遺産の中に「会社の株式(非上場株式)」があり、相続するメリットやデメリットがわからない。何から始めればいいかもわからない。という方へ。
非上場株式は市場価格がなく、評価の方法や、譲渡制限会社における譲渡承認・株主名簿の名義書換といった独特のルールがあります。相続税の申告期限は原則10か月。期限に追われる前に、全体像をつかむことが何より大切です。

本記事では、まずメリット(経営への関与・配当・現金化の可能性)と注意点(評価が複雑・譲渡制限・情報不足・株主名簿の名義書換の重要性)を整理します。そのうえで、手続きの流れ評価の考え方起きやすいトラブル現金化の選択肢まで、専門用語をかみ砕いて順に解説します。

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非上場株式の相続におけるメリットと注意点

非上場株式の相続には、将来に関わるプラス面と、段取り次第で負担が増え得る注意点が存在します。まず得られるメリットを把握しつつ、つまずきやすいポイントを事前に押さえ、期限(相続税は原則10か月)から逆算して進めるための考え方を整理します。

非上場株式を相続するメリット

まずは非上場株式を相続する際のプラス面のメリットを紹介します。

1.経営に関与できる可能性がある

議決権を持つことで、株主総会での発言や方針決定に一定の影響力を持てます。後継者がいる家庭では、「誰がどの範囲で関与するか」を相続の場で明確にしやすく、取締役の就任や株主間の役割分担を含めた承継計画につなげやすい点が利点です。議決権割合が増えるほど意思決定への影響が高まり、配当方針や中長期の投資判断にも関与しやすくなります。

2.配当を受け取れる場合がある

会社に利益が出ていて配当方針が整っていれば、配当金を得られます。上場株ほど頻繁な見直しはない一方、非上場株式は配当方針が会社ごとに大きく異なるため、直近の実績と今後の見通しを確認しておくと安心です。相続後の生活設計や納税資金の一部に充当しやすいのもメリットです。

3.株式を売却して現金化できる

非上場株式は会社(自己株式取得)、既存株主、第三者への売却(譲渡)で現金化できる可能性があります。遺産分割で株式を集中させ、他の相続人へは代償金で調整する。といった設計もしやすく、家計や事業の実情に合わせた分配が可能です。株式譲渡承認や譲渡価額の調整は必要ですが、納税資金の確保や資産の入れ替えに使える選択肢があること自体が強みです。

非上場株式を相続する際の注意点

次に非上場株式を相続する際のマイナス面の注意点を紹介します。

1.相続税の評価が複雑で納税資金が不足しやすい

非上場株式は市場価格がないため、会社の規模や株主の立場に応じて相続税における株式評価の方式(類似業種比準価額方式・純資産価額方式・併用方式・配当還元方式)が変わります。株式評価額が高く出る一方で配当や株式の譲渡が進まないと、手元資金とのミスマッチが起きやすくなります。

株式評価額の見通しを早めに掴むために、最低限そろえたい資料は次のとおりです。

  • 直近の決算書(できれば過去3期分)と配当の実績
  • 株主名簿・定款(譲渡制限や相続人等に対する売渡請求の条項を確認)
  • 主要な資産・負債の概要(不動産、借入など)

2.譲渡制限があり非上場株式の売却ハードルが高い

多くの非上場会社は第三者への譲渡に会社の承認が必要です。株式譲渡承認の可否や手続きの所管(取締役会・株主総会)は定款に定められているのが一般的で、譲渡承認の可否や譲渡価額の調整で時間がかかることがあります。相続税の申告期限と並走するため、株式譲渡の承認フローと期日を最初に確認し、会社・既存株主・第三者の現実性が高い順で打ち手を検討すると長期化を避けやすくなります。

3.少数株主になると情報が乏しく影響力も小さい

相続で持株が分散すると、会社の情報が得にくく、意思決定にも関与しづらくなります。配当が少ない会社では、非上場株式の保有メリットが実感しにくいことも。最初に配当方針や今後の事業計画の共有を依頼し、家族内で株式を集約するか、現金化の道を探るかを早めに決めると、塩漬け化のリスクを下げられます。

