会社を解散させて残余財産の分配を受けるという出口 少数株主が採り得る手順と見積り

この記事の位置付け

本記事は、少数株主が非上場株式を会社に買い取ってもらう方法 手続と価格の下に置かれ、事業が事実上止まった会社の株式を保有する少数株主の立場から、会社を解散させて残余財産の分配を受けるという出口について、要件、着手の手順、要する期間及び費用の見積りを解説するものです。株式の価値の評価の手法そのもの、会計帳簿の閲覧謄写の請求の手続及び株式売買価格の決定の申立ての手続については、次に掲げる関連する論点のページに整理しています。

関連する論点は、非上場株式を売れずに10年以上保有している場合の出口会社に不動産や多額の内部留保がある場合の非上場株式評価非上場株式の時価純資産法を少数株主側からどう見るか会計帳簿閲覧謄写請求権は株式売却交渉にどう関係するか及び少数株主が取れる法的手段とは 取り得る法的手段と利益を保護するための権利をご覧ください。

事業はすでに止まっているのに、会社だけが残っている、というご相談を受けることがあります。工場も店舗も閉じ、従業員もいません。残っているのは、先代の代に取得した賃貸不動産と、わずかな預金だけです。それでも会社は登記の上では存続し、毎年の申告と維持の費用だけが出ていきます。

そのような会社の株式を、相続により、あるいは出資により保有しておられる少数株主の方々から伺う話は、驚くほど似ています。株主が2つに割れて意思決定ができず、何年も動きがありません。会社に株式の買取りを申し入れても取り合ってもらえません。買い手を探しても、事業のない会社の少数株式を買い受ける人は現れません。配当は何十年も受け取っていません。こうして、出口が1つずつ塞がっていきます。

この段階に至った方から必ず出るのが、「いっそ会社を終わらせて、財産を分けてもらうことはできないのか」という問いです。本記事は、その問いに正面から答えるものです。少数株主の立場から会社の解散を求めることができるのか、できるとして何が要件か、清算を経ていくら受け取ることになるのか、どれだけの期間と費用を要するのかを、順に述べます。

本記事が扱うのは、解散という出口を選ぶための手順と見積りです。株式の価値そのものの評価の手法、会計帳簿の閲覧謄写の請求の要件及び手続、株式売買価格の決定の申立ての手続の詳細は、それぞれ別の記事において扱っています。本記事は、解散を求めるという1つの道について、着手の前に何を確かめ、どの順序で動き、いくらの費用と期間を見込むかを述べることに徹します。

目次
  1. 会社を終わらせる道は1つではありません
    1. 株主総会の特別決議による解散
    2. 裁判所に対する解散の請求
    3. 解散に至らない解決(株式の買取り)
    4. どの道を選ぶかを分ける3つの事情
  2. 会社の解散の訴えの要件
    1. 誰が提起することができるのか(10分の1という数の要件)
    2. 業務の執行において著しく困難な状況に至った場合
    3. 財産の管理又は処分が著しく失当である場合
    4. 「やむを得ない事由」の判断において考慮される事情
  3. 解散の後に始まる清算の手続
    1. 清算人が行う職務
    2. 債権者に対する公告と2か月という期間
    3. 債務を弁済した後でなければ分配は行われません
    4. 不動産が残っている場合の換価に要する期間
  4. 残余財産の分配は株式の数に応じます
    1. 少数株主であっても数に応じた分配を受けます
    2. 清算による分配額が会社の提示する株式売買価格を上回る場合
    3. 含み益のある不動産を保有する会社における差
    4. 分配までに要する期間と費用を先に見積もる方法
  5. 解散を求め得ることが交渉の材料となる理由
    1. 支配株主にとって解散が重大な事態である理由
    2. 事業が継続している会社の場合
    3. 解散に至らず買取りによって終わる事案の型
  6. 着手の前に確かめる事項と、その順序
    1. 会計帳簿の閲覧謄写の請求により資産の内容を確かめる
    2. 登記事項証明書及び定款により株主構成と機関を確かめる
    3. 解散の訴え、買取りの交渉、売買価格の決定の申立てのいずれを中心に据えるか
  7. この場面でしてはならない6つの対応
    1. 解散の決議ができるものと考えて動くこと
    2. 財産の状況を確かめないまま解散を求めること
    3. 会社へ直接出向いて言質を取られること
    4. 先に希望する金額を提示すること
    5. 時間の経過を放置すること
    6. 株式買取業者に売却すること
  8. よくあるご質問
    1. 持株比率が10分の1に満たない場合、会社の解散を求めることはできませんか。
    2. 会社の解散の訴えは、必ず認められますか。
    3. 会社に不動産しか残っていません。分配を受けることはできますか。
    4. 清算にはどのくらいの期間がかかりますか。
    5. 解散を求めますと、会社との関係が決定的に悪化しませんか。
    6. 弁護士費用はどのくらいかかりますか。
    7. 会社の財産が持ち出されている疑いがあります。何から始めればよいですか。

会社を終わらせる道は1つではありません

会社を終わらせるという言葉から、多くの方は倒産や破産を思い浮かべます。しかし、債務を完済することができる会社を終わらせる手続は、破産ではありません。会社法が定める解散と清算の手続です。そして、その解散に至る道は1つではありません。株主総会の決議による道、裁判所に対して解散を請求する道、そして解散に至らずに株式の買取りによって終わる道の3つがあります。少数株主の立場からは、この3つを並べて比較し、自らの持株数と会社の実情に照らして、どれを中心に据えるかを最初に定めることになります。

