少数株主が取れる法的手段とは?取り得る法的手段と利益を保護するための権利

非上場株式・少数株式の売却で
お困りではありませんか?

株式会社では経営陣や株主の対立をはじめ、企業内部での紛争も少なからず起きています。

なかでもよく紛争に発展するものが、経営陣および支配株主と少数株主の対立問題です。

経営権を巡り企業によっては、少数株主の締め出しを図る一方で、少数株主が経営陣を相手に訴訟を起こすケースもあります。

紛争に発展した際には、少数株主が不利な状況に置かれることも少なくありません。もっとも、近年では少数株主の保護も重視されており、取り得る法的手段も存在します。

現在、経営陣との対立に悩んでいる少数株主の方などは、ぜひ参考にしてください。

⇒非上場株式・少数株式を買い取ってもらえずにお困りの方はこちら!

 

少数株主とは?概要と直面する課題

少数株主は、会社の支配権を持たない株主を指します。
非上場会社では相続や退職などにより少数株主が生じることが多く、会社の意思決定に影響を与えにくい一方で、経営の良し悪しや支配株主の行動による不利益を受けやすい立場にあります。

ここでは、少数株主の位置づけと直面する典型的な問題について整理します。

議決権割合による株主の分類と立場

株式会社では、議決権割合によって株主の立場が大きく変わります。
一般的には、経営支配権を有する株主(支配株主)と、それ以外の株主(少数株主)に分かれます。

少数株主とは、支配株主に該当しない株主全般を指し、とくに非上場会社では創業者からの相続、従業員持株会、共同創業者の退任など、さまざまな経緯で少数株主が生まれます。

表面上の持株比率は小さくても、経営への利害関係は深いことが多く、会社運営や重要な意思決定の影響を受けやすい立場にあります。

少数株主が抱える典型的な問題

少数株主が直面しやすい課題は、構造的な性質を持っています。
とくに非上場会社では、市場流動性がないため問題が顕在化しやすく、次のようなリスクが典型例です。

  • 株式を売却したくても買い手が見つからず、資金回収が難しい

  • 役員報酬・配当・重要経営方針に意見が反映されにくい

  • 決算書以外の情報にアクセスできず、会社の実態が見えにくい

  • 相続で意図せず株主となり、相続税負担だけが残る場合がある

  • 支配株主による不利益処分(排除・低額買取など)のリスクがある

また、実際に以下のような「少数株主不利」の典型例も報告されています。

  • 支配株主と会社の間に事前合意があったことが後から発覚したケース

  • 主力事業のグループ会社への移転を迫られたと企業側が主張したケース

このような背景から、少数株主は経営判断に大きく影響できないにもかかわらず、経営の良し悪しの影響を直接受けるというアンバランスな状況に置かれがちです。

なぜ法的保護が必要なのか

企業内部の紛争、とくに支配株主と少数株主の対立は想像以上に深刻化しやすく、経営権の争い・利益配分・株式の買取価格などを巡って感情的な衝突に発展することも珍しくありません。実際、少数株主は次のような構造的弱点を抱えています。

  • 議決権では多数派に勝てない

  • 情報が不足しているため、不利益を受けやすい

  • 株式の売却先が自由に選べず、退出が難しい

このため、法制度は少数株主に対して「監視(情報取得)」「是正」「責任追及」「退出(売却・現金化)」といった複数の手段を用意しています。

紛争が起きてから慌てて対応するのではなく、平時から自分にどのような権利があるのか、会社と対立した際にどのように行動できるのか、そして最悪の場合に“どのように会社から退出できるのか”を把握しておくことが重要になります。

⇒非上場株式・譲渡制限株式を塩漬けにされてお困りの方はこちら!

 

少数株主が持つ権利について

会社法は、少数株主が不利な立場に立たされないよう、個別の権利を明確に定めています。

株主の権利は「自益権」と「共益権」に大別され、さらに行使に必要な株式数によって「単独株主権」と「少数株主権」に区分されます。

この章では、それぞれの権利の性質と実務上の重要性について説明します。

株主権の二つ(自益権と共益権)

株主には大きく分けて 自益権共益権 の2種類の権利があります。

●自益権(株主自身の利益を守る権利)

  • 配当を受け取る権利

  • 残余財産の分配を受ける権利
    など、株主個人の経済的利益に直接関わる権利です。

●共益権(会社全体の健全性を守る権利)

  • 株主総会での議決権

  • 決算書類の閲覧

  • 取締役の責任を追及する訴え
    など、会社の正しい運営やガバナンスに関わる権利です。

少数株主にとって重要なのは、この共益権によって会社の運営を監視し、必要に応じて是正できるという点です。とくに、企業との対立や議決権で不利な状況に置かれたときほど、共益権が大きな意味を持ちます。

単独株主権と少数株主権の違い

株主権には、行使のために必要な条件によって 単独株主権少数株主権 に分かれます。

●単独株主権

株式を1株でも持っていれば行使できる権利で、例としては以下のものがあります。

  • 計算書類閲覧謄写請求権

  • 株主総会決議の取消し・無効の訴え

  • 株主総会決議不存在の訴え

これらは株式数に関わらず行使できるため、少数株主にとって大きな武器になります。

●少数株主権

一定の割合以上の議決権を持つ株主にだけ認められる権利で、代表的なものには以下があります。

  • 会計帳簿閲覧謄写請求権(3%以上)