4.株主名簿の名義書換をしないと権利行使や売却が滞る

非上場株式の相続時は承認不要でも、株主名簿の名義書換が済むまでは配当や議決権の行使、売却の実務が動きづらいのが実情です。会社(または株主名簿管理人)に必要書式と添付書類(戸籍関係、遺産分割協議書など)を確認し、非上場株式の株式評価(相続税評価額)や遺産分割協議と並行して手続きを進めましょう。

5.会社や定款のルールで相続後の選択肢が左右される

定款に相続人等に対する売渡しの請求(会社法174条)の条項がある会社では、会社から株式の売渡しを求められる可能性があります。制度の有無や手順は会社ごとに異なるため、定款の該当条項を相続直後に確認し、保有・売却・買取のシナリオを早めに描くことが大切です。

非上場株式を売却したい場合はご相談ください

家族間の調整や会社との交渉が進まない、期限に間に合うか不安。そんなときは早めの専門家相談がおすすめです。

弁護士法人M&A総合法律事務所は、非上場株式・少数株式の売却に関する相談実績が300件以上あり、豊富な経験とノウハウを蓄積しております。ノウハウに基づいて、アドバイスを提供いたします。全国対応・オンライン相談も可能です。

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非上場株式の相続手続きの流れ

非上場株式の相続は、相続人と相続財産の確定→相続する株式の評価→遺産分割方法の合意→株主名簿の名義書換→相続税の申告・納付という順番で進みます。

途中で「売却や買取の検討」「延納・物納などの納税手段の選択」が並走する点が、現金や上場株の相続とは違うところです。申告期限は原則10か月のため、株式評価・株主名簿の名義書換・遺産分割協議を同時並行で動かす段取りが重要です。

1.相続人と相続財産の確認

はじめに、相続人の確定と株式の有無・内容の確認を行います。戸籍一式で法定相続人を確定し、被相続人が保有していた会社名、持株数、株券の有無、株主名簿の記載、定款の該当条項(譲渡制限・相続人等に対する売渡請求など)を確認します。ここで会社から届いていく配当金計算書(配当金支払通知書)や株主総会招集通知、議決権行使書面なども手がかりになります。

相続財産の把握はこの後の評価方式の判定(会社規模・同族/同族外)に直結するため、直近3期の決算書や勘定科目明細、固定資産台帳、借入金の明細、配当履歴まで視野に入れて資料をそろえておくとスムーズです。評価は国税庁の定める方式(類似業種比準価額方式・純資産価額方式・併用方式・配当還元方式)に基づいて進むため、会社規模の判定と株主区分を早い段階で見立てておくのがポイントです。

戸籍収集と株式の存在確認

戸籍で相続人を確定しつつ、会社名や持株数を推定します。株券や過去の配当計算書、通知類が残っていれば、会社や株主名簿管理人に照会し、名義や持株数をあらためて確認します。

株券・定款・株主名簿などの初期収集

定款は譲渡制限や相続人等への売渡請求(会社法174条)の有無を確認する重要書類です。後者の条項がある会社では、会社が相続を知った日から1年以内に株主総会の特別決議等を経て、相続人に対して売渡しを請求できる制度が動きます。定款次第で相続後の選択肢が変わるため、早期の精査が不可欠です。

2.相続する非上場株式の評価算定と方針決定

株式評価は、会社規模(大・中・小)と取得者の立場で方式が切り替わります。

  • 大会社は原則「類似業種比準価額方式」、小会社は原則「純資産価額方式」、中会社は併用方式(類似業種比準価額方式+純資産価額方式)。
  • 同族株主以外の少数株主が取得した場合は「配当還元方式」を用いるケースがあります。

必要資料と準備手順

直近3期の決算書、勘定科目明細、固定資産台帳、借入契約、配当実績、事業概要、主要契約などを時系列で整理します。非営業資産や含み益・含み損の洗い替え、一時的な損益の補正、配当履歴の反映は株式評価額を左右しやすい論点です。株式評価額の見立てを早めに得られれば、遺産分割や納税資金計画の方向付けが容易になります。