株主総会の特別決議による解散

第1の道は、株主総会の決議により会社を解散するものです。会社は、株主総会の決議によって解散します(会社法第471条第3号)。この決議は特別決議であり、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行われます(会社法第309条第2項第11号)。

この数の要件は、少数株主にとって高い壁です。持株比率が15%であれば、単独で決議を成立させることはできません。したがいまして、この道は、他の株主の賛同を得られる見込みがある場合、たとえば対立している相手方もまた会社を維持する意思を失っている場合や、株主の顔ぶれが少数であって説得の相手方が特定できる場合に限って、現実的な選択肢となります。逆に申しますと、支配株主が会社の存続に固執している事案では、この道は最初から閉ざされています。

裁判所に対する解散の請求

第2の道は、裁判所に対して会社の解散を請求するものです。やむを得ない事由があるときは、一定の数の株式を有する株主は、訴えをもって会社の解散を請求することができます(会社法第833条第1項)。株主総会の決議とは異なり、他の株主の賛同を要しません。少数株主が単独で開始することができる唯一の解散の道です。

もっとも、単独で開始することができるということは、認められやすいということを意味しません。会社の解散は、会社という法人格そのものを消滅させる効果を伴いますので、裁判所は要件の充足を厳格に判断します。次の大見出しにおいて、その要件を条文に即して述べます。

解散に至らない解決(株式の買取り)

第3の道は、解散に至らずに、会社又は他の株主に株式を買い取らせることにより、株式に見合う経済的な還元を受けるものです。実務においては、この道による解決が最も多くなります。解散を求め得る立場にあること自体が交渉の材料となり、その結果として買取りの条件が動くという経過をたどるためです。この点は、後の大見出しにおいて改めて述べます。

3つの道は、択一の関係にはありません。会社の実態を確かめたうえで、解散の訴えの提起を視野に入れつつ買取りの交渉を進め、交渉が調わない場合に裁判所の手続へ移るという組立てが通例です。重要なのは、着手の前にどの道を中心に据えるかを定めておくことであり、これを定めないまま会社に接触することは、後の交渉を著しく不利にします。

どの道を選ぶかを分ける3つの事情

どの道を中心に据えるかは、次の3つの事情によって定まります。第1に、会社の財産の内容です。換価が容易な預金や上場株式が中心であるのか、換価に時間を要する不動産が中心であるのかによって、清算に要する期間と分配額の見込みが大きく変わります。第2に、株主の構成です。持株比率が10分の1以上であるかどうか、対立する株主の議決権がどれだけあるか、中立の株主が存在するかによって、採り得る手段の幅が変わります。第3に、事業の継続の可能性です。事業が現に継続している会社では、解散は支配株主にとって重大な脅威となりますので、交渉が動きやすくなります。反対に、事業が完全に止まっている会社では、支配株主が解散を受け入れる余地もまた大きくなります。

要件 要する期間の目安 株主が負う費用 想定される着地点
株主総会の特別決議による解散 議決権の過半数を有する株主の出席と、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成(会社法第471条第3号、第309条第2項第11号) 決議まで1か月から3か月程度。その後に清算の手続 株主総会の招集に係る費用。争いがなければ弁護士費用は限定的 合意による解散と清算。分配額をめぐる争いは残り得ます
会社の解散の訴え 総株主の議決権の10分の1以上、又は発行済株式総数の10分の1以上の数の株式の保有と、やむを得ない事由(会社法第833条第1項) 第一審の判決まで1年から2年程度。控訴された場合はさらに1年程度 訴え提起の手数料、予納郵券、弁護士費用。証拠の収集に要する費用 請求が認められれば解散し清算へ。認められない場合もあります
株式の買取りによる解決 法律上の要件はありません。会社又は他の株主との合意によります 交渉に3か月から1年程度。裁判所の手続に移る場合はさらに1年以上 弁護士費用。裁判所の手続に移る場合は申立ての費用及び鑑定の費用 売買代金の受領により株主の地位を離れます

上記の期間及び費用は、当事務所が取り扱った事案から得た一般的な目安であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。会社の財産の内容、相手方の対応、裁判所の運用により、実際に要する期間及び費用は異なります。具体的な取扱い、対応の進め方及び費用の考え方については、会社を解散させて残余財産の分配を受けたくてお困りではありませんかの頁に整理していますので、あわせてご覧ください。

会社の解散の訴えの要件

会社の解散の訴えは、会社法第833条第1項に定められています。少数株主が単独で開始することができる手続ですので、条文の文言を1つずつ確かめておく必要があります。要件は、数の要件と、事由の要件の2つに分かれます。数の要件は明確な線引きですので、ご自身の保有する株式の数を確かめれば直ちに判断することができます。事由の要件は、会社の実情を証拠によって示すものですので、着手の前の準備がそのまま結論を左右します。

誰が提起することができるのか(10分の1という数の要件)

会社の解散の訴えを提起することができるのは、総株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主、又は発行済株式(自己株式を除きます)の10分の1以上の数の株式を有する株主です(会社法第833条第1項)。ここで注意を要するのは、この2つが「又は」で結ばれている点です。議決権の10分の1以上と、発行済株式総数の10分の1以上との双方を満たす必要はありません。いずれか一方を満たせば足ります。

