ここでは、非上場株式・少数株式(譲渡制限株式)を「売却できない」状態にある少数株主の皆様に向けて、
会社法上の「株式譲渡承認請求」および「株式買取請求」により、出口(売却・換価)を作る方法を、
手続の流れに沿って解説します。
1.非上場株式・少数株式の売却方法とその流れ
非上場株式・少数株式・譲渡制限株式は、会社法上の「株式譲渡承認請求」および「株式買取請求」を起点として、適正な対価で換価するルートを設計できます。
以下では、全体像(図)→各ステップの要点、の順に整理します。
なお、次の2つの図は説明内容が同一です。
鳥観図は①→⑥の順番で、流れ図は上から下に沿ってご確認ください。
非上場株式・少数株式の売却方法の鳥観図

非上場株式・少数株式の売却方法の流れ図

「会社が取り合わない」「著しく低い評価を提示された」「相続で取得したが換価できない」など、典型的な場面は手続の入口が共通します。
個別の手続選択と優先順位は、事実関係と資料状況を前提に整理します。
2.非上場株式・少数株式の株式譲渡承認請求
非上場会社の譲渡制限株式を第三者へ譲渡する場合、通常は、会社に対して株式譲渡承認請求を行い、譲渡承認機関の決定を得る必要があります(上記図①)。
この段階で重要なのは、「誰に、いくらで、どの株式を譲渡するのか」を特定して請求する点です(請求の形式次第で後続手続の整理が難しくなることがあります)。

3.株式譲渡承認請求の承認または拒否【2週間以内】
株式譲渡承認請求を受けた会社は、取締役会又は株主総会などの譲渡承認機関により、譲渡を承認するか否かを決定し、請求者に通知します(上記図②)。
このとき、会社が請求を受けた日から2週間以内に通知がなされない場合は、株式譲渡を承認したものとみなされます(みなし承認)。

2週間は「目安」ではなく手続期限です。
会社側の対応状況により、後続の手続設計(買取・価格・交渉方針)が変わります。
4.株式譲渡承認された場合のその後の流れ
譲渡が承認された場合、譲渡人(株主)と譲受人(譲渡先)との間で、株式譲渡契約書を締結し、契約条件に従って株式を移転します。
もっとも、実務上は、譲渡価格、表明保証、譲渡実行日、対価支払方法など、契約条件の調整が必要となることが多く、事実関係と資料状況を前提に条件設計を行うことになります。
一方で、譲渡が不承認となった場合には、株式買取請求を含む会社法上の手続が問題となります。
当該ルートを含め、初回相談で実行可能な手続と当面の対応方針を整理します。
5.株式譲渡承認が拒否された場合の株式買取請求
株式譲渡承認請求に対し、会社の譲渡承認機関が
株式譲渡を不承認とした場合であっても、
少数株主は会社法上の「株式買取請求」により、
売却・換価の出口を確保することができます(上記図③)。
この局面は、40日・10日・20日という複数の法定期限が連続し、
期限管理の巧拙が結果を左右します。
弁護士法人M&A総合法律事務所では、期限管理を含め、手続を代理して一貫して実行します。
5-1.株式買取通知【不承認通知日から40日以内】
株式譲渡が不承認となった場合、会社は、
①自社で株式を買い取るか、②指定買取人を指定するか
を決定する必要があります。
そして、会社が自社で買い取る場合には、
株式譲渡不承認通知日から40日以内に、
供託を実施したうえで、供託証明書を交付し、買い取る旨を通知
しなければなりません(上記図③)。

もし、会社がこの40日以内に所要の通知・供託を行わなかった場合、
結果として株式譲渡が承認されたものとみなされる可能性
があります(いわゆる「みなし承認」)。
そのため実務上は、不承認通知日を起算点として、40日の期限を厳格に管理
することが不可欠です。
5-2.供託【不承認通知日から40日以内】(会社が自社で買い取る場合)
会社が自社で株式を買い取る場合、
上記の株式買取通知と併せて、
簿価純資産価格を基礎とする供託
が行われます。
もっとも、この供託金額は、
最終的な株式売買価格を確定させるものではありません。
後述のとおり、株式売買価格は、
協議又は裁判所の価格決定により確定します。