株式評価結果を踏まえた遺産分割の考え方

株式評価額が高い場合は、株式を一人がまとめて取得し他の相続人に代償金を支払う方法や、株式の売却で現金化して配分する換価分割などを検討します。複数人で共有すると意思決定や将来の株式の売却が難しくなりやすいため、誰が保有し続けるかを先に決め、その前提でほかの資産とバランスを取ると遺産分割協議がまとまりやすくなります。

3.遺産分割協議の進め方

遺産分割協議では、株式評価額の前提と根拠を相続人間で共有することがトラブル回避の第一歩です。客観性を高めたい場合は、税理士の評価や第三者評価を用いて「相続税評価」と「売買の目線(将来キャッシュフロー[CF]や同業マルチプル等)」を切り分けて検討します。相続税評価は税務上の基準であり、株式の譲渡価額(取引価額)と一致しないことがあるため、価格と条件(支払時期・分割払い等)を組み合わせることが有効です。

等価分割の難しさと代償金・換価分割

株式は細かい等分が適しにくい財産です。後継者に集中させて代償金で均衡をとるか、一定割合を売却して換価分割にするか、家計の資金ニーズと会社の安定経営を両立できる線を探ります。

争いを避けるための合意形成

株式評価の根拠、想定する出口(保有・売却・買取請求の可否)、納税方法(現金・延納・物納)を一枚の資料にまとめ、期限(10か月)から逆算したスケジュール表を共有すると合意が前に進みます。

4.非上場株式の株主名簿の名義書換

相続で株式を取得したら、株主名簿の名義書換を行います。相続は一般承継のため、譲渡承認は不要ですが、株主名簿の名義書換が済まないと配当受領や議決権の行使に支障が出ます。会社(または株主名簿管理人)が定める様式に従い、戸籍関係書類、遺産分割協議書、相続関係説明図等をそろえて申請します。

会社の承認手続と実務の注意点

第三者へ譲渡する場合は、譲渡制限会社では会社の承認が必要になるのが通常です(承認機関や手順は定款で規定)。一方、定款に相続人等に対する売渡請求(会社法174条)の条項がある会社では、相続発生後、所定の手続・決議を経て売渡請求が行われることがあります。定款の有無と承認フロー、相続人等に対する売渡請求条項の有無を株主名簿の名義書換の前後で必ず確認してください。

株主名簿の名義書換が遅れた場合のリスク

名義が旧株主のままだと、配当や議決権の帰属が不明確になり、株式の譲渡手続にも支障が出ます。会社側が株主名簿を基準に権利者を判断する以上、株主名簿の名義書換は早めに着手するのが安全です。

5.非上場株式の相続税の申告・納付

相続税の申告・納付期限は原則10か月。評価や遺産分割が長引きそうでも、期限から逆算して必要書類の整備と納税手段の検討を進めます。現金納付が困難な場合は、延納(許可制・利子税・担保の提供が原則)や、要件を満たすときの物納を検討します。制度の利用には申請期限があるため、評価の見立てが出た段階で税理士と並行検討してください。

期限・必要書類・延納や物納の検討

相続税の延納は、相続税額が10万円超で金銭納付が困難、担保の提供、期限内の申請などの要件を満たす必要があります。物納は管理処分可能な財産に限定され、順位付けや不適格財産の概念があります。いずれも許可制で不備があると却下されうるため、早めの準備が不可欠です。

納税資金の確保(配当・売却・借入)

納税資金は、配当の活用、会社・既存株主・第三者への株式の売却、金融機関からの借入などを組み合わせて確保します。非上場株式は流動性が低く譲渡承認手続も絡むため、株主名簿の名義書換と並行して会社の意向や売却ルートの可能性を早期に確認しておくと、期限内納付の確度が高まります。

※本サイトの情報は一般的な内容です。税金に関する詳細なご相談や正確な判断が必要な場合は、税理士などの専門家にご相談ください。

相続税の申告における非上場株式と評価額の考え方

非上場株式には市場価格がないため、相続税の「評価額」は会社の姿と取得する人の立場で決まります。評価額は相続した非上場株式の納税の出発点になるので、まずは「自分のケースはどの方式になりそうか」を掴むことが大切です。