この区別は、実際の事案において意味を持ちます。議決権制限株式が発行されている会社、又は会社が自己株式を保有している会社では、議決権の割合と発行済株式総数に占める割合とが一致しません。たとえば、発行済株式総数が10,000株であり、そのうち会社が2,000株を自己株式として保有している会社において、1,000株を保有する株主の議決権の割合は8,000株分の1,000株、すなわち12.5%となります。この場合、議決権の要件を満たします。逆に、議決権のない株式を保有している株主であっても、発行済株式総数の10分の1以上の数の株式を保有していれば、この要件を満たします。

また、条文は保有の期間を要件としていません。株主総会の招集の請求(会社法第297条第1項)のように6か月前からの継続保有を求める規定とは異なり、会社法第833条第1項は継続保有の期間を定めていません。したがいまして、相続により株式を取得した直後の株主であっても、数の要件を満たす限り、訴えを提起することができます。この点は、相続によって株式を取得したばかりの方から必ず尋ねられる点ですので、明確に申し上げておきます。

なお、数の要件は、単独で満たす必要はありません。同じ立場に置かれた他の株主と共同して訴えを提起し、合算して10分の1以上に達すれば足ります。持株比率が7%にとどまる方であっても、同様に不満を抱えている他の株主が5%を保有していれば、共同することにより要件を満たします。着手の前に、株主名簿又は登記事項証明書及び決算書の付属明細により、株主の顔ぶれを確かめる意味は、ここにもあります。

業務の執行において著しく困難な状況に至った場合

事由の要件の第1は、会社が業務の執行において著しく困難な状況に至り、会社に回復することができない損害が生じ、又は生ずるおそれがあるときです(会社法第833条第1項第1号)。実務において問題となるのは、株主が2つの陣営に分かれて対立し、いずれの陣営も他方を上回る議決権を有していないため、取締役の選任も、計算書類の承認も、事業に関する重要な決定も、いずれも成立しない状態です。取締役会が招集されず、株主総会が開かれず、あるいは開かれても何も決まらないという状態が数年にわたって続いている会社が、これに当たり得ます。

この要件を示すためには、会社の内部の状態を客観的な資料により跡付ける作業が要ります。具体的には、過去の株主総会の議事録、取締役会の議事録、役員の任期の満了と改選の状況を示す登記事項証明書、決算書、会社から株主に宛てられた通知の写し、株主から会社に宛てた申入れの書面とこれに対する回答の有無といった資料を集めます。とりわけ、任期が満了した取締役が改選されないまま権利義務を有する取締役として在任し続けている状態は、機関が機能していないことを端的に示す事情となります。

「回復することができない損害」については、会社の財産が現に減少していることを示す資料が有用です。決算書を数期分並べ、現預金の残高、賃料収入、費用の内訳の推移を示すことにより、会社の財産が漫然と費消されていることを跡付けます。逆に、会社が黒字を維持し、財産も増加している場合には、この要件の充足を示すことは容易ではありません。

財産の管理又は処分が著しく失当である場合

事由の要件の第2は、会社の財産の管理又は処分が著しく失当で、会社の存立を危うくするときです(会社法第833条第1項第2号)。支配株主又はその一族が、会社の財産を私的に用いている場合、実態のない取引により会社の資金を流出させている場合、会社の資産を不当に低い価額で関係者に譲渡している場合などが、これに当たり得ます。

この要件は、会社の内部の資料を見なければ主張することができません。決算書の表面だけでは、費用の内訳も、取引の相手方も分かりません。したがいまして、この要件を中心に据える場合には、着手の順序として、まず会計帳簿の閲覧謄写の請求により資産の内容と財産の管理の状況を確かめることになります(会社法第433条第1項)。何を確かめるかについては、後の大見出しにおいて具体的に述べます。

「やむを得ない事由」の判断において考慮される事情

会社法第833条第1項は、第1号又は第2号のいずれかに該当することに加えて、「やむを得ない事由」があることを求めています。この文言は、第1号又は第2号に該当する状態が生じているとしても、なお他に採り得る手段によって事態を解消することができるのであれば、法人格を消滅させるという最も重い効果を認めるには足りない、という趣旨を含むものと解されています。

したがいまして、実務上は、会社の解散を求める前に、他の手段を試み、それが功を奏しなかったという経過を残しておくことが有用です。具体的には、会社に対して書面により株式の買取りを申し入れたこと、会計帳簿の閲覧謄写を請求したこと、株主総会において改善を求めたこと、これらに対して会社が応じなかったことを、日付の入った書面により跡付けます。この経過は、後の交渉においても、裁判所の手続においても、いずれにおいても働きます。

反対に、何の申入れもしないまま直ちに解散の訴えを提起した場合には、他に採り得る手段が尽きていないと判断される余地が生じます。着手の順序が結論を左右するというのは、この意味においてです。会社の解散の訴えは、思い立って直ちに提起する手続ではなく、準備の積み重ねの上に置く手続です。

なお、ご自身の事案において要件を満たす見込みがあるかどうかは、会社の実情と手元の資料によって異なります。事実関係と経過を伺えば、多くの場合、初回において見通しを申し上げることができます。

解散の後に始まる清算の手続

解散は、会社が消滅する瞬間ではありません。解散によって会社は清算の手続に入り、清算の目的の範囲内において存続します。株主に対する残余財産の分配は、この清算の手続の最後に置かれています。したがいまして、解散を求める方は、解散そのものよりも、その後に始まる清算の手続にどれだけの期間と費用を要するかを、先に把握しておく必要があります。ここを見誤りますと、解散が実現したのに手元に残る額が想定と大きく異なる、という事態が生じます。

