株式買取請求権の行使方法とは?行使できる場面から注意点まで詳細解説
お困りではありませんか?

近年のM&Aの増加に伴い、株式買取請求権という言葉を聞くことが多くなってきました。
もっとも、株式買取請求権といってもどんな権利なのか、どのように使えばいいのか、正確に理解している人は少ないことでしょう。
この記事では、株式買取請求権について、権利の概要、権利行使の方法や流れ、そして、注意点について詳細に解説します。
株式買取請求権の概要について
株式買取請求権は会社法に定められている株主のための権利です。まずは、株式買取請求権がどのような権利なのかについてみていきましょう。
株式買取請求権とは
株式買取請求権とは、株主が会社に対して、自己の保有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる権利のことを言います。この権利は、会社の意思決定について反対の意見を持つ少数株主を保護するためのものです。
株式買取請求権を行使しうる株式とは
会社は定款により株式に対してさまざまな条件を付すことができます。
株式の中で、「取得請求権付き株式」については、株主が株式買取請求権を行使することができます。そのため、株式買取請求権の行使を考えている場合には、保有している株式が「取得請求権付き株式」であるかどうかを確認する必要があります。
なお、似たような概念として、「取得条項付き株式」が存在します。これは、会社が一方的に株主から株式を取得しうる旨の株式であり、株式買取請求権とは別物なので、注意してください。
株式買取請求権の種類
株式買取請求権は行使する場面によって大きく2つの種類に分けることができます。それは、単元未満株主の買取請求と反対株主による買取請求です。
単元未満株主の買取請求
単元未満株式を保有する株主は、買取請求権を行使することができます。
会社法には単元株制度というものがあり、1単元は100株となっています。そのため、100株未満の株式しか保有していない場合には、単元未満株主として、株式の買取請求をすることができるのです。
反対株主による買取請求
会社の意思決定に対して反対の意思表示を持つ株主は、買取請求権を行使することができます。
会社の意思決定に反対する株主は少数派の立場であることが多く、意思決定が賛成多数となれば、反対株主の利益を守ることができないため、このような制度が認められています。
株式買取請求権を行使できる場面
株式買取請求権については、主に以下のような場面で行使することが可能です。
組織再編
組織再編は会社の組織を大きく変更する場面のことを言います。具体的には、合併、会社分割、株式移転、株式交換などがあります。
主に組織再編により消滅する会社の株主は、株式買取請求権を行使することができます。
事業譲渡や子会社の売却
会社が事業を譲渡する場合や子会社を売却する場合、これらに反対する株主は会社に対して株式買取請求権を行使することができます。
スクイーズアウト(株式併合)
スクイーズアウトとは、複数ある株式を1つに統合することを言います。別名、株式併合とも呼ばれます。
これは投資単位を整理するという目的で行われることもありますが、少数株主の締め出し目的で行われることも多いです。
スクイーズアウトがなされると保有する株式の単位が端数になってしまうため、そのような場合には株式買取請求権が認められることになります。
譲渡制限を付す定款変更
会社は定款により株式に譲渡制限を付すことができます。
株式に譲渡制限を付した場合、株式を取引するために会社の承認が必要となり、株取引が通常の場合よりも困難となります。
そこで、株式に譲渡制限を付すことに反対している株主を保護するために、株式買取請求権が認められているのです。
株式買取請求権を行使できない場面
株式買取請求権を行使することができない場面も存在します。
反対株主としての要件を満たしていない
反対株主による株式買取請求権を行使する場合には、反対株主としての要件を満たしていることが必要です。すなわち、反対株主となるには、会社の意思決定に対して反対する旨の意思表示をする必要があります。
反対の意思表示の方法は2つあります。
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株主総会が開催される前に会社に対して反対通知を送付すること
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株主総会において会社の提案に対して反対票を投票すること
なお、株主総会の招集通知の委任状に反対の意思を表示しただけでは、反対通知として認められない場合もあるので、注意しましょう。
株式買取請求通知書の送付期限を過ぎてしまった
株式買取請求権は、組織再編などの効力が発生する日(効力発生日)の20日前から効力発生日の前日までに行使しなければなりません。
権利行使としては、株式買取請求通知書を会社に対して送付し、株主総会にて反対票を投じるという方法が一般的と言えます。
株主総会にて組織再編などの賛成決議がなされると、その効力が発生するため、株式買取請求通知書を会社に送付する場合には、当日または前日までに送付しなければならないです。