【ポイント】会社規模と株主の立場で評価方式が変わる

非上場株式の評価は、おおまかに次のルールで考えます。

  • 大会社「事業の収益力」を重視(類似業種比準価額方式)
  • 小会社「持っている資産の中身」を重視(純資産価額方式)
  • 中会社は両方のバランス(併用方式[類似業種比準価額方式+純資産価額方式])

同族株主ではない少数株主が相続で取得した場合は、配当実績をもとにした配当還元方式が使われることがあります。
まずは「会社規模」と「同族か少数か」を確認すると、どの方式になりそうか見通せます。

非上場株式の主な評価方式の概要

非上場株式の主な評価方法について紹介します。

類似業種比準価額方式

同じ業界の上場企業データなどを参照し、配当・利益・純資産から相対的に評価する考え方です。会社の業績や配当方針の影響を受けやすく、規模の大きい会社で採用されやすいのが特徴です。

純資産価額方式

会社が保有する資産と負債を洗い出し、資産の中身で評価します。遊休地や多額の現預金など、資産の厚みが評価額に直結します。規模の小さい会社で使われることが多い方式です。

併用方式(類似業種比準価額方式+純資産価額方式)

事業の収益力(類似業種比準価額方式)と資産の厚み(純資産価額方式)の両面を織り込みます。中くらいの会社が対象で、会社の実態をバランスよく反映するイメージです。

配当還元方式(少数株主向け)

同族以外の少数株主が取得した株式に使われる特例的な方式です。過去の配当を基準に計算するため、事業の将来性よりも配当の実績が重視されます。無配でも一定の最低値が出るため、評価額がゼロになるわけではない点には注意が必要です。

【注意点】特例的な会社は「資産重視」になりやすい

保有資産の多くが土地や株式といった資産会社に近いタイプは、原則として純資産を中心に見る取り扱いになります。また、会社を畳む前提に近い状況では、清算価値(解散価額)に近い考え方を使うこともあります。

該当しそうな場合は、一般的な方式と扱いが異なる可能性があると覚えておきましょう。

よくある勘違いと押さえどころ

  • 相続税評価額=譲渡価額(取引価額)ではありません。 相続税評価額は“税務上のものさし”で、実際の売買では将来性や支配権の有無なども加味されます。
  • 評価方式は選べません。 会社の大きさや株主の立場など、ルールに沿って決まります。
  • 無配でも評価はゼロになりません。 配当還元方式には最低の考え方があり、一定の評価は出ます。
  • 資料の精度が結果を左右します。 決算書や配当履歴などの基本資料が揃っているかが、評価のブレを小さくします。

※本サイトの情報は一般的な内容です。税金に関する詳細なご相談や正確な判断が必要な場合は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。

非上場株式の相続で起きやすいトラブル

非上場株式の相続は、評価や株主名簿の名義書換といった手続きだけでなく、遺産分割・遺言の解釈・会社側の運用が絡み合い、感情面の対立にも発展しやすいテーマです。ここでは、実際に相談が多い“つまずきポイント”を相続手続きの段階と相続後の段階に分けて、わかりやすく紹介します。