清算人が行う職務

会社は、解散したときは清算をしなければなりません(会社法第475条第1号)。清算人は、現務の結了、債権の取立て及び債務の弁済、残余財産の分配を職務とします(会社法第481条)。清算人には、定款の定めがある場合はその者が、株主総会の決議により選任された場合はその者が就任し、これらがない場合には解散の時の取締役が清算人となります。裁判所の判決により解散した場合には、利害関係人の申立てにより裁判所が清算人を選任します。

誰が清算人となるかは、少数株主にとって極めて重要です。従前の代表取締役がそのまま清算人となる場合、財産の換価も債務の弁済も、これまでと同じ人物の手により行われます。財産の管理が失当であることを理由として解散を求めた事案において、当の人物が清算人となるのでは、実質的な救済になりません。したがいまして、解散の訴えを提起する場合には、清算人の選任についても裁判所に対して適切な申立てを行うことを、あらかじめ方針に組み込んでおきます。

債権者に対する公告と2か月という期間

清算人は、解散の後遅滞なく、債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告しなければなりません。この期間は、2か月を下ることができません(会社法第499条第1項)。

この規定について、しばしば誤解が生じます。「2か月で終わる」のではありません。「2か月を下ることができない」のであり、2か月は下限です。清算人が3か月又は4か月の期間を定めることも妨げられません。そして、この期間が満了した後に債務の弁済へ進むことになりますので、清算の全体の期間は、この公告の期間に、財産の換価に要する期間と、債務の弁済及び計算の確定に要する期間を加えたものとなります。

債務を弁済した後でなければ分配は行われません

清算株式会社は、債務を弁済した後でなければ、その財産を株主に分配することができません(会社法第502条)。株主に対する分配は、債権者に対する弁済の後に置かれた、最後の手続です。これは、株主が会社の残余の財産についてのみ権利を有する立場にあることの当然の帰結です。

この順序から、次の2つの帰結が導かれます。第1に、会社の負債の額が資産の額を上回る場合には、分配は生じません。解散を求めることが常に経済的な利益をもたらすわけではなく、財産の状況を確かめないまま解散を求めることは、費用と時間だけを失う結果になり得ます。第2に、分配の額は、資産の換価によって現実に得られた額から、債務の弁済額と清算に要した費用及び税を差し引いた残りです。帳簿上の純資産の額がそのまま分配されるのではありません。

不動産が残っている場合の換価に要する期間

会社に賃貸不動産が残っている事案では、換価に要する期間が清算の全体の期間を決めます。売却の準備として、境界の確認、登記の確認、賃借人との賃貸借契約の整理、修繕の履歴の確認を行い、その後に売却の手続に入ります。市街地の収益物件であれば、売却の手続の開始から代金の決済まで3か月から6か月程度を要することが通例です。地方の物件、共有となっている物件、賃借人との間に紛争がある物件では、1年以上を要することもあります。

また、不動産の売却により生じた譲渡益には法人税等が課されます。帳簿価額と時価との差が大きい会社ほど、この税負担が分配額に与える影響は大きくなります。清算による分配見込額を試算する際には、この税負担を必ず織り込みます。織り込まない試算は、実際の分配額を大きく上回る数字を示すことになり、交渉の判断を誤らせます。

段階 内容 要する期間の目安
解散 株主総会の決議による場合は決議の日、判決による場合は判決の確定の日に解散します 訴えによる場合、提起から第一審の判決まで1年から2年程度
清算人の就任及び登記 清算人が就任し、解散及び清算人の登記を行います 解散の後2週間以内に登記
財産目録及び貸借対照表の作成 清算人が財産目録及び貸借対照表を作成し、株主総会の承認を受けます 1か月から2か月程度
債権申出の公告及び催告 官報に公告し、知れている債権者に各別に催告します。期間は2か月を下ることができません(会社法第499条第1項) 2か月以上
財産の換価 不動産その他の資産を売却して金銭に換えます 預金等は即時。不動産は3か月から6か月程度、事案により1年以上
債務の弁済 申し出た債権者及び知れている債権者に弁済します(会社法第502条) 1か月程度
残余財産の分配 株式の数に応じて分配します(会社法第504条第3項) 1か月程度
清算結了の登記 決算報告について株主総会の承認を受け、清算結了の登記を行います 2週間以内に登記

上記を通算いたしますと、解散から残余財産の分配までに要する期間は、換価すべき財産が預金のみである場合でも半年程度、不動産の換価を伴う場合には1年から2年程度を見込むことになります。解散の訴えの提起から数えますと、全体で2年から4年程度の期間を要することになります。この期間の見込みは、事案の内容により異なりますので、あくまで目安です。

残余財産の分配は株式の数に応じます

清算の手続の最後に置かれているのが、残余財産の分配です。ここで初めて、株主に現実の金銭が渡ります。少数株主の方が最も知りたい点、すなわち「結局いくら受け取ることになるのか」に対する答えは、この分配の仕組みの中にあります。結論から申しますと、分配は持株比率に応じて行われ、少数株主であることを理由に割合を減らされることはありません。この点が、株式の売買価格の交渉における局面と大きく異なります。