裁判所への株式買取価格決定の申立期限が過ぎてしまった
株式買取請求権を行使した後は、株主と会社との間で株式の買取価格を協議することになります。もっとも、必ずしも会社が協力的になるとは限らず、協議が調わないこともあります。
その場合、株主は裁判所に対して、価格決定の申立をすることになります。
この裁判所に対する価格決定の申立にも期限があり、その期限を過ぎると、会社の提示する価格が買取価格として決定されてしまう恐れがあります。
したがって、裁判所に買取価格決定の申立をする場合には、期限が経過しないように気を付けましょう。
反対株主が株式買取請求権を行使する際の流れ
反対株主として株式買取請求権を行使する際には、以下のような流れに従う必要があります。
発行会社からの通知・公告
組織再編などが行われる場合には、その組織再編の効力発生日の20日前までに、会社から株主に対して、株式買取請求権の通知または公告がなされます。
株主総会の招集通知に買取請求権に関する事項が記載されていることもあります。
株主による反対通知の送付及び反対票の投票
株主は、会社から株式買取請求権の通知を受け取った後から株主総会の開催日の前日までに、会社に対して議案に反対する旨の通知を行います。
その後、株主総会に出席して、議案に反対票を投じる必要があります。
株式買取請求権の行使
株主は、株式買取請求権通知書を作成して、会社に対して送付します。これは、組織再編などの効力発生日の20日前から前日までの間になされる必要があります。
株式買取価格の協議
組織再編などの効力が発生した後は、株主と会社との間で株式買取価格の公正な価格について協議を行います。協議の期間は、効力発生日から30日間となっています。
株式買取価格が合意に至った場合の流れ
協議が合意に至り、株式買取請求が認められた場合には、会社は効力発生日から60日以内に合意された価格を支払うことになります。
株式買取価格が合意に至らなかった場合の流れ
協議が合意に至らなかった場合、または協議ができなかった場合には、株主または会社は、効力発生日の翌日から60日目までに、裁判所に対して価格決定の申立をすることができます。
そして、裁判所が公正な価格を決定したら、その価格に基づき代金が支払われることになります。
譲渡制限付き株式の株式買取請求権を行使する際の流れ
株式譲渡先が存在する場合は、株式譲渡承認請求に伴う自己株買い又は指定買取人による株式買取請求権が行使可能です。
会社法により、株式譲渡制限会社が株式の譲渡承認を拒否する場合には、株主は、会社に対して、譲渡の相手方(会社又は指定買取人)を指定することを請求することができます。そして、この請求があった場合、会社は、会社又は指定買取人に、株式を買い取らせる必要があります。
なお、会社法上、株主の株式譲渡承認請求に対しては、会社は「2週間以内」に回答することが求められています。会社が株式を買い取る場合、その後「40日以内」に買取を通知することが求められます。そして、その後「20日以内」に交渉に基づき株式売買価格を決定する必要があり、その間に裁判所に対して株式売買価格決定申立を行わない場合は、簿価純資産価格にて、株式売買価格が自動的に確定するものとされています。
株式買取請求権を行使するときの注意点
株式買取請求権を行使するときは、以下の点に注意するようにしましょう。
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株式買い取り請求権の行使には2回反対する必要あり
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株式買取請求権の行使期限は効力発生日である
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株価決定申立の期間制限は60日
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反対の意思表示は正確に行う
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証拠として交渉や手続きの記録を残す
非上場株式の買取請求の依頼は法律事務所へ
非上場株式の買取請求については、専門的な知識を要するため、個人ですべて準備することは困難であると言えます。
そこで、早い段階で、M&Aについて専門的な知識を有し、かつ、法律の専門家である弁護士または法律事務所に相談することをお勧めします。
まとめ
株式買取請求権は、会社の議案に反対する株主や少数株主を保護するための制度です。
もっとも、手続きは複雑で時間も限られており、株式買取請求権を有しているのに行使できなかったということもあり得ます。
そこで、正しく権利行使するために事前に株式買取請求権に関する知識を確認しましょう。また、疑問点などがある場合には、専門の弁護士または法律事務所に相談しましょう。
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