
非上場株式・少数株式をお持ちの方の中には、「この株式、本当に売れるのだろうか?」という疑問を抱えている方も少なくないでしょう。
結論から申し上げますと、非上場株式の売却は可能です。しかし、非上場株式を売却するには、発行会社の承認を得る必要があります。これは「譲渡制限株式」と呼ばれ、定款に譲渡制限の規定が設けられていることが一般的です。
上場株式とは異なり、市場で自由に取引できない非上場株式の売却は、手続きの複雑さや譲渡制限、税務上の課題など、さまざまなハードルがあります。本記事では、非上場株式・少数株式を売却したいと考えている方に向けて、売却方法や注意すべきポイント、税金面での対策まで、具体的に解説していきます。
非上場株式の売却は可能?上場株式との違い
まずは、非上場株式を譲渡や売却したいと考えた際に、押さえておきたい上場株式との違いや譲渡制限株式について紹介します。
非上場株式と上場株式の違い
非上場株式と上場株式の主な違いは以下の3点です。
1.流通市場の有無
上場株式は証券取引所などの公開市場で自由に取引できますが、非上場株式にはそのような市場が存在せず、個別に買い手を探す必要があります。
2.株価の算定方法
上場株式は市場価格が明確ですが、非上場株式は市場価格が存在しないため、企業の財務状況や純資産などを基に株価を算定する必要があります。
3.譲渡制限の存在
多くの非上場企業では、株式の譲渡に際して会社の承認が必要な「譲渡制限」を定款で定めています。
譲渡制限株式とは?
譲渡制限株式とは、会社の定款により株式の譲渡に会社の承認が必要と定められている株式を指します。承認は取締役会設置会社の場合は取締役会や株主総会で可否を決めます。
この仕組みにより、会社は望ましくない第三者が株主となることを防ぐことができます。ただし、株主が亡くなったことより株式を相続する場合は、譲渡制限の対象外となります。
このように、非上場株式の売却は可能ですが、譲渡制限がある株式の売却には、買い手との協議や会社への通知、関連書類の提出が必要になるため、上場株式と比べて手続きが複雑で専門的な知識が求められます。
売却を検討される際は、専門家に相談することをおすすめします。
非上場株式・少数株式の譲渡(売却)時に発生するトラブル
手続きの複雑さに加えて、譲渡を進めようとした際に予期せぬトラブルも発生します。弁護士法人M&A総合法律事務所にご相談いただくようなトラブルとして以下のようなケースがあります。
- 株式の売却・処分を会社に持ち掛けたが、経営者が全く取り合ってくれない。
- 所有する株式買取を経営者に交渉したが、あまりにも安価すぎる買取額を提示された。
- 少数株式を売却したいが、買い手が見つからず、株式を手放すことができない。
- 譲渡制限がかかっているのでその株式は売却できないと言われた。
このようなケースでは相談実績300件以上のM&A総合法律事務所にまずはご相談ください。
非上場株式・少数株式を売却のメリットとデメリットや注意点
非上場企業の少数株主として株式を保有することには、さまざまな背景や理由があります。例えば、相続によって株式を取得したものの、経営方針の違いや資金化の必要性から売却を検討するケースが挙げられます。
しかし、売却に際してはメリットとデメリットの双方を理解し、慎重に判断することが重要です。
少数株主が非上場株式を売却するメリット
少数株主が非上場株式を売却することには、以下のようなメリットがあります。
1.まとまった現金の確保
非上場株式・少数株式を売却することで、一度に大きな現金を手に入れることが可能です。これにより、配当の見込みが薄い株式を現金化することができ、急な資金需要や投資機会に対応できるようになります。
2.経営リスクからの解放
少数株主としての立場では、会社の経営に直接的な影響力を持たない場合が多いです。また、会社運営に関して株主との間で問題が発生した場合ではトラブルに巻き込まれるリスクがある立場となります。株式を売却することで、これらのリスクから解放されることができます。
3.相続・事業承継トラブルの回避
非上場株式は相続時に、相続税の負担や遺産分割においてトラブルの原因となることがあります。事前に株式を売却しておくことで、これらの問題を未然に防ぐことが可能です。