少数株主であっても数に応じた分配を受けます

残余財産の分配は、株主の有する株式の数に応じて割り当てられます(会社法第504条第3項)。残余財産の分配について内容の異なる種類株式が発行されている場合を除きまして、普通株式のみが発行されている会社では、持株比率がそのまま分配の割合となります。発行済株式総数の15%を保有する株主は、残余財産の15%の分配を受けます。

これは、株式の売買の交渉における扱いと対照的です。売買の交渉においては、少数株主の株式は会社の支配に結び付かないことを理由として、価格を低く抑える主張がしばしば行われます。しかし、清算による分配においては、そのような割合の減額は生じません。持株比率がそのまま分配の割合となります。この構造の違いが、後に述べる交渉上の意味を生みます。

清算による分配額が会社の提示する株式売買価格を上回る場合

会社が株式の買取りに応じる場合、提示される価格は、多くの事案において、直近の決算書の帳簿上の純資産の額を基礎とした金額です。これに対して、清算による分配額は、資産を現実に換価して得られた金額を基礎とします。したがいまして、帳簿価額と時価との間に差のある資産を会社が保有している場合には、清算による分配額が会社の提示する価格を上回ることになります。

この関係について、裁判所も、株式の価値を判断する場面において、清算を前提とした価値に言及しています。東京高等裁判所平成22年5月24日決定(平成20年(ラ)第637号 各株式買取価格決定に対する抗告事件)は、株式買取価格の決定の場面において、少数派の反対株主も、会社が清算される場合と同様に、会社の全財産に対する残余財産分配請求権を観念的には有すると捉えることができる旨を判示し、また、利益の配当と残余財産の分配のほかに経済的な利益が考えられない少数株式の性質について判示しました。

また、札幌地方裁判所平成26年6月23日決定(平成24年(ヒ)第34号 株式買取価格決定申立事件)は、純資産を時価により評価する方法は基準日における清算価値に近い評価方法であり、鑑定の評価額の最低額を画するものである旨を判示し、あわせて、株主が自らの意思で会社を解散させて清算価値を現実化させる可能性の有無を考慮しました。

これら2件は、いずれも会社の解散の訴えについての裁判例ではありません。株式買取価格の決定の場面において、残余財産の分配と株式の価値との関係が述べられたものです。したがいまして、これらを解散の訴えが認められた例として理解してはなりません。もっとも、清算価値が株式の価値を考えるうえで1つの基準となり得ること、そして株主が自ら解散を求め得る立場にあるかどうかが考慮され得ることを示すものとして、少数株主にとって意味を持ちます。

含み益のある不動産を保有する会社における差

帳簿価額と時価との差が最も大きく現れるのは、古くに取得した不動産です。昭和の時代に取得した土地が帳簿価額のまま計上されている会社では、時価が帳簿価額の数倍に達することも珍しくありません。この場合、帳簿上の純資産の額を基礎とする提示額と、清算による分配見込額との間に、大きな開きが生じます。

ただし、その開きがそのまま株主の手取りとなるわけではありません。売却により生じた譲渡益には法人税等が課されます。また、売却に要する費用(媒介の報酬、登記の費用、測量の費用等)と、清算の手続に要する費用(清算人の報酬、公告の費用、登記の費用、税理士の報酬等)が差し引かれます。これらを織り込んだうえで、なお会社の提示額を上回るかどうかを検討することになります。

分配までに要する期間と費用を先に見積もる方法

着手の前に、次の順序で試算を行います。第1に、会社の資産を項目ごとに並べ、それぞれの時価を見積もります。第2に、負債の額を確かめます。第3に、資産の換価により生じる譲渡益に対する法人税等を見積もります。第4に、清算の手続に要する費用を積み上げます。第5に、残った額に持株比率を乗じます。第6に、これを分配までに要する期間で割り、時間の経過を織り込んで会社の提示額と比較します。

次の表は、この順序に従った試算の例です。あくまで前提条件を置いた計算例であり、実際の事案における結果を示すものでも、保証するものでもありません。

項目 金額 算定の根拠
前提1 発行済株式総数 10,000株 普通株式のみ。自己株式はありません
前提2 ご相談者の保有株式数 1,500株(15%) 相続により取得したものとします
前提3 賃貸不動産 帳簿価額1億円/時価3億円 先代の代に取得した市街地の収益物件とします
前提4 預金 2,000万円 賃料収入の蓄積とします
前提5 借入金 5,000万円 金融機関からの借入れとします
A 帳簿上の純資産の額 7,000万円 (1億円+2,000万円)-5,000万円
B 会社の提示額(帳簿上の純資産の額を基礎とする場合) 1,050万円 7,000万円×15%
C 不動産の売却代金 3億円 時価により売却できたものとします
D 売却に要する費用 1,000万円 媒介の報酬、登記の費用、測量の費用等
E 譲渡益に対する法人税等 約5,700万円 (3億円-1億円-1,000万円)×おおむね30%
F 清算の手続に要する費用 500万円 清算人の報酬、公告の費用、登記の費用、税理士の報酬等
G 残余財産の額 約1億9,800万円 3億円+2,000万円-5,000万円-1,000万円-5,700万円-500万円
H 清算による分配見込額 約2,970万円 約1億9,800万円×15%
H-B 差額 約1,920万円 清算による分配見込額と会社の提示額との差

