株式譲渡承認請求で会社が不承認とした場合に何が起きるか

買取りの請求を付していなかった場合 会社に買取義務は生じません。予定していた譲受人への譲渡ができないという結果にとどまります

この違いは決定的です。買取りの請求を付していなかった場合には、不承認によって手続が終了し、株式を保有し続けることとなります。改めて買取りを求めるには、再度、買取りの請求を付した譲渡等承認請求を行う必要があります。請求書面の記載は、この点において極めて重要です。

第3節 会社が買い取る場合の手続

会社が対象株式を買い取る場合には、会社は、対象株式を買い取る旨及び買い取る対象株式の数を定めなければならず、この決定は株主総会の決議によります(会社法第140条第1項、第2項)。この決議は特別決議によらなければならないとされております(会社法第309条第2項第1号)。また、譲渡等承認請求者は、この株主総会において議決権を行使することができません(会社法第140条第3項。他の株主の全部が議決権を行使することができない場合を除きます。)。

会社は、これらの事項を決定したときは、その内容を譲渡等承認請求者に通知しなければなりません(会社法第141条第1項)。この通知をしようとするときは、1株当たり純資産額に買い取る対象株式の数を乗じて得た額を供託し、かつ、供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければならないとされております(同条第2項)。株主のもとに供託を証する書面が届くのは、この定めによるものです。

株券発行会社の場合には、譲渡等承認請求者は、通知を受けた日から1週間以内に対象株式に係る株券を供託しなければなりません(会社法第141条第3項。株券が発行されていない場合を除きます。)。この供託をしなかったときは、会社は対象株式の売買契約を解除することができます(同条第4項)。株券を保管されている方は、この期間に注意する必要があります。

なお、会社が自己の株式を買い取ることは株主に対する会社財産の払戻しに当たりますので、買取りの対価の総額は分配可能額を超えることができません(会社法第461条第1項第1号)。会社の財務状況によっては、この財源規制が手続の進行に影響することがあります。

第4節 指定買取人が買い取る場合の手続

会社は、自ら買い取るのに代えて、対象株式の全部又は一部を買い取る者を指定することができます(会社法第140条第4項)。この指定は、株主総会の決議(取締役会設置会社にあっては取締役会の決議)によります(同条第5項。定款に別段の定めがある場合を除きます。)。指定された者を指定買取人と申します。

指定買取人は、指定を受けた旨及び買い取る対象株式の数を譲渡等承認請求者に通知しなければならず(会社法第142条第1項)、その通知をしようとするときは、1株当たり純資産額に買い取る対象株式の数を乗じて得た額を供託し、供託を証する書面を交付しなければなりません(同条第2項)。株券発行会社の場合の株券の供託及び売買契約の解除についても、会社が買い取る場合と同様の定めが置かれております(同条第3項、第4項)。

指定買取人には、代表者、他の株主、取引先、関連会社などが指定される例があります。指定買取人が買い取る場合には会社の財産が払い戻されるわけではありませんので、分配可能額による財源規制は及びません。会社が財源の制約を理由として指定買取人を選択することがあるのは、このためです。

表2 会社が買い取る場合と指定買取人が買い取る場合の比較

項目 会社が買い取る場合 指定買取人が買い取る場合
決定機関 株主総会の特別決議 株主総会(取締役会設置会社は取締役会)の決議
譲渡等承認請求者の議決権 行使することができません 定めはありません
通知 会社法第141条第1項 会社法第142条第1項
供託 1株当たり純資産額に株式数を乗じた額 同左
財源規制 分配可能額の範囲内に限られます 及びません
買取り後の株式 自己株式となります 指定買取人が株主となります

第5節 期間の制限

この手続には、複数の期間の制限が置かれております。いずれも短く、徒過した場合の効果が定められておりますので、通知を受領された日を起点として管理する必要があります。

