少数株式の買取交渉はどのくらいの期間がかかるか
1 結論 期間は事案により異なり、一律の見込みは申し上げられません
少数株式の買取りは、資料の収集と価値の検討、発行会社又は大株主との協議、協議が調わない場合の法律上の手続という段階を経て進みます。それぞれに要する時間は、資料の揃い方、相手方の対応、争点の多寡によって大きく変わります。
当事務所では、初回のご相談において、資料の状況と事案の内容を踏まえた見通しを申し上げます。もっとも、これは見通しであり、一定の期間内に解決することを保証するものではありません。他方、会社法が定める手続上の期間は明確ですので、この点は後述のとおり確定的に申し上げられます。
2 期間を左右する要素
第1に、資料の有無です。定款、株主名簿、直近数期分の決算書がお手元にある場合と、いずれもない場合とでは、検討の開始までに要する時間が異なります。資料がない場合には、計算書類等の閲覧等の請求(会社法第442条第3項)及び会計帳簿等の閲覧謄写の請求(会社法第433条第1項)を含め、情報の取得から始めることとなります。
第2に、株主構成及び相続関係です。株式が複数の相続人の準共有に属する場合、遺産分割が未了の場合、名義書換えが済んでいない場合には、まずこれらの整理を要します。第3に、会社の姿勢です。協議に応ずる意向がある場合と回答が得られない場合とでは進み方が異なります。第4に、評価に関する争点の多寡です。不動産の含み損益、遊休資産、非経常的な損益といった論点が多いほど、検討に時間を要します。
3 段階ごとの整理
第1段階は、資料の収集と株式の価値の検討です。資料が揃っている場合には比較的短期間で終わりますが、資料の取得から始める場合には、その分の期間を要します。
第2段階は、発行会社又は大株主に対する申入れと協議です。相手方の内部における検討、機関決定の要否、資金の手当てによって回答までの時間は異なります。会社が自己の株式を取得する場合には株主総会の決議その他の手続を要し(会社法第156条第1項、第160条第1項)、分配可能額による財源規制(会社法第461条第1項)の検討も必要となります。
第3段階は、協議が調わない場合の法律上の手続です。譲渡制限株式については、株式譲渡承認請求から始まる一連の手続があります。
4 会社法が定める期間は明確です
協議の期間は事案によって異なりますが、会社法が定める手続上の期間は明確です。
| 場面 | 期間 | 根拠条文 | 徒過した場合の効果 |
|---|---|---|---|
| 承認をするか否かの決定の内容の通知 | 請求の日から2週間(定款で短縮可能) | 会社法第139条第2項、第145条第1号 | 承認をしたものとみなされます |
| 会社の株式買取通知及び供託 | 上記通知の日から40日 | 会社法第141条、第145条第2号 | 承認をしたものとみなされます |
| 指定買取人の通知及び供託 | 上記通知の日から10日 | 会社法第142条、第145条第2号 | 会社が40日以内に通知をしない限り、承認をしたものとみなされます |
| 売買価格の決定の申立て | 通知があった日から20日 | 会社法第144条第2項・第7項 | 1株当たり純資産額に株式の数を乗じて得た額が売買価格となります(同条第5項) |
とりわけ20日の期間は重要です。期間内に申立てをしなかった場合には1株当たり純資産額を基礎とする額が売買価格とされますので、通知を受領された場合には到達の日を記録のうえ直ちにご確認ください。
5 裁判所の手続に移行した場合
売買価格の決定の申立ては、非訟事件として扱われます。裁判所は、当事者の主張及び提出された資料に基づいて価格を決定いたします。争点が多い場合、鑑定が実施される場合には、その分の期間を要します。
期間の長短と結論の内容とは別の事柄です。短期間で終わることが有利であるとは限らず、期間を要したことが有利な結論に結び付くものでもありません。手続の選択は、期間のみによらず、資料の状況、争点、費用と得られる見込みとの関係を踏まえてご判断いただくべきものです。
6 期間についてご留意いただきたいこと
期間を短縮するうえで最も効果的なのは、資料を早期にご提出いただくことです。定款、株主名簿の写し、直近3期分の決算書、株式の取得の経緯が分かる資料、会社とのやり取りの記録が揃いますと、検討の着手が早まります。相続が発生している場合には、遺産分割及び名義書換えといった前提事項の整理が有益です。
なお、株式買取業者への売却は、手続としては短期間で終わることがあります。もっとも、受け取る金額は契約で定めた額に固定され、契約の効力が後に争われた場合には、かえって解決が長期化することがあります。大阪高等裁判所令和6年7月12日判決(上告棄却により確定)は、株式買取業者に対する非上場株式の譲渡契約について弁護士法第73条に違反し無効であると判断いたしました。業者一般が違法であると申し上げるものではありませんが、具体的な業務態様によっては法令との関係で問題が生じ得ることは、期間の比較に際してもご留意ください。
よくあるご質問
質問1 できるだけ早く現金化したいのですが、最短の方法はどれですか。
事案によって異なりますので一概には申し上げられません。資料の状況、譲渡制限の有無、会社の姿勢を確認したうえで、選択肢ごとの見通しを申し上げます。
質問2 期間の見込みを最初に教えていただけますか。
初回のご相談において、その時点で判明している事実に基づく見通しを申し上げます。もっとも、相手方の対応によって変動いたしますので、確定的な期間をお約束するものではありません。
質問3 途中で状況が変わった場合はどうなりますか。
会社の財務状況の変化、相続の発生、株主構成の変動などにより方針の見直しを要することがあります。その都度ご報告し、ご相談のうえで進めます。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
少数株式の買取りに関するご相談は、弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)へお寄せください。当事務所は株式を買い取る立場ではなく、株主側の代理人です。
- 電話番号 03-6435-8418/受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
ご相談に際しましては、定款、株主名簿の写し、直近3期分の決算書、会社から届いた通知書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしております。会社から買取りに関する通知を受領された場合には、期間の制限がある手続に関わりますので速やかにご連絡ください。なお、申入れの方法及び時期、価格に関する主張の組立て方は当事務所の実務上の知見に属しますので公開しておりません。
本記事の根拠条文・裁判例
会社法 第139条第2項(承認の決定の内容の通知)、第141条・第142条(株式買取通知、指定買取人の通知及び供託)、第144条第2項・第5項・第7項(売買価格の決定及び20日の期間)、第145条第1号・第2号(みなし承認)、第156条第1項・第160条第1項(自己株式の取得)、第433条第1項・第442条第3項(閲覧等の請求)、第461条第1項(財源規制)
弁護士法 第73条(他人の権利を譲り受けて訴訟その他の手段によりその権利の実行をすることを業とすることの禁止)
裁判例 大阪高等裁判所令和6年7月12日判決(上告棄却により確定)
内部リンク
- ランディングページ第2号 会社が非上場株式を買い取ってくれない方へ(/landing/minority/。主)
- ランディングページ第10号 株式売買価格決定申立・株価決定裁判(/landing/share/。補助)
- 既存記事 非上場株式の売却と会社の株式買取義務(/archives/share_baikyakukaitorigimu/)
- 既存記事 裁判所における非上場株式の価格算定方法(/archives/share_kabushikikachisanteihouhou/)
- 新設記事 少数株式の売却で弁護士費用はどのように考えるか(G08)
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。