非上場株式・少数株式を売却する際のデメリットや注意点
一方で、非上場株式・少数株式の売却には、上場株式とは異なる特有の課題が存在します。以下に、少数株主が注意すべき主なデメリットとその対処法を紹介します。
1.買い手が見つからない可能性
非上場株式は市場で自由に取引されていないため、適切な買い手を見つけるのが難しい場合があります。特に、会社が譲渡制限を設けている場合、売却のハードルはさらに高くなります。このような状況では、専門家の支援を受けることが有効です。
2.会社側との交渉が長期化するリスク
株式の売却に際しては、会社の承認が必要となるケースが多く、交渉が長引くことがあります。この過程で、売却条件や価格についての合意が難航する可能性も考えられます。迅速な交渉を進めるためには、事前に会社の定款や株主構成を確認し、必要な情報を整理しておくことも重要です。
3.株価の適正評価が難しい
非上場株式は市場価格が存在しないため、株価の評価が主観的になりがちです。売却価格が適正なものとなるよう、専門家の助言を求めることが重要です。適切な評価方法を選択し、正確な株価を算定することで、公平な取引が可能になります。
さらに、同族会社の場合、相続による株式の分散が経営方針の対立を引き起こす可能性があります。このような事態を防ぐため、相続前に後継者に株式を売却することが有効な対策となり得ます。ただし、売却に伴う税務上のリスクや手続きの複雑さも考慮する必要があります。
このように、少数株主として非上場株式を保有することには、メリットとデメリットが存在します。売却を検討する際には、これらの要素を総合的に考慮し、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
非上場株式の譲渡(売却)までの手続きの流れ
非上場株式の売却・譲渡手続きは、上場株式とは異なり、公開市場が存在しないため、個別の交渉や手続きが必要となります。特に譲渡制限がある場合、会社の承認が必要であり、手続きが複雑になることがあります。このような状況下で、正当な価格で株式を売却するためには、適切な手順を踏むことが重要です。
以下に、非上場株式・少数株式の売却・譲渡手続きの一般的な流れを解説します。
1.会社の情報・定款を調べる
まず、保有する株式の基本情報を確認します。具体的には、以下の点を調査します。
・譲渡制限の有無
定款に株式の譲渡制限が設けられているかを確認します。
・株主名簿の確認
自身が正式な株主として登録されているかを確認します。
・議決権比率
保有株式が全体の何%を占めるかを把握します。
・会社の財務状況
貸借対照表や損益計算書などを通じて、会社の経営状況を把握します。
これらの情報は、売却交渉や株価算定の基礎資料となります。
2.株価の正当な評価額を知る
非上場株式・少数株式には市場価格が存在しないため、適正な株価を算定する必要があります。主な評価方法には以下があります。
- インカム アプローチ: 将来の利益や配当を基に評価する方法。
- マーケット アプローチ: 類似業種の上場企業の株価を参考に評価する方法。
- マーケット アプローチ: 会社の純資産を基に評価する方法。
これらの評価には、専門的な知識が必要なため、弁護士や税理士、公認会計士などの専門家のサポートを受けることが推奨されます。
3.買い手を探す・交渉する
買い手の探索と交渉は、非上場株式・少数株式の売却において最も重要なステップの一つです。以下の方法があります。
- 株式の発行会社への譲渡:会社自身が株式を買い取るケース。
- 他の株主への譲渡:既存の株主に売却するケース。
- 第三者への譲渡: 外部の投資家や企業に売却するケース。
株式の発行会社への譲渡の場合は、発行会社は価格に納得できない価格で提案することも多いため、価格交渉は難航することもあります。また、外部の第三者への譲渡では、正当な価格で買取ができる人物を探すために、専門家に相談することも必要です。
譲渡制限がある場合、会社の承認が必要となるため、事前に定款を確認し、適切な手続きを踏むことが重要です。
第三者へ譲渡を拒否されたら?
