少数株主が知っておくべき株式譲渡制限のある会社の株式譲渡承認の流れと注意点
お困りではありませんか?

非公開会社の株式を持つ少数株主の中には、「株式を手放したいのに、会社の承認がないと動かせない」「譲渡承認請求と言われても、何をどうすればよいか分からない」と不安を抱えている方が少なくありません。
とくに、会社から提示された条件が本当に妥当なのか、株式の譲渡承認がされなかったときに他にどんな選択肢があるのかは、自分だけでは判断しづらいところです。
本記事では、譲渡制限株式の株式譲渡承認の基本的な仕組みから、譲渡承認請求の流れ・書き方・会社が承認しない場合の対応、そして少数株主が押さえておきたいチェックポイントまでを、できるだけ分かりやすく整理しました。
ご自身の状況と照らし合わせながら、「今、何をしておくべきか」を考える手がかりとしてご活用ください。
株式譲渡承認とは何か
非公開会社(いわゆるオーナー会社・同族会社など)の少数株主は、自分の持株を自由に売却できない場面が少なくありません。その中心にある仕組みが「譲渡制限株式」と「株式譲渡承認」です。
ここでは、少数株主の立場から押さえておきたい基本を整理します。
譲渡制限株式・株式譲渡承認の基礎知識
少数株主の方からすると、「そもそも自分の株は自由に売っていいのか」「会社の承認とは何を指しているのか」が分かりにくいところです。まずは用語と全体像を確認します。
本記事では、発行するすべての株式に譲渡制限が付されている株式会社、いわゆる非公開会社(譲渡制限会社)を前提に説明します。こうした会社では、株式を譲渡によって取得する際に会社の承認が必要とされることが多く、その前提を踏まえて株式譲渡承認の流れを確認していきます。
譲渡制限株式とは?
「譲渡制限株式」とは、会社法上、株式を譲渡によって取得する場合に会社の承認を要する旨が株式の内容として定められている株式をいいます。会社の定款で「株式を第三者に譲渡するには会社の承認が必要である」といった条文を置くことで、その会社の株式は譲渡制限株式になります。
会社法では、株式の内容や株式の譲渡について、定款で一定の制限を設けることができ、その代表的なものがこの譲渡制限です。
つまり、譲渡制限株式は、「株主の自由な売却」にブレーキをかける一方で、「会社が株主構成をコントロールするための仕組み」と捉えると理解しやすくなります。
公開会社との違いと「自由に売れない」仕組み
証券取引所に上場している会社や、定款で譲渡制限を設けていない会社(公開会社)では、株式の譲渡は原則として自由です。株主は市場や相対取引で、会社の承認を得ずに株式を売買できます。
これに対して、多くの中小企業・同族会社は、次のような理由から譲渡制限株式を採用しています。
- 望ましくない第三者に株を取得されるのを防ぎたい
- 一族や創業者グループで株主構成を維持したい
- 経営権の安定を図りたい
その結果、非公開会社の少数株主は、次のような制約を受けることになります。
- 自分だけの判断で第三者に株式を売ることはできても、その第三者が会社から株主として扱われるためには会社の承認と名義書換が必要になります。
- 相手方が決まっている場合でも、会社が承認せず名義書換に応じないかぎり、その第三者は会社に対して配当や議決権を主張できません。
この「自由に売れない」という点が、非公開会社の少数株主ならではの悩みにつながります。
株式譲渡承認が必要になるのはどんなときか
譲渡制限株式を保有している場合、次のような場面で「株式譲渡承認」が問題になります。
- 親族や第三者に、自分の保有株式を売りたい・贈与したいとき
- 事業承継の一環として、後継者や関連会社に株式を移したいとき
- 退職や持株会の解散などをきっかけに、第三者への売却や会社・主要株主への買取りを交渉したいとき
なお、退職や持株会の解散そのものを理由として、当然に会社に株式の買取りを請求できる一般的な権利があるわけではありません。株主が承認請求とあわせて買取りを求めている場合などに、会社法上の買取りの仕組みが問題になります。