5-3.指定買取人が買い取る場合の株式買取通知【指定決定日から10日以内】
会社が指定買取人を指定した場合には、
指定買取人自身が株主に対し、
株式を買い取る旨を通知します。
この通知は、
指定買取人が指定された日から10日以内
に行われなければなりません。
もし、指定買取人が10日以内に通知を行わなかった場合には、
会社が株式譲渡を承認したものとみなされる可能性
があります(いわゆる「みなし承認」)。
したがって、ここでは
「不承認通知日」ではなく「指定買取人の指定日」
を起算点として期限管理を行う必要があります。
5-4.株式買取価格の協議【株式買取通知日から20日以内】
会社又は指定買取人から株式買取通知がなされた後は、
株式売買価格(株式買取価格)
について協議を行います(上記図④)。
この協議は、
株式買取通知日から20日以内
に行う必要があります。

実務上、協議が短期間で整うことは少なく、
期限内に裁判所の価格決定手続へ移行するか否か
の判断が重要になります。
なお、20日以内に価格決定申立てが行われない場合には、
簿価純資産価格を基礎とする価格で確定する構造
となり得るため、期限徒過は重大な不利益につながります。
5-5.株式売買価格決定申立て【株式買取通知日から20日以内】
株式売買価格が協議で決まらない場合、
当事者は株式売買価格決定申立て
により、裁判所に価格決定を求めることができます(上記図⑥)。
この申立ては、
株主側・会社側・指定買取人側のいずれからでも可能です。

5-6.株式売買価格決定申立事件における進め方(主張立証)
株式売買価格決定申立事件では、
裁判所が最終的に株式売買価格を決定しますが、
裁判所が自動的に適切な価格を算出してくれるわけではありません。
当事者及び代理人弁護士が、
株式価値の前提事実と
株式価値評価の方法
について、主張立証を尽くす必要があります。

この局面では、
評価手法の選択だけでなく、
どの事実を、どの資料で立証するか
が結果を左右します。
弁護士法人M&A総合法律事務所では、
期限管理・供託の適法性確認・協議方針の設計・申立判断・主張立証資料の整備
までを、代理して一貫対応します。
重要(ご相談前に知っておいてください)
期限管理や手続を、ご自身で判断・実行する必要はありません。
資料が揃っていない段階でも問題ありません。
弁護士法人M&A総合法律事務所が、会社法上の手続を代理して実行し、適切な換価の実現を目指します。
ここまでのとおり、株式買取請求の局面は、期限・通知・供託・申立てが連続する手続です。
次に重要となるのは、「どの段階で、何を判断し、どこから専門家が介入すべきか」という点です。
6.株式買取請求における実務上の判断ポイントと弁護士の関与場面
株式買取請求は、会社法上の制度としては条文構造が明確である一方、
実務では「判断のタイミング」と「対応の順序」によって、
結果に大きな差が生じやすい手続です。
特に、次のような局面では、事後的な修正が困難となることがあります。
- 会社側の通知や供託が、法定期限を徒過している可能性があるにもかかわらず、見過ごしてしまった場合
- 簿価純資産価格が当然に最終価格になると誤解したまま、協議や申立てを行わなかった場合
- 株式売買価格決定申立ての要否を検討しないまま、20日の期限を経過してしまった場合
これらは、制度を知らなかったこと自体よりも、「確認しなかったこと」により生じる不利益です。
6-1.弁護士が関与すべき典型的なタイミング
実務上、弁護士が関与するタイミングは、必ずしも
「会社と完全に対立してから」である必要はありません。
むしろ、次の段階での関与が合理的です。
- 株式譲渡承認が拒否され、今後の流れが見えなくなった段階
- 会社から供託や通知があったが、その適法性や意味が分からない段階
- 株式売買価格の協議に入る前後で、価格の考え方に疑問を感じた段階
この段階で、期限・起算点・選択肢を整理しておくことにより、
その後の協議・申立て・和解のいずれに進む場合でも、
不利な立場に立たされるリスクを抑えることができます。
6-2.弁護士法人M&A総合法律事務所の関与範囲と実務対応の特徴
弁護士法人M&A総合法律事務所では、株式買取請求に関し、
単に手続の説明や助言を行うのではなく、
会社法上の手続を「代理して実行する立場」で関与します。
- 各期限の起算点・徒過有無の整理
- 会社又は指定買取人の通知・供託の適法性確認
- 株式売買価格協議に向けた争点整理
- 株式売買価格決定申立ての要否判断と実行
- 主張立証資料の整理および裁判所対応
また、裁判所の決定に至る前に和解を目指す場合であっても、
価格決定申立てを見据えた構造整理を前提とすることで、
現実的かつ合理的な解決を図ります。
ご相談の段階について
結論が出ていない段階でも問題ありません。
資料が揃っていなくても構いません。
現在の状況を前提に、会社法上どの手続を、どの順序で実行すべきかを整理します。


