譲渡制限株式とは何か 少数株主が売却するときの基本

登記事項証明書は法務局において誰でも取得することができますので、最初の確認としては最も簡便です。もっとも、承認をする機関を定款で別に定めている場合や、一定の場合に承認をしたものとみなす旨の定めが置かれている場合には、登記だけでは分かりません。定款の写しの入手が必要となります。

株主は、会社に対し、定款の閲覧及び謄本の交付を請求することができます(会社法第31条第2項)。会社が任意に交付しない場合には、この請求によることとなります。

第3節 誰が承認をするのか

譲渡制限株式の譲渡について承認をするか否かの決定は、株主総会の決議によります。ただし、取締役会設置会社にあっては取締役会の決議により、定款に別段の定めがある場合にはその定めによります(会社法第139条第1項)。

表2 承認をする機関

会社の類型 原則としての承認機関
取締役会設置会社 取締役会
取締役会を設置しない会社 株主総会
定款に別段の定めがある会社 定款の定めによります(代表取締役とする例等)

決定をしたときは、会社は請求をした者に対してその内容を通知しなければなりません(会社法第139条第2項)。会社が、請求の日から2週間(定款でこれを下回る期間を定めた場合はその期間)以内にこの通知をしなかったときは、承認をする旨の決定をしたものとみなされます(会社法第145条第1号)。

第4節 承認を得ないでした譲渡の効力

承認を得ないまま株式を譲渡した場合、当事者間の売買契約自体が当然に無効となるものではないと一般に解されております。もっとも、会社との関係では、譲受人は自らが株主であることを主張することができず、会社は従前の株主を株主として取り扱うこととなります。株式の移転を会社に対抗するためには株主名簿の名義書換が必要とされておりますが(会社法第130条第1項)、承認のない譲渡について会社が名義書換に応ずることは想定されておりません。

したがいまして、承認を経ない譲渡は、譲受人にとって配当も議決権も得られない結果となりかねず、実務上は選択されません。会社の承認を得るか、承認が得られない場合の会社法上の受け皿を用いるか、いずれかによることとなります。

第5節 少数株主が売却する場合の基本的な流れ

表3 基本的な流れ

段階 内容 根拠条文
1 定款、株主名簿、決算書等により現状を確認いたします
2 会社又は支配株主と任意の買取交渉を行います 会社法第155条第3号、第156条第1項等
3 協議が調わない場合、譲受人を定めて株式譲渡承認請求を行います 会社法第136条、第138条第1号
4 会社が承認をしない場合、会社又は指定買取人が買い取ります 会社法第140条
5 売買価格について協議いたします 会社法第144条第1項
6 協議が調わないときは裁判所に売買価格の決定を申し立てます 会社法第144条第2項

株式譲渡承認請求をするに当たっては、譲り渡そうとする株式の数及び譲受人の氏名又は名称を明らかにする必要があり(会社法第138条第1号イ、ロ)、承認をしない旨の決定をする場合には会社又は指定買取人が買い取ることを請求する旨を明らかにしておくことができます(同号ハ)。譲受人を明らかにすることが求められる理由については、記事「株式譲渡承認請求にはなぜ具体的な譲受人が必要なのか」(C04)に整理しております。

手続の全体像は、既存記事「株式譲渡承認とは」(/archives/minority-share-transfer-approval/)及び記事「株式譲渡承認請求の流れと少数株主側の注意点」(C02)をご覧ください。

第6節 期間の制限に注意を要します

この手続には、短い法定期間がいくつも設けられております。

表4 主な期間

場面 期間 徒過した場合の効果
会社による承認の可否の通知 請求の日から2週間 承認をしたものとみなされます(会社法第145条第1号)
会社による株式買取通知 不承認の通知の日から40日 承認をしたものとみなされます(会社法第145条第2号)
指定買取人による通知 不承認の通知の日から10日 会社が買取通知をしない限り承認とみなされます
売買価格の決定の申立て 買取りの通知があった日から20日 1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額が売買価格となります(会社法第144条第5項、第7項)

とりわけ最後の20日は決定的です。この期間を徒過いたしますと、法務省令の定める方法により機械的に算定される額が売買価格となり、適正な価格の主張をする機会が失われます。この点は記事「株式売買価格決定申立の20日という期限」(C06)に整理しております。

