非上場株式・少数株式トラブルの解決事例15【4つの創業家がお互いを会社から追い出そうとした事例(創業家間支配争いと株式売却交渉事案)】
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事案の概要
本件の対象会社は、戦後に4つの創業家が共同で設立した非上場製造業会社でした。各創業家が一定割合の株式を保有し、役員も各家系から選出される構造で長年経営が続けられていました。
しかし、創業家間の経営方針や資金運用方針の違いから、設立当初の協調体制は崩れ、筆頭創業家が政治的影響力を強めるようになりました。筆頭創業家は、他の創業家に対して相続資金の支援や一時的な融資を持ち掛け、「相続税の支援と引換えに株式を譲渡させる」という形で次第に株式を集中させていきました。その結果、他の三家の持株は減少し、筆頭創業家が実質的に経営支配を掌握するに至りました。
依頼者は、残る最後の一族(第四創業家)の子息であり、会社の創業精神の継承を自任していました。依頼者は十数年来にわたり筆頭創業家に対して株式買取を求め、「相応の時価での買い取り」を主張していましたが、筆頭創業家は「他家はすべて安値で譲渡した」として、廉価での引取りを強要し続けていました。依頼者は、交渉が膠着したまま、筆頭創業家の高齢化を背景に、将来にわたってこの関係を子孫に引き継ぐことを懸念しており、当事務所に相談されました。
紛争・主張論点
- 4つの創業家間の持株構造および筆頭創業家による政治的支配の強化。
- 筆頭創業家が相続支援を通じて他家の株式を廉価で取得してきた経緯。
- 依頼者が主張する「時価評価による株式買取請求」の法的根拠。
- 筆頭創業家側が提示した廉価評価と、依頼者側が主張する収益還元法・DCF法評価額との乖離。
- 第三者譲渡を交渉材料とした戦略的対応による価格調整の実現。
当事務所の対応の流れ
- 株主構造および過去取引履歴の分析
当事務所は、会社登記簿、株主名簿、相続登記記録等を精査し、各創業家の持株比率の変遷を整理しました。その結果、筆頭創業家が他家の株式を「相続支援」を名目に低額で取得してきた実態を明らかにしました。この経緯を踏まえ、依頼者による廉価譲渡要求の拒否を法的に裏付ける方針を立てました。 - 会社価値評価の実施と主張立証の準備
依頼者は公認会計士に私的鑑定を依頼し、収益還元法およびDCF法による株式評価を実施しました。評価書では、会社の営業利益、保有資産、配当実績を反映し、筆頭創業家が提示した簿価基準の数倍に相当する合理的時価を算出しました。
当事務所はこの評価書を基礎資料として筆頭創業家側に交渉書面を送付し、「合理的時価による買取以外には応じない」との明確な立場を表明しました。 - 筆頭創業家側の対応と交渉過程
筆頭創業家は、当初「相続支援の恩義に報いよ」との姿勢を崩さず、廉価での引取りを主張しました。依頼者側はこれに対し、第三者への株式譲渡を具体的に検討し、譲渡希望先候補として同業グループ企業との意向確認を進めました。この動きにより、筆頭創業家側は「経営権の外部流出」を強く懸念し、再交渉に応じることとなりました。 - 交渉の進展と最終合意
交渉の過程で、当事務所は筆頭創業家に対して、過去の株式譲渡事例が当時の資産状況・利益水準を前提としたものである点を指摘し、現在の収益水準に応じた新たな時価評価を提示しました。これを踏まえ、筆頭創業家は自らの名義ではなく、関係会社を譲受人とする形で高値での買取を提案。最終的に、依頼者の希望額に近い価格で株式の売却契約が成立しました。 - 契約締結および履行
譲渡契約書には、将来的な創業家間の係争防止を目的とした相互不関与条項が盛り込まれ、代金は一括で支払われました。譲渡承認手続および名義書換は速やかに行われ、依頼者は株主としての地位を完全に整理しました。
結果
依頼者は、長年続いた創業家間の対立構造を解消し、保有株式を希望額に近い価格で売却することができました。筆頭創業家側も、経営支配を完全に確立する形で会社支配構造の再編を終えることができ、双方にとって持続可能な解決となりました。
本件は、複数創業家間の政治的対立・相続・株式譲渡が絡み合う複合紛争において、法的対抗と交渉戦略を組み合わせて合理的な経済的決着を導いた事例です。
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