会社の定款に譲渡制限がある場合、第三者への譲渡が会社から承認されないことがあります。
会社が第三者への譲渡を承認しない場合、会社は自ら株式を買取るか、会社が指定する人(指定買取人)に買取らせるかを選択しなければなりません。その方との価格交渉が不成立となった場合、株主は裁判所に売買価格の決定を申立てることができます。この手続きにより、裁判所が適正な価格を決定し、その価格での売却が可能となります。
名義書換と税務対応
売却が成立したら、株式の名義書換を行い、正式に株主名簿を更新します。
また、売却に伴う税務対応も重要です。個人の場合、譲渡所得として課税され、法人の場合は法人税の対象となります。特に「みなし配当課税」や損益通算の可否など、税務上の特例や注意点があるため、専門家に相談することをおすすめします。
非上場株式・少数株式の売却・譲渡は、上記のような複数のステップと注意点が伴います。スムーズな手続きを進めるためには、各ステップを丁寧に進めることが重要です。
非上場株式の価格算定方法と注意点
非上場企業の株式を売却・譲渡する際、適正な株価の算定は極めて重要です。非上場株式には市場価格が存在しないため、評価方法の選択が取引の成否を左右します。以下に、主要な評価アプローチとその具体的手法について詳しく解説します。
代表的な3つの評価アプローチ
株式の評価方法は、企業の純資産を元に評価するコスト・アプローチ、 将来の収益やキャッシュフローを元に評価するインカム・アプローチ、類似する上場企業の市場データや取引事例と比較して企業価値を評価するマーケット・アプローチの3つに分けることができます。
1.コスト・アプローチ
企業の純資産を基に株式価値を評価する方法です。主な手法として以下が挙げられます。
時価純資産法
貸借対照表上の資産・負債を時価評価し、純資産額を算出して株価を評価します。資産価値が高い企業や、清算価値を重視する場合に適用されます。
簿価純資産法
貸借対照表上の簿価純資産を基に評価する方法です。ただし、簿価と時価の乖離が大きい場合、実態を反映しない可能性があります。
再調達原価法
現在の市場で同様の資産を再取得する際のコストを基に評価します。主に資産の再取得価値が重要視される場合に用いられます。
清算価値法
企業を清算した場合に得られる純資産価値を基に評価します。事業継続が困難な場合や、清算を前提とする場合に適用されます。
2.インカム・アプローチ
将来の収益やキャッシュフローを基に企業価値を評価する方法です。主な手法として以下が挙げられます。
ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)
企業が将来生み出すと予測されるキャッシュフローを、資本コストで現在価値に割り引いて評価します。特に成長企業の評価に適しています。
収益還元法
企業の将来の収益を一定の還元率で現在価値に換算する方法です。安定した収益が見込まれる企業に適用されます。
配当還元法
将来予想される配当を基に株式価値を算定します。配当政策が明確な企業や、配当実績が豊富な企業の評価に用いられます。
3.マーケット・アプローチ
類似する上場企業の市場データや取引事例と比較して企業価値を評価する方法です。主な手法として以下があります。
類似企業比較法
評価対象企業と同業種・同規模の上場企業の株価指標(PER、PBRなど)を比較し、評価対象企業の株価を推定します。適切な類似企業の選定が重要となります。
取引事例法
過去の類似企業のM&A取引事例を参考にして評価する方法です。ただし、非上場企業の場合、公開されている取引事例が少ないため、適用が難しい場合があります。
適正な評価方法の選択
非上場株式・少数株式の評価方法は多岐にわたり、選択する手法によって評価額が大きく異なることがあります。そのため、以下の要因を考慮して適切な評価方法を選択することが重要です。
事業の状況
事業が継続的に行われている場合はインカム・アプローチが適していますが、清算が視野に入る場合はネットアセット・アプローチが妥当とされます。
資本政策
配当実績がない企業では、配当還元法の適用が難しい場合があります。
市場データの有無
類似企業の市場データが入手可能な場合はマーケット・アプローチが有効ですが、非上場企業では適切なデータが得られないこともあります。
これらの要因を総合的に判断し、単独の評価方法を用いる場合や、複数の方法を組み合わせて評価を行う場合があります。専門家の助言を得ながら、適切な評価手法を選択することが望ましいでしょう。
非上場株式売却で気をつけたい税金
非上場株式・少数株式を売却する際の税務上の取り扱いは、個人と法人で異なり、さらに「みなし配当課税」や「損益通算」など特有の概念が関係してきます。以下に、これらのポイントを詳しく解説します。
個人が売却する場合の税金
個人が非上場株式を売却した際の利益は、譲渡所得として分類され、以下の税率が適用されます。
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:所得税額の2.1%
これらを合計すると、約20.315%の税率となります。
譲渡所得は、売却代金から取得費や譲渡費用を差し引いた金額で計算され、所得税15.315%と住民税5%を合わせた20.315%の税率で申告分離課税されます。
損益通算はできるのか?