  • 株主代表訴訟の提起(上場会社は6ヶ月以上保有)

  • 株主総会招集請求権(3%以上)

  • 議案提案権(1%以上または300株以上)

これらの権利は、少数派でも会社の運営に対して強い影響力を発揮できる制度として設けられています。

●なぜこの区別が重要なのか

少数株主にとっては、

  • 最低限どの権利が1株でも行使できるのか

  • どの権利を使うために議決権割合を確保すべきか

を理解することが実務的に極めて重要です。

とくに非上場会社では、株式の売買が自由でないため、「あと少し議決権割合を確保しただけで行使できる権利」が大きな差を生むことがしばしばあります。

 

少数株主が取れる主要な法的手段

会社との関係が悪化した場合や不透明な経営が行われた場合、少数株主はただ不利益を受け続ける必要はありません。

会社法は、情報取得、意思決定の是正、経営陣の責任追及、公正な価格での退出といった複数の法的手段を用意しています。

本章では、少数株主が状況に応じて行使できる主要な制度を整理します。

会社の情報を取得する手段(計算書類・会計帳簿の閲覧謄写)

少数株主にとって最も重要な手段の一つが、会社の内部情報を確認する権利です。

●計算書類閲覧謄写請求権(誰でも行使可能)

  • 計算書類(貸借対照表・損益計算書など)の閲覧を請求できる

  • 1株でも保有していれば行使可能(単独株主権)

  • 企業側は正当な理由がなければ拒否できない

  • 拒否すると取締役に罰則(会社法976条)

これは、会社の財務状況が適切か確認するための基本的な監視手段です。

●会計帳簿閲覧謄写請求権(3%以上の少数株主権)

  • 取締役の不正や義務違反を疑う場合に行使

  • 総株主の議決権3%以上で請求可能

  • 主要簿・補助簿・契約書なども対象になり得る

  • 裁判例では資料ごとに「必要性」を判断する傾向

会社の内部情報にアクセスできるかどうかは、少数株主が会社の不正に気付き、後述する訴訟手段を取るための重要な入口になります。

意思決定を是正する手段(株主総会決議の取消し・無効など)

会社の重要な意思決定が不当である場合、少数株主は「決議そのもの」を争うことができます。

●株主総会決議の取消し(831条)

  • 招集手続きの瑕疵

  • 決議方法の瑕疵

  • 特別利害関係者の不当な議決権行使
    → これらがある場合、決議の取消しを請求できる

取消しの訴えは決議の日から3か月以内に提起する必要があります。

●株主総会決議の無効確認(830条)

  • 決議内容が法律・定款に明確に違反している場合
    → 期間制限なく提起可能

決議が法律に反する場合、そもそも有効とは扱われません。

●株主総会決議不存在確認

  • そもそも総会が開催されていないのに議事録だけ作られている

  • 重大な手続違反で、総会として成立していない
    → この場合、「決議は存在しなかった」と主張可能

これらの制度は、少数株主が会社の意思決定に対してチェックを働かせるための強力な仕組みです。

取締役等の責任を追及する手段(株主代表訴訟)

取締役が会社に損害を与える行為を行ったのに、会社が適切な責任追及を行わない場合、株主が会社に代わって訴訟を起こすことができます。

●株主代表訴訟の要点

  • 役員の善管注意義務違反・忠実義務違反が対象

  • 非公開会社なら保有期間要件なし

  • 公開会社は6か月以上株式保有が必要

  • 社内で追及しにくい不正(同族経営など)で特に有効

役員が起こした損害を会社に返還させることで、結果的に少数株主の利益も守られる制度です。

株主総会運営や業務執行をチェックする手段(検査役の選任請求)

少数株主は、会社の運営に対してより踏み込んだチェックを裁判所に求めることもできます。

●株主総会招集手続等に関する検査役選任請求

  • 招集・議決の方法に疑念がある場合に利用

  • 1%以上の議決権+6か月保有(公開会社)で行使可能

●業務執行に関する検査役選任請求

  • 取締役に不正行為や法令違反の疑いがある場合

  • 3%以上の議決権で請求可能

検査役は裁判所が選任し、会社の資料を調査し、その結果を報告します。社内では把握が難しい実態を外部の視点で明らかにできるため、非常に強い権利です。

株式を売却して退出する手段(買取請求・売買価格決定申立て)

少数株主にとって最も重要なのが、「争う」だけでなく「会社から公正な価格で退出できる」手段 です。

●反対株主の株式買取請求権

合併・会社分割・株式交換・株式移転・事業譲渡など、会社の将来を左右する重要な再編行為に「反対」した株主は、自分の株式を会社に「公正な価格」で買い取るよう請求できます。