このような場面では、株主が「株式譲渡承認請求書」などの書面で、会社に対し「誰に・どの株式を・どのような条件で譲渡したいか」を申し出るのが一般的です。 会社は、定款や会社法に基づいて取締役会や株主総会で承認・不承認を決定し、その結果を株主に通知します。
譲渡制限株式の株式譲渡承認の流れ
株式の譲渡承認の手続きは、個々の条文だけを見ていると分かりにくくなりがちです。
まずは、株式の譲渡承認請求をしてから会社の判断が出て、その後に株式の移転や買取りが行われるまでの全体像を押さえておくと、自分が今どの段階にいるのかを把握しやすくなります。
株式譲渡承認請求から決定・通知までの流れ
この段階で特に重要なのは、「会社がいつまでに承認・不承認を決めなければならないか」という点です。
会社法では、株主が株式の譲渡承認請求をしたにもかかわらず、会社が一定期間何もしない場合には、承認したものとみなされる仕組みが用意されています。
株式の譲渡承認請求から2週間以内の決定と「みなし承認」のルール
株主が会社に対して譲渡承認請求を行うと、会社は、原則として会社がその請求を受け取った日(請求の日)から2週間以内に承認するか不承認とするかを決め、その内容を株主に通知しなければならないとされています。定款でこれより短い期間を定めている会社もあります。
この期間内に株主への通知が行われなかった場合には、法律上は会社が株式の譲渡を承認したものとみなされます。これが「みなし承認」です。
少数株主の立場からは、請求書を送った日付や会社に到達した日付を、郵便の控えやメールの記録などで明確にしておくことが大切です。
会社からの連絡がないときに、いつ「みなし承認」と評価できるのかを判断する際の拠り所になるからです。また、みなし承認が成立したと考えられる場合でも、すぐに手続きを進めてよいのか、会社とどのように話をするかは慎重に検討する必要があります。
取締役会・株主総会による株式譲渡の承認/不承認の決定プロセス
会社がどのような機関で株式譲渡の承認・不承認を決めるかは、定款の内容によって変わります。取締役会設置会社であれば取締役会が決定し、取締役会を置いていない会社では株主総会が決定機関になっていることが多いです。
一般的なイメージとしては、会社が譲渡承認請求書を受け取ったあと、定款に従って取締役会や株主総会の日程を調整し、その場で承認するかどうかを話し合い、決議を行います。そして、その結果を株主に文書やメールなどで通知します。
少数株主としては、自分の会社の定款でどの機関が決定権を持っているのか、いつごろ会議が開かれるのか、どのような方法で通知が来るのかを確認しておくと、連絡が遅れていると感じたときにも落ち着いて状況を判断しやすくなります。
会社が株式譲渡を承認する場合の流れ
会社が譲渡を承認してくれたとしても、それで手続きが終わりというわけではありません。株式譲渡の承認のあとには、株式譲渡契約の締結や代金の支払い、株主名簿の名義書換といった作業が続きます。
株式譲渡契約の締結と押さえておきたい条項
会社の承認が得られたら、譲渡人(売り手)と譲受人(買い手)のあいだで株式譲渡契約書を交わすのが一般的です。
ここでは、どの株式を、いくらで、いつ支払い、いつ株式を引き渡すのかといった基本的な条件を明確にしておく必要があります。株券が発行されている場合には、株券の扱いも忘れずに取り決めます。
代金支払のタイミングと株式の移転時期の関係は、トラブルになりやすい部分です。支払いが済んでいないのに株式の名義だけ変わってしまう、あるいはその逆といった事態を防ぐためにも、契約書の段階で双方の認識をそろえておくことが重要です。
株主名簿の書換請求と株主名簿記載事項証明書
株式譲渡契約がまとまり、代金の支払いと株式の引渡しが行われても、会社の株主名簿が書き換えられるまでは、会社から見た株主は元のままです。
配当金の支払いを受けたり、株主総会で議決権を行使したりするためには、株主名簿に新しい株主として記載してもらう必要があります。