非上場株式の相続手続き段階で起こりがちなトラブル

相続開始直後は、情報が不足しがちで誤解が生まれやすい時期です。次のようなトラブルをご相談いただくことがあります。

(1)遺産分割の方法でもめて前に進まない

「誰がどれだけ株式を持つか」で言い争いになり、遺産分割協議が中断。遺言も無く、後継者を誰にするかという話と遺産分割の話が混線して、日だけが過ぎていく。

(2)株式の評価額(買い取り価格)で折り合えない

会社や買い手から提示された金額に納得できない。相続税評価額と実際の取引価格の違いが説明されず、判断材料も偏っていて、正しい金額感が掴めないまま平行線。

(3)株式を隠されている気がする/引き渡してもらえない

開示された財産目録に違和感があり、株券や口座記録の所在がはっきりしない。相続人間や会社側に確認しても要領を得ず、株主名簿の名義書換も止まってしまう。

(4)「株式はすべて社長に」という遺言が出てきた

被相続人の意向は尊重したいが、全株集中には到底納得できない。遺言の形式・内容の有効性や、他の相続人の最低限の取り分(遺留分)はどうなるのかが大きな不安。

(5)元社長の株式が「後妻の子」に全部いく筋書きで話が進む

遺言を盾に交渉が一方的に進み、こちらの意見が通らない。家庭の関係にもひびが入りそうで、不公平感が募るが、どこから手を付ければいいかわからない。

(6)「自分には全く株式を相続させない」と言われた

見知らぬ相続人が現れて、法定相続分に見合う取り分が確保されないまま協議が進む。資料も開示されず、合意のしようがない。

(7)番頭・重役が「生前に全部もらった」と主張して会社に入れない

役員サイドが生前贈与や譲渡契約を主張し、会社へのアクセスや情報共有が遮断される。「本当に有効な移転だったのか」を確かめたいのに証拠が見られない。

(8)「株は渡す、でも現金は分けない」と言われる

預貯金やその他資産の分与を拒まれ、そもそも口座残高などの基礎情報も開示されない。株だけ少し渡されても生活の見通しが立たない。

(9)少しだけ株を渡されそうだが、実益がない

遺産分割の落とし所として少数持分だけ提示されるが、議決権も弱く、将来の売却も難しそう。「介護をしたから」などの理由で譲歩を迫られ、納得感がない。

相続後の運用段階で起こりがちなトラブル

株主名簿の名義書換が済んだ後も、会社側の資本政策や社内ルールによって、相続した株式の“力”が思わぬ形で弱まることがあります。

(1)知らないうちに「無議決権株式」にされていた

突然の種類株式の導入・転換で議決権が失われ、総会で発言できない。「配当が厚いから」と説明されても、経営に参画したい側からすると受け入れがたい。

(2)属人株式が導入され、特定の人だけに議決権が付いた

説明も曖昧なまま、特定株主にだけ議決権が与えられる設計に。自分の権限が大きく薄まり、会社の重要事項に関与できなくなる。

(3)権利が薄い種類株式に切り替わっていた

いわゆる劣後的な条件の株式が発行・付け替えられ、配当や残余財産の分配順位で不利に。普通株と同じつもりでいたが、価値も影響力も想定以下になっていた。

(4)「黄金株(拒否権付株式)」が作られ、何も決められない

相続後、前経営者などに拒否権付株式が与えられ、重要議案がことごとく差し止められる。経営の意思決定が滞り、事業そのもののスピード感が失われる。

(5)いつの間にか「持株会」に組み込まれて自由に動けない

持株会のルールに縛られ、議決権行使や売却の自由が大きく制約される。自分の判断で動かせないことに強いストレスを感じる。

(6)持株会に「少額で売るように」と圧力を受けている

周囲の空気や慣行を理由に、低い譲渡価額での売却を半ば強要される。売りたくないのに断りづらく、精神的にも追い込まれていく。

(7)会社が増資し、気づいたら持株比率が大幅に下がっていた

資本政策(増資)でダイリューション(希薄化)が発生。ある日突然、影響力が一気に下がり、総会での立場も弱くなっていたことに気づく。

(8)株式交換で親会社の傘下に入り、比率が大幅に低下した

グループ再編の一環で株式交換が行われ、持株比率が想定以上に低下。誰が意思決定の主導権を握っているのか見えづらくなり、発言の場も限られる。

まずは早めのご相談を

このような状況に少しでも心当たりがある、あるいは前兆を感じる段階で、早めに専門家に相談することがおすすめです。

弁護士法人M&A総合法律事務所は、非上場株式・少数株式の売却に関する相談実績が300件以上あり、豊富な経験とノウハウを蓄積しております。ノウハウに基づいて、アドバイスを提供いたします。