非上場株式の譲渡損益は、上場株式の譲渡損益とは別に計算されます。そのため、非上場株式の譲渡損失を上場株式の譲渡益と相殺することはできません。ただし、非上場株式同士の譲渡損益であれば通算が可能です。
法人が売却する場合の税金
法人が非上場株式を売却した場合、得られた利益は法人の所得として計上され、法人税の課税対象となります。法人税の実効税率は約29.74%であり、売却益に対してこの税率が適用されます。譲渡益は、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた金額で計算されます。
買主が株式の発行会社である場合は「みなし配当課税」に注意
1.みなし配当とは
株式の売主が個人・法人を問わず、株式を発行している会社自体に株式を譲渡すると、実際に配当金を受け取っていなくても「みなし配当」として課税されます。これは、譲渡によって得た利益の一部を、配当金を受け取ったものとみなして取り扱う制度です。
2.みなし配当額の計算方法
みなし配当の金額は、次の計算式で求めます。
譲渡金額−(1株あたりの資本金等の額×譲渡株式数)=みなし配当額
この結果得られたみなし配当額が、個人の場合は「配当所得」、法人の場合は「受取配当金」として扱われます。
3.譲渡方法で変わる課税負担
- 第三者に譲渡する場合: 控除できるのは「取得費+譲渡費用」の金額です。
- 発行会社に譲渡する場合: 控除できるのは「1株当たりの資本金等の額 × 譲渡株式数」です。
同じ譲渡でも、どちらを控除対象とするかで課税される金額が変わります。ケースによって有利・不利が異なるため、事前に両方の方法を認識することが重要です。
4.法人の受取配当金に適用される「益金不算入」
法人が受け取る配当金には、「受取配当等の益金不算入」という制度が適用される可能性があります。法人が発行会社に株式を売却して生じたみなし配当は、受取配当等と同じく法人税法23条「益金不算入」の対象です。持株比率に応じて、下表の割合で課税所得(益金)から除外できる制度で、適用すれば法人の税負担を軽減できます。
区分 | 持株比率 | 不算入割合 |
---|---|---|
完全子法人株式等 | 1/3 超 | 100% 不算入 |
関連法人株式等 | 5% 以上 1/3 未満 | 50% 不算入 |
非支配目的株式等 | 5% 未満 | 20% 不算入 |
例えば発行会社の株式を40%保有する親会社が自己株式取得に応じてみなし配当1,000万円を受け取った場合、全額益金不算入となります。申告時は「受取配当等の益金不算入明細書」を添付し、負債利子控除の計算が必要かどうかを確認してください。
5.個人がみなし配当を受け取る場合の課税
個人がみなし配当を受け取ると、それは「配当所得(総合課税)」として扱われ、給与所得や事業所得などほかの所得と合計して所得税が計算されます。したがって、譲渡所得にかかる約15.315%の税率とは異なり、累進課税が適用されます。また、住民税は約10%です。
6.配当控除と源泉徴収に関する注意点
合計所得金額が一定以下であれば、所得税・住民税の計算で配当控除を受けることが可能です。また、発行法人から支払われるみなし配当は通常、みなし配当額に対して所得税20 %+復興税0.42 %=20.42 %が源泉徴収額として差し引かれた金額が振り込まれます。
確定申告が必要となることにも注意が必要です。原則として、1月1日~12月31日までの譲渡は、翌年の2月16日から3月15日の間に所轄税務署へ申告が必要なので、忘れずに手続きを行いましょう。
7.源泉徴収された税金を取り戻す「還付申告」
発行会社に売却して発生したみなし配当には、支払時点で20.42 %(所得税20 %+復興税0.42 %)の源泉所得税が差し引かれますが、年間の総合課税計算でご自身の税率が20.42 %を下回る場合や、各種控除(配当控除・医療費控除など)を適用すると納め過ぎになるケースがあります。
- 提出期限:売却年の翌年1月1日から5年間(いわゆる「還付申告」)
