非上場株式の買取り請求はできますか?
非上場株式を持っているけれど、株式数が少なく配当もないので売ってしまいたい。しかし、非上場株式のため、なかなか売れずに困っている。
非上場株式の売買について、このような悩みを抱えている方も多くなっています。
この記事では、非上場株式を売るのが難しい理由、非上場株式の買取りを会社に請求できるか?、非上場株式を会社に買い取ってもらう方法、について解説します。
⇒非上場株式・少数株式の株式買取請求権での売却でお困りの方はこちら!
非上場株式を売るのが難しい理由
非上場株式を売るのは一般的には困難です。その理由を理解するにはまず、株式会社の区分について知る必要があります。
上場会社/非上場会社の違い
株式会社は、上場会社と非上場会社に分けられます。
上場会社とは、株式市場に株式を上場して株式が自由に売買ができるようにしている会社のことです。一方、非上場会社とは、株式を上場していない会社であるため、株式市場での売買ができません。
ですので、非上場株式は、株式市場で自由に売買できないのです。
公開会社/非公開会社(譲渡制限会社)の違い
さらに、株式会社は、公開会社と非公開会社(譲渡制限会社)にも分けられます。
公開会社とは、株式に譲渡制限をつけていない会社を指します。非公開会社はその逆で、株式に譲渡制限をつけている会社のことです。譲渡制限とは、株主が株式を譲渡するときに、会社の承認を必要とする制限を指します。
上場会社は全て公開会社ですが、非上場会社はその多くが非公開会社(譲渡制限会社)です。
ですので非上場株式は、多くは、自由に譲渡することができないのです。
非上場株式は買い手を探すのが難しい
非上場会社かつ公開会社の場合、株式に譲渡制限がついていないので、株式を自由に売買することができます。しかし、非上場株式は株式市場での売買ができないため、株主が自ら買い手を探すことが必要です。
一般的に、株式を買いたい人は、売買による利益や配当への期待、経営権への参画などを目的にしています。しかし、非上場株式は流動性がなかったり、配当が行われてなかったりするため、株式譲渡益や配当はあまり期待できない可能性があります。また、非上場会社は同族経営であることも多く、その場合、経営への関与も容易ではありません。
こうした理由から、非上場株式の買い手を探すのは難しいのが実情です。
非上場株式には譲渡制限がついていることが多い
さらに、非上場会社かつ非公開会社の場合、株式に譲渡制限がついています。譲渡制限がついた株式は、譲渡に際して株主が会社の承認を得ることが必要です。
非上場株式には、譲渡制限がついているケースが大半です。譲渡制限つきの非上場株式を売りたかったら、買い手を探したうえで、会社の承認を得るための手続きを踏む必要があるため、売却のハードルはさらに高いといえます。
非上場株式の買取りを会社に請求できるか?
非上場株式を売るのが難しいなら、会社に買い取ってくれるよう請求することは可能でしょうか。
株式買取請求権とは
株主は、次の2つの場合には、会社に株式を買い取るよう請求できる権利(株式買取請求権)をもちます。
・単元未満株式の場合
・合併や会社分割・株式交換・株式移転・譲渡制限導入定款変更などの企業再編等の場合
単元未満株式はあまりないと思いますので説明は省略します。
会社が合併や会社分割・株式交換・株式移転・譲渡制限導入定款変更などの企業再編等を行う場合にも、株主は会社に対して株式買取請求が可能です。具体的には、金額が20%を超える事業譲渡、合併や分割などの組織再編、株式併合などが挙げられます。
株式買取請求権とは、このような特別な場合に、株主を保護する権利であるため、単に非上場株式を売りたいだけでは行使できません。会社に対して任意に非上場株式の買取りを請求すること自体は自由ですが、会社には買い取る法的義務はないため、買い取りを拒否されることが多いです。
⇒非上場株式・少数株式の株式買取請求権での売却でお困りの方はこちら!
非上場株式を会社に買い取ってもらう方法
非上場株式を会社に買い取ってもらうためには、いきなり株式買取請求を行うのではなく、株式譲渡承認請求を行ったほうが効果的です。
株式譲渡承認請求とは
前述したように、譲渡制限がついている非上場株式を譲渡するには、会社に対して株式譲渡承認請求をすることが必要です。この手続きを踏めば、会社が株式譲渡を承認しなかった場合には、株式買取義務が発生するため、株主は非上場株式を売却することができます。
譲渡制限がついた非上場株式を売る手順
要するに、譲渡制限がついている非上場株式は、次の手順で譲渡します。
A. 買い手を探す
B. 会社に株式譲渡承認請求
C−1.株式譲渡承認された場合:買い手に譲渡可能となる
C−2.株式譲渡承認が拒否された場合:会社又は指定買取人に買取義務が発生する
D−1.株式売買価格について交渉で決着した場合:合意価格にて会社に譲渡
D−2.株式売買価格について交渉で決着しない場合:裁判所が売買価格を決定
A.買い手を探す
非上場株式は株式市場で売買できないため、株式が買い手を探す必要があります。自力で買い手を探すことができない場合は、そのような投資家との仲介業者に依頼するのがよいでしょう。
B.会社に株式譲渡承認請求
会社に対して、買い手に対する株式の譲渡を承認するか否か、株式譲渡を承認拒否する場合は会社または買受人が買い取るよう、株式譲渡承認請求を行います。
C−1.株式譲渡承認された場合:買い手に譲渡可能となる
会社が買い手への株式譲渡を承認すれば、そのまま買い手に対して株式を譲渡します。
C−2.株式譲渡承認が拒否された場合:会社又は指定買取人に買取義務が発生する
会社が買い手への株式譲渡の承認を拒否した場合には、株式譲渡の承認拒否の通知後40日以内に、会社が株式を買い取る旨の通知を行い(10日以内に指定買受人が株式を買い取る旨の通知を行うことも可能)、株式売買価格を交渉するととなります。
その後1週間以内に、会社は、簿価純資産法に基づく非上場株式の株価相当額を法務局に供託することとなります。
D−1.株式売買価格について交渉で決着した場合:合意価格にて会社に譲渡
株式売買価格が交渉により決着したら、株主は会社または指定買受人に株式を譲渡します。
D−2.株式売買価格について交渉で決着しない場合:裁判所が売買価格を決定
株式売買価格が決着しなかった場合には、会社から株主に対する株式を買い取る旨の通知から20日以内に、裁判所に株式売買価格の決定を申し立てできます。
まとめ
非上場株式は、株式市場で売買できないため、買い手を探すのが難しいです。さらに、非上場株式には株式譲渡制限がついているケースが多く、株式を売却したければ会社の承認を得る必要があります。
非上場株式を会社に買い取るよう請求すること自体は可能ですが、それは任意交渉であり、株式買取請求権という権利は、単元未満株式や企業再編などの場合以外、行使することはできませんので、会社に株式を買い取る義務はありません。
非上場株式の買い手を探したり、株式譲渡承認請求を独力で手続きしたりするのが困難な場合は、一度、非上場株式の問題に精通した弁護士にまずはご相談ください。