通常は、譲受人が会社に対して名義書換を申し出て、会社が承認の有無や必要書類を確認したうえで、株主名簿を書き換えます。その後、必要に応じて「株主名簿記載事項証明書」が発行されることもあります。
これは、誰が何株を保有しているかについて、会社がどのように記録しているかを証明する書面で、金融機関や他の取引先とのやり取りで求められる場合があります。
会社が株式譲渡承認をしない場合の流れ
会社が「この相手への株式の譲渡は認めない」と判断するケースもあります。
そのような場合でも、株主が譲渡承認の請求とあわせて「株式譲渡の承認をしないときは会社または第三者に買い取ってほしい」と求めているときには、会社や指定された第三者が株式を買い取る仕組みが用意されています。
会社または指定買取人による買取りの決定
会社が株式譲渡の承認をしないと決めたとき、一定の条件のもとで、会社自身が株式を買い取るか、あるいは会社が指定した買取人が株式を引き受けることになります。
これは、会社としては望まない第三者に株を持たれないようにしつつ、株主には現金化の機会を与えるための折衷的な仕組みです。
実際には、会社が「承認しない」という決定を行い、そのうえで、誰が株式を買い取るのかを決め、株主に対して通知を出します。この時点で、株式の買い取り価格や支払方法など、条件面の問題も浮かび上がります。
少数株主が「提示された株式の価格が低すぎるのではないか」と感じることも少なくありません。
売買代金と株券の供託・決済までのステップ
会社や指定買取人が株式を買い取ることになった場合、会社法では、一定の金額を供託所に預ける「供託」という手続を前提に売買代金の支払いと株式の移転を進める枠組みが定められています。
会社はまず、基準となる1株当たりの純資産額に対象株式数を掛けた金額などを供託所に預け、その旨を証明する書面を株主に交付します。
株券が発行されている会社では、株主はその証明書を受け取ってから一定期間内に株券を供託しなければならないとされており、期限までに供託しないと会社が株式の売買を取り消すことができる場合があります。
株券を発行していない会社の場合でも、代金を供託することで会社が支払義務を果たしたものと扱われる点は同様です。
また、株主が代金の受け取りに応じない場合に会社側が代金を供託所に預ける、株主が株券を会社に渡さず供託所に預けるといった形で、供託がトラブル回避の役割を果たすこともあります。
いずれの場合でも、通知書や供託の関係書類は後の争いに備えてきちんと保管しておくことが大切です。どの時点で誰がどのような行動をとったのかが後から問題になることがあるためです。
株式譲渡承認請求書の書き方と提出方法
株式譲渡承認の手続は、最初の一歩である「株式譲渡承認請求書」の内容と出し方が重要になります。ここでの不備が後の段階まで影響することもあるため、基本的な書き方と提出方法を整理しておくことが安心につながります。
株式譲渡承認請求書に必ず書くべき事項
株式譲渡承認請求書は、会社に対して「誰に、どの株式を、どのような条件で譲渡したいか」を伝えるための書面です。会社が判断しやすい形で情報を示すことが、手続を円滑に進めるうえで重要です。
最低限、次の内容は漏れなく記載します。
- 株式の譲渡人と譲受人の氏名と住所
- 譲渡したい株式の種類と株数
- 株式譲渡予定日と譲渡代金の金額
- 代金の支払方法と支払予定日
会社名と代表取締役名の書き方も丁寧に整えます。「株式会社◯◯ 代表取締役 △△ 様」のように、登記上の正式名称に基づき記載します。社名の略称や肩書の省略があると、形式面で余計な議論を呼ぶおそれがあるため、定款や登記事項証明書などで確認しておくと安心です。
株式譲渡承認請求書の押印・添付書類・送付方法
株式承認請求書の署名や押印、添付書類、会社への届け方も、誤解のない形で整えておく必要があります。記載内容が正しくても、会社側に届いていなかったと扱われると、手続が前に進みません。