- 必要書類:確定申告書B・第三表、株式譲渡計算書、源泉徴収明細など
- 手続き方法:税務署へ書面又は e‑Tax で提出(e‑Tax ならおおむね3週間前後で還付)
- みなし配当と譲渡損益は損益通算できませんが、還付申請だけで源泉徴収された税金を回収が可能な場合もあります。
参考リンク
国税庁タックスアンサー No.1330「配当金を受け取ったとき」
国税庁タックスアンサー No.2030「還付申告」
国税庁 Q&A「確定申告・還付申告」
適正な時価と大きく乖離した売却価格には注意
非上場株式を売却する際、売却価格が適正な時価から大きく乖離していると、売主・買主の双方に予期せぬ税負担が発生する可能性があります。特に、著しく低い価格での譲渡は、税務上「みなし譲渡」や「みなし贈与」として扱われ、所得税や贈与税が課されることがあります。このようなリスクを回避するためには、売却価格の設定に細心の注意を払う必要があります。
税務上の適正な時価とは?
非上場株式の「適正な時価」とは、市場で自由に取引される価格ではなく、財産評価基本通達に基づいて算出される評価額を指します。この評価額は、会社の財務状況や業績、資産内容などを総合的に考慮して算出されます。適正な時価を正確に把握することは、税務上のリスクを回避するために不可欠です。
売却価格が時価よりも低い場合の税務リスク
売却価格が適正な時価よりも著しく低い場合、以下のような税務上の問題が生じる可能性があります。
売主が個人 → 買主が個人の場合
このケースでは、売主には譲渡所得税が課され、買主には時価と売却価格の差額に対して贈与税が課される可能性があります。例えば、時価1,000万円の株式を400万円で譲渡した場合、買主は600万円の贈与を受けたとみなされ、贈与税の対象となります。
売主が個人 → 買主が法人の場合
この場合、売主には「みなし譲渡所得税」が課される可能性があります。具体的には、売却価格が時価の2分の1未満である場合、税務上は時価で譲渡したものとみなされ、その差額に対して所得税が課されます。
売主が法人 → 買主が個人の場合
このケースでは、買主が役員や従業員である場合、時価と売却価格の差額が給与所得とみなされ、所得税が課される可能性があります。また、買主が役員や従業員でない場合でも、差額が一時所得として課税されることがあります。
売却時期にも注意が必要
非上場株式・少数株式の売却時期によっても、税務上の取り扱いが異なる場合があります。例えば、年末に売却を行った場合、翌年の確定申告時に申告・納税が必要となります。また、相続や贈与に関連する場合には、相続税や贈与税の申告・納付期限にも注意が必要です。
※本サイトに掲載している情報は一般的な内容を示すものであり、税務に関する専門的なアドバイスを提供するものではありません。税金に関する詳細なご相談や正確な判断が必要な場合は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。
非上場株式・少数株式の売却・譲渡の事例
非上場株式・少数株式を売却する際には、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。弁護士法人M&A総合法律事務所が関与してきた事例をご紹介します。
Case1:創業家が経営を任せた人物に会社を乗っ取られたケース
依頼者は創業家の元取締役であり、個人で数パーセント、創業家全体では数十パーセントの株式を保有していました。しかし、創業家全体の組織力が弱かったことから株式を安値で売却する者が相次ぎ、創業家全体の株式保有率は徐々に低下しました。その状況を利用した経営責任者(番頭)が会社の支配権を掌握しようとしていることが判明。依頼者も自身の株式を会社に売却しようとしましたが、会社は依頼者を一般従業員と同じ扱いで額面価格での買い取りを提示し、株式の一部所有権すら認めませんでした。最終的に訴訟・仮処分の申し立てを経て交渉を進めた結果、裁判所の和解勧告により、時価純資産価格と収益還元価格を均等に考慮した価格での買い取りが決まりました。
Case2:会社支配を巡り本家が分家を排除したケース