「遺産分割が進まない」「評価・価格でもめている」「相続後に権利が弱まっている気がする」ということに心当たりがあれば、まずはお気軽にお問い合わせフォームまたはお電話(サイト記載)からご連絡ください。全国・オンライン/来所にて対応いたします。

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非上場株式を相続したくない/現金化したい場合の選択肢

「納税資金が足りない」「相続した非上場株式が塩漬けになりそう」という不安を減らすために、現実的に取り得る3つの方法を紹介します。

1.遺産分割協議により他の相続人に相続してもらう

非上場株式を自分が持たないという選択肢です。後継者が決まっている家庭や、株式を現金・他財産で調整しやすい場合に向いています。

はじめに評価の考え方(類似業種比準価額方式・純資産価額方式・配当還元方式のどれに近いか)とおおよその金額感を家族で共有し、誰が株式を引き継ぐのが会社や家計に無理がないかを話し合います。株式は等分しづらい財産なので、代償金(株式を取らない人に現金等で調整)や、不要なら換価分割(売って現金で分ける)も候補になります。

遺産分割協議がまとまったら遺産分割協議書に落とし込み、株主名簿の名義書換まで一気通貫で進めましょう。名義が変わらないと配当の受領や議決権行使、今後の売却検討も進みにくくなります。

ポイント

  • 後継者や経営の安定を優先できる。
  • 家族内での合意形成と代償金の資金手当がカギ。
  • 期限(相続税の申告・納付)から逆算して協議→株主名簿の名義書換を並行。

2.相続した非上場株式を売却する

「持ち続けるつもりはない」「納税や生活資金を確保したい」場合は、売却で現金化します。

買い手は大きく会社(自己株式の取得)、既存株主、第三者の3ルート。非公開会社では多くの場合、第三者への譲渡に会社の承認が必要です。最初に定款と会社の承認フロー(取締役会・株主総会など)を確認し、会社・主要株主の意向を早めに確かめましょう。

価格は相続税評価額=譲渡価額(取引価額)ではありません。将来の収益見通しや支配権の有無、配当方針なども加味されます。合意に近づけるには、価格と支払い条件(分割、時期)をセットで調整するのがコツです。会社に買い取る余力が乏しいときは、分割払い・段階取得や既存株主・関係会社との組み合わせも検討します。

ポイント

  • 会社・既存株主・第三者の順で現実性を検討。
  • 承認手続と期日を把握し、長期化を避ける。
  • 価格は根拠資料(決算、配当方針、将来計画)と条件面の両輪で詰める。

3.相続放棄をする

「株式も含め、相続全体を受け継がない」場合の選択肢です。株式だけを選んで放棄することはできないため、他の財産や負債も含めた全体判断になります。家庭裁判所への申述手続が必要で、一般に期間の制限があります。借金の可能性が読めないときの限定承認(相続人全員での申述)も検討に値します。

放棄はやり直しが難しいため、家族の資産・負債の見取り図、生活資金や納税の見込み、会社との関係などを並べて比較し、売却・買取の可能性とも天秤にかけて判断してください。

ポイント

  • 株式だけでなく相続全体の是非を決める選択。
  • 期限と手続があるため、早めの情報整理と相談が安全。
  • 迷う場合は限定承認も含めて選択肢を広く検討。

非上場株式の相続のお悩みは弁護士がおすすめ

判断に迷う場合や家族間の調整・会社との交渉が難航しそうな場合は、早めに弁護士へご相談ください。

弁護士法人M&A総合法律事務所は、非上場株式・少数株式の売却に関する相談実績が300件以上あり、豊富な経験とノウハウを蓄積しております。ノウハウに基づいて、アドバイスを提供いたします。全国対応・オンライン相談も可能です。

非上場株式の相続で使える特例 事業承継税制

事業承継税制は、一定の要件を満たすと非上場株式にかかる相続税・贈与税の納税を猶予できる制度です。特例(時限措置)を使えば、対象株式の上限撤廃・猶予割合100%などにより、承継時の税負担を実質的に先送りできます。制度は便利ですが、使える期間・提出書類・継続報告にルールがあるため、早い段階で適用の可能性とスケジュール感を把握しておくと安心です。

