純資産方式とは?株式価格評価方法としての妥当性について徹底解説!

非上場株式の株式価値評価における純資産方式については、会社は継続企業であり、すぐに清算することを予定していないことから、採用すべきではないという主張があります。では、純資産方式は、採用しない方が良いのでしょうか?
この記事では、純資産方式とは何か、そのメリット・デメリットを解説し、非上場株式の株式価格評価における純資産方式は妥当かどうかについて検討していきます。
非上場株式とは
そもそも非上場株式とは何かについて解説します。
株式には、上場株式と非上場株式という分類があります。
上場株式とは、証券取引所において上場されている株式のことを言います。この場合、証券取引所という市場が存在するため、株式価格はその市場において決定されます。
他方、証券取引所に上場されていない株式のことを非上場株式と言います。非上場株式の株式価格については、いくつかある評価方法を用いて決定する必要があります。
非上場株式には2つの評価方式がある
非上場株式の株式価格は個々の評価方式を採用して決定する必要があります。そして、その評価方式には以下の2つの種類があります。
- 原則的評価方式
- 特例的評価方式
株式を取得した主体によって、どの評価方式を用いるのか決定されます。
原則的評価方式
原則的評価方式は、非上場株式を発行する会社の規模を分類して、異なる評価方式を採用する方法です。
原則評価方式には、類似業種比準方式を採用する場合、純資産方式を採用する場合、その両者を併用する場合が存在します。
分類方法としては、会社の規模を大会社・中会社・小会社の三段階に分類したうえで、さらに、中会社を大・中・小に分類します。このうち、大会社には類似業種比準方式を適用し、中会社には類似業種比準方式及び純資産方式の併用を認め、小会社には純資産方式を適用することになります。
類似業種比準方式とは
類似業種比準方式は、上場している同業種の株式価格と比較して価格を決定する評価方式です。その際、1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額などの要素を比較します。
上場企業の場合、利益や配当などの情報が公開されており、これを非上場企業における評価要素として使うことになります。
大会社については、上場企業に比較的近い状況にあり、似たような上場企業と比較することによって数値が適正に反映されやすいです。そのため、このような評価方式が用いられます。
純資産方式とは
純資産方式は、株式を発行する会社の純資産額を基準として株式価格を評価する方式です。この評価方式では、会社を清算する際に、現時点での1株当たりの配分がどのくらいになるかを計算することができます。
純資産方式は、中会社や小会社と相性の良い評価方式となっています。
特例的評価方式
非上場株式を発行する企業の中でも上記の原則的評価方式が向いていないか、または適用できないような企業があります。その場合に用いられるのが、特例的評価方式です。
たとえば、以下のような会社に対して適用されます。
- 配当や利益がない会社
- 資産の多くが株式や土地である会社
- 設立して間もない会社
- 休業中や清算中の会社
これらの会社については、会社の規模に関係なく純資産方式を用いることになります。
また、非上場株式を発行する会社の場合、同族株主(議決権総数の30%以上を保有する株主または同族関係者)ではない株主が株式を取得する場合には、配当還元方式という評価方式を用いることになります。
評価アプローチ及び評価方式のまとめ
なお、非上場株式の株式価格評価の方法については、評価アプローチと評価方式という観点からも分類することができます。
ここでは、それぞれの内容を概観できるように表にしましたので、ご覧ください。
|
評価アプローチ |
評価方式 |
|
インカム・アプローチ …会社から期待される利益やキャッシュフローに基づいて株価を評価する方法。 |
|
|
マーケット・アプローチ …類似企業・事業・取引事例などを比較する方法。 |
|
|
ネットアセット・アプローチ …純資産に着目して株価を評価する方法。 |
|
純資産方式によるメリットとデメリット
ここでは、純資産方式を採用した場合のメリットとデメリットを解説します。これらの情報を参考にして、純資産方式が妥当な評価方式であるか否かを見ていくと良いでしょう。
メリット
取引する際の情報の透明性が高い
純資産方式を採用すると、株主や取引相手に企業の財務状況を明確に理解させることができます。そのため、信頼性の高い情報を提供することが可能です。特に企業再編においては、取引の透明性を高めることができます。
基準としての信頼度が高い
純資産方式は、会計基準に準拠している評価方式です。したがって、監査や規制当局によるチェックがしやすく、法令順守の観点からの評価が高いです。
類似業種比準方式よりも市場に影響されにくい
株式を発行する会社の保有資産や負債など、その会社の実態が評価に反映されるため、市場には影響されないで株式価格を算出することができます。
デメリット
株式価格を算出するのに時間や手間がかかる
