株式譲渡承認請求の方法とは?手続きの流れや注意点について!

非上場株式・少数株式の売却で
お困りではありませんか?

株式を譲渡した場合、株式譲渡承認請求をすることがあります。

もっとも、株式譲渡承認請求と言っても、具体的には何をすべきなのでしょうか。

この記事では、株式譲渡承認請求について、手続きの流れや注意点などを詳細に解説していきます。

株式譲渡承認請求とは

非上場株式・少数株式を譲渡するためには、会社から譲渡に関する承認を取得する必要があります。

株式は、原則として当事者間で自由に譲渡することができます。

もっとも、株式の種類によっては、譲渡する際に、会社から譲渡に関する承認を取得しなければなりません。たとえば、非上場株式や少数株式の場合がこれにあたります。

  • 非上場株式:証券取引所に上場されていない株式で、一般の投資家は自由に取引できないもの
  • 少数株式:議決権の過半数を満たない数の株式

非上場株式や少数株式については、株式自体に譲渡制限が付されている場合があるため、株式譲渡の際に会社による承認を得る必要があるのです。

そして、株式譲渡承認請求をするためには、いくつかの手続を経る必要があります。

そこで、以下では、株式譲渡承認請求をする方法や手続きの流れ、注意点などを解説します。

株式譲渡承認を要する会社とは

株式譲渡には、会社の承認を要するものと承認を要しないものが存在します。

株式譲渡承認を要する会社には、以下のような特徴があります。

  • 非上場会社である
  • 非公開会社である
  • 株式に譲渡制限を付している

非上場会社とは証券取引所に上場していない会社を言います。

非公開会社とは発行する株式に譲渡制限を付けている会社を言います。

いずれの会社も、株式に譲渡制限を付している場合があります。これは、株主が経営権を左右する存在であり、誰を株主にするのかを会社が決定する必要があるからです。

株式譲渡承認請求権者

株式譲渡の当事者には、保有する株式を譲渡しようとする株主(株式の譲渡人)と、株式を譲り受けようとする株式取得者(株式の譲受人)がいます。

このうち、株式の譲渡人は、株式を譲渡しようとしているのであり、原則として株式譲渡承認を請求することができます。また、実務でも株式譲渡人が請求をするのが一般的です。

他方、株式の譲受人についても、株式譲渡承認請求を行うことができます(会社法137条1項)。この場合、譲渡承認請求については、株式の譲渡人たる株主と共同で行う必要があります。

したがって、株式譲渡承認請求を行う場合、①株主である譲渡人が、株式譲渡の事前に譲渡承認請求することができるのみならず、②株式から譲渡を受けた株式取得者が、株式譲渡を受けたのち、事後的に、譲渡承認請求をすることもできるのです。

株式譲渡承認請求の方法・手続きの流れ

株式譲渡承認請求の手続きは、以下のような流れで行われます。

  • 株主による株式譲渡承認請求
  • 譲渡承認機関による譲渡承認または不承認の決議
  • 決議内容を株主へ通知する
  • 譲渡が承認された場合の流れ
  • 譲渡が不承認だった場合の流れ