押印については、株主本人の署名に合わせて印鑑を押すのが一般的です。定款や社内規程で特段の定めがない限り、法律上必ず実印である必要まではありませんが、相手方との関係や扱われ方を踏まえ、社印や実印を用いる場面もあります。会社側から押印の形式について指示がある場合には、それに合わせる方が無用の争いを避けやすくなります。
添付書類としては、株主本人であることや、譲渡内容の前提を確認できる資料を用意します。
例えば、本人確認書類の写しや、すでに相手方と取り交わした株式譲渡契約書の写しなどです。会社から求められている書式や添付資料がある場合には、それに従うことが優先されます。
送付方法は、後から「会社に届いていない」と言われないようにすることがポイントです。内容証明郵便や配達記録付き郵便を用いると、発送日や到達日を客観的に示しやすくなります。メールでの提出を求められた場合でも、その後に原本の郵送を求められることがあるため、やり取りのルールをあらかじめ確認しておくと混乱を防げます。
株式譲渡承認請求はいつまでにすべきか・タイミングの考え方
株式の譲渡承認請求をいつ行うかは、会社との関係や、株式譲渡の背景事情によっても変わりますが、共通して言えるのは「手続の全体像を踏まえた余裕のあるタイミングで出すべき」という点です。
会社の判断期限や、その後の買取りの期限も視野に入れて考える必要があります。
一般に、第三者に株式を譲渡する場合には、契約書を締結する前に承認を得る方法と、契約書を締結したうえで承認を求める方法が考えられます。前者は、承認が得られなかった場合のリスクを抑えやすく、後者は当事者間の合意内容を確定させてから会社に申し出る形になります。どちらを選ぶかは、相手との関係や会社の対応姿勢によって判断する場面が多いです。
贈与や退職に伴う株式の譲渡では、当事者の感情や他の相続人・株主との関係も絡みます。会社の決算時期や株主総会の開催時期に近いタイミングでは、会社側の事務負担も考慮しつつ、早めに相談や打診を行う方が混乱を避けやすくなります。相続による株式の取得は譲渡とは異なる扱いになるため、承認の要否や会社の対応は別の仕組み(相続人等に対する売渡請求など)が問題になります。
株式承認請求を遅らせると、その後の交渉や価格調整に使える時間が短くなります。会社からの回答が想定より遅れている場合に備え、いつまでに請求書を出しておくと安全かを、あらかじめ逆算しておくことが重要です。
会社が株式譲渡承認をしない場合の対応
会社が「この相手への譲渡は認めない」と判断したからといって、すべての道が閉ざされるわけではありません。
会社や、会社が指定した第三者があなたの株式を買い取るルールが用意されており、その中でどのように自分の利益を守るかが大切になります。
会社または指定買取人による株式の買取りの仕組み
株主が譲渡承認の請求とあわせて「承認しないときは会社または指定買取人に買い取ってほしい」と請求している場合に、会社が株式の譲渡を承認しないと決めると、一定の条件のもとで会社自身か「指定買取人」と呼ばれる第三者があなたの株式を買い取ることになります。
これは、会社としては望まない相手に株を持たせないようにしつつ、株主には現金化の機会を残すための制度です。
通常は、会社が譲渡承認請求を受けてから、不承認の決定とあわせて「会社が買い取るのか」「指定買取人が買い取るのか」を決め、その内容を株主に通知します。
会社が株式譲渡を不承認と通知したあと、法律で定められた期間内に自社で買い取る旨の通知をしなかったり、指定買取人が期限までに買取りの意思を示さなかったりした場合には、結果的に会社が株式譲渡を承認したものとみなされる場面もあります。
会社からの通知の有無や日付は、こうした「みなし承認」が成立するかどうかを判断するうえでも重要な手掛かりになります。
通知には、誰が買い取るのかに加えて、「いくらで」「いつまでに」買い取るのかといった条件も示されます。通知書は後で重要な証拠になるため、原本やメールを必ず保管しておくべきです。
こうした動きは、通知書や供託書の控えから把握できるので、一つひとつ確認しながら進めることが重要です。