制度の基本と適用メリット

対象株式・承継者・継続要件

特例では、複数の株主から最大3人の後継者への承継まで対象になり、猶予割合は相続・贈与とも原則100%です。承継後は会社の事業継続や所定の年次報告・継続届出が必要になります(雇用要件は弾力化)。特例の適用期間は、2018年1月1日~2027年12月31日に起きた贈与・相続が対象で、特例承継計画の提出期限は2026年3月31日です。ここを過ぎると特例の入口に入れない点に注意してください。

2025年の見直し(役員就任要件の緩和)

贈与で適用する際の後継者の役員就任要件は、従来の「3年以上役員」から「贈与直前に役員」へと緩和されました(2025年1月1日以後の贈与に適用)。個人版でも同趣旨の見直しが行われています。計画の立て直しがしやすくなった一方、計画提出期限や適用期間は変わりません。

※最新の取扱いは国税庁等の公表資料をご確認ください。

メリット・デメリット

メリット

承継時点の相続税・贈与税を全額猶予(特例)。将来、事業売却や廃業で株価が下がっていた場合は猶予税額の再計算・差額免除の仕組みもあります。 

デメリット(留意点)

時限制度で入口に締切がある、事後管理(年次報告・継続届出)が必要、将来の株式処分時などに猶予税額が復活する局面がある。この三点は必ず押さえておきましょう。

手続きの流れ

1.適用可否の整理

会社規模や後継者像、承継時期の目安を確認し、特例承継計画の提出要否と期限をチェックします(2026年3月31日まで)。計画には認定支援機関の指導助言の記載が必要です。

2.計画の提出・都道府県の確認

都道府県に特例承継計画を提出し、必要な確認や認定(相続・贈与の別)を受けます。

3.承継の実行と申告

贈与または相続が発生したら、猶予適用を前提に税務申告を行います(一般措置との違いに注意)。

4.事後管理(年次報告・継続届出)

承継後は、会社の経営状況等を年1回、都道府県へ年次報告し、その写しを添えて税務署へ継続届出を行います(経営承継期間中は年1回、以後は3年ごと)。期限の起点となる「報告基準日」の扱いにも注意しましょう。 

詳しくは国税庁の解説資料をご参照ください。

※本サイトの情報は一般的な内容であり、税務に関する専門的なアドバイスを提供するものではありません。税金に関する詳細なご相談や正確な判断が必要な場合は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。

税理士・弁護士の連携ポイント

【税理士との連携】

適用可否の判定、相続税・贈与税の評価と申告、年次報告・継続届出の作成管理をリード。特例と一般の使い分けや、延納・物納など納税手当の検討も並走します。

【弁護士との連携】

承継スキーム設計(誰が・いつ・どの手順で承継するか)、定款や株主間契約の整備、譲渡制限・承認手続、相続人間の合意形成、少数株式の買取・相続人等に対する売渡請求が絡む場面をサポート。制度適用と遺産分割・株主名簿の名義書換・株主対応を同じタイムラインで整える役割です。

非上場株式の相続でよくある質問

非上場株式の相続は「手続」「評価」「売却可否」「税金」が絡み合うため、初めての方には分かりづらく感じられます。ここでは、気になる方が多い質問に対しての回答を簡潔に紹介します。

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上場していない株式を相続したらどうなりますか?

相続は一般承継なので、会社の承認がなくても株式は相続人に移ります(承認が必要なのは「譲渡」=特定承継のとき)。ただし、株主名簿の名義書換をしないと配当受領や議決権行使に支障が出ます。相続税は原則10か月以内に申告・納付が必要で、非上場株式は国税庁の方式(類似業種比準価額方式・純資産価額方式・併用方式[類似業種比準価額方式+純資産価額方式]・配当還元方式)で評価します。定款に相続人への売渡請求(会社法174条)の定めがある会社では、会社から売却を求められることがあるため、定款確認も早めに行いましょう。

非上場株式を相続したくない場合はどうすればいいですか?

