非上場株式・少数株式トラブルの解決事例16【親族間で対立し株式買取を求めた事例(同族支配下における株式売却・慰労金支払解決事案)】
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事案の概要
依頼者は、地方の老舗非上場会社の創業者一族の次男および従兄弟であり、母親・長男・次男・従兄弟の4名がそれぞれ会社株式の四分の一ずつを保有する構成でした。会社の代表取締役は長男が務めており、長年にわたり経営権を掌握していました。
長男は、会社の業績を背景に自らの役員報酬を倍増させる一方、他の役員や従業員の給与を抑制し、経営判断を独断で行うようになりました。社内では長男の意見が絶対視され、反対意見を述べる役員は排除されるようになっていました。
依頼者である次男および従兄弟は、経営の透明性の欠如や意思決定の恣意性を問題視し、経営会議の在り方や報酬設定の是正を求めました。しかし、長男はこれを「会社運営への妨害」として敵視し、高齢で寝たきり状態にあった母親の名義株式を自らの支配下に置いた上で、株主総会において緊急動議を提出し、次男および従兄弟を取締役から解任しました。
依頼者らは、解任後に株式買取および退職慰労金の支払を求めましたが、長男は一貫して「会社経営に貢献していない」「配当も受け取っていないのだから株式価値は低い」と主張して拒否しました。事態が膠着する中、当事務所に相談がありました。
紛争・主張論点
- 株主構成における家族内均衡が崩壊し、長男による実質的支配が確立された点。
- 高齢株主(母親)の名義を利用した議決権支配の適法性および信義則違反の有無。
- 長男が取締役として自己の報酬を増額した行為の合理性・善管注意義務(会社法第355条)違反の有無。
- 解任された次男・従兄弟による株式買取請求権および退職慰労金請求の法的根拠。
- 時価より低額での買取要求に対し、交渉により経済的合理性のある価格を実現する方策。
当事務所の対応の流れ
- 事実関係の整理と法的構成の確立
当事務所は、株主総会議事録、取締役会議事録、役員報酬決定書、母親名義の株式管理資料などを精査しました。その結果、母親の議決権行使が長男によって実質的に代行されていたことが判明し、議決権の行使方法自体に問題がある可能性を確認しました。 - 株式評価および買取交渉準備
依頼者側は公認会計士に私的鑑定を依頼し、収益還元法およびDCF法による株式評価を実施しました。評価結果では、長男側が提示した簿価純資産ベースの低額評価を大幅に上回る数値が算出されました。これにより、当事務所は合理的時価評価を根拠に交渉を開始しました。 - 退職慰労金請求および交渉経過
当事務所は、依頼者の長年の勤務実績・役員としての貢献を示す資料(社内報・事業計画書・営業実績)を整理し、退職慰労金規程および支給実績との整合性を検討しました。長男側は当初、「取締役としての功績はない」として支給を拒否しましたが、社内規程上、他役員に対しては退任時に支給していた実例があることを立証し、支給義務を認めさせました。 - 粘り強い交渉と最終合意形成
交渉は一時的に中断しましたが、当事務所は関係者間の感情的対立を抑制しつつ、経済合理性を基礎にした条件調整を継続しました。長男側は当初の強硬姿勢を徐々に軟化させ、最終的に次男および従兄弟の保有株式を全て買い取る方向で合意。買取価格は時価よりはやや低いものの、当初提示額を大幅に上回る水準で決定しました。併せて、依頼者に対して退職慰労金の全額が支払われることとなりました。 - 契約締結および履行
正式な株式譲渡契約および退職慰労金支払合意書を締結し、譲渡承認手続と同時に代金決済が行われました。名義書換・登記手続も当事務所の関与のもとで完了し、依頼者は完全に会社から離脱しました。
結果
依頼者である次男および従兄弟は、経営権を独占していた長男との長期的対立を終結させ、保有株式を適正に近い価格で売却し、同時に退職慰労金の支払を受けることができました。
会社側にとっても、親族間対立が経営に与える影響を最小限に抑えることができ、実務的かつ円満な終結に至りました。
本件は、同族会社における支配株主による排除行為と、排除された株主の経済的救済を両立させた解決事例として位置付けられます。
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