第7節 弁護士に相談する意味

譲渡制限株式の売却は、定款の内容の確認から始まり、任意の交渉、会社法上の手続、価格の主張へと段階的に進みます。各段階に期間の制限と要件がありますので、順序と時期の管理が重要となります。

弁護士は、株主本人の代理人として、資料の確保、協議及び必要に応じた裁判手続を行います。株式買取業者は買手であり、株主本人の代理人ではありません。当事務所は株式を買い取る立場ではなく、株主の方が株式を保有したまま手続を進めるものです。

よくあるご質問

質問1 譲渡制限株式は誰にも売れないということですか。

そうではありません。制限されているのは、譲渡による取得について会社の承認を要するという点です。会社が承認をしない場合には、会社又は指定買取人が買い取ることを請求する道が用意されております(会社法第138条第1号ハ、第140条)。

質問2 親族に贈与する場合も承認が必要ですか。

譲渡による取得について承認を要するという定めですので、有償か無償かを問わず、譲渡による取得に当たる限り承認の対象となります。他方、相続その他の一般承継による取得は譲渡による取得ではありませんので、この承認の対象とはなりません。

質問3 相続で取得した場合は自由に売れますか。

相続による取得自体には承認を要しませんが、取得した株式を第三者に譲渡する場合には承認が必要です。また、定款に相続人等に対する売渡請求の定めがある場合には、会社から売渡しを請求されることがあります(会社法第174条、第176条第1項)。

質問4 定款を見せてもらえない場合はどうすればよいですか。

株主は会社に対して定款の閲覧及び謄本の交付を請求することができます(会社法第31条第2項)。登記事項証明書によって譲渡制限の有無自体は確認することができます。

交渉手法の詳細について

具体的な交渉方法は、株主構成、財務状況、株価、従前の経緯等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本ページでは詳細を開示しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、譲渡制限株式・少数株式について、株主側の代理人としてご相談をお受けしております。会社から通知を受領された場合には、短い期間の制限がありますので速やかにご連絡ください。

ご相談の際には、定款の写し、登記事項証明書、株主名簿の写し、株券、直近3期分の決算書、会社とのやり取りの記録をご用意ください。お手元にない場合でもご相談いただけます。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
  • 所在地 〒105-6017 東京都港区虎ノ門四丁目三番一号 森トラスト城山トラストタワー17階

本記事は一般的な法律上の枠組みをご説明するものであり、結論は事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。結果を保証するものではありません。課税関係については税理士にご確認ください。

本記事の根拠条文

会社法 第2条第5号・第17号(公開会社及び譲渡制限株式の定義)、第31条第2項(定款の閲覧等)、第107条第1項第1号・第108条第1項第4号(譲渡制限の定め)、第122条第1項(株主名簿記載事項を記載した書面の交付)、第127条(株式の譲渡の自由)、第130条第1項(対抗要件)、第136条・第138条第1号(譲渡等承認請求)、第139条第1項・第2項(承認機関及び通知)、第140条(会社又は指定買取人による買取り)、第144条第1項・第2項・第5項・第7項(売買価格の決定)、第145条第1号・第2号(みなし承認)、第155条第3号・第156条第1項(自己株式の取得)、第174条・第176条第1項(相続人等に対する売渡請求)、第216条第3号(株券の記載事項)、第911条第3項第7号(登記事項)

内部リンク

送客先ランディングページ /landing/share/(第9号。主)、/landing/minority/(第2号。補助)

既存記事 /archives/minority-share-transfer-approval/、/archives/unlisted-share-fair-price/、/archives/minority-unlisted-buyout/

関連記事 C02、C03、C04、C05、C06

譲渡制限は、売却を封じるための制度ではありません。制度の使い方を知ることが第一歩です。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

このページの位置付けと、関連するページ

本ページは、譲渡制限株式に関する解説の中核となるページでございます。個別の論点は、次の各ページで詳しく扱っております。

同じ主題を扱う関連ページ


具体的な御相談をお考えの株主の皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次の御案内のページに整理しております。あわせて御覧ください。