現実的な選択肢は3つです。①遺産分割で他の相続人に引き継いでもらう、②売却(会社・既存株主・第三者)で現金化する、③相続放棄(家庭裁判所に申述)を選ぶ。相続放棄には原則3か月の期間制限があります。まずは評価の目安と会社の承認フロー(定款)を確認し、期限から逆算して動くのが安全です。

非上場株式の相続放棄をしたらどうなりますか?

家庭裁判所で受理されると、はじめから相続人でなかったものとみなされ(民法939条)、その相続に関する権利義務は引き継ぎません。結果として、次順位の相続人に承継が回ります。相続放棄は期間・方式にルールがあるため、手続の可否と期限を必ず確認してください。 

非上場株式を相続したら相続税はかかりますか?

相続した非上場株式は課税対象です。上場株のような市場価格がないため、会社の規模や取得者の立場に応じて評価方式が決まります(大会社=類似業種比準価額方式、小会社=純資産価額方式、中会社=併用方式(類似業種比準価額方式+純資産価額方式)、同族外の少数株主は配当還元方式など)。申告・納付は相続開始を知った日の翌日から10か月以内が原則です。 

非上場株式は売却できますか?

非上場株式は売却できます。 ただし、非公開会社では第三者への譲渡に会社の承認が必要なことが一般的です。不承認の場合は、会社や指定買取人による買取手続に移行し、価格は協議で決め、それでもまとまらなければ裁判所の売買価格の決定(会社法144条)を使う流れがあります。会社が買い取る場合の自己株式取得は分配可能額(財源規制)の範囲という上限もあるため、価格と支払い条件をセットで調整すると合意しやすくなります。

非上場株式を譲渡するときの税金はどうなりますか?

個人が非上場株式を売却して利益が出た場合、申告分離課税20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)が基本です。課税対象は「売却価額-取得費(+譲渡費用)」。詳細は申告年度の最新ルールをご確認ください。

非上場株式の相続トラブルはご相談ください

非上場株式の相続は、評価や手続きだけでなく経営権・家族間の調整・会社側の運用が絡み、当事者だけでは解決しづらい局面に発展しがちです。早い段階で状況を整理し、選べる打ち手を把握することが、長期化や不利益の回避につながります。

相続時に起こりやすいトラブル例

  • 遺産分割でもめる/株式評価額で折り合えない:誰がどれだけ引き継ぐか、株式の評価をどう見るかで対立しやすい。
  • 株式の所在・引渡しで対立:元社長や会社側が株式を開示・引渡ししない、所在が不明などで手続が進まない。
  • 遺言や生前の移転をめぐる争い:特定の相続人(社長・後妻の子など)への集中承継、番頭・役員への譲渡主張などで紛糾。

相続後に起きがちな「権利が薄まる」トラブル

日本の会社法には種類株式があり、無議決権株式・属人株式・黄金株(拒否権付種類株式)など、権利内容が異なる株式が存在します。相続後、会社の運用や資本政策によって、相続人の影響力や価値が思わぬ形で薄まることがあります。

  • 権利内容の変更・希釈:無議決権株式への転換、属人株式の導入、黄金株の設定により、発言権が大きく制限される。
  • 持株比率の低下:従業員持株会への組み入れ・増資・株式交換などで、知らないうちに持株比率が下がっていた/売却を迫られた。
  • 自由な権利行使の制約:持株会のルールや会社の内部規程により、売却・議決権行使・情報取得が事実上難しくなる。

上記に心当たりがある方、あるいは前兆らしき動き(定款・規程の変更、増資や株式移転の打診など)を感じた時点で、できるだけ早くご相談ください。初動が早いほど、取り得る選択肢は広がります。

弁護士へのご相談について

弁護士法人M&A総合法律事務所は、非上場株式・少数株式の売却に関する相談実績が300件以上あり、豊富な経験とノウハウを蓄積しております。ノウハウに基づいて、アドバイスを提供いたします。

まずはお気軽に、当事務所のお問い合わせフォームまたはお電話(サイト記載)からご連絡ください。全国・オンライン/来所にて対応いたします。

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