買取価格が低すぎると感じたときの選択肢
会社や指定買取人から提示された価格に、少数株主が納得できないケースは珍しくありません。
「この金額では、とても株式の価値を反映しているとは思えない」という感覚を持つ方も多く、その場合にどう動けるかを知っておくことが大切です。
まず、会社が株式の価格をどのように算定したのかを確認します。決算書の数値をもとにした評価なのか、将来の収益性を織り込んでいるのか、あるいは単に帳簿価額を当てはめただけなのかによって、妥当性の評価は変わってきます。
そのうえで、会社に対し、株式の評価方法の説明を求めたり、自分側でも税理士や弁護士などに相談して「適正と思われるレンジ」を把握したりすることで、交渉の材料を集めていきます。
交渉しても折り合いがつかない場合には、裁判所に対して株式売買価格決定の申立てを行える場面があります。これは、会社から株式の買取通知があった日から一定期間内に会社または株主が裁判所に申し立てる手続で、裁判所が会社の財務状況や業績などを踏まえて客観的な価格を決めます。
申立てができる期間は原則として20日と短いため、利用するかどうかを検討する場合は早めに専門家に相談することが重要です。時間や費用、会社との関係への影響も考慮したうえで、株式売買価格決定の申立てを行うかどうかを判断する必要があります。
少数株主が押さえておきたいチェックリスト
譲渡制限株式の譲渡で大事なのは、「ここだけは外さない」というポイントを押さえておくことです。
株式譲渡承認請求の前に確認しておきたいポイント
株式承認請求書を書く前に、次の3つだけは必ず確認しておきましょう。
① 定款の内容を確認する
- 「株式の譲渡制限」に関する条文を読む
- 株式譲渡の承認が必要な相手の範囲(親族も含まれるかなど)
- 株式譲渡の承認機関が「取締役会」か「株主総会」か
② 自分の株式の状況を確認する
- 株主名簿に自分の氏名・住所・株数が正しく記載されているか
- 自分の持株が譲渡制限株式かどうか
- 株券発行会社の場合、株券の有無・所在
③ 譲受人(買い手候補)の情報を整理する
- 親族か、外部の第三者か、会社の関係者か
- 会社から見て「受け入れやすい相手」かどうか
- 反社会的勢力などの疑いが生じる事情がないか
この3点を押さえてから株式承認請求書を作成すると、会社からの質問にも落ち着いて対応しやすくなります。
株式譲渡の承認・不承認の通知を受けた後にやるべきこと
会社から通知が届いたら、まずは「何が書いてあるか」と「いつまでか」をチェックすることが大切です。
共通してやること
- 通知書をよく読み、日付と内容をメモする
- 通知書の原本・メール・封筒を保管する
- 不明点があれば、感情的になる前に落ち着いて質問する
承認された場合に確認すること
- 株式譲渡契約をいつまでにまとめるか
- 代金の支払日と株式の移転時期をどう設定するか
- 株主名簿の書換をどのタイミングで会社に請求するか
不承認+買取りの場合に確認すること
- 誰が買い取るのか(会社か指定買取人か)
- 買取価格と支払方法に納得できるか
- 価格や条件に異議を述べたり、価格決定を申し立てたりできる期限がいつまでか
やり取りの記録に関するチェック
- 重要な話は、電話だけで終わらせずメールや書面で確認する
- 送受信した書類・メールを一つのフォルダにまとめて保管する
「いつまでに」「何をしないといけないか」を書き出しておくだけでも、後で慌てるリスクを減らせます。
自分で対応できる範囲と専門家に任せた方がよい範囲
すべてを自分で抱え込む必要はありませんが、どこから先を一人で進めると危ないかをイメージしておくことが大切です。
自分でも対応しやすい場面の目安
- 定款や株主名簿の内容を確認する
- 基本的な株式譲渡承認請求書の作成・提出
- 会社から求められた書式に沿って、必要事項を埋める
専門家に相談を検討した方がよい場面の目安
- 会社の提示する株式の買取価格に大きな違和感がある
- 会社の対応が曖昧で、先延ばし・放置されている印象が強い