会社にあるすべての資産を現時点の時価に評価する必要があります。そうすると、最終的に株式価格を算出するまでには相応の手間や時間がかかると言えます。
単独だと評価漏れが出てくる
純資産方式では、企業の成長性や市場価値を反映しないため、単独で採用すると、評価漏れが出てしまうと言えます。そこで、他の評価方式と併用することが推奨されます。
市場の評価とのズレが生じる可能性あり
株式市場では、株主の心理や市場の動向が株式価格に影響を与えることがあります。とすると、純資産方式によって算出した企業価値と市場における評価がズレることがあります。これにより、株取引の判断や企業買収の際に、当事者間で誤解が生じるリスクが出てきます。
純資産方式による評価方法
純資産方式の基本知識
では、純資産方式による評価手順について、さらに詳しく見ていきましょう。
純資産方式は純資産をもとに企業価値を評価する方法です。
純資産は、企業の貸借対照表(バランスシート)に記載されています。具体的には、会社の保有資産から負債を差し引いたものがこれにあたります。この純資産を企業価値とみなします。
純資産方式を採用すると、企業の実際の財務状況を把握することが可能となり、市場が不安定な時でも、信頼できる指標となります。
純資産方式の種類
純資産方式は純資産をもとに株式価値を評価する方法ですが、評価基準の視点を変えることによって、異なる観点から株式価値を評価することも可能です。それが、簿価純資産法と時価純資産法です。
簿価純資産法
簿価純資産法は、企業の財務諸表に記載された簿価を使って純資産を計算する方法です。企業の保有する資産から負債を差し引き、その差額を企業の価値とみなします。
メリットとデメリットは以下の通りです。
-
メリット:財務諸表に基づくため計算が簡単。客観的に評価できる。
-
デメリット:資産の実際の市場価値を反映していないことが多い。特に古い設備や土地など。企業の収益力や将来性を評価できない。
したがって、簿価純資産法は、企業が大きく成長している場合や収益力が大きく変化している場合には不向きであるといえます。この場合には、他の評価方法と組み合わせて使うのが良いでしょう。
時価純資産法
時価純資産法は、純資産を時価を基準として評価する方法です。
企業の保有する資産や負債を市場価格に基づいて評価し、純資産価値を算出します。そのため、簿価純資産法よりも市場環境をより反映すると言えます。
そのメリットとデメリットは以下のようになります。
-
メリット:資産の市場価値が変動する状況下でも企業価値を正確に把握することができる。資産を再評価することで市場での取引価格に近い企業価値を算出することができる。
-
デメリット:時価は市場変動の影響を受けるため、評価の安定性に欠ける。市場が不安定な時期には企業価値が大きく変動する可能性があり、これが株取引の判断に影響を及ぼす。
そうすると、時価純資産法は、企業の経営状況や市場の状況を総合的に評価するための一手段として位置付けて、他の評価方法と組み合わせるのが良いかもしれません。
純資産方式による計算方法
純資産方式を採用した場合、以下の手順に従って株式価格を計算します。
- 株式を売却する時点での貸借対照表を作成
- 資産を時価に置き換える
- 負債を時価に置き換える
- 純資産価額を計算して1株当たりの評価額を算出する
このうち、純資産価額の計算式は以下の通りです。
-
純資産価額=時価に換算した資産の合計額―時価に換算した負債の合計額
また、1株当たりの評価額は以下の計算式によって算出します。
- 1株当たりの評価額=純資産価額÷発行済み株式総数
純資産方式で評価する際の注意点
純資産方式を採用する場合にはいくつか注意点があります。
財産性のない資産は計上しない
資産の中には財産性のないものも存在します。たとえば、前払費用、繰延資産、繰延税金資産などです。これらの資産については資産として計上する必要はありません。
各種引当金は負債として計上しない
負債の中にある引当金(賞与引当金、貸倒引当金、退職給与引当金など)については、負債として計上しません。これらは負債には含めないためです。
未払い金は負債として計上する
法人税や消費税の未払い金などがある場合には、負債として計上することができます。
非上場株式の評価方式に迷った場合の相談先
ここまで非上場株式の評価方式についていくつか紹介してきました。もっとも、実際に取引する際にどのような評価方式を採用すべきかの判断には、専門的な知識と経験が必要となります。
そこで、非上場株式の評価について、心配な点がある方、専門的な見解を聞きたい方は、非上場株式の株取引に精通している弁護士または法律事務所に相談すると良いでしょう。
まとめ
この記事では、非上場株式の株式価格評価における純資産方式は妥当かどうかという観点から解説してきました。
純資産方式については、基準の公平性や情報の透明性がある一方で、企業の将来の成長性などを加味できないというデメリットもあります。
したがって、純資産方式は非上場株式の株式価格の評価方法として有用ではあるが、他の評価方式と併用することで、より妥当な株式価格の評価を算出できると言えるでしょう。
とはいえ、非上場株式の評価は容易ではないため、少しでも疑問点や懸念点がある場合には、迷わず専門家に相談しましょう。