この計算例においては、清算による分配見込額が会社の提示額をおよそ1,900万円上回りました。もっとも、この差額は直ちに手元に入るものではありません。分配までに2年から4年程度を要すること、その間に会社の財産が減少し得ること、不動産が時価どおりに売れるとは限らないこと、税負担の見積りが実際と異なり得ることを、あわせて考える必要があります。解散を求めれば必ず分配を受けられるというものではありません。負債が資産を上回る場合には分配は生じませんし、換価が進まなければ期間は延びます。

試算に必要な資料は、直近3期分の決算書及びその付属明細、固定資産台帳、不動産の登記事項証明書、賃貸借契約書、借入金の返済予定表です。これらが手元にない場合であっても、ご相談をお受けすることはできます。資料の取得の方法からご案内いたします。当事務所の取扱いの内容は、会社の解散と清算に関するご案内の頁に整理しています。

解散を求め得ることが交渉の材料となる理由

ここまで、解散の訴えの要件と、清算を経た分配の見込みを述べてまいりました。しかし、当事務所が取り扱う事案において、実際に会社が解散に至る例は多くありません。多くの事案は、解散に至らず、株式の買取りによって終わります。これは、解散の訴えが無駄であったということではありません。むしろ逆です。解散を求め得る立場にあることが明らかになったことにより、それまで動かなかった交渉が動いた、ということです。

支配株主にとって解散が重大な事態である理由

支配株主にとって、会社の解散は単に会社が1つ消えることではありません。第1に、役員報酬という継続的な収入が失われます。事業が止まっている会社であっても、賃料収入から役員報酬が支払われている例は少なくありません。第2に、会社が保有する不動産その他の資産を、市場において売却しなければならなくなります。同族の間で長年占有的に用いてきた資産を手放すことになります。第3に、清算の過程において、財産の状況が清算人により整理され、株主に対して財産目録及び貸借対照表が示されます。これまで開示されてこなかった取引の内容が明らかになります。第4に、事業を継続している会社では、取引先及び従業員に対して解散を説明しなければならず、事業そのものが失われます。

これらのうち、支配株主が最も避けたいと考えるのは、多くの事案において第3の点です。財産の管理が失当であることを理由として解散が求められた場合、その主張の当否を争う過程で、会社の内部の資料が明らかにされていくためです。したがいまして、この点に触れる主張が具体的な資料とともに示されたとき、交渉の空気は明らかに変わります。

事業が継続している会社の場合

事業が現に継続している会社では、解散の効果はさらに重大です。取引先との継続的な契約、従業員の雇用、許認可、金融機関との取引が、いずれも失われます。支配株主にとって、少数株主の株式を買い取る費用は、事業を失う損失に比べれば小さいという判断が働きます。

もっとも、事業が継続している会社では、解散の訴えの要件を満たすことは容易ではありません。業務の執行が現に行われている以上、著しく困難な状況に至っているとは言い難いためです。したがいまして、事業が継続している会社においては、解散の訴えを直ちに提起するのではなく、会社の内部の状況を確かめたうえで、買取りの交渉を中心に据え、解散を求め得る立場にあることを背景として示す組立てを採ることが通例です。

解散に至らず買取りによって終わる事案の型

解散に至らずに終わる事案には、いくつかの型があります。第1の型は、会計帳簿の閲覧謄写の請求により会社の内部の状況が明らかになった段階で、会社が買取りの協議に応じるものです。第2の型は、解散の訴えの提起を予告する書面を送付した段階で、会社が価格の提示を行うものです。第3の型は、解散の訴えを提起した後、第一審の審理の途中において、和解により株式の買取りが成立するものです。第4の型は、会社が解散を受け入れ、株主総会の決議により解散したうえで、清算の手続の中で分配を受けるものです。

いずれの型に進むかは、会社の財産の内容と、支配株主の意向によって定まります。したがいまして、着手の時点で結論を決め打ちすることはできません。重要なのは、いずれの型に進んでもよいように、資料と主張を積み上げておくことです。解散の訴えの要件を満たす資料は、そのまま買取りの交渉における材料にもなります。

着手の前に確かめる事項と、その順序

解散を求めるにせよ、買取りの交渉を進めるにせよ、着手の前に確かめておくべき事項があります。ここを飛ばして会社に接触することが、この場面において最も多い失敗です。会社の財産の内容を知らないまま解散を求めれば、分配が生じない会社について費用と時間を投じることになりかねません。株主の構成を知らないまま訴えを準備すれば、数の要件について後から争われます。順序は、資料を集めること、株主と機関を確かめること、そのうえで手段を選ぶこと、の3つです。

会計帳簿の閲覧謄写の請求により資産の内容を確かめる

会社の財産の内容を確かめる手段が、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧謄写の請求です(会社法第433条第1項)。決算書の表面からは、資産の内訳も、費用の相手方も、取引の実態も分かりません。解散を検討するために見るべきものは、次の表に掲げる資料です。

求める資料 確かめる事項
総勘定元帳(直近3期分から5期分) 費用の相手方及び金額。役員又はその関係者に対する支出の有無。資金の流出の経路
固定資産台帳 不動産その他の資産の取得の時期、取得価額、帳簿価額、償却の状況
不動産の登記事項証明書 所有者、担保権の設定の有無、被担保債権の額、共有の有無
賃貸借契約書及び賃料の入金の記録 賃借人、賃料の額、契約の期間、賃料が会社に入金されているかどうか
不動産の評価に関する資料(過去の査定書、固定資産税の課税明細等) 時価の水準。帳簿価額との差
借入金の返済予定表及び金銭消費貸借契約書 負債の額、返済の状況、連帯保証の有無
役員報酬の支給の状況が分かる資料 誰にいくら支払われているか。事業の実態との均衡
関係会社との取引に関する契約書及び請求書 取引の実在性、対価の相当性
株主総会及び取締役会の議事録(過去5期分から10期分) 機関が現に機能しているかどうか。役員の選任の状況

会社がこの請求に応じない場合があります。会社は、法律の定める事由があるときは請求を拒むことができるとされています(会社法第433条第2項)。拒絶の事由、請求の理由の記載の方法、会社が拒んだ場合の対応の詳細については、別に設けた記事において扱っていますので、本記事では立ち入りません。本記事において申し上げたいのは、解散を検討するのであれば、まずこの資料を見るという順序を守ることです。

登記事項証明書及び定款により株主構成と機関を確かめる

次に、株主の構成と会社の機関を確かめます。登記事項証明書からは、発行済株式総数、資本金の額、取締役及び監査役の氏名と就任の年月日、取締役会及び監査役の設置の有無、株式の譲渡制限に関する定めの有無が分かります。誰でも取得することができますので、着手の最初に取得します。

とりわけ確かめるべきは、役員の任期と改選の状況です。任期が満了しているにもかかわらず改選の登記がされていない場合、機関が機能していないことの端的な証跡となります。また、役員の変更が長期間にわたって記録されていない場合も、株主総会が現に開かれていないことをうかがわせます。

定款は、株主の権利の内容を確かめるために必要です。種類株式の発行の有無、残余財産の分配について内容の異なる定めの有無、清算人に関する定めの有無を確かめます。定款の写しが手元にない場合には、会社に対して閲覧謄写を請求します。株主名簿についても同様です。発行済株式総数とご自身の保有株式数とを突き合わせ、10分の1の要件を満たすかどうかを、この段階で確定させます。

解散の訴え、買取りの交渉、売買価格の決定の申立てのいずれを中心に据えるか

資料が揃った段階で、手段を選びます。会社の財産が十分にあり、機関が機能しておらず、支配株主が買取りに応じない事案では、解散の訴えを中心に据えます。会社の財産は十分にあるが、機関は一応機能している事案では、買取りの交渉を中心に据え、解散を求め得る立場にあることを背景として示します。会社に対して株式の譲渡の承認を求め、承認されない場合には、裁判所に対して売買価格の決定を申し立てる道もあります(会社法第144条第2項)。この申立ての手続、期限及び費用については、別に設けた記事において扱っていますので、本記事では手段の選択肢の1つとして挙げるにとどめます。

手段の選択は、一度定めれば動かせないものではありません。会計帳簿の閲覧謄写の請求に対する会社の対応、買取りの申入れに対する回答の内容によって、方針を組み替えます。重要なのは、いずれの手段に進む場合でも共通して必要となる資料を、最初にまとめて集めておくことです。

費用の見込みについても、この段階で明らかにしておきます。会社の解散の訴えについては、訴え提起の手数料として13,000円程度、予納郵券として6,000円程度を要します。解散の登記の登録免許税は30,000円、清算人の登記の登録免許税は9,000円、清算結了の登記の登録免許税は2,000円です。官報における解散及び債権申出の公告の費用は、あわせて40,000円程度です。このほかに、清算人の報酬、税理士の報酬、不動産の売却に要する費用が生じます。弁護士費用は、事案の内容と経済的な利益の額により異なりますので、初回のご相談において具体的に申し上げます。

この場面でしてはならない6つの対応

この場面において、ご自身で動かれた結果、かえって不利になった事案を数多く見てまいりました。いずれも、動機は理解できるものです。しかし、結果はご自身の利益を損ないます。次の6つは、着手の前に必ず避けていただきたい対応です。

解散の決議ができるものと考えて動くこと

株主総会の決議による解散には、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(会社法第309条第2項第11号)。15%を保有していても、単独では決議は成立しません。株主総会において解散の議案を提出し、否決された事実だけが記録に残る結果になりかねません。決議による解散を目指すのであれば、賛同を得られる株主の議決権を事前に積み上げ、合計が3分の2に達する見込みを立ててから動きます。

財産の状況を確かめないまま解散を求めること

債務を弁済した後でなければ、残余財産を株主に分配することはできません(会社法第502条)。負債が資産を上回る会社では、解散しても分配は生じません。また、簿外の債務、連帯保証、係属中の紛争が存在する場合には、想定した分配額が大きく減ります。まず財産の内容を確かめ、分配の見込みを試算してから、解散を求めるかどうかを決めます。

会社へ直接出向いて言質を取られること

感情が高まった状態で会社へ出向き、その場で交渉を始めることは避けてください。口頭のやり取りは記録が残らず、後に不利な内容だけが相手方の記録に残ります。また、その場で示された金額を断ったという事実が、後の交渉において持ち出されます。やり取りは書面に統一し、日付と内容を残します。

先に希望する金額を提示すること

会社の財産の内容を確かめる前に希望する金額を伝えますと、その金額が交渉の上限となります。相続税の申告における評価額をそのまま希望額として伝えてしまう例が、とりわけ多く見られます。相続税の課税のための評価と、清算による分配見込額とは、別の考え方によるものです。金額に触れるのは、資料に基づく試算を終えた後です。

