はありません。

そして、定款を読まずに立てた方針は、途中で必ず修正を迫られます。売れると思っていた株式に承認が必要であった、こちらから売却を申し入れる前に会社から売渡しを請求され得る立場であった、といった前提の食い違いが、後になって表面化するからです。まずは条項の文言を手元に置くところから始めてください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

定款の閲覧及び謄写の請求に関する御相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

出典

  • 会社法第26条第1項(定款の作成)
  • 会社法第30条第1項(公証人による定款の認証)
  • 会社法第31条第1項(定款の備置き)
  • 会社法第31条第2項第1号から第4号まで及び同項ただし書(株主及び債権者による閲覧、謄本又は抄本の交付の請求、費用の負担)
  • 会社法第31条第3項(親会社社員による請求と裁判所の許可)
  • 会社法第107条第1項第1号及び第3号(譲渡による取得についての承認、取得条項)
  • 会社法第107条第2項第1号ロ(承認をしたものとみなす場合の定め)
  • 会社法第108条第1項第3号、第6号及び第8号(議決権制限株式、取得条項付種類株式、種類株主総会の決議を要する旨の定め)
  • 会社法第139条第1項(譲渡等の承認の決定をする機関と定款の別段の定め)
  • 会社法第140条第1項及び第4項(会社による買取り及び指定買取人の指定)
  • 会社法第174条(相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め)
  • 会社法第175条第1項及び第2項(売渡しの請求の決定と、請求を受ける者の議決権の制限)
  • 会社法第176条第1項ただし書(相続を知った日から1年の期間制限)
  • 会社法第297条第1項及び第2項(株主による株主総会の招集の請求)
  • 会社法第299条第1項(株主総会の招集の通知の期限と定款による短縮)
  • 会社法第309条第2項第3号及び第11号(売渡しの請求の決定及び定款の変更に係る特別決議)
  • 会社法第332条第1項及び第2項(取締役の任期と、公開会社でない会社における10年までの伸長)
  • 会社法第976条第4号(正当な理由がないのに閲覧又は謄写を拒んだ場合の過料)
  • 会社法第976条第8号(第31条第1項の備置きを怠った場合の過料)

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