株式買取業者への株式売却を弁護士法違反で無効とした判例が2件出ました!
非上場株式・少数株式を保有する株主の方から、「株式買取業者に売却してもよいか」というご相談が増えています。
結論から申し上げます。株式買取業者への売却は、お勧めできません。近時、株式買取業者による株式の譲受けそのものを弁護士法違反により無効とする裁判例が相次いでいるためです。売却したはずの取引が無効とされれば、株式は現金化できず、受け取った代金の返還を求められるおそれもあります。
本記事では、2つの裁判例の内容と、株主の方が採るべき正しい現金化の方法を解説します。
株式買取業者とは
株式買取業者とは、非上場会社の少数株主から株式を買い取り、その後、会社に対して譲渡承認請求や買取請求等を行うことを事業とする業者です。「非上場株式を現金化します」「正当な価格で一括買取」といった広告により、株式の売却先が見つからない少数株主に売却を勧誘しています。
配当もなく、売却先も見つからない株式を抱える株主にとって、一見、便利な存在に見えます。しかし、この事業の仕組みそのものが、法律上の重大な問題を含んでいます。
弁護士法72条・73条とは
弁護士法73条は、「何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない」と定めています。他人の権利を買い取ったうえで、裁判手続等を使ってその権利を実現することを事業とする行為の禁止です。
また、弁護士法72条は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事件に関する法律事務を取り扱うことを業とすることを禁じています(いわゆる非弁行為の禁止)。
株式買取業者の事業は、株主から株式を安く譲り受け、会社との間の裁判手続(売買価格決定の申立て等)を通じて高値での現金化を図り、その差額を利益とするものです。これがまさに上記の規定に抵触するのではないかが、近時、裁判所で正面から判断されました。
裁判例① 大阪高等裁判所令和6年7月12日判決
この事件では、株式買取業者が少数株主から譲渡制限株式を買い取り、会社に譲渡承認請求を行ったところ、会社側が、当該譲受けは弁護士法に違反し無効であると主張しました。
大阪高等裁判所は、当該業者の事業について、株式の実質的な価値を告げないまま株主から安値で株式を譲り受け、売買価格決定手続を利用して差額を利益とするものであると認定したうえ、このような事業活動として行われた株式の売買契約は、弁護士法73条に違反して無効であると判断しました。あわせて、このような事業は売買価格決定手続の公正かつ円滑な運営を妨げるものであり、弁護士法72条の禁止を潜脱する行為にあたるとも述べています(判例タイムズ1530号86頁)。この判決は、上告審を経て確定しています。
裁判例② 当事務所が会社側代理人として関与し、申立ての却下を得た近時の裁判例
当事務所が会社側の代理人として関与し、既に確定している近時の裁判例です(事案の特定につながるため、裁判所名等の詳細は差し控えます)。
株式買取業者が株主から譲渡制限株式を買い取り、会社に譲渡承認請求を行い、会社が承認せずに自ら買い取る旨を決議したことから、会社法144条2項に基づき売買価格の決定が申し立てられました。
裁判所は、当該業者が「非上場株式を正当な価格で一括買取、現金化します」等と広告して顧客を集めていること等の事実から、その事業は、株式の実質価格と譲渡価格との差額を事業利益とする目的で株式を譲り受け、売買価格決定手続を利用するものであり、弁護士法72条本文の禁止を潜脱する行為にあたると判断しました。そのうえで、業者と株主との間の株式売買契約は弁護士法に違反して無効であり、業者が適法に株式を取得したとは認められない以上、売買価格決定の申立ては却下する、と結論付けました。この決定も既に確定しています。
この決定のポイントは、業者の広告と権利実行の態様から事業の性質が認定されており、個別の取引でいくらで買い取ったかの立証を要していない点です。会社側にとって主張しやすく、業者側にとっては争いにくい判断枠組みといえます。
株主の方にとっての意味 業者に売却すると、こうなります
2つの裁判例を前提とすると、株式買取業者に株式を売却した場合、次の事態が生じ得ます。
第1に、売買契約自体が無効とされ得ます。無効となれば、株式はあなたのものに戻り、受け取った売買代金は業者に返還しなければならなくなります。
第2に、業者が会社との間で進めていた手続(譲渡承認請求、売買価格決定の申立て等)は、却下等により実を結びません。つまり、業者を通じた現金化は実現しません。
第3に、その間に費やした時間は戻りません。相続税の納税資金に充てる予定であった場合など、時間の制約がある方にとっては、致命的な遠回りになりかねません。
「業者に売れば手っ取り早く現金化できる」という前提そのものが、すでに成り立たなくなっているのです。
それでは、どうやって現金化すればよいのか
株式買取業者を介さず、株主ご本人が、会社に対して直接、法律上の手続を進める方法があります。
具体的には、会社に対する任意の買取交渉、譲渡承認請求と、承認されない場合の会社又は指定買取人による買取り・売買価格決定の申立て(会社法136条以下、144条)、その他の会社法上の手続です。これらは株主ご本人の権利として認められた正当な手続であり、弁護士がその代理人となることには、当然ながら何の問題もありません。
むしろ、上記の裁判例は、「株式を第三者に売り渡してから現金化する」という迂回路を閉ざす一方で、「株主本人が会社に対して正面から請求する」という本来の道の価値を高めたものといえます。
当事務所は、この分野を長年取り扱い、株主側・会社側双方の実務を熟知しています。売買価格決定手続における価格の算定は、相続税評価額とは基準が異なり、適切に主張立証すれば大きな差が生じ得る領域です。
まとめ
株式買取業者による株式の譲受けを弁護士法違反により無効とする裁判例が相次いでいます。業者への売却は、現金化できないうえに代金の返還を求められるおそれのある、危険な選択肢となりました。
非上場株式・少数株式の現金化をお考えの方は、業者に売却する前に、会社に対する正面からの手続をご検討ください。ご相談は当事務所までお寄せください。