●譲渡制限株式の買取請求・売買価格決定申立て

譲渡制限株式で会社が承認を出さない場合、会社または指定者が株式を買い取る必要があり、価格について合意できなければ裁判所が決める手続があります。

●これらの制度が重要な理由

  • 非上場株式は市場価格がないため売却に困難が多い

  • 支配株主による不当な低額買取を防げる

  • 少数株主が不利な状況から脱するための「出口」手段となる

会社との対立が深刻化した場合、「戦い続ける」ではなく公正な価格で退出するという選択肢を確保することは、実務上非常に重要です。

 

弁護士への相談が必要なケース

少数株主の権利は法律によって保護されていますが、実際には会社との交渉が進まない、情報開示を拒まれる、不当に低額の買取を提示されるなど、専門的な対応を要する場面が多くあります。

ここでは、弁護士への相談が特に必要となる典型的な状況をまとめます。

会社との交渉が進まない・拒絶されている場合

少数株主が会社に対して情報開示や株式買取を求めても、会社が応じない・回答を引き延ばす・不当に低額を提示するといったケースは珍しくありません。

とくに非上場会社では市場価格が存在しないため、株式の評価は会社側に有利に傾きやすく、支配株主との力関係がそのまま買取価格に影響することもあります。

以下のような状況は、早めに弁護士へ相談すべき典型例です:

  • 株式の買取を求めても「買わない」「そんな価値はない」と拒まれる

  • 合理的な根拠のない低額を提示される

  • 会社側からの回答が遅延・先延ばしされている

  • 決算書や会計帳簿の閲覧を不当に拒否される

交渉段階から弁護士が関与することで、会社側が真剣に協議に応じるようになり、結果として早期解決につながることも多いです。

⇒非上場株式・譲渡制限株式をしっかり売却する方法を見る!

買取価格が不当に低い・売却出口が塞がれている場合

少数株主の最も大きな悩みの一つが、株式を売りたくても売れないという状況です。

非上場株式には市場がなく、会社側が承認しなければ誰にも売却できないケースが多いため、会社を辞めても株式だけが残り、配当も少ない、相続税評価だけ高く負担が重い、といった問題が生じます。

次のような場面は、法的手続を検討すべきサインです:

  • どうしても株式を手放したいのに会社が買取を拒否

  • 会社指定の買い手が不当に低額を提示してくる

  • 株価算定の基準が不透明で説明がない

  • 譲渡制限株式として承認拒否され、出口が閉ざされている

このような場合、売買価格決定の申立てや反対株主の株式買取請求といった法的手段によって、裁判所が「公正な価格」を判断します。

経営陣の不正・法令違反が疑われる場合(内部統制が期待できないとき)

少数株主は議決権で多数派に勝てないため、内部の不正を把握しても会社内部で是正が難しいことが多くあります。

以下のような状況は、弁護士への早期相談が不可欠です:

  • 代表取締役が会社から不適切な貸付を受けている

  • 特定の株主(支配株主)だけに利益が流れる取引がある

  • 役員の私的流用・利益相反の疑い

  • 子会社・関連会社との不透明な取引

  • 重要な資産の移転や事業譲渡が不透明

このような場合は、株主代表訴訟や検査役選任請求など、株主が会社の内部統制に代わってチェックする手段が重要となります。

また、これらを行使するためには、事前の証拠収集(会計帳簿閲覧など)が不可欠なため、早めの戦略設計が必要になります。

訴訟・申立てを検討すべきタイミング

次のような状況に至った場合、会社との交渉だけでの解決は困難であり、法的手続を選択すべき段階です。

  • 話し合いが完全に止まった

  • 会社が誠実に協議する姿勢を見せない

  • 証拠が散逸しそうな状況(不正の隠蔽など)

  • 適正価格への乖離が大きく、実害が生じている

  • 会社の意思決定に重大な瑕疵がある

  • 再編行為(合併・会社分割等)で不利益を受ける恐れがある

特に、反対株主の株式買取請求には期間制限があるため、後から「やっぱり請求したい」と思っても不可逆である点には注意が必要です。

弁護士が介入すると、交渉の土俵を整え、会社側に法的リスクを認識させ、戦略的に出口(売却)を確保することが可能になります。

 

まとめ

少数株主は、議決権や情報の偏在によって不利な立場に置かれやすく、会社の方針・経営者の判断・支配株主の意向に強く影響されます。
しかし、会社法はその弱い立場を補うために、情報取得・監視・是正・責任追及・退出(売却)といった複数の法的手段を用意しています。

本記事で解説したとおり、

  • 会社の内部情報を確認する権利

  • 不当な意思決定を正す手段

  • 経営陣の責任を追及する制度

  • 公正な価格で会社から退出するための仕組み

など、少数株主が自身の権利を守るための制度は多岐にわたります。

一方で、交渉の行き詰まり・低額買取の提示・情報開示拒否・不正の疑いといった状況では、株主だけで適切に対処することは難しくなります。
そのようなときは、早い段階で弁護士などの専門家に相談することが、トラブルを最小限に抑え、公正な解決へ進むための近道です。

少数株主としてどのような権利を持ち、問題が起きた際にどの手段を選択できるのかを理解しておくことで、不利益を避け、適切な判断を行うことができます。

非上場株式・少数株式の売却で
お困りではありませんか?