- 他の株主や親族との関係がこじれ始めている
- 「どう動くのが自分にとって一番得か」が自分では判断しにくい
専門家に任せるべき可能性が高い場面の目安
- 裁判所への株式売買価格決定の申立てを検討したいとき
- 調停・訴訟など、裁判手続の話が出ているとき
- 会社との関係悪化が避けられず、感情的な対立が表面化しているとき
「ここまでは自分で頑張る」「ここから先は専門家と一緒に考える」という線引きを早めに決めておくと、 後から「もっと早く相談しておけばよかった」と感じる場面を減らしやすくなります。
早めに弁護士に相談した方がよいサイン
「この程度のことでも弁護士に相談してよいのか」と迷われる方も多いですが、次のような状況が見られる場合には、早めに専門家の意見を聞いておく価値が高いといえます。
会社からの回答が曖昧で、いつまで経っても話が前に進まないと感じる場合は、期限の管理や、会社が本当に義務を果たしているかどうかを確認する必要があります。返事を先延ばしにされているうちに、気づかないうちに重要な期間が過ぎてしまうと、取り返しがつかない不利益につながるおそれもあります。
また、会社や他の株主との関係が目に見えて悪化し始めている場合も、注意が必要です。感情的なやり取りが増えてくると、冷静な話し合いが難しくなり、当初の目的から外れた争いに発展することがあります。第三者である弁護士が間に入ることで、話題を整理し、「今、何を優先すべきか」を見失わないようにすることができます。
さらに、会社から提示された株式の買取価格に強い違和感がある場合や、「本当にこれが適正なのか」という疑問が頭から離れない場合には、一度専門家の視点で状況を見てもらうことをおすすめします。早い段階で相談しておくことで、選択肢を広く残したまま、今後の方針を決めやすくなります。
譲渡制限株式でお困りならご相談ください
譲渡制限株式の株式譲渡承認は難しく見えますが、少数株主の方が押さえるべきポイントは次の3つに絞れます。
1つ目は、手続きの流れと期限を把握することです。
譲渡承認請求の日付、会社の決定・通知の期限、買取りや価格決定の申立てができる期間など、いくつか重要なタイミングがあります。「いつ・何をするか」をカレンダーに書き出しておくことで、致命的な期限のミスを避けやすくなります。
2つ目は、承認された場合とされなかった場合の両方のシナリオを持っておくことです。
承認されれば、譲渡契約・代金の受け渡し・名義書換という流れになりますし、不承認の場合でも、会社や指定買取人による買取りや、価格への不服があるときの交渉・価格決定の申立てといった道があり得ます。「承認されなかったら終わり」と思い込まず、次の一手をあらかじめイメージしておくことが大切です。
3つ目は、一人で抱え込まず、早めに専門家の力を借りることです。
会社との力関係や親族との関係が絡む問題は、感情的なしこりが生まれやすく、自分だけで判断しているうちに選択肢を狭めてしまうことがあります。定款の内容や会社の説明に違和感がある、買取価格が本当に妥当なのか不安がある、対応を間違えると関係がこじれそうだ。このような不安を抱えたときは、早い段階で弁護士に相談することで、冷静に状況を整理しやすくなります。
弁護士法人M&A総合法律事務所は、非上場株式の売却や少数株主のご相談を日常的に扱っています。
「自分のケースでも相談してよいのか」「どの選択肢が現実的なのか」を知りたい段階でも構いませんので、まずは一度ご相談いただき、今後の進め方について一緒に考えていければと思います。
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本記事で紹介している内容は、執筆時点の法令や通達等を前提とした一般的な情報提供であり、個別の事件についての法的助言や税務アドバイスではありません。実際に非上場株式の譲渡を検討する際には、必ず最新の法令や税制、具体的な事情を踏まえて、弁護士や税理士などの専門家に相談したうえで判断してください。
お困りではありませんか?