株主による株式譲渡承認請求

株式譲渡の譲渡人または株式取得者は、株式譲渡承認請求書を作成し、会社に提出します。

譲渡承認機関による譲渡承認または不承認の決議

譲渡承認機関は、会社の形態により異なります。たとえば、以下のようになります。

  • 取締役会設置会社:取締役会
  • 取締役会非設置会社:株主総会の普通決議
  • 定款で定めがある場合:定款で定められた機関

譲渡承認機関により、当該株式譲渡を承認するか否かを決議することになります。

決議内容を株主へ通知する

譲渡承認機関により決議がなされた場合には、会社は決議の内容を株主に通知する必要があります。通知の期限は以下のようになります。

  • 承認された場合:会社法上期限の定めなし。速やかに通知することが望ましい。
  • 不承認だった場合:不承認の決議がなされてから2週間以内

なお、不承認だった場合に決議から2週間を経ても通知がない場合には、株式譲渡を承認したものとみなされます(みなし承認)。

譲渡が承認された場合の流れ

株式譲渡が譲渡承認機関により承認された場合、以下のような流れとなります。

  • 株式譲渡契約の締結
  • 株式譲渡の実行
  • 株主名簿の書換え

株式譲渡が承認された場合には、当事者間で株式譲渡契約を締結し、譲渡を実行します。

その後、株主名簿を書き換える必要があります。これは、会社に対して株主としての地位を対抗する必要があるためです。

譲渡が不承認だった場合の流れ

株式譲渡が譲渡承認機関により不承認となった場合には、以下のような流れとなります。

会社が株式を買い取る場合

  • 株式の買い取りの決定(株主総会の特別決議)
  • 買取決議の内容の通知
  • 買取価格の決定

指定買取人が株式を買い取る場合

  • 指定買取人の決定(取締役会または株主総会)
  • 指定買取人による通知
  • 買取価格の決定

株式譲渡承認請求書の作成について

株式譲渡承認請求書とは、譲渡制限株式を第三者に譲渡するときに必要となる書類です。

非上場株式や少数株式を譲渡する場合には、株式譲渡承認請求書を作成することがあります。

株式譲渡承認請求書の必要性

会社法上は、株式譲渡承認請求書を作成することについては定められていません。

もっとも、相手方の会社との間で、株式譲渡承認請求書を作成することにより、後々のトラブルの発生を防ぐことができます。

また、非公開会社では、既存株主の意図しない第三者が株主となることを防ぐ際に役に立ちます。

記載内容

株式譲渡承認請求書には、以下の事項を記載する必要があります。

  • 請求日及び請求の相手方の情報
  • 請求者の情報
  • 譲渡対象の株式の情報
  • 承認請求をする旨の意思表示
  • 譲受人の情報

請求日及び請求の相手方の情報

あくまで株式譲渡承認請求書であるため、請求日、請求先の会社の正式名称と代表取締役名を記載する必要があります。

請求者の情報

請求者の情報として、氏名、住所、連絡先を記載します。

譲渡対象の株式の情報

譲渡対象の株式の情報としては、株式の種類、数がこれにあたります。

株式の種類とは、たとえば、普通株式や優先株式などがあります。複数の種類がある場合には、それぞれの種類と数を記載する必要があります。

承認請求をする旨の意思表示

承認請求をする旨の意思表示を明記する必要があります。その際、会社法136条に基づく承認請求であることを記載しましょう。

譲受人の情報

譲受人の情報として、譲受人の氏名、住所、連絡先を記載します。

株式譲渡承認請求書の提出方法

提出先は、会社の本店所在地となります。

提出方法は、郵送や直接持参などがあります。

株式譲渡承認請求をする際の注意点

株式譲渡承認請求をする際にいくつか注意すべき点があります。

株式譲渡承認請求書の記載内容を正確にする

特に、譲渡対象となる株式の種類や数は正確に記載しましょう。また、対象会社や当事者の情報も正確に記載するようにしましょう。

法律の専門家へ相談

株式譲渡承認請求の手続きは複雑です。早い段階で専門家(弁護士、公認会計士、税理士など)に相談することをお勧めします。

専門家へ相談することにより、以下のメリットがあります。

  • 税務上の最適な対応の検討
  • 手続の適切な進行
  • 法的リスクの回避

実印が必要か確認する

株式譲渡承認請求書それ自体は法的効力を持たないため、実印でも認印でもどちらでも問題ありません。

もっとも、実印を押して印鑑証明を行うことにより、本人の意思表示であることを証明することができます。

そこで、相手方に実印を求められた場合は、実印を押すようにするとよいでしょう。

まとめ

本記事では、株式譲渡承認請求について解説しました。

非上場株式や少数株式を譲渡する場合には、必要な手続きとなります。

そのため、事前に手続きの流れや注意点を確認しておくとよいでしょう。

また、わからない点があれば、M&Aを専門とする弁護士などの専門家に相談しましょう。

参考:会社法

(株主からの承認の請求)
第百三十六条  譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。(株式取得者からの承認の請求)第百三十七条  譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。
2  前項の規定による請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。(譲渡等承認請求の方法)
第百三十八条  次の各号に掲げる請求(以下この款において「譲渡等承認請求」という。)は、当該各号に定める事項を明らかにしてしなければならない。
一  第百三十六条の規定による請求 次に掲げる事項
イ 当該請求をする株主が譲り渡そうとする譲渡制限株式の数(種類株式発行会社にあっては、譲渡制限株式の種類及び種類ごとの数)
ロ イの譲渡制限株式を譲り受ける者の氏名又は名称
ハ 株式会社が第百三十六条の承認をしない旨の決定をする場合において、当該株式会社又は第百四十条第四項に規定する指定買取人がイの譲渡制限株式を買い取ることを請求するときは、その旨
二  前条第一項の規定による請求 次に掲げる事項
イ 当該請求をする株式取得者の取得した譲渡制限株式の数(種類株式発行会社にあっては、譲渡制限株式の種類及び種類ごとの数)
ロ イの株式取得者の氏名又は名称
ハ 株式会社が前条第一項の承認をしない旨の決定をする場合において、当該株式会社又は第百四十条第四項に規定する指定買取人がイの譲渡制限株式を買い取ることを請求するときは、その旨
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