依頼者は創業家の分家出身であり、元取締役として20%の株式を保有していましたが、退社後に会社から株式の買い取りおよび配当を拒否されました。会社を掌握した本家出身の社長は、分家出身の社員を冷遇し、自分の一族を優遇していました。その結果、分家出身者は会社から排除され、社内の支配権は本家に集中。依頼者も追い出されることとなりました。依頼者は株式の買い取りを求め、同時に社長の公私混同による不正を追及。訴訟と並行して交渉した結果、最終的に時価に近い価格で株式の買い取りが実現しました。
Case3:長男が次男を会社経営から追放し、利益を独占しようとしたケース
創業家の次男である依頼者は、長男とともに会社経営を行っていました。しかし、長男が過半数の株式を保有し専横な経営を行ったため、依頼者は役員としての地位を失い、収入も絶たれ、自宅からも追い出されました。さらに長男は依頼者の保有する株式を安価で買い取ろうとしました。依頼者はこれを不服とし、適正価格での買い取りを求めて弁護士に依頼。長男の公私混同による不正行為も指摘しつつ交渉を重ね、結果的に適正価格での買い取りに成功しました。
Case4:創業者が招聘した外部の社長を私情により解任したケース
依頼者は後継者不在を理由に外部から招聘された社長でしたが、オーナー創業者は依頼者が経営に関して意見を述べることを不満に感じ、突然解任を決定しました。さらに退職慰労金も支払われず、依頼者からの株式適正価格での買い取り要請も拒否され、不当に低い価格を提示されました。これを不服とした依頼者は法的措置を講じ、裁判所の和解勧告によって、最終的に退職慰労金全額と株式譲渡代金の支払いを獲得しました。
※ 実際の当事者や事案の経緯についてはデフォルメしていますので、予めご了承ください。
よくある質問
非上場株式・少数株式を売却(譲渡)を考えた際に気になるQAを紹介します。
非上場株式は本当に売れないの?
Q:非上場株式・少数株式は市場で取引されていないため、売却が難しいと聞きます。本当に売ることはできないのでしょうか?
A:非上場株式・少数株式の売却は可能ですが、上場株式と比較していくつかのハードルがあります。まず、多くの非上場企業では定款に譲渡制限が設けられており、株式を第三者に譲渡する際には会社の承認が必要となります。また、取引市場が存在しないため、適正な株価の算定や買い手の探索に時間と労力を要することが一般的です。しかし、適切な手順を踏むことで売却は十分に可能です。
相続で引き継いだ株式もすぐに売れる?
Q:親から相続した非上場株式・少数株式をすぐに売却したいのですが、可能でしょうか?
A:相続によって取得した非上場株式・少数株式も売却は可能ですが、いくつかの要因が関係します。まず、会社の定款に定められた譲渡制限の有無や内容を確認する必要があります。また、会社の経営状況や財務内容、他の株主との関係性なども売却の可否や条件に影響を与えます。さらに、株式の評価額を適切に算定するためには、専門家による評価が重要となります。
弁護士費用や税金が高くなるのでは?
Q:非上場株式・少数株式の売却には弁護士費用や税金が高額になると聞きました。実際のところ、どの程度の費用がかかるのでしょうか?
A:非上場株式・少数株式の売却に伴う費用は、取引の複雑さや株式の評価額、関与する専門家の範囲などによって異なります。弁護士費用については、事前に見積もりを取得し、費用対効果を検討することが重要です。また、売却益に対する税金(譲渡所得税など)も考慮する必要があります。適切な手続きを踏むことで、将来的なトラブルを回避し、公正な価格での売却が期待できるため、これらの費用は必要な投資と考えることができます。
非上場株式の売却は、手続きや税務上の複雑さが伴うため、専門家に相談することでスムーズな取引が可能となります。
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非上場株式・少数株式の売却が思っていたように進まずお悩みの方は、ぜひお気軽に弁護士法人M&A総合法律事務所までご相談ください。