表3 主な期間の制限

場面 期間 徒過した場合の効果 根拠条文
会社による承認の可否の通知 請求の日から2週間 承認をする旨の決定をしたものとみなされます 会社法第145条第1号
会社による買取りの通知 承認をしない旨の通知の日から40日 承認をする旨の決定をしたものとみなされます 会社法第145条第2号
指定買取人による通知 承認をしない旨の通知の日から10日 会社が40日以内に通知をしない限り承認の擬制が生じます 会社法第145条第2号
株券の供託(株券発行会社) 買取りの通知を受けた日から1週間 売買契約を解除される可能性があります 会社法第141条第3項・第4項、第142条第3項・第4項
売買価格の決定の申立て 買取りの通知があった日から20日 1株当たり純資産額を基準とする価格に確定いたします 会社法第144条第2項・第5項・第7項

いずれの期間についても、定款でこれを下回る期間を定めることが認められている場合があります(会社法第145条第1号、第2号の各括弧書)。そのため、実際の期間は定款を確認したうえで判断する必要があります。

第6節 売買価格はどのように決まるか

会社又は指定買取人からの買取りの通知があった場合、対象株式の売買価格は、まず当事者の協議によって定めるものとされております(会社法第144条第1項、第7項)。協議が調わない場合には、会社又は譲渡等承認請求者は、その通知があった日から20日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができます(同条第2項、第7項)。この申立ては、会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所にいたします(会社法第868条第1項)。

裁判所は、申立てがあったときは、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならないとされております(会社法第144条第3項)。裁判所が決定をしたときは、その決定した額をもって売買価格といたします(同条第4項)。

問題となりますのは、20日以内に申立てをしなかった場合です。この場合には(その期間内に協議が調った場合を除きます。)、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額が売買価格となります(会社法第144条第5項、第7項)。これは、会社又は指定買取人が供託した金額と一致する額です。すなわち、期間を徒過いたしますと、相手方が一方的に算定した基準額が売買価格として確定してしまうという結果になります。この期間の詳細につきましては、記事「株式売買価格決定申立の20日という期限」に整理しております。

なお、供託がされている場合において売買価格が確定したときは、会社又は指定買取人は、供託した額に相当する額の限度において、売買代金の全部又は一部を支払ったものとみなされます(会社法第144条第6項、第7項)。

第7節 撤回の制限その他の留意点

買取りの請求を付した譲渡等承認請求者は、会社からの買取りの通知を受けた後は、会社の承諾を得た場合に限り、その請求を撤回することができます(会社法第143条第1項)。指定買取人からの通知を受けた後についても、指定買取人の承諾を得た場合に限り撤回することができます(同条第2項)。

つまり、いったん通知を受けた後は、株主の側から一方的に「やはり売却をやめる」ということができません。想定していた金額と大きく異なる供託額が示された場合であっても、手続から離脱することはできず、価格を争うほかないという状態になります。譲渡等承認請求を行う前に、会社の財務内容を確認し、1株当たり純資産額がどの程度の水準となるのかを見込んでおくことが望ましいのは、このためです。

表4 通知を受け取った後に確認する事項

確認事項 理由
通知が届いた日付 20日及び1週間の起算点となります
買い取る主体が会社か指定買取人か 適用される条文と財源規制の有無が異なります
買い取る対象株式の数 全部か一部かによって残る株式の扱いが変わります
供託を証する書面の有無と供託額 1株当たり純資産額の水準が分かります
定款に短縮の定めがあるか 期間が法定より短くなっている場合があります
株券発行会社であるか否か 株券の供託の要否に関わります

第8節 弁護士に相談する意味

不承認の通知が届いた段階では、期間の管理と価格の検討という二つの作業を並行して進める必要があります。20日という期間は、資料を集め、評価の検討を行い、申立ての要否を判断するには短いものです。

弁護士は、株主本人の代理人として、通知の内容と定款の定めを確認して各期間を確定し、株主に認められた情報取得の手段(会社法第442条第3項、第433条第1項等)を用いて価格の検討に必要な資料の範囲を確保し、協議及び必要に応じた申立てを行います。申立てを行うか否かの判断そのものが、期間内に済ませなければならない事項です。