時間の経過を放置すること

会社の財産は、放置すれば減少します。役員報酬の支払、修繕を怠った不動産の価値の低下、賃借人の退去、借入金の増加により、分配を受け得る額は年々小さくなります。また、資料は時間の経過とともに失われます。過去の議事録、契約書、決算書が散逸しますと、要件を示すことが難しくなります。相続によって株主が増えれば、意思決定はさらに困難になります。動くのであれば、資料が残っているうちに動きます。

株式買取業者に売却すること

非上場株式の買取りを持ちかける業者に売却することは、避けてください。提示される額は、清算による分配見込額を大きく下回ることが通例です。加えて、業者への株式の売却について、弁護士法第73条との関係で契約の効力が争われた裁判例があります。売却が無効とされた場合には、株式を買い戻し、受け取った代金を返還することになり得ます。業者に相談する前に、弁護士にご相談ください。

よくあるご質問

会社の解散と残余財産の分配について、ご相談の際に多く寄せられる質問と、その回答を掲げます。個別の事案については、事実関係と経過を伺ったうえで、具体的に申し上げます。

持株比率が10分の1に満たない場合、会社の解散を求めることはできませんか。

単独では、会社の解散の訴えを提起することはできません。総株主の議決権の10分の1以上、又は発行済株式総数(自己株式を除きます)の10分の1以上の数の株式を要します(会社法第833条第1項)。もっとも、同じ立場にある他の株主と共同して訴えを提起することにより、合算して要件を満たす場合があります。また、会社が自己株式を保有している場合には、議決権の割合が持株比率を上回りますので、議決権の要件を満たすことがあります。まず株主名簿と登記事項証明書により、正確な割合を確かめてください。

会社の解散の訴えは、必ず認められますか。

必ず認められるものではありません。数の要件を満たすことに加えて、業務の執行において著しく困難な状況に至り会社に回復することができない損害が生じ若しくは生ずるおそれがあること、又は財産の管理若しくは処分が著しく失当で会社の存立を危うくすることのいずれかに該当し、かつ、やむを得ない事由があることを要します(会社法第833条第1項第1号、第2号)。会社の法人格を消滅させる効果を伴う請求ですので、裁判所は要件の充足を厳格に判断します。他に採り得る手段が残っていると判断される場合には、認められない余地があります。

会社に不動産しか残っていません。分配を受けることはできますか。

不動産を売却して金銭に換え、債務を弁済した後に残った額を分配することになります(会社法第502条、第504条第3項)。したがいまして、分配を受け得るかどうかは、売却により得られる額が、借入金その他の債務の額と、譲渡益に対する法人税等と、清算に要する費用との合計を上回るかどうかによります。含み益のある不動産であれば、上回ることが多くあります。もっとも、売却に要する期間は3か月から6か月程度、事案によっては1年以上を要します。現物のまま分配を受けることも理論上は考えられますが、共有となり換価が困難になりますので、実務上は勧められません。

清算にはどのくらいの期間がかかりますか。

債権者に対して債権を申し出るべき旨を公告する期間が、2か月を下ることができません(会社法第499条第1項)。これは下限であり、2か月で清算が終わるという意味ではありません。財産が預金のみである場合でも、解散から分配まで半年程度、不動産の換価を伴う場合には1年から2年程度を見込みます。解散の訴えの提起から数えますと、全体で2年から4年程度となります。

解散を求めますと、会社との関係が決定的に悪化しませんか。

関係が緊張することは避けられません。もっとも、既に何年も交渉が動いていない事案において、関係を維持することそのものに経済的な意味があるかどうかは、冷静に考える必要があります。実務上は、解散を求め得る立場にあることを示した結果として、それまで応じなかった会社が買取りの協議に応じ、解散に至らずに終わる事案が少なくありません。書面によるやり取りを弁護士が窓口となって行いますので、ご本人が直接対峙することは避けられます。

弁護士費用はどのくらいかかりますか。

弁護士費用は、事案の内容、採る手段、経済的な利益の額により異なりますので、一律に申し上げることはできません。初回のご相談において、想定される手続と、それに応じた費用の見込みを具体的に申し上げます。裁判所に納める費用としては、訴え提起の手数料13,000円程度、予納郵券6,000円程度、登記の登録免許税として解散30,000円、清算人9,000円、清算結了2,000円、官報の公告の費用40,000円程度を見込みます。

会社の財産が持ち出されている疑いがあります。何から始めればよいですか。

会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧謄写を請求し、総勘定元帳により支出の相手方と金額を確かめることから始めます(会社法第433条第1項)。持ち出しの疑いは、決算書の表面からは確かめられません。あわせて、不動産の登記事項証明書により担保権の設定の有無を確かめ、賃貸借契約書と入金の記録により賃料が会社に入っているかどうかを確かめます。これらの資料は、財産の管理又は処分が著しく失当であるという主張の裏付けにもなりますし、買取りの交渉における材料にもなります。時間の経過とともに資料は失われますので、早い段階で着手することをお勧めいたします。

会社を解散させて残余財産の分配を受けるという出口は、他の出口が塞がった事案において、なお残されている道です。もっとも、要件も、期間も、費用も、決して軽いものではありません。着手の前に、会社の財産の内容を確かめ、分配の見込みを試算し、どの手段を中心に据えるかを定めることが、結果を大きく左右します。会社を解散させて残余財産の分配を受けたくてお困りの皆様へのご案内もあわせてご覧ください。

具体的なご相談をお考えの株主の皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。