少数株主の相談でよくある質問10選
非上場会社の少数株式を保有される方から、当事務所に多くのご相談が寄せられております。ご質問の内容は多岐にわたりますが、繰り返しお尋ねいただく事項は一定の範囲に収まっております。本記事では、そのうち代表的な10問について、一般的な法律上の考え方を整理してお答えいたします。個別の事案における結論は、事実関係及び資料によって異なりますので、あくまで検討の出発点としてお読みください。
- 質問1 会社には株式を買い取る義務があるのでしょうか
- 質問2 会社が提示した価格に応じなければならないのでしょうか
- 質問3 株式の価値はどのように調べるのでしょうか
- 質問4 決算書を見せてもらえない場合はどうすればよいのでしょうか
- 質問5 譲渡制限が付いている株式でも売却できるのでしょうか
- 質問6 株式買取業者に売却してもよいのでしょうか
- 質問7 配当がない株式は価値がないのでしょうか
- 質問8 相続した株式で、会社と全く関係がない場合はどうすればよいのでしょうか
- 質問9 交渉にはどのくらいの期間がかかるのでしょうか
- 質問10 弁護士費用はどのように決まるのでしょうか
- 本記事における非開示事項について
- 弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
- 内部リンク
質問1 会社には株式を買い取る義務があるのでしょうか
会社法上、株主が会社に対して常に株式の買取りを請求できるという一般的な権利は定められておりません。反対株主の株式買取請求権は、一定の定款の変更等の場合(会社法第116条)、合併その他の組織再編の場合(会社法第785条、第797条、第806条)、株式の併合の場合(会社法第182条の4)など、法律が定める場面に限られております。
もっとも、会社が株主との合意により自己の株式を取得することは可能です(会社法第155条第3号、第156条以下)。したがいまして、「買取義務はないが、任意の買取りはあり得る」というのが正確な整理です。会社が一度断ったことが、以後の協議の成否を決めるものではありません。
質問2 会社が提示した価格に応じなければならないのでしょうか
応じなければならないものではありません。会社に一般的な買取義務がない以上、価格は当事者間の協議によって定まるものであり、会社の提示額は協議の出発点にすぎません。
会社の提示額は、相続税の課税実務における評価の考え方や、配当実績を基礎とする評価の考え方によって算出されていることがあります。これらは課税上の取扱いのための評価であり、売買における適正な価格を定めるために設けられた基準ではありません。提示額の根拠を確認することが、検討の第一歩です。
質問3 株式の価値はどのように調べるのでしょうか
非上場株式の評価には、会社の純資産を基礎とする方法、収益力を基礎とする方法、配当を基礎とする方法、類似する会社の指標と比較する方法など、複数の考え方があります。いずれの方法を用いるかは、会社の規模、業種、資産の内容、株主の持株比率によって異なります。
いずれの方法によるにせよ、出発点となるのは資料です。定款、株主名簿、直近数期分の決算書、不動産の一覧、配当の実績が揃いますと、検討の精度が上がります。資料がお手元にない場合の対応につきましては、質問4をご覧ください。
質問4 決算書を見せてもらえない場合はどうすればよいのでしょうか
株主は、営業時間内はいつでも、計算書類及びその附属明細書等の閲覧又は謄本の交付を請求することができます(会社法第442条第3項)。これは持株比率にかかわらず認められる権利です。
これに加え、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主等は、理由を明らかにして、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写を請求することができます(会社法第433条第1項)。ただし、この請求には会社が拒むことができる事由が定められております(同条第2項)。いずれの権利も、株主であることが前提ですので、株式を譲渡なさった後は用いることができません。
質問5 譲渡制限が付いている株式でも売却できるのでしょうか
売却することは可能です。もっとも、会社の承認を要する旨の定款の定めがある場合には、会社の承認がなければ、会社との関係において譲渡の効力を主張することができません(会社法第136条以下)。
株主は、会社に対し、譲渡を承認するか否かの決定をすることを請求することができ(会社法第136条)、この際、承認をしない場合には会社又は指定買取人が買い取ることを併せて請求することができます(会社法第138条第1号ハ)。会社が承認をしない旨を決定した場合には、会社又は会社の指定する買取人が買い取ることとなります(会社法第140条)。
質問6 株式買取業者に売却してもよいのでしょうか
株式買取業者は株式の買手であり、株主ご本人の代理人ではありません。業者は、株式を取得したうえで発行会社等から回収を図り、その差額を収益とする事業形態を採るのが一般的です。したがいまして、業者の提示額は業者の採算計算の結果であり、株式の価値そのものではありません。
また、大阪高等裁判所令和6年7月12日判決(上告棄却により確定)は、株式買取業者に対する非上場株式の譲渡契約について、弁護士法第73条に違反し無効であると判断いたしました。これをもって業者一般が違法であると申し上げるものではありませんが、具体的な業務態様によっては弁護士法その他の法令との関係で問題が生じ、裁判例において違法性が認定された事例があるということです。契約書に署名なさる前のご相談をお勧めいたします。
質問7 配当がない株式は価値がないのでしょうか
配当がないことは、直ちに株式の価値がないことを意味するものではありません。非上場の同族会社におきましては、配当を行わず内部に留保する方針が採られることが少なくありませんが、留保された利益は会社の純資産として蓄積されております。
配当の有無は、評価の方法の選択に影響いたしますが、会社が保有する不動産、有価証券、現預金の状況、収益力によっては、配当がなくとも相応の価値が認められることがあります。配当がないことを理由に低い価格を提示された場合には、評価の前提を確認する必要があります。
質問8 相続した株式で、会社と全く関係がない場合はどうすればよいのでしょうか
まず、株主名簿の名義書換えが済んでいるかをご確認ください。相続により株式を取得された場合、会社に対してその旨を明らかにし、名義書換えを請求する必要があります(会社法第133条)。名義書換えがなされていないと、会社に対して株主であることを主張することが困難です。
また、定款に、相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対して当該株式を会社に売り渡すことを請求できる旨の定めが置かれている場合があります(会社法第174条)。この場合、会社は、相続があったことを知った日から1年以内に限り売渡しを請求することができます(会社法第176条第1項)。定款の確認が重要です。
質問9 交渉にはどのくらいの期間がかかるのでしょうか
事案により大きく異なりますので、一律の見込みを申し上げることはできません。資料の揃い方、株主構成、会社の姿勢、評価に関する争点の多寡、相続手続の完了の有無によって、要する期間は変わります。
もっとも、会社法が定める期間は明確です。会社が譲渡承認請求に対する決定の内容を通知しない場合の取扱い(会社法第145条第1号)、会社が買い取る旨の通知を受けた場合における売買価格の決定の申立ての期間(会社法第144条第2項)など、期間の制限が定められた場面があります。これらを徒過いたしますと不利益が生じ得ますので、通知を受領された際は速やかにご確認ください。
質問10 弁護士費用はどのように決まるのでしょうか
一般に、事件の着手に際していただく着手金と、事件の終了に際して得られた経済的利益に応じていただく報酬金という構成で考えます。このほか、印紙代、郵便料金、記録の謄写に要する費用等の実費が生じます。
費用倒れを避けるためには、株式の価値の概算、相手方の資力、採り得る手続、要する期間を検討したうえで、費用と得られる見込みとを比較することが必要です。具体的な弁護士費用の額は、対象となる株式の価額及び事案の内容により異なりますので、初回のご相談において具体的な見込みを申し上げます。
本記事における非開示事項について
本記事は、一般的な法律上の説明を目的とするものです。発行会社又は大株主との交渉の具体的な進め方、資料の提示の順序、価格に関する主張の組立て方につきましては、案件ごとに事実関係が異なり、また当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、詳細は公開しておりません。個別の事案における方針は、ご相談の際に、事実関係及び資料を拝見したうえで申し上げます。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
非上場株式・少数株式に関するご相談は、弁護士法人M&A総合法律事務所へお寄せください。
- 電話番号 03-6435-8418
- 受付時間 8時00分から21時00分まで
- 土曜日・日曜日・祝日も受付いたします
ご相談に際しましては、定款、株主名簿の写し、直近3期分の決算書、株式を取得された経緯の分かる資料、会社から届いた書面をお持ちいただけますと、より具体的なご説明が可能です。これらの資料がお手元にない場合であっても、ご相談をお受けしております。
内部リンク
| 区分 | リンク先 | パス | 備考 |
|---|---|---|---|
| ランディングページ | 非上場株式・少数株式の売却相談 総合(ランディングページ第1号) | 制作予定 | 主たる送客先 |
| ランディングページ | 会社が非上場株式を買い取ってくれない方へ(ランディングページ第2号) | 制作予定 | 質問1・質問2から分岐 |
| ランディングページ | 株式買取業者へ売る前に弁護士へ相談(ランディングページ第8号) | 制作予定 | 質問6から分岐 |
| 既存記事 | 非上場株式・少数株式の問題点 | /archives/share_minorityshareissue/ | 総論 |
| 既存記事 | 非上場株式の売却と会社の株式買取義務 | /archives/share_baikyakukaitorigimu/ | 質問1 |
| 既存記事 | 非上場株式の譲渡適正価格 | /archives/unlisted-share-fair-price/ | 質問2・質問3 |
| 既存記事 | 株式買取業者への株式売却を弁護士法違反で無効とした判例 | /archives/share_hanrei_hiben/ | 質問6 |
| 既存固定ページ | 配当がない場合に関するページ | /haitou_zero/ | 質問7。表題は公開前に要確認 |
| 既存固定ページ | 会計帳簿の閲覧請求に関するページ | /choboetsuran_seikyu/ | 質問4。表題は公開前に要確認 |
| 新設記事 | 少数株式の買取交渉はどのくらいの期間がかかるか(G07) | /archives/negotiation-timeline/ | 質問9 |
| 新設記事 | 少数株式の売却で弁護士費用はどのように考えるか(G08) | /archives/minority-share-legal-fee/ | 質問10 |
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。