なお、当事務所は株式を買い取る立場ではありません。株式買取業者は株式の買手であり、株主本人の代理人ではなく、買手は取得価額が低いほど利益が大きくなる立場にあります。大阪高等裁判所令和6年7月12日判決(上告棄却により確定)は、株式買取業者に対する非上場株式の譲渡契約について、弁護士法第73条に違反し無効であると判断いたしました。業者一般が違法であるという趣旨ではありませんが、具体的な業務態様によっては法的問題が生じ、裁判例において違法性が認定された事例があるということです。

よくあるご質問

質問1 不承認の通知だけが届き、買取りに関する記載がありません。

承認をしない旨の通知と、買取りに関する通知とは別のものです。買取りの請求を付していた場合には、承認をしない旨の通知の日から40日以内に会社が買取りの通知をしないとき(指定買取人が10日以内に通知をした場合を除きます。)は、承認をする旨の決定をしたものとみなされます(会社法第145条第2号)。通知の内容と日付を確認する必要があります。

質問2 供託を証する書面に記載された金額が想定より低いものでした。

供託額は、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額です(会社法第141条第2項)。これは法律上の基準による額であり、売買価格そのものではありません。協議が調わない場合には、通知があった日から20日以内に裁判所に売買価格の決定の申立てをすることができます(会社法第144条第2項、第7項)。

質問3 指定買取人として全く知らない者が指定されました。応じなければなりませんか。

指定買取人の指定は、会社法上認められた手続です(会社法第140条第4項、第5項)。指定買取人からの通知を受けた後は、指定買取人の承諾を得た場合に限り請求を撤回することができます(会社法第143条第2項)。価格については、会社が買い取る場合と同様に協議及び申立ての手続によります。

質問4 一部の株式だけを買い取ると通知されました。

会社が買い取る対象株式の数は、決議において定められます(会社法第140条第1項第2号)。指定買取人が買い取る数についても通知の対象です(会社法第142条第1項)。買取りの対象とならなかった株式については、引き続き保有することとなります。

質問5 20日を過ぎてしまいました。

その期間内に協議が調っていない場合には、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額が売買価格となります(会社法第144条第5項、第7項)。まずは、通知の日付、定款の定め、協議の経緯を確認する必要があります。速やかにご相談ください。

交渉手法の詳細について

具体的な交渉方法は、株主構成、財務状況、株価、従前の経緯等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本ページでは詳細を開示しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、株式譲渡承認請求及び売買価格の決定の申立てについて、株主側の代理人としてご相談をお受けしております。期間の制限がありますので、通知を受領された場合には速やかにご連絡ください。

ご相談の際には、会社から届いた通知書及び供託を証する書面、定款の写し、株主名簿の写し、直近3期分の決算書、譲渡等承認請求の書面の控えをご用意ください。お手元にない場合でもご相談いただけます。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
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本記事は一般的な手続をご説明するものであり、結論は事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。結果を保証するものではありません。

本記事の根拠条文・裁判例

会社法 第107条第1項第1号・第108条第1項第4号(譲渡制限株式)、第136条・第137条(譲渡等承認請求)、第138条第1号(請求の方法)、第139条(承認の決定及び通知)、第140条(会社による買取り及び指定買取人の指定)、第141条(会社の通知及び供託)、第142条(指定買取人の通知及び供託)、第143条(撤回の制限)、第144条(売買価格の決定)、第145条(承認の擬制)、第309条第2項第1号(特別決議)、第433条第1項(会計帳簿の閲覧謄写の請求)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等の請求)、第461条第1項第1号(分配可能額による財源規制)、第868条第1項(非訟事件の管轄)

弁護士法 第73条

裁判例 譲渡制限に反する株式の譲渡が譲渡当事者間においては有効である旨を判断した最高裁判所の判例、大阪高等裁判所令和6年7月12日判決(上告棄却により確定。株式買取業者に対する株式譲渡契約につき弁護士法第73条違反による無効を判断)

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不承認の通知が届いた段階は、手続の終わりではなく始まりです。日付を確認し、期間内に必要な判断を行えば、価格を争う道は開かれています。通知書をお持ちのうえ